ハエナワの思い出

 
鰻籠、竹虎四代目(山岸義浩)


昨日の30年ブログでハエナワの話がでましたので、今朝は自分が小学校の頃に独自に作って仕掛けた鰻のハエナワ漁(漁というのは全く大袈裟ですが)の事をお話しさせていただきます。ハエナワ(延縄)は横に伸びる幹縄(みきなわ)に同じ間隔で枝縄(えだなわ)を吊るし魚が食いつくのを待つ漁法です。


太平洋


こう聞きますと、もしかしたら多くの方は海での漁を思い浮かべるのではないでしょうか?猛スピードで走る漁船から次々とエサの針がついたウキを放り投げていく豪快な漁法をテレビなどでご覧になられた事があるかも知れません。マグロ漁の場合には何と長さが100キロを超えるような長さのものもるようですけれど、川で鰻をとるハエナワは、もちろんこのように大規模な仕掛けではありません。


網代編み竹舟


特に自分の作ったハエナワは、シャンプーの空ボトルを二本用意してその間をテングスでつなぎ幹縄とし、3~4本程度の枝縄を吊るしたものでした。先輩に聞きながら適当に手作りしましたがエサは近くの新荘川で投網漁を趣味にしていた父親が冷凍庫に大量に保存していた鮎でした。


元々は竹編みのを仕掛けて毎朝のように川に通っていましたけれど初めてハエナワにチャレンジした日はいつもより早く起きて、まだ誰もいないピンの張りつめたような空気感の川原に来ました。辺りは静まりかえっていて川の流れの音が心地良かったのを覚えています、そして健康な川の流れというのは良い香りがします、胸いっぱい吸い込むのが好きでした。


美しい川


いのいちばんにハエナワを仕掛けた場所に急ぐと、何とウキ代わりに使っていたシャンプーのボトルが見当たらないのです。これはっ...!?下流の方に流されてしまったのか?鰻がかかって何処かに引っ張って行かれたか?辺り見回すと川草の茂る小さな中州でガサゴソと動いているものがあります。近寄って行くと草の間から黒っぽい鳥が飛び出してきました。


虎竹の里


ところがバタバタと激しく羽ばたきするだけで遠くへ逃げられません、シャンプーの空ボトルが川草に絡んでいるのでした。この鳥は鰻を捕るための鮎を飲み込んでしまいハエナワにかかってしまっていたのです。テングスを手繰り寄せ、口をのぞき込みましたが針を外すこともできず仕方なく口元で切って逃がしました。鳥は慌てていなくなりましたけれど針を飲み込んだままで大丈夫だろうか?と心配になりました。


護岸竹


帰って本で調べると、その鳥はカイツブリだと知ります。川や沼で暮らしている鳥で水面に巣を作り子育てする可愛い水鳥でした。ああ悪い事をした...そんな思いでハエナワは最初で最後、あの時以来一度もしていないのです。




※鮎と言えばこの鮎籠は独特の形です。若い頃からこの魚籠を使ってきた、投網で捕った鮎を50匹も入れて重たくなるほどだった。と話す古老が編む不思議な形の魚籠があります。やはり日本の竹細工は奥が深く面白い。


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