竹縄、竹を磨くのも竹 その2

竹縄コスリ


屋根裏に保管しておいた小割の竹(サッパ)を降ろして竹縄作りが始まるのは、秋の収穫が終わった頃から。次の年の春まで農閑期の大事な現金収入であったようです。竹シテ場と呼ばれる小川の水をせき止めて作られた水溜まりに小割竹を暖かい時期なら4~5日、冬場なら1週間程度漬け込み竹を柔らかくしていくのです。


柔らかくした竹の表皮を剥ぎ、次いで肉厚0.5ミリ程度に剥いでいきます。淡竹(ハチク)など比較的身の薄い竹は6枚くらい、肉厚の真竹だったりすると1枚の竹から12枚程度も取ることができると言いますので大変な技術です。そして、この薄く剥いだ竹を縒りながら長くつないでいく、更に3本縒りにして太い紐に仕上げていきます。竹繊維の粘りや切れにくさを日頃から知っているだけに製造工程を詳しく映し出している映像を見ながら、これなら強いはずだと思わず唸ってしまいます。


竹縄は室内での使用だと40年、50年と耐久性があったと言いますが、水にも強い竹の本領が発揮されたのは、井戸の釣瓶縄など水回りだったかも知れません。興味深いのは竹を半割にした足洗い下駄が登場していた事です。


時代劇などを観ていると宿場に到着した旅人が腰をおろして、まずすることが足を洗っています。靴で歩いていますと、あまり感じ無いのですが、鼻緒の履き物で歩いていますと雨ふりなどは特に足が汚れる事があります。未舗装の道路の当時なら尚更の事、一日歩いたら足は真っ黒ではなかったかと思います。そこで足洗い下駄なるものがあったようですが、ここでは半割竹の下駄に鼻緒は、この竹縄を付けていたのです。この竹下駄には感動しましたぜよ、竹に竹の鼻緒、こんな水に強い最強タッグはないからです。


竹縄の強さと信頼性の証となるエピソードがひとつ紹介されちょりました。お祭りの山車の土台の結束にも必ず竹縄が使われていたそうですが、山車の公道の通行許可を当時の警察が出す場合にも「結束は竹縄でされている事」が通行許可がおりる条件項目となっていたそうです。


このように強い竹縄は、これが竹であると言われないと分からないような惚れ惚れとする美しさぞね。ところが、この美しさの秘密はやはり竹にあるのです。できあがった竹縄は「コスリ」をして縄目を綺麗につぶしていますが、この時に使うものは粗く編まれた竹。


人が人の中でしか磨かれないように、竹も竹で磨いてこそ輝きだすのです。


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