価値あり、シンプルな美しさ

足付き台所籠


「青物」と言われる竹細工は、安価な海外からの製品が輸入されるようになったり、プラスチック製品などの普及がすすむと共に、急速に国産のものが作られなくなってきた竹の一つながです。


日本では竹が生活の隅々にまで浸透していて、あらゆる場面に竹がありました。それだけに、この青物細工のように実用的な竹編みは、大量に生産される産地としては、ちもろんあったものの、農家の方が自分で作られよった竹細工なども含めると、それこそ全国各地で何処ででも見る事のできた竹製品と言うてもエイがです。


菊底編み


それぞれの土地で、身近にあった竹を使うて作る生活の道具。竹の表皮を薄く剥いで編まれた竹籠は素朴で温もりがあり大好きな竹。竹表皮を剥ぐ事を「磨き」などと呼びますが、長い長い日本人の暮らし中で本当に磨かれて来たものは、間違いなく、この竹籠達自身ですろう。少しでも効率よく材料と時間を使い、丈夫で耐久性のあるものを作ろうと使い続けられた歴史の中で自然とよりよい竹編みとなり、これ以上足す事も、引く事もないような、伝統の籠としてシンプルな美しさを極めちゅうがです。


古い農家さんの納屋などで見かける事のある竹籠は、使い込まれて赤褐色のような色合いになっちょります。仕事で日焼けした肌のように、たのもしくもあり、深く刻まれた職人さんの手のシワのように尊くもあるがです。


磨きの竹籠


足付き台所籠としてご紹介させて頂く竹籠も、昔から良くご覧になられる菊の花のような形に見える菊底編みの、ごくごく普通の竹籠であり、何ら珍しいものではないかと思われるかと思います。運良く見かける事があったとしても、そのまま通り過ぎてしまう方が多いかも知れませんぞね。


けんど、竹ヒゴの取り方、編み方全てにおいて丁寧な仕事に徹したモノ作りの空洞化がどんどん進んできた日本では、もうこんな竹籠には、この先お目に掛かる事は少ないろう。もしかしたら寂しいけれど最後になるかも知れない、そう思わせるような本当に価値のある竹でもあるがです。


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