雲の上の町、梼原と手漉き和紙作家のRogier Uitenboogaart( ロギール アウテンボーガルト)さん

手漉き和紙作家のRogier Uitenboogaart( ロギール アウテンボーガルト)さん


高知県には梼原町という山に囲まれた町があるのです。この町に自分が興味を覚えたのは実はかなり古くて小学生の時なのです。位置的には、虎竹の里から東にひと山越したところを流れる新庄川を上流に上って行ったところにあり、今なら車で一時間程度なのでそう遠い町でもありませんが、当時はあまり訪れたことありませんでした。


それなのに町名を知っていたのは、当時の担任の先生から「辞職峠」という少し穏やかでない話しを聞いていたのが最初です。転勤になった方が梼原までの行く道があまりにも曲がりくねって遠いので、とうとうある峠まで来たら職を諦めてしまうほどなので「辞職峠」と呼ばれると話していたのを覚えています。なので子供心にも、一体梼原とはどんな山奥なのだろうか?と思っていたのです。


ところが、この認識は中学、高校、大学と地元を離れていて社会人となって帰ってきてすぐに一変します。これは凄いと思い始めたのは「雲の上のホテル」という高知では見た事もないような斬新なホテルが建てられた頃からぜよ。設計を担当された建築家の隈研吾さんの名前も存じ上げていませんでしたが、たまたま雲の上のホテルさんのロビーに吊るされることになった大きな竹照明を製作させていただいてました。それをご縁に、その後も何度かお伺いする度に、まさに雲の上にあるような山深い町とは思えないようなモダンな建造物が建ち、環境モデル都市として中山間地域のお手本のような素晴らしい取り組みをされている事も知るようになります。


そういえば、町の人口は昔からいえば減り少子高齢化が進んでいるのは同じのようですが高知新聞では高校の生徒数が増えたと掲載されていました。そして、今年の高校野球県大会では強豪ひしめく中で何と初めて決勝戦まで勝ち抜いてきています。何やら関係のないと思われるような事を書いていますが、梼原町はそのように活気にあふれ、日々変わりつつある、目の離せない面白い町なのです。




さて、つい前置きが長くなりましたが今日お話しさせていただきたいのは、この注目すべき町梼原町にオランダから移り住んで活動されている手漉き和紙作家のRogier Uitenboogaart( ロギール アウテンボーガルト)さんです。


ロギールさんとは、もう随分前から知り会いで工房にもお伺いした事もありますが、最近は長い間ご無沙汰してました。それがこの夏にLIXILギャラリーという東京のど真ん中に創作された土佐和紙の洞窟を拝見させてもらい感動して、久しぶりにお会いさせてもらいたいなあ思っている所に連絡いただいて虎竹の里にお越しいただいたのです。


昔ながらの和紙漉きにこだわり涼しい気候、綺麗な水を求めて梼原に移住されて25年程だそうですが、現在では紙漉きだけではなく紙すき体験民宿「かみこや」を作られて和紙漉きの楽しさを伝える活動もされています。そして、驚いたのが「銀座和紙プロジェクト」ぜよ。銀座でミツバチを飼ってハチミツを作っているのは聞いたことがありますが、銀座のビルで和紙の原料の楮を育てて、その和紙を漉くなど聞いたこともありません。ロギールさんのこれからの活躍は益々楽しみなのです。


今日は竹虎にちなんで楮の一種で木肌に虎模様のできる「虎斑」の葉を持って来てくれました。竹に虎斑が入るように楮にもそのような種類があるとは知りませんでした、竹繊維も古くから紙に使われいて竹虎でも土佐市の和紙メーカーさんに虎竹和紙を漉いてもらっています。


もちろん紙に漉くと竹でも楮でも虎模様も何もでませんが、虎模様が出るような方法で強い竹和紙ができればロギールさんにお願いして作ってみたいと思っているものがあります。できるようなら来年の夏には大活躍するのですが、それは又それまでのお楽しみぞね。


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