
豊かな自然の中の竹
常々お話している事なのですが日本というのは本当に素晴らしい国で、春夏秋冬と四季があり豊かな自然と景色が全国どこに行っても、それぞれその土地ならではの美しさを楽しむ事ができます。自分の場合にはどうしても竹に目がいってしまいますが、峠道でこのような孟宗竹の竹林に出会うと車を停めて休憩タイムです。
天気もいい、青い空に白い雲、緑に繁る竹の葉が心地よく福く風にゆらいで、まるで笑い合っているかのように思える幸せな時間です。
天狗巣病の真竹
ところが、その一方で真竹の竹林でこのような竹に出会いました。竹の葉の部分をご覧いただきますと、竹葉とは思えないような違和感のある細かい枝のような物がまとわりついているように見えます。気に留めなけば見過ごしてしまうかも知れません。しかし、いつも竹を見ている方なら一体何なのだろう?とすぐに思うはずです。実はこれが、てんぐ巣と言われる竹の病気なのです。
竹以外の植物もこの病にかかるようでホルモンバランスが崩れる事によって発生するとも聞きますけれど、「Aciculosporium take Miyake」と言う病原菌が原因だそうです。いずれにせよ近年、特に竹の手入れが行き届かなくなり竹林全体の活力が弱くなっている所で多く見かけます。
遠くからでも竹林の異変は一目瞭然です。数年前から全国的に竹の開花を目にします、そのために枯れていく竹がありますけれど、それとは又違う竹の弱り方です。てんぐ巣病の有効な対応策は無くて病気になった竹を伐採して焼却する他ありません、せいぜい予防策として日頃から健全な竹林にしておき病の竹を見つける度に取り除いていくしかありません。
竹の開花では?
しかし、この辺りの竹林はすでに手遅れで焼却するならば広範囲の竹林を皆伐せねばならないほど広がりを見せているようです。竹に関心のあるお客様から「これが、噂に聞く竹の開花では?」とお問合せ頂く事がありますが、なるほど少し竹の花に似ています。竹の開花は珍しく孟宗竹で60年、真竹や淡竹では120年に一度に起こります。開花が近づくと竹の勢いも衰えてきますので、このような病気も蔓延しがちで間違えやすいのです。
別名は蔓自然枯
天狗巣病は、別名蔓自然枯(つるじねんこ)病とも言われるそうです。今回の真竹には病が更に進行しているのでしょうか?蔓科の植物が寄生しているかのようにも見えていましたので、まさに名前の由来通り。そして「自然枯」...つまり段々と枯れていくだけなのです。
西日本最大級の孟宗竹開花と天狗巣病
こちらの動画は、当社のある須崎市のお隣、土佐市で数年前に発見した日本最大級の孟宗竹の開花です。開花した竹は全て枯れてしまいますので昔から不吉の前兆とも見られていました、一年中青々と茂って成長も早く生命力の象徴のような竹が茶色く立ち枯れてしまうので当時の人々は畏れを抱いたのだと思います。けれど、地下茎で繋がる竹林全体が枯れてしまった後は、地面に落ちた種子から新しい芽吹きあり、竹が生えてきますので言い換えれば新しい命の誕生であり再生です。
ただ、てんぐす病は広がりすぎて、若い職人の中にはこれが当たり前とさえ思っています。罹患した竹林が今後どうなっていくのか今のところ予想がつきませんが、熟練の作り手からは、竹質の変化を何度も聞く事があり、実際近年の竹製品は害虫への抵抗力が弱くなっているように感じます。そもそもは、竹を管理したり伐採する職人不足が大きな原因なので容易に解決できる事ではないのです。
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