遠い台風の夜

虎竹林


子供の頃から台風は、まっこと怖かったちや。毎年、夏になり台風接近のニュースをNHKでやり出すと食卓の笑い声は消える。いつもは優しい父親は急にピリピリしだす。虎竹の里の前には海水浴場にもなっちゅう安和海岸がありますけんど、この浜に音をたてて大波が打ち寄せるようになってきたら竹虎の工場の職人さんたちは慌ただしゅうなる。


昔の竹虎の工場は木造でトタン張り、ガラス窓には雨戸もなかったがです。そんな窓や入り口から風が入らないように束にした竹を並べていく。土場に積み上げられた竹には重たい緑色のシートをかけて太いロープで何カ所も縛る。ピーピーピー......音を立ててバックしてきた三輪トラックが工場にすし詰めになる。小さい自分は何ちゃあできず、ただ、ただ大人達を見上げるだけ。せめてもと思うて割れたガラス窓の小さな穴に下に落ちていた瓦を立てかけるのが精一杯やったぞね。


不気味な静けさ。そして、轟音とともにやってくる台風。雨戸を閉め切った部屋でロウソクの灯を囲んですごす心細い時間。竹のいっぱいある工場は大丈夫やろうか?ヘルメットに雨合羽で出ていったきり全然帰ってこない父を待ちよった。今回の台風も、幸いなことに被害もなく通り過ぎました。また、あの竹林にゆっくりと出かける事もできますろう。大自然の前では、まっこと無力な自分です。生かされちゅう事を忘れんように毎日大切にせんといかんにゃあ。台風が、そうやって繰り返し言うてくれているのかも知れんちや。


コメント(2)

細川和宏 返信

先日は石鹸ありがとうございます。今からは色々な虫が鳴き風も吹きややに暑い時期から
涼しい時期に変化してゆきます。竹の多い地方では今頃から展示会がはじまります。竹細工の虫。動物。家具。植物。など展示会に展示される竹細工の黒い竹細工の展示をしては
いかがでしようか?竹トンボも含めて。大きいものから小さいものまで。大きいものは四国村に展示されている昔の家屋の展示など屋島の四国村に行けばよくわかります。今回

福島の震災にあった400年ちかく経過して震災にあった家屋も解体修復してるようです。小さいものはクツワムシ。こおろぎなど爬虫類。など試してみてください。

竹虎四代目 返信

細川和宏様

竹虎四代目です。
いつもご愛顧ありがとうございます。

虎竹の模様は独特ですので
この風合いを活かした昆虫作りを是非もう少ししてみたいと思うちょります。
四国村などには小さい頃行ったきりです
参考になりそうな竹細工があるようですので
いちどお伺いしてみたいです。

お教えいただきありがとうございます!
今後とも何卒よろしくお願いいたします。

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