日置箕の不思議

日置箕


不思議なのは日置の箕です。日本一の竹林面積を保有する鹿児島にあって竹でなくビワの木、かずら、桜皮を多用しています。もちろん竹も使用されますが蓬莱竹という株立ちの南方系の竹が使われているのです。


高知で「サツマ」と呼ばれる網代編みの大きな竹笊は、きっと鹿児島から伝わった技術ではないかと考えています。だから網代編みの土佐箕と同じような箕は容易に作ることができたはずの土地柄で、このような桜皮と蓬莱竹(シンニョウチク)、さらにはビワの木、カズラといった山の素材が使われる事に違和感があったのでした。


日置の箕(桜皮の箕)


実はこのようなゴザ目編みの箕は日本の北から南まで各地で見られるものです。樹皮を使った皮箕など今では何処を探しても見つけられないこの高知県でさえ、かっての山間部ではヒノキの柾目を薄く削って作られたゴザ目編みの箕がありましたので、現在のように流通が発達していない当時はその地域にある素材を活かして作られていた事を物語っています。


日本で数ある箕の中でも東北の面岸(オモギシ)箕、ニギョウ箕とも呼ばれる箕が一番美しいとも聞いています。確かに素晴らしい出来栄えです、しかし自分が挙げるとするなら断然日置箕。


箕


最盛期には50人の作り手が家族総出で製作して九州から中国地方まで売り歩いたと職人の奥様にお話しを聴いたことがあります。そして、東北は秋田のオエダラ箕作りでイタヤカエデの材料が不足したように、通常はフジカツラで作っていた日置の箕も材料が無くなり地元の方がヨマと呼ぶ蔓で代替えしていました。


当時はそれだけ需要があったという事です。まさに昨日の30年ブログでのお話しの通り、目の前のお客様に手に取ってもらいたい一心で編み上げられた美しさなのです。


日置箕


ところで、この日置の箕を良くご覧いただきますと上半分と下半分の編み込みで色合いが違うのがお分かりいただけますでしょうか?青く見える下半分の部分は蓬莱竹の表皮部分を上側に向けて編み込んでいます。上半分、つまり箕の手元近くは反対に竹ヒゴを裏返しです、こうする事によって選別する穀物類の滑りが良いように使い手の事を良く考えて工夫されているのです。


これは全国的に見られるゴザ目編み箕の細工ですが、竹表皮を使う編み幅はマチマチです。藤箕は先端部分少し、手元側に少しだけ竹表皮を使っています。その地域で生産される農産物の違いであったり、農家さんの細かい注文に対応してその都度変化したものだと思われます。




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