竹ヒシギの思い出

竹ヒシギ


これは一体何やろうか?パッと見には分かりにくいかも知れませんけんど、実は、丸い竹を金槌に似た専用の道具を使い叩き割って一枚の板状にしたヒシギと呼ばれるものなのです。


「叩き割る」と言うと、ちっくと語弊があって余計に分かりづらいかも知れません。叩き割ると言うより、平たく叩き伸ばすですろうか?完全に割り切ってしうまと竹がバラバラになりますので、平らになるように叩いて割れ目を入れていくのですが微妙な所で止めちょくのです。以前は、このヒシギの加工をしてくれる内職さんだけでも10数名ほどが作業をしてくれよりました。自社で製造する竹袖垣の部材として使ったり、あるいは、ヒシギそのものもお得意様に沢山お送りしよりました。


竹虎本社のある高知県須崎市安和という土地はまっこと田舎で、西も東も高い山々で遮られちょりまして、その昔は交通の難所とも言われた場所ながてずが、虎斑竹(とらふだけ)の日本唯一の産地でありますし、笹場と言う地名からして竹が沢山ありそうな黒竹の産地までは車で10分かからないという、竹屋としてはこれほど地の利のある所もないですろう。そして、この有数の黒竹の産地として知られた笹場には竹虎の支社とも言うべき加工場もあって、朝からワイワイガヤガヤ、まっことにぎやかで楽しい職場やったぞね。


残念ながら今では、この作業場はなくなりましたけんど、虎竹をトラックで運び入れる時もヒシギをはじめ他の竹製品などを引き取りに行く時にも、ホッとするような美味しいお茶を出してくれてお茶菓子を食べさせてくれてるがです。自分が日頃食べているお菓子とは違う、ちっくとレトロな感じのお菓子やけんどこれが素朴なお茶の味とバッチリ合うて美味しいのなんの。まっこと、この作業場に荷物を運んで行くのが楽しみになるほどやったちや。


楽しみは食べる事ばっかりやないぞね。内職のおばちゃんたちの面白い話しを色々と聞かせてもろうたがです。さすが人生経験が長いおばちゃんたちの話しはお腹をかかえて笑うような、のかな(可笑しい)話しから、興味津々と聞き耳をたてるような興味深い話しまで、それぞれの方がレパートリー持っちょりましたにゃあ。あれから二十数年経ちますけんど、まるで、つい間の事のようぜよ。今でも、この竹ヒシギなど見たら思い出すがぞね。


先日、虎竹ヒシギの超ロングサイズのご注文をいただいて、何に使うかと、お聞きしたら屋根使うとの事やったです。東南アジアでは、竹ヒシギを屋根に使うた家が今でもあるそうですきにそれを再現するというらしいです。こりゃあ、面白そうやちや、一回見学に行かんとイカンぜよ。


けんど、ウチの内職さんが沢山おった頃にヒシギを屋根に使うとか聞かせたかったちや。まっことビックリ仰天やったろうにゃあ。作業場の近くにあった大きな大きな銀杏の木陰の下で大きな声でワイワイと、この話題に花が咲いたろう...そんな事をしみじみ思うがです。


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