36年ぶりの朝

虎竹の空


ふと、窓の外を見たら先生が歩きよりました。先生いうのは明徳中学の時に一年間だけ数学を習ったあの先生...。確かに、あの先生やないろうか?いや、間違いないぜよ、あの先生や。なんと、36年ぶりやきに、思わず走って追いかけたがです。それにしたち、先生は結構足が速いぞね。なかなか追いつけんかったけん。ワシは、ちょいワル雪駄を履いちゅうけんど、これがゴツイタイヤ底で結構重たい最高に格好はエイ雪駄やけんど運動には向いてないにゃあ...。けんど、赤信号でようやく話かける事ができたがです。


「安和の竹虎さんは、よう覚えちゅうよ」


今年で公立中学の教職を退職されるという先生。こじゃんと(とても)、懐かしいぜよ。綺麗な黒髪は、すっかり白髪になっちゅうけんど、あの日のままの眼差しちや。不思議やにゃあ、先生の前やったら。こんなおんちゃんのワシも、いつの間にやら何ちゃあ分かってなかった学生の頃に戻っちゃある。


先生に挨拶して別れて帰る道すがら、すれ違うやんちゃ坊主やった自分と同じ年頃の制服姿。「ああ、朝8時か。ちょうど登校時間やにゃあ」こんな普通の光景が何か新鮮ぜよ。そして、思うがです。笑いながら連れ立って自転車で学校に行きゆう若い彼らがワシと同じ歳になった時、高知はどうなっちゅうがやろう?久しぶりの恩師との再会に心温うなる高知やろうか?小さいかも知れんけんど、今しがた自分にあった、こんな嬉しい朝のひとときが、あっちでも、こっちでもいっつもある高知であるために、自分は何ができますろうか?自分は何のために生かされちゅうがやろう?自分しか出来ん事は決まっちゅうかえ?思いが真っ直ぐに定まったなら空の色やち違うて見えてくるきに。まっこと(本当に)人生は素晴らしいがぜよ。


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