竹手鞠見つけた

竹手鞠


まっこと面白い事があるものですちや。それは何の前触れもなく突然やってくるきに楽しいがぜよ。ふと、見たらそこにあるのが竹編みの手鞠たち。コロコロと転がって、手の平にのせてみましたぞね。ご覧の通り、可愛く愛らしく、あまりの素晴らしさに声を無くしてしもうちょりました。


竹手鞠かんざし


紐を通したり、金具を付けたりしてアクセサリーかと思いよりました。もちろん、そんな使い方もエイですろう。けんど元々は中央の穴部分に竹を差し込んだ竹かんざし、かっては沢山製造されよった商品の名残でもあるがです。


竹手鞠かんざし


何処か遠くに行く時には地元のお菓子などを手土産にしますろう?自分の場合には高知銘菓かんざしを持って行く事が多いがです。


「土佐の高知のはりまや橋で坊さん、かんざし買うを見た」


と言う唄がありますけんど、作務衣に丸坊主の自分は、お坊さんみたいなし、これを持って行くと、まっこと洒落もきいて面白いにゃあと思うがです。この竹手鞠かんざしはシンプルでもあり、当時は本当にこんな、かんざしやったかも知れませんぞね。


竹手鞠簪


実際に頭に差して使うてもらいましたけんど、黒髪に朱赤がワンポイントで入って、なかなかエイ感じです。今では作られなくなった竹手鞠ですきに、そんなに沢山の方にお届けできるものでもありませんが、竹のこんな綺麗なかんざしをご覧いただくだけでも、嬉しいにゃあと思うちゅうがです。


国産ワラを使う竹皮草履

木槌


竹皮は昔から天然の抗菌作用などがあるという事で、オニギリ弁当を入れる包材としても重宝されてきた素材ながです。今でも高級なお肉などを包むのには竹皮が使われちょりますぜよ。


そんな竹皮ですが国産のものは、かなり少ないがではないですろうか?竹は毎年どんどん生えてきますのでその都度竹皮も山に沢山できるのですが、残念ながら、それを活用できずおりますので、竹虎の竹皮草履は実はかなり貴重な存在でもあると思うちゅうがです。


さて、そんな竹皮草履ですけんど、竹皮を編み込んで行く工程でワラ縄を使うがです。ワラ縄は何処に行ったら手に入れる事ができますろうか?今の人なら間違いなく、ほとんどの方がホームセンター言うと思います。けんど、この竹皮草履のワラは、ちっくと違いますぞね。何と地元の稲作農家さんから分けてもろうて自分達で縄を作るがです。


稲刈りをされた方ならお分かりですけんど、稲ワラとは、そんなに優しい素材ではありません。結構硬く、しっかりしちゅうものです。沢山実るお米を支えないといけないので、それも当然ですろう。そこで、その稲ワラを細工に使いやすいように柔らかくする必要があるがです。柔らかくしていくのには木製の大きなツチを使いますぞね。一束叩くのに1時間もかかると聞いて、まっことビックリしたことがあります。そりゃあ、そうですぞね、この木槌の重いこと、重いこと。


今でこそ、この工程はさすがに機械化が進み、職人さんたちも少しは楽になっているのですが、それまでは、この木槌でトントン、トントン...トントン、トントン......1時間。考えただけで竹皮草履職人さんたちのご苦労が偲ばれるがです。


竹ブローチの妙

竹ブローチ


表皮を剥いだ清々しい竹ヒゴで編まれた花。優しく、温かく、軽やかな雰囲気をブローチにして身につける。一昔前は、そんな心のゆとりがあったのかも知れませんちや。自分の小さい頃には、このような竹ブローチが、それこそ色々な形で、色々な色合いで種類にしたら数十種もあったろうか?ズラリと並べられちょった事を思いだすがです。


その当時はブローチだけではありません。イヤリングですとか、ネックレス、ベルト、髪飾りなど、女性の身を飾るアクセサリー類はもとより、ハンドバックやショルダー等の持ち物まで何でも竹製のものがあり、それが、こじゃんと人気やったがです。


竹アクセサリー


竹は細く割って美しいラインを表現することができます。染色もできるので職人さんのイメージで様々なデザインが生まれます。改めて沢山並んだブローチを見よりまたら、近くの自然からモチーフを得て、それを竹の限界まで挑戦しながら、試行錯誤されて一つ一つ形にしていたった事が伝わってきますぞね。


竹福郎


フクロウは「福郎」とも当て字にされちょりますが、幸福を呼ぶ鳥として好きな方の多い動物の一つですろう。竹ブローチが創作された歴史は実は古く何と60年前の事ながです。最初の製作は、この福郎や魚など愛らしい動物から始まったと言います。


身近な竹を使い、周りの自然を形づくっていく。そして、そうやって編み上がった竹ブローチを沢山の方が求めて身につける。人と自然はずっと近い関係やった、そんな気がするがです。今の時代に忘れられちゅう大切な事を、この竹ブローチは教えてくれるがかも知れませんぜよ。


寒蘭用の竹籠

寒蘭用竹籠


「花を持ち運ぶ用の竹籠を作れませんか?」


そんなお問い合わせを頂いて思いだしたのが、ずっと前に職人さんの所にお伺いしちょった時。年期が入って赤茶に変色した渋い竹編みの角籠の事ですぞね。確か、あの職人さんも寒蘭用竹籠やと言われちょりました。


蘭と言うたら高知では土佐寒蘭が有名で、あまり花に関心のない自分でも良く目にしよります。ご自宅で趣味でされゆう方が多いですし、高知城下で毎週日曜日に開催されゆう日曜市などでも、確か販売されているお店がありますぜよ。


別誂えの場合は初めての仕事になりますので、まっこと大変で、出来上がりもお客様のイメージと違うちょったりしたら困ります。けんど、まあ蘭やったらにゃあ...馴染みのない物ではありません。それに、その道の趣味に没頭される方の思いは強く、だいたいのご希望はお伺いした上で当社なりのモノという事で、お引き受けさせてもらう事にしたがですぞね。


別注竹籠


幅が40センチ、高さ、奧行きとも25センチという結構大きな形。横面が網代編みで、上蓋部分は通気性を考えて、少し粗めにというご要望だけは押さえる事にして、何とか製作させていただく事にしておりました。


サイズがサイズだけに少し大変かとも考えちょりましたが、編み上がった竹籠を見て、まっこと安心しましたぜよ。特に腕のエイ職人さんにお願いしましたので、しっかりした仕事をされるとは思いよりましたが、予想以上に美しい形と出来映えに声があがる程ですちや。お客様の言われよりました上蓋の編み込みもこれなら大満足ですろう。早くお客様の喜ぶ顔が見たくてしょうがなくなってきますぜよ。


サークルKさんのコマーシャル撮影

竹虎本店


「ややっ!?一体何事ですろうか?」


突然ガヤガヤと竹虎本店に入ってこられたテレビカメラにビックリ仰天ながぜよ。自分達が竹林にいったり、工場でちょこっと撮影する時には、もちろん素人ですきにホームビデオ片手でOKですけんど、さすがにプロの方々言うたらカメラの他にもマイクがあったり照明が明るかったり、コードを引っ張る方やら、何やら、まっこと、あまりの人数に驚いてしまうがです。


これほど、おっこう(大袈裟)な撮影ち。竹虎のような田舎の竹しかない所で何をするがやろう?そう思いよりましたら、


「これ、食べてみてください」


サークルKコマーシャル撮影


差し出さしてもろうたのは某コンビニのプリンやいか。ありゃりゃ、何を隠そう自分は小学校の時のアンケートで、


「一番好きなお菓子は何?」


「プリン!!!」


と、答えたくらいの数十年来のプリン好き。そんな事は知らんと、たまたま来られちゅうがやろうけんど、こりゃあ、嬉しいにゃあ。近くにいたスイーツ好きな若い社員と一緒にいただく事にしたがぜよ。


竹虎本店


「おおっ!こりゃあトロけちゅう」


プリン好きとは言うたち最近は、そうそう食べる事はないがです。特にコンビニのプリンは美味しいとは聞くのですが、あまり食する機会はなかったがです。


けんど、まっこと噂通りやいか!これはケーキ屋さんなどで売られゆうスイーツと変わらんちや、いやいや若い女性の方に人気なのも分かりますぞね納得ぜよ。最初は一体誰やろうか?と怪訝な表情やった社員たちも、食べて大満足、最後は満面の笑みになっちょりました。美味しいものは人を幸せにするがですにゃあ。


この日の撮影はサークルKさんのコマーシャルとして、本日から高知県で放映予定と聞いちょりましたけんど、何やら昨日あたりから既に流れゆうようですぞね。是非観とうせよ~!


畠山青堂さん

畠山青堂さん


畠山青堂さんにお会いさせていただくのは2度目ながです。確か6年か7年前に一度お話させてもろうた事がありますぞね。あの時も同じように色々と作品を拝見させていただき、その技の素晴らしさ、竹への取り組みに静かな志を感じちょりました。国内より海外で評価される事が多いと言われる、ご自身の作品を手にする畠山さんの表情はまっこと穏やかです。竹一筋に歩まれてきた道のりに自信と誇りを持たれ、満足されちゅうのがヒシヒシと伝わってくるようながです。


畠山青堂さん作品


竹にも色々な側面があって、生活の中で毎日のように使われる竹細工もあれば、これらの竹工芸のように暮らしに潤いをもたらしてくれるような芸術的な域にまで昇華する竹の世界もあるがです。竹の凄いところは、その求める人によって求められるまま、自由自在に形を変えられる所ですろうか。たった1本の竹やけんど、あらゆる可能性を秘めた存在と言えますろう。


竹の葉


編み込みを重ねる独特の技法で見事に表した竹の葉。展覧会などでは手に触れる事ができませんけんど、こうやって工房に来られる楽しみは、実際に手に取り、手触りや質感や重さまで体感できることですろう。時間が許せば、許すだけ拝見したくなってくる竹作品に、この日も後ろ髪を引かれる思いで龍馬ブーツを履いたがです。


ややっ!?竹炭皿

竹炭皿と間違えた器


あれはいつ頃の事やったですうろか、まっこと驚いた事がありましたちや。最初見てハッとしたがです、何と竹炭皿が使われちゅう!?まっこと実際に使われちゅうのを見るのは初めての事でしたので、目をゴシゴシこすって、改めて見てみました。そしたら、あれれ、間違うちょったようですちや。竹炭皿に似た真っ黒い皿にヨーヨーがのせてあるだけでした。


ええっ!?ヨーヨーではない...?


ああ、なるほど、なるほど、これがマカロン言うて、一時期ワイワイ言われよったお菓子の事ですろうか。まっこと色々なものが流行るものですちや。


まあ、お菓子の事はさておいて、この黒い長方形のお皿は陶器でしたが、やたら重たく、軽く叩くとキンキンと金属のような音がしよりましたので、もしかしたら焼き物でも、ちっくと特別な製法のものかも知れません。けんど、横に入った細かい縞模様や深い黒色が、そして、大きさまでもまっこと竹炭皿に良く似ちょりましたぜよ。


竹炭皿は長いものでしたら30センチの長さのものがあって、料理などの盛り付けに使うと結構面白いと思うがですが、竹炭は焼くと2割程度は縮んでしまうがです。だから、材料の段階で結構大きな竹やったとしても、焼き上がりは想像より小さな皿にしかなりません。しかも、土窯で1000度の高温で焼き上げますので技術的にも難しく、割れたり、極端にねじれたりするものを除くと、本当に良いものは少ししか焼き上げる事ができんがですぞね。


綺麗に焼き上げられた竹炭は銀色に輝き、この陶器の皿と同じようにキンキンと金属のような響きぜよ。扱いが大変やし皿というても使える料理は限られちょりますが、野趣あふれる雰囲気で、使い方によっては面白いお皿やと思うがです。


結界の煤竹

煤竹結界


茶道や華道をされている皆様にはお馴染みの煤竹ですけんど、そのようなお稽古事をされゆう方は近年少なくなりゆうがですろうか?竹虎の工場にお越しになられる方で、立てかけて保管しちゅう煤竹が一体どのような竹なのか、ご存じの方は本当に少ないように思うがです。


日本の暮らしは数十年で大きく変わりましたきに、それは仕方のない事やと思うがです。自分の小さい頃には母の実家に行っても囲炉裏は普通にあって、家族団らんの中心やったがですちや。皆が集うてここで向き合うちょったのかも知れませんぞね。今は一緒におってもテレビやスマホなどがあってから、それぞれが向き合う時間は少ないのではないですろうか?


けんど、そんな囲炉裏の煙に天井裏に使われちゅう竹が、時には150年もの長い間燻されて出来たのが煤竹です。「時間職人」などと自分は呼びますが、まさに時間が色づけした自然の色合いですので、それぞれ縄目があったり、濃い色、薄い色様々で同じものはありません。


長い間乾燥もしちゅうので細工に適さない竹もあって、これからは、ますます希少価値のある竹。そのような竹だからこそ、美しい竹細工にして次の新しい竹の人生(竹生やろうか?)を歩んでもらいたいがです。


クルクル回る、竹のちり箱

くるくる竹ダストボックス


竹の加工技術で近年大きく飛躍しちゅうのが集成材ですろう。もともと形の揃わない丸い形で身の部分も薄い竹は、均一化が難しく工業製品のように扱えない素材やったがです。昔に比べて技術の進歩や大企業の取り組みもあってか、竹の集成材は大躍進しちょりますぞね。家具やフローリングとして色々なところで目にするようになりましたし、高知では高級車のハンドルとして加工されゆう会社様もあるがです。実は、あまり関心のない方でもすでに生活で大きく関わりゆうがですぜよ。


竹の折り重なった模様から、そんな竹の集成材で作られちゅうモノと分かりますが、これだけやったら一体何なのか?と思うてしまいますぞね。


竹虎四代目


実はコレが四角い形をした卓上ゴミ箱ですちや。集成材で箱形にしただけならあまりにも芸がありませんけんど、実は、上蓋がクルクル回転するようになっちょります。


ダストボックス蓋


上蓋が回転するゴミ箱については、もともと太い孟宗竹を原材料に使うたものがありましたけんど、竹は丸い形をしておらず、楕円形やったりします。しかも太さも全て違うので加工が大変やったがです。


竹集成材で同じサイズのものができると、加工する職人さんも楽やし、キッチリした蓋が出来ますぞね。試作の時には、ちっくとスムーズに回転しなかった蓋も改良されて、こじゃんと良くなっちょります。和風でも洋風でも使えますきに活躍の場所は広いように思うがです。


8年目、高知e商人養成塾9月合宿

第8回高知e商人9月合宿


いよいよ月日の流れるのは、まっこと早い!皆様もおりにふれて感じる事があるかと思うがです。自分も今日の日付をカレンダーで確認して、つくづく思いよります。


ちょうど今月9月6日、7日に今年で第8回目となる高知e商人養成塾9月合宿を開催させていただいちょりました。今年も北海道から九州まで110名近い志を同じくする皆様が集い、基調講演の西川りゅうじん先生はじめ、全国から素晴らしい講師の方々にご登壇いただき、熱い2日間を過ごしてもろうたがですが、あれから早くも2週間近くも経つがやにゃあ。これは、うかうかしよったら今年も暮れになってしますぜよ。


タオルソムリエ寺田さん


合宿に集まられるのは、それぞれの専門分野を持たれ、その世界に自分達の商人としての進む道をかけて、ずっと長い間トップランナーとして突き進まれている尊敬すべき方が多いがですが、そんな参加者のお一人にタオルソムリエの寺田さんがおられます。


寺田さんは「タオルはまかせたろドットコム」を運営されよります。滋賀県から来られちょりますが四国には今治という日本に誇るタオル生産地があり、その地のタオルを扱われちゅう事でも非常に親近感のある方ながですが、この方はいつお会いしても、その時、その時の、こだわりのタオルを持たれちゅう、まっことタオルソムリエの名前に恥じない方ながです。


その方が、ふと見ると、竹虎のロゴマークの入ったタオルをされちょります。しかも、自分達の使うプリントとは違い、しっかりした刺繍ぞね!なんと自分にプレゼントしてくれるために、わざわざ製作して高知までお持ちいただいたとの事やったがです。


第8回高知e商人9月合宿で竹虎四代目


実は何を隠そう、自分は高知県一タオルが似合う男と自負しちょります!「タオル似合い選手権」とか大会はありませんろうか?もしあったら、かなり自信あるがやけんどにゃあ。いつもタオルを首に巻いちゅうのを見て、今回は、このような素晴らしいタオルを用意してくれたがですろう。


けんど、さすが専門職と唸るのは、このタオルが、そんなに上質なものではない事。仕事場で頭に巻く、汗をふく、顔を洗う。どうこうしたら、その辺りや服についた竹屑をササッとはたく等、竹屋で自分達がいつも持つのは薄く、軽い使い慣れたタオル。何でもかんでも厚く肌触りのよいフワフワタオルばかりが良いワケでは無いがぜよ。


こんな機微ある、プロフェッショナルが集う場を、高知の田舎にこしらえてくれたのが、京都でオリジナルTシャツを売り続けるイージー岸本塾長。大恩ある方のご恩の恩送りが今年こそ少しでも出来たろうか?いやいや、全然やったちや。だから、また来年も開催するがです。2015年9月5日(土)、6日(日)熱い南国高知でお待ちしちょります。



ため息、竹肌

米とぎざる


竹を長く使う楽しみの一つに経年変化があるがです。両手に持っているのは米研ぎざるですぞね。お米を研ぐのに昔からずっと使われてきた台所の竹籠の一つぜよ。今では金属製のものなどもあって、使われる方も少なくなっちょりますが竹で研ぐお米が一番美味しい。そう、ご愛用の皆様は言うていただきよります。


右手に持つ青々としたものが編み上がったばかりのモノ。左に持つ茶色の竹ざるは竹の種類が違うワケでも、作り方が違うワケでもないがです。同じ米研ぎざるを使っているうちに、このような色合いに変わってくるがぞね。


竹の経年変化


経年変化と一言で呼ばれますけんど、ただの変化というより「進化」ながです。使う事によって手に馴染み、色合いが落ち着き飴色に変わってくる。ますます好きな竹になってくるのは、まっこと使う楽しみぜよ。


香り立つような清々しい色合いの竹ざるから、落ち着いた風格ある色合いに成長する竹。竹の繊維が繊細な模様のように走る竹肌には、まっこと時間を忘れて魅入ってしまうほどながです。決して美しいものを作るとか、誰かに見てもらうために生まれたものではないですけんど、これこそ「用の美」、竹の素晴らしさのほんの一面ながですぞね。


佐渡の竹人形

竹人形


竹というのは木でも草でもないと言われます。似ていながら、どちらの属性にも入らない。木や草の常識では計り知れない神秘的な力を持ったものが竹ながぜよ。何度かお話させていただいた事もあるかと思いますが、土中にある竹根から稈、枝、竹葉にいたるまで活用する事ができ、衣食住全てで人様のお役に立ちゆう素材など、そうそうあるものではないと思うがです。それだけに古来、人の近くにあって親しまれちょります。


竹人形は福井にもありますが徳島の阿波踊り人形も有名ですぞね。阿波踊り人形は竹の性質、竹の細やかな節の部分や枝の形など、竹を熟知された方が長い試行錯誤の末に完成させたすばらしい作品だと思うがですが、この佐渡の竹人形もただものではないと言うのがビシビシ伝わりますぜよ。


丸い竹の曲線を活かして切り取り、踊り子の柔らかい手の仕草や足の運びを表すあたりは、まるで、佐渡おけさが聞こえてきそうですちや。両手の手の平をよくご覧いただきますと、これは細い竹節を巧く使うちゅう。出来上がった竹人形を見て真似る事は容易ですけんど、竹でこの人の動きをこれだけ生き生きと創り出す技には、大変な努力と長い時間とがかかった事やと頭が下がります。


人にずっと寄り添うてあった竹だからこそ生まれたもの、竹人形もその一つやと思うがです。


竹ヒシギの花籠

竹ヒシギ花籠


緻密な編み込みの竹細工や見た事もないフォルムの竹工芸には、思わず声をあげられる方もおられる程です。一本の竹が思いもしないような形に姿を変えて、そこに居るのはサプライズであり、ショッキングでもあるかも知れませんぞね。


丸い竹を割って平らに叩きのばした加工をヒシギと言いますけんど、このヒシギの花籠はどうですろうか?節の形からして、そんなに大きな竹ではありません。平らにした竹を縦にシンプルに並べちょります。簡単では無いですが、このような一見そのように見える造形ほど、作り手のセンスが裸にされるようで、なかなか難しいように思うがです。


ずっと見よったら、今日の木漏れ日の中に笑い声がする。自分が入社したての頃に虎竹のヒシギを叩いてくれる。内職のおばちゃんたちが7人も8人もおって、その職人さん達には色々と教えてもろうたちや。昔の事を知らず知らず思い出しちょりました。


竹節の表情をそのまま残し、自然な竹林を部屋の中に持ってこられるような竹籠。だからこその存在感は作り手の思いも強いがですろう。とにかく懐かしい思いをさせてもらえた事に感謝ながです。


敬老の日に

竹の先人


竹の世界に限ったことではないかも知れませんけんど、手仕事というのは職人さんの高齢化によって少なくなりつつあるがです。それは作り手だけでなく、作り手の周りでずっと職人さんを支えてきた、例えば材料を担当する方、職人さんの使う道具を作る方など、意外と見過ごされがちな事でもありますけんど、モノ作りの長い一本のラインがあるとしたら、その中がまるで歯抜けのように一つ、又一つと無くなりつつあって、出来なくなったりあるいは効率が悪くなって、今までのように数量が揃わなくなったりしゆうがです。


いざ、そういう状態になって改めて、竹という自然素材を何人もの人の手を経て、その方々のお陰で、製品として人様の手にお届けできていたがやにゃあと思うがです。


ボクは、竹と聞いたらどんな苦労をいとわず千里を駆けて行った。祖父のようになりたいと、いつも思いよります。「虎は千里を駆けて千里を還る」などと言われます。だから「竹虎」という社名ではありませんぜよ...。ただ、自分は田舎者で何の取り柄もないですきに、せめて竹で誰かの笑顔が作りたいがです。


そう思いよったら、竹は知れば知るほど面白く、何ちゃあ知らない事ばっかりながです。いつもビックリするような事を教えてくれたり、満面の笑みになる竹の事を話してくれるがは竹の先輩たち。時には何度も聞き返さないと分からないようなお国言葉で、時には子供や孫に言い聞かせるように話してくれる一つ一つが宝物。そして、それらを自分が全部背負うて行こうと思いゆう。初代から二代、三代、と竹虎が宿命づけられちゅう道ですろう。


さて、今日は敬老の日ぜよ。全国の竹にかかわる全ての敬愛する皆様に、ずっと、ずっと、ずっと、元気でおって欲しいがぜよ。


愛おしゅうなる米研ぎザル

米研ぎざる


米研ぎザルを使うと楽しいですぞね、お米をサクサクと洗いますけんど、やはり竹ひごの米あたりがエイがですろうか?ご飯が美味しく炊けると言うてくれる方が多いがです。


まあ味の事は人それぞれですけんど、竹籠が台所に一つでもあるというのが心が豊かになる気がしますちや。おばあさんや曾ばあさんの時代には、台所の水回りには竹がいっぱいやったがぜよ。高知の「お客」と言われる隣近所、地域の宴席でもおばちゃんたちが沢山集まってワイワイガヤガヤ。にぎやかな台所仕事の中心には、いつも竹があったぜよ。


だからやろうか?台所はキッチンと呼ばれるようになって、明るく清潔で快適になっちょりますけんど、ここにも竹籠の居場所はあるがですぞね。もちろん、竹は自然素材ですきにプラスチックのような扱いは出来ません。洗って、水を切って、拭き取って、風通しのよい所で十分乾燥させる。手入れを、ちゃんとしていないとカビは生えるし虫も食うこともある。けんど、それが自然という事ですろう。


米研ぎザル


ずっと日本の暮らしに寄り添うて来た竹。今までちっくと忘れられちょって、最近また思い出してくれだした。そんな竹のある暮らしだから自分達は、しっかりその竹の使い方や、付き合い方を皆様に思い出していただかんとイカンぞね。ちっくと手間もかかるけんど、そんな、ちょっとの面倒を楽しめる心がこれから必要とされちょりませんか?長く付きあう竹は、こじゃんと(とても)エイですぞね。色合いが深まり、手放せなくなってくる。他の台所用品で、こんなに愛おしゅうなるもの、何かお持ちですろうか?日本の竹の底力、素晴らしいがぜよ。



竹と火と

力竹


竹細工と火は切っても切れない関係ながです。虎竹の里の製竹作業では竹の油抜きという加工時に、ガスバーナーのゴーゴーと音をたてるほどの強い火力で竹を熱し、余計な油分を拭き取るという事をしゆうがです。


ボヤ炭


その一方で、とても小さく弱い炎で作業される竹細工もありますぞね。野菜籠を編む熟練職人の工房でもボヤ炭と呼ぶ。風呂焚きの後にできる炭を隣近所の民家からもらってきて使いよります。野菜籠には極太の力竹が縦横に使われちょりますが、この力竹を直角に曲げる際にボヤ炭のやさしい火力が欠かせんがです。


職人


「一人でボツボツと仕事するには、ちょうどの炎だよ」


職人さんは笑って教えてくれるがです。


箱形をした野菜籠は、かっては品物の運搬用として、全国各地で作られよった竹製品のひとつぜよ。今でも自転車の荷台に、このような角籠をくくりつけて走りゆうのを、ごくごくたまに見かける事がありますけんど、ご存じありませんろうか?実は普通の暮らしの中にあった籠ながですぞね。


野菜かご


底編みは角い形をしよりますが、立ち上げて編んでいく過程では角が出来ちゅうわけではありません。丸みをおびた楕円形の竹籠のような形ながです。それが、このボヤ炭の炎でL字型にしつらえたガッチリした竹枠をはめると、見事に箱形の丈夫な野菜籠ができあがるがぜよ。


大きな御用カゴ


おっと、ここには最近では見かける事のない、大きなサイズの籠がありますぞね。これには一体何を入れるがやろうか?普通のご家庭ではあまり使われることのない大きさですけんど、実はプロ仕様としてあまり目立つことはないものの、
各地で使われたりしゆうがです。これだけ新しい素材や便利なものが色々ある中でも、ずっと愛用されるにはそれなりの深い理由があるがですろう。


そう言うたら、いつの事やったろうか?竹籠を編むときの切れっ端や不要な竹を、桁違いに大きな角籠に放りいれゆう職人さんに会うた事があるがです。何本も何本も、しつこいほど入れられちゅう力竹。それも、そのはず、大人が四人がかりで四隅を持って運ぶようなサイズ。ボロボロになって穴だらけになっても、愛着があるのかずっと使いつづけられよりました。今の時代で言うたらコンテナのような物やったろうかにゃあ...。


ああ、又そんな強者達が活躍しよった。古い時代に帰りたくなってきたぜよ。


蕎麦振り

蕎麦振り力竹


饂飩か蕎麦かと尋ねられたら、まず間違いない饂飩ぜよ。余程の名店であるとか美味しいと聞くお蕎麦屋さんならいざ知らず、普通にお蕎麦屋さんに入るという事はほとんどないがです。まあ、それくらいの饂飩派ではあるがですが、饂飩にせよ、お蕎麦にせよ、茹でてから水切りという工程が必ずあります。そして、そこに登場しますのが水切り用の竹籠ぞね。


饂飩ふり、蕎麦ふりとか呼ばれよりますけんど、柄のついた物を目にする事が多かったですが、実際、最近お会いさせて頂いた蕎麦職人さんなどにお話を聞くと、蕎麦ふりをそのまま直接手に持って水切りするので、柄の必要はないと言われる方も多いがです。


蕎麦振り


けんど、この蕎麦振りには圧倒されましたぜよ。幅の広い力竹の迫力と言うたらないがやきに!この力強い極太竹が十文字になっちょって竹籠をしっかり支えちゅう。更にその上を籐でクロスさせて留められちゅう。これなら毎日、毎日忙しいお蕎麦屋さんでも十分耐久性があるがですろうにゃあ。恐らく、こんな竹編みの細かさを全く考えていないような力竹は、最初から入っていたワケではないかと思うがです。蕎麦職人さんも仕事場で手際よく、力いっぱい働いちょりますので、そんな現場で鍛えられているうちに、竹編みの作りや力竹は自然と進化してきたのかも知れませんちや。


竹の蕎麦振りを使うと、蕎麦自体にキズが付かないと教えてくれました。同じような水切りは金属などでもあるけれど、自分が丹精込めて打つ蕎麦を少しでも見栄え良く、何より美味しく頂いてもらうためには、やっぱり竹ながぜよ。ずっと使いつづけられゆうのには理由があるがです。


スクリーンの中の竹林

孟宗竹


学生の頃はすぐ近くの駅前に安い映画館があったがです。数百円という格安料金で少し前の映画を2~3本鑑賞できるとあって、映画好きの自分としては、まっこと嬉しかったですちや。3本立て続けに観る時には映画館に一日中おったりもしてましたけんど、あの頃に比べたら今はレンタルも沢山ありますし、ほとんど映画館に足を運ぶ事も少なくなりましたちや。


けんど、実は密かにずっと楽しみにしちょった映画があるがですぞね。ある映画の、あるシーンで...と言うたら「ある」ばっかりですけんど、それ以上はお話する事は、まだ出来ませんろう。


ただ、そのシーンには竹林が出てくるそうながです。孟宗竹の竹林ですが、孟宗竹は細かいうぶ毛があって、生えたばかりの竹はそうでもないのですが、古い竹になるにつれ、竹表皮に汚れが付く事があるのです。普通なら別段どうという事もないのですが、さすがに映画となると見栄えが問われますので、この竹たちの汚れを落として撮影に備えるのだと聞きましたぞね。


映画館に足が遠のいちょりますが、この竹林だけは自宅のテレビではいきません。それでなくとも広々とした美しい竹林ですが、そこが更に綺麗になっちゅうとしたら、あの竹たちの晴れ舞台は見逃せませんぜよ。どうしたち大きなスクリーンで拝見したいと思うちゅうがです。


簀(す)と呼ばれる醤油漉し

簀(す)醤油漉し


普通なら見過ごしてしまう事もありますろう。ただの竹編みの円柱形の筒ながです。どうしても見過ごしては行けないのは又いつもの通りぜよ。


「ちょっと、おまん、ワシの事を知っちょうかえ?」


竹が話しかけてくる。足が止まる、そこで初めて知ったのが簀(す)と呼ばれる醤油漉しぞね。


そもそも、醤油造りは木製の樽に大豆や大麦などを蒸して入れちょいて、発酵させるものですが、そのドロリとした諸味の中にこの簀(す)を縦に沈めます。するとこの竹編みが醤油漉しの役割をして、中には澄んだ醤油が染み出してくるという仕組みながです。竹製のタガを使うちょりましたので、醤油が大きな樽で作られゆう事は知っちょりましたが、詳しい事など何ちゃあ知りませんでした。日本酒みたいに樽のどこかに穴でもあって、そこを開いたら勝手に流れてくるくらいに思うちょったがです。


まっこと、昔ながらの醤油造りを知らんと、竹細工の事も本当の意味で知る事にはならんがやにゃあ。もう何年か前の事ですけんど、つくづく思うたがです。この簀には、いくつか大きさがありましたので、醤油屋さんだけで使われちょったという竹製品ではないですろう。今と違うて醤油や味噌を自家製で作る時代には、それぞれのご家庭用にあわせて職人さんが編まれたと思うがです。かつては、まるでオーダーでスーツを作るように、背負い籠も使われる方の肩幅に合わせてその人専用に竹職人さんが誂えたという時代もあったがです。それだけ竹と人が密接な関係にあり、仕事や生活の中で無くてはならない必需品とされちょったいう事です。


そうそう、そんな話しをしよりましたら、更にそれより数年さかのぼって塩取りかごが職人さんのお家の軒下に吊されちょった事も思いだしましたぜよ。


現代の日本なら塩に不自由する事は、あまり考えられませんけんど、交通の不便やった当時、特に山深い地域では手にいれる事も大変で、相当な貴重品やったと想像できるがです。水分を多く含んだ精製されていない海の塩を漉すための籠、このような暮らしぶりを知らんかったら一体何の為のもので、どうしてこんな形をしているのか、ちっくと分かりかねますぜよ。けんど、使い道を聞いたらまっこと納得しますぞね。日本の暮らしの中には常に竹があったがです。


その後のインターンシップ2014

竹虎本店前


今年のインターンシップは例年に比べて学生の数が倍近くと言う事で、受け入れの打ち合わせでは社内でも色々と心配する声もあったがですが、いさ開始してみたら自分がまったく関わることもなく、無事に終了することができたがです。


須崎市のゆるキャラ、しんじょう君も応援に来て頂いたり、止みそうもない雨が上がって竹林見学に行けたりと、幸運にも恵まれながら盛りだくさんの2週間でしたけんど、社員一人一人が毎年のインターンシップを通して、知らず知らずのうちに経験値を上げてくれちゅうようですぞね。たくましくなっているのは学生さん達のお陰ぜよ。まっこと感謝せんとイカンです、ありがとうございます!


特に今年はインターンシップが終了した後に、会社をわざわざ訪問してくれた学生さんもおられますし、心のこもった、お礼の手紙を送ってくれた学生さんもおりました。そんな事が重なったものですきに、ちっくと嬉しゅうになってきて
早くもホームページの募集フォームを来年用に書き換えましたぞね。


インターンシップ2014


まあ、今から応募の方などおられるワケはありませんが、それはそれとして、学生さんの気付き以上に自分達が、竹虎の社員や職人が、そして内職さんや山の職人さんまでもが、気付きや学びが多かったと話すインターンシップを振り返ってみたら、印象に残るのはやはり初日の竹林見学と最後の日のプレゼンですにゃあ。


後半の1週間では学生さんたちは2チームに分かれて、それぞれのチームで協力するし、相手チームと競い合う。そんな事もしてもろうて大変であったかと思いますが、もしかしたら、それが産みの苦しみやったかも知れませんちや。だからこそ、大きな成果が最後に出来上がったと思うちょります。


インターンシップ昼食


自分達のやってきた本社研修を今度は他の誰かに伝えるとなると、今までお客様目線でしか見ていなかったサイトを、今度は見せる側になって考えるという初めての体験をするがです。どんな伝え方をしたら分りやすいか?自分達が何を言いたいのか?誰に届けたいのか?少しでも良いページにするために毎日考えては話し合い、構成を作り込んでいく作業は思うたより難しいものです。


けんど、そんな後半戦にも、みんなで揃うてのランチタイムがこじゃんと楽しくリラックスできた時間やったと、一人の学生さんが言うてくれよりましたにゃあ。


大事な夏休みを使うただけの収穫はありましたろうか?竹虎のインターンシップ2014のページが出来ましたぜよ。


磨き細工の香り

磨きの竹細工


日本唯一の虎竹は淡竹(はちく)と言う竹の仲間ぜよ。一方、青々とした竹は真竹と言う竹の種類ながです。虎竹は表皮の虎模様が命ですので表皮を削るような事は絶対しませんが、青竹は表皮の薄い部分を削る細工があるがです。これを「磨き」などと言うがですが、この磨き加工をした真竹細工の清々しさは何とも言えんがです。


ガラガラ...と職人さん工房のドアを開けたら、この青竹の表皮を磨く爽やかな香りがプワ~と飛び出してきますぜよ。まっこと、こんな気持ちのエイ香りに触れよったら、下手なアロマオイルとか、まっこと必要ありませんぞね。海外の高級な香水なども確かに素晴らしいがやろうけんど、その土地で育つ竹を、その土地の職人が昔ながらの仕事で醸し出しゆう香りやきに、自分などにしたら、ちっくと比べものにはならんがです。


竹ひご


磨きをかけた竹ヒゴを何本も何本も、天井も部屋の奥の方も見えなくなるくらい掛けちょります。これから、この竹ヒゴを使うて色々な籠を編んでいくがですろう。そう思うたら職人さんの、やる気を感じて嬉しゅうになってくるぜよ。


けんど、それにしたち、この竹の光沢...惚れ惚れする。虎竹の模様もエイけんど、磨きもエイ。青さが抜けて、色合いが段々と変わってくるところも、この竹細工の大きな魅力のひとつながです。


黒光り、背負い籠

古い背負い籠


秋は山菜の季節という事で竹の背負い籠が気になってくるがです。竹は不思議なもので、堅牢にあまれて硬そうに見えるものでも、背中当たりはそれ程でもなく、そして軽く、通気性も良いので、今でもずっと愛用されている竹細工の一つながぜよ。


背負い籠と言うたら忘れる事のできない籠がひとつあって、それは長い間竹に向き合われてきた職人さんが、ずっと若い頃に編み上げたと言われていた竹籠ながです。


竹籠の色合いは飴色を通り越して黒光りしよります。着物の生地か何かを縫って付けられちょった背負い紐もボロボロでしたが、職人さんは、こじゃんと大事にされよりました。籠の中には大事な思い出が入っちゅうがですろう。どんな熟練の手練れでも、美しい竹編みでも、絶対に敵わないのが時間職人。竹自身が長い時を経てこそ輝く存在感には勝てないがです。自分も歳を重ねていったら、いつかはこんな渋い竹籠を身近に置けるろうか?沢山の竹に囲まれてちゅう中で見回しながら思うがです。


竹壁のお店

竹の壁


前に教えて頂いたお店は都会の真ん中にありましたけんど、壁という壁全てを竹編みで設えちょってまっこと心落ち着く静かな空間やったがです。それぞれの壁の仕切りで編み方を違えちゅうあたりが、心憎い技が入っちょりますぜよ。編み目の違いで外に漏れてくる光の見え方に変化があって面白いがです。若い方などがこのお店にこられたら、もしかしたら竹と知らなくても何か心静まる思いをされるのではないろうか?飾らない自然そのままの竹ヒゴの風合いに温もりを感じて、出していただく食事が何倍も美味しく感じることもあるかも知れませんぞね。


けんど、実は日本人はもともとこのような家に暮らしよったのです。初めて来店されたお客様の中にも、懐かしさや今まで知らなかったな心地良さに、つい長居をしたくなる気持ちになってくるような方がおられるとしたら、それはDNAではないかと思うがです。


もともと、このような家やったと言うてもちっくと語弊がありますぞね。日本の家は土壁が主だったがですが、その土壁の中には、このような竹編みの芯が入っていたのです。自分の小さい頃には、高知でもこのような昔ながらの家があって、建築中のお家に行くと壁はすべてこのような竹格子やったぜよ。そうそう、だからそのような新築の現場に通りかかると、竹を細くわった束が沢山積まれちょったりしたものです。


もちろん、こんなに竹編みが細かかったり、編み方にバリエーションがあったワケではありません。けんど、この壁はかっての日本の暮らしそのもの。何度見ても、ひとつも飽きないのは、きっとそのせいですろうか。


エメラルドの輝き!?水羊羹用の竹

青竹


高知ではあまり行く事がありませんけんど、県外に行くと大きなデパートがあって、その地下にはいわゆる「デパ地下」そう呼ばれる食の最前線?のような食いしん坊の自分などには、見て回るだけでも楽しくなる売り場があるがです。


デパ地下も色々あるので少しでも特色をだそうと、それぞれのデパートや店舗が頑張って新しい商品や提案の仕方をされよります。田舎者の自分などは、あの彩りの中で目移りしすぎて結局何一つ買うことができない事がほとんどながですが、この夏、あまりの暑さとふと目にとまった青竹の心地よさに、つい手に取った水羊羹がありますぞね。今まで何度も見かけたのに、どうして今度だけ...不思議に思いよりましたが、後から、なるほど、こういう巡りあわせかと納得する日が来ました。


たまたま、この羊羹竹を作られている職人さんに出会うたがです。他県から虎竹の里に来られて、虎竹を見て驚くのと同じで、青々とした真竹の少ない高知からしたら、この竹の青さと、節間の伸び、太さの揃った竹には思わず吸い寄せられるようやったがぜよ。


山砂


作業場の奧ばったところに立てかけて置かれちゅうのに、まるでエメラルドのように輝いて見えるがちや。美しい...そう言うて撫でまわしよりましたら、この竹を羊羹竹として出荷されるまでを説明してくれたがです。


若竹を使うちょりますが、それでも自然の汚れなどがある竹ぜよ、山砂を使うて綺麗に磨くように洗っているがです。砂と聞いて最初はそれだと竹表皮にキズが付くのでは?そう思いましたけんど、この砂を拝見させていただいてビックリ。砂浜にあるような砂ではなく、これは磨き粉やにゃあ。とにかく細やかな粒ながです。


この粉で洗って綺麗になったものだけが和菓子屋さんに送られ、自分がデパ地下で買うたようにお客様の目を楽しませ、涼味をお届けしゆうがぞね。そう思うたら青竹に入った水羊羹は値打ちがありますちや。今度食べたら何倍も、何十倍も美味しく感じそやにゃあ。


竹芸家、本間秀昭さん

竹芸家本間秀昭さん


新潟県佐渡島と言えば歴史の教科書などでは、金山や銀山で有名であったり、最近ではトキの話題で、その地名を聞く事があるかと思うがです。けんど実は佐渡には竹が多く、厳しい寒さからか、こじゃんと硬く、品質の良い竹があるという事で知られる土地柄でもあるがです。竹芸家の本間秀昭さんは、そんな素材に恵まれた佐渡に工房をかまえ、主にアメリカなど海外向けの作品を創作続ける若手のお一人ながです。


本間秀昭さん作品


本で何度か拝見した事のある個性的な作風を目の前にすると、やはり気持ちを抑える事ができず思わず近寄って魅入ってしまいますぞね。やっぱり本物を見ないと何ちゃあ分からんにゃあ。日本海の海も佐渡の岩を砕くような激しい波も、こうやって海を渡って来て現地で拝見したら格別ちや。本間さんの作品は斬新なラインが独特の世界観を醸し出しちょりますが、さらに素晴らしいと思う所は、この佐渡というご自分達の暮らす地域を竹で表現しちゅうところやうろか。まっこと、この島への深い愛情が伝わってきますぜよ。


竹の波


しかも、これは作品のモチーフだけではありませんぞね。佐渡特有と言われるメンヤ竹は春先に生えた竹をその秋に伐って、そのまま一年竹を細工に加工できるという珍しい竹ですけんど、節が低く、こじゃんと柔らかいという特徴があるがです。本間さんの作品には、この竹も多用されちょります。その地域ならではの竹も使いながら、そこで創作を続ける事は、まっこと意義深い事ではないですろうか。


本間秀昭さんデッサン


デッサン画を何冊も見せていただきましたが、いくつも描かれちゅう曲線は、知らず知らずに感じてこられた海や波や風かも知れませんにゃあ。けんど、頭で思われた事を絵にして、更に竹という容易ならざる素材を使うて造形するという事は、誰にでも出来ることではありませんぞね。ダイナミックな曲線が美しい作品が並ぶギャラリーで、まっこと感じ入ってしまうがです。


太陽のなかった8月

安和海岸


さて、いよいよ今日から9月ですぞね。という事は今年も残すところ後、3分の1となっちゅうがぜよ。まっこと早い、年初に立てた目標も何一つ出来てないのに。これは、ちっくとこれから焦らんとイカンちや。そんな事を思いゆう朝ですけんど、それにしても、先月の8月は驚くほど雨が多かったです。太陽がカンカン照って、ジリジリと肌が焼けそうなのが、南国高知の暑うてたまらん夏やのに、今年の8月は一日中太陽があった日が無かった言うので、改めて、いつもの年との違いを思いよりますぞね。


日照時間の少なさが山の竹に何か影響はないがですか?


昨日、そんな質問をいただきましたけんど、スーパーでも野菜の品不足やったりしたら同じ植物なので、竹も大変やろうと思われる事は自然なことですろう。お陰様で今のところ虎竹の里の山々に目立った異常はありませんけんど、このような気象の影響いうものは来年とか、その次の年とか、長いスパンで見ていかないといけないものながです。


湯抜き作業


それより、この湿度の多さが、さすがに堪えちゅうのは、青竹踏みなど青竹そのままを加工している竹製品たちながです。皆様の中には青竹踏みなど竹を伐ってきて半割にしたら出来上がる。こじゃんと簡単で効率のエイものやと思われちょりませんろうか?そんな方は是非こちらのページで青竹踏みの製造工程をご覧ください。青竹踏みが意外に手間のかかる色々な工程があり、こんな小さな竹商品ひとつにも、それぞれの職人の竹への真面目な手仕事が凝縮されちゅう事がお分かりいただけるのではないかと思うがです。


乾燥させ、湯抜きなどの手間もかけて、清々しい色目の青竹踏みに完成していくがですが、これが、この夏のように普段の何倍も湿気が多いと竹に残ったわずかな湿気にもカビが生えてしまうがです。


「私にとってはシンデレラのガラスの靴。」


そう、お客様に言うて頂く事もある青竹踏みです。常に全国の皆様に一日でも早くお届けするのが自分達の使命でもありますが、カビのため乾燥に時間をかけたり、メンテナンスしたりで、製造が間に合わず何日か販売を止めさせて頂いたりもしていたウラには、例年にない長雨の影響があったがです。


高知の太陽はいつもは元気で明るく、カラリとしちょります。先月は、ちっくと調子が悪かったようですが、9月からは頑張ってもらいたいものですちや。自然素材の竹を使うて商いをさせていただく竹虎は、大自然の恩恵をいっぱい受けて仕事させてもらいよります。この自然の中で生かされ、活かされちゅう事を改めて感じますぜよ。