山科の蕎麦屋

高月


車が一台ようやっと通れる細い道はハイキングコースにもなっちょって、このまま山越しに歩いたら南禅寺まで行けるがやそうです。南禅寺と聞いたち、ここは京都山科区やきに、普通はどこかさっぱり分からんところやけんど、たまたま白川通り言うところで道に迷うて、


「困ったにゃあ......」


そう思うてキョロキョロしよったら、見知らぬ観光のお客さんが、


「あのう、南禅寺にはどう行ったらいいでしょうか?」


(ええっ!?ワシに訪ねよりますか......?)


丸刈りで作務衣やきに、てっきり近くのお寺の人と思うたみたいです。ご年配の方やし、田舎者のワシに聞いてくれてますのでこりゃあ、何とかせなあイカンぜよ。と、地図を探して探して、どうにか説明終えたら、今度は違う人が近づいてきてから


「哲学の道は、どこですか?」


「........................!」


まっこと、大変やったちや。けんど、そんな事があったお陰で、このお寺の名前と位置は、だいたい分かっていました。ありゃりゃ、結構車で走ったみたいなけんど、どうやら、京都の街からはそんなに離れちゃあせんみたいぜよ。


山科竹林


まあ、それはエイけんど、さすが京都じゃ。それにしたち竹が多い、まっこと多い。川のせせらぎを聞きながら、坂を上がっていく山側の道にも竹。ほんで、たどりついた舗装されていない駐車場。目の前にも竹林が広がっちょります。こんなに竹に囲まれながら車から降りると、なんやら、竹の積み込みに来たみたいぜよ。


天井の上の煤竹


そんな事を思いながら歩いていくと、移築された言う立派な茅葺きの民家があるがです。囲炉裏も残っちょって、ごっつい梁の上の天井には煤竹が並んじゅう。古い民家のどっしりした造りと、光を適度にさえぎっちゅう明るさ加減。窓の向こうにえみる紅葉。静かで落ち着いた雰囲気が、どうも、いつもの蕎麦屋さんと違うて緊張するけんど、まあ、たまにはエイろうか?


お品書き


何から何まで気配りのきいたお店やけんど、何と言うたち入り口の手間にあった、お品書きを書いた紙を挟んでいた竹。竹を上手に活かしちゅうと、感心するがです。そうそう、店から帰りがけに、歩いてきた見知らぬお客様に聞かれました。


「予約の時間より早う着いてしもうたけど、入ってよろしいか?」


まっこと、ワシは、お坊さんか、食べ物屋の人か、どっちかに見えるみたいながです。


コメントする