続・高祖父、山岸安兵衛に導かれた話

 
大阪、本政寺


昨日の30年ブログで触れた高祖父、山岸安兵衛の建てた奉塔については随分前にも書いた事があるけれど改めて記載しておきたい。元々山岸家の菩提寺は堺市にある月蔵寺だったのだが、どういう理由か現在の大阪市中央区にある本政寺に移り、高祖父は亡くなる2年前の大正4年にこの奉塔を建てている。曾祖父宇三郎が明治27年に創業した竹材商は天王寺にあったので目と鼻の先だ、きっと此処には何度も足を運んだに違いない。


竹虎四代目(山岸義浩)


当時の大阪から考えたら、南国土佐はまるで海外くらい遠かったと思う。先日、手直ししてもらったばかりの作務衣は袖に真新しい藍染め生地を縫い付けてあるものだから「まるで島流しやね」と笑われた(時代劇で悪人役が腕に入れ墨されている)。「もともと高知は流刑の地だからピッタリよ!」と冗談を返したけれど、遠い昔には本当にそれくらい離れた土地だった。


本政寺、山岸安兵衛の建てた奉塔


宇三郎が、そんな異国のような地に日本唯一の虎竹を求めて出かける時、無事に帰ってきた時、山主の娘イトと知り合い結ばれた時、折にふれてやってきた場所が此処だと改めて感じる事ができた。


本政寺、山岸安兵衛の建てた奉塔


天王寺の竹工場には、人望の厚い曾祖父を頼って虎竹の里から沢山の男たちが出稼ぎに来ていたという。だから嫁いで来た曾祖母のイトは同郷の者たちに囲まれて寂しくはなかっただろう。自分の祖母が虎竹の里に暮らしながら一生大阪弁が抜けなかったように、イトたちも浪速の町でも土佐弁だったのではないだろうか?本当に故郷は遠きにありて思うものだ、奉塔の前に立ち、つくづく虎竹の里の御恩を思う。虎竹の里の人や虎竹に自分たちならではの恩返しができるはずだ。


高祖父、山岸安兵衛に導かれた本政寺

 
高祖父、山岸安兵衛の奉塔、本政寺、竹虎四代目(山岸義浩)


ボクが奈良に行くと言えば茶筅師のいる高山と決まっていたが、今回は木材と桜で有名な吉野だった。それにしても吉野の山は懐が深い、古くからの歴史があり信仰があり自然があり、何より人があり、圧倒的なカルチャーショックを受けて何も考えられない状態でハンドルを握って帰途についた。


途中、大阪市内で立ち寄らねばならない場所があって、調べてみたら近くには高速降り口があるので便利なはずだった。ところが、どういう訳か分岐地点でナビが間違った指示を出してしまった。湾岸線と書かれた看板がある、このままでは大阪を通り越して神戸の方まで向かってしまいそうだ、とにかく出来るだけ早く高速道路を降りたいと思い、どこか分からないまま次の出口で下道に降りた。赤信号で停まって確認してみると、目的地までは10キロ程度と表示されている、道を間違えたのに案外近い。これなら多少混雑していても時間はかからないと安堵しながら走っていると、今度は交差点でナビが妙な指示を出してくる。


どう考えても真っ直ぐ行った方が近いと思うのだが、左に曲がれと言っている。すでに直進車線で停まっているけれど、バックミラーをのぞくと後続車もいない。少しくらい遠回りも良いだろうと車線変更して左にハンドルを切った。そしたら案の定すぐに「次の信号を右です」とナビの声。ほら来た、ここを右に曲がるのなら、さっきの交差点で直進したほうが良かったのに...。


高祖父、山岸安兵衛の奉塔、本政寺、竹虎四代目(山岸義浩)


ところが、北に向かって車を走らせて鳥肌がたった。山岸家の菩提寺であり、高祖父山岸安兵衛の奉塔が建つ本政寺が目の前に見える。ええっ!?こんな事があるのだろうか?そのまま導かれるように駐車場に向かうと門はボクを待っていたかのように開かれ、車は一台もなく静まりかえっている。空堀商店街の花屋に行けば、仏花がちょうど二対残されていた。


奈良での出来事と、これからの立ち寄り先の事ばかり考えて全く思いが至らなかったが高祖父は何か話があって呼んでくれたようだ。いや話したいことがあったのはボクの方だ、高祖父とはじめて心が通じた気がした。色々としゃべったけれど実は聞こえない声の方がほとんど。「そのうち教えたるわ」そう言うので、そのうちを楽しみにしている。




国産青竹踏みと青竹踏み体操

 
青竹踏み


日本全国の皆様、青竹踏みをされていますでしょうか?誰でも、いつでも気軽にできる健康法として古来知られてきた青竹踏みをもっと知って活用いただきたいと竹虎では事あるごとに声を大にして発信させていただいている。恐らく、日本でこれだけ沢山の青竹踏みを皆様にお届けしている会社は無いのではないかと自負しているけれど(国産の青竹踏み)、実はその大変さは並々ならぬものがある。


そもそも青竹踏みは、ただ単純に竹を半分に割っただけのものではない。青竹とは言うものの、竹林から伐採したままの竹では品質管理ができないので、まず油抜きという余分な竹の油分を除去する加工をする。それを自然乾燥させてから、半分に切り割りしているのだが自然の竹なので歪みや曲がりが出るので時間をおいてガタつきを調整している。


孟宗竹


竹は竹林に行けばいくらでも生えているように見えるけれど、実際青竹踏みに適したサイズだけとなると竹材を探すだけでも大変だ。近くに竹林がある方は是非行って、青竹踏みのサイズの竹を探してみて欲しい。意外と適材が多くないことに気がつくはずである。しかも、竹は元の方は節間が短いけれど、ウラ(竹の先端)に向かうほど節間は長くなる。竹虎の孟宗竹を使った青竹踏みは、強度を保つために41センチサイズの中に節を必ず2つ入れている。つまり、20メートルの竹があったとしても太さ、節間を考えると一定の部分しか使う事ができない。




せっかく製造した青竹踏みも、油抜きしていてもカビが生えやすく夏場は天気をみながら外に並べて天日干ししている。竹の三悪は「割れ・カビ・虫」と言われるが、青竹踏みの場合はカビが大敵なのである。コロナで外出を控えてきた方も多いように思う、室内でも簡単にできる青竹踏み体操なるものを考案してYouTube動画で公開している。天然青竹踏みのパワーも感じながら楽しく体操すれば、身も心も軽くなる(笑)。




誕生秘話!?真竹三角革持ち手買い物かご

 
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先日より何度か登場している真竹三角革持ち手買い物かごは、籠の底にいくほど狭くなる特徴的な形で今まであまり見た事がなかった。しかし、このような斬新でスタイリッシュな籠がどうして生まれたのか?職人さんのアイデアで編まれたのかと言うと、実はそんな事は竹編みの現場ではほとんど起こらない。


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青々とした真竹表皮の色合いが、すっかり飴色になるくらいだからもう10年も前の事なのだが、ある一人のお客様からこのような逆三角形の形で花籠を作って欲しいと頼まれたのが始まりなのだ。最初に試作した籠の持ち手は斜めに取り付けられているて、花が活けやすいようになっていた。


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この別注の花籠を買い物籠にできるよう、ヒゴ幅を太く丈夫にすると共にサイズを大きくしたのが今回の三角買い物かご。もちろん、思いを形にできる腕前がなければ始まらないけれど、職人からすれば思いもよらない籠が編み上がった訳で、竹を愛用するお客様は優れたデザイナーとも言える。




竹虎インターンシップ2022夏

インターンシップ2022


竹虎では2001年からインターンシップを開催している。途中に4年ほど開いてしまった時期があるものの、やはり竹とは全く距離のある若い学生さんにお越しいただく事が現場に与えるインパクトは大きくて2008年より再開してずっと続けてきた。コロナで2020年は開催できず、昨年は四苦八苦しながらzoom開催、これはこれで海外の方に参加いただけたりして有意義だった。今年こそは例年のようにと思っていた矢先、8月に入ってから雲行きが怪しくなり結局大幅な期間短縮と内容の変更となり、せっかく参加表明いただいていた学生さんには申し訳なかったがキャンセル頂く事になった。


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そんな中、県外から一人の学生さんがどうしても参加したいと言われてやって来た。受け入れを少し迷ったが、大学卒業後に海外の機関で職人を目指されるとの事で、当社の経験が何かの役にたつかも知れない。PCR検査を受けていただいた上、お越しいただいた。


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他の社員とあまり密に関われないなど残念な面はあるものの、わすが3日間の日程で通常のインターンシップとは少し違うメニューではあったとしても本人の意識次第で学べる事は多い。学生さんの日報を読んで感じている。




竹灯りの夜

 
白竹フロアライト


コンクリートとアスファルトに囲まれて暮らす都会の皆様には、日中の暑さは厳しいものがあるし、夜も気温が下がらずまだまだ夏日は当分の間続きそうに感じていると思う。高知も南国土佐と言われているだけあって日差しの強さは大変なものだけれど、それでも早朝に家を出た時や竹林でふと汗をぬぐった瞬間に今までとは違う過ごしやすさを感じる。


白竹フロアライト


白竹フロアライト


竹編みフロアライトは外が明るいうちは、まあそうでもないけれど、辺りが暗くなって灯が入ると全く違う存在感のある表情となる。こうして眺めていると、虫の音でも聞こえてきそうな気がする。


白竹フロアライト


白竹フロアライトには、三本縞、蝶々、六ツ目花の三種類があった。限定で今回限りとなってしまう照明で、それぞれに名残惜しい思いがあるが、そんな気持ちも包み込んでくれる優しさのある光だ。




竹ヨーグルトの作り方

竹ヨーグルト


竹ヨーグルトとは一体何だろうか?初めて耳にされた方は戸惑うに違いない。しかも、その聞き慣れないヨーグルトの「作り方」と言うから混乱する。そもそもヨーグルトとは作るものだろうか?スーパーに並んでいて実は毎日欠かさず食しているのだけれど、家庭で作るという意識があまり無い。ところが、実はヨーグルトは意外に簡単に手作りできるもので、普通にヨーグルトメーカーなる機械も手頃な価格で販売されていると知った。ただ、竹で作ると言ってもやはり竹とヨーグルトのイメージが離れてすぎていて結び付かない方は多いかも知れない。


竹炭サプリメント


竹ヨーグルト作りに使うのは、当たり前のようではあるが丸い竹そのものではない(笑)、竹を約60ミクロンの細かさにした微粉末だ。虎竹と同じ淡竹(はちく)を原料として特許取得の竹粉製造装置で切削されているのがミソである。竹は縦に維管束という養分を運ぶ細かい管が無数に走っていて繊維も縦に割れやすい。細かく砕いた場合にも、まるで小さな針のような状態になる、竹を切断する仕事をした後に前掛けや衣類に飛んだ粉が取れないのは布繊維の穴に針状の竹が刺さっているからなのだ。


vitantonioヨーグルトメーカー


竹炭を手軽に定量摂取できるように開発した竹炭サプリメントには、90パーセント以上が難消化性の食物繊維(レタスの80倍)で相乗効果の期待できるこの竹粉を配合しているけれど、一番の決め手になったのは竹微粉末がハニカム構造になっていて安心だと言う点だ。


竹粉


常温加工のため、本来は熱に弱いビタミンやアミノ酸が壊れることなくバランスよく含まれるハニカム構造の繊維には竹由来の乳酸菌が生きていると言う。ここで、ようやく竹とヨーグルトと繋がった。


竹ヨーグルト作りの道具


つまり、今回の竹ヨーグルト作りは竹微粉末にある天然の乳酸菌を使っているのである。


竹ヨーグルト


色々なものに乳酸菌は住みついていて、お陰で味噌や醤油、お酢、チーズ、納豆、キムチなど調味料や美味しい食品が生みだされるのは知ってはいたが、まさか竹にまで乳酸菌がいるとは驚いてしまう。信じられない方もおられるだろうから、実際に竹の乳酸菌が作るヨーグルトを作って証明したいと思っている。




続・御用籠職人「五里四方で籠が違う」

 
経年変色御用籠


昨日の30年ブログに登場した御用籠は、丈夫なだけに長く使われているので古い籠を見かける事がある。新しく編まれた籠よりも何倍も魅力的になっているものも少なくないので竹は凄いと改めて思うのだが、先日出会った御用籠もまさにそんな一つだった。


御用籠


見比べてみると持ち手部分などの幅が微妙に長いなど違いがある、しかし一番は側面の力竹の設えが全く異なっている。こんなに近くにあった産地なのに籠の作り方が異なる事などあるのだろうか?と不思議に思う事もあるけれど「五里四方で籠が違う」と昔から言われてきた。


古い御用籠


今のように交通機関が発達していない時代では五里=20キロは遠い、しかも急峻な山道なら尚更である。20キロ離れれば職人が違い、竹編みも違っていたのだが、どうやら竹の質までも変わっているのか、この御用籠は管理の良さもあるが変色具合が格別に良い。


御用籠職人


気になって尋ねてみたら、かっては竹の名産地として知られた竹材が使われているようだ。竹の品質でここまで色合いが美しくなるのであれば、竹材を伐り出す竹山にもっとこだわっても良いと思う。害虫駆除のために熱湯消毒をして乾燥させている竹籠がズラリと並んだ作業場を見ながら感じている。




御用籠を作り続ける竹職人

 
御用籠、竹職人


竹職人が流れる汗をぬぐおうともせず一心不乱に編み続けているのが御用籠。編んでいる過程なので少し分かりづらいけれど、この籠に四角い竹枠をカチッとはめ込むと堅牢な角籠になる。段ボールやプラスチックコンテナが登場するまでは、日本全国の物流で多用されてきた籠で、配達来るトラックや国鉄(現JR)のホームなどでも良く見かけていた。皆様が一番覚えておられるのが、自転車やバイクの荷台に取り付けられて走る姿ではなかろうか。


御用籠


荷台に取り付けられるのは小さなサイズだか、大人が数人がかりで持たねばならない程の大きな籠まであった。竹虎の工場にもリヤカーサイズの籠があって、竹の端材から何から放り込んで運んでいた記憶がある。


御用籠縁部分


さて、実はこの御用籠の口部分に使われている幅広の枠竹には隠し包丁のような切れ込みが入れられている。丈夫な御用籠のために厚みのある竹材を背中合わせて使用されるのだが、この切れ込みが若干の寸法違いを微調整する役割がありピタリと仕上がるとの事だ。


御用籠、竹職人


竹職人道具


今ではあまり見ることはないが、昔ながらの強い竹籠作りには厚みのある竹ヒゴが欠かせず、このようなノミで身部分を削ることがあるけれど、この道具自体にも味がある。


御用籠、竹虎四代目(山岸義浩)


こうして昔ながらの御用籠は作られている。難しい籠を手際良く完成させていく熟練職人の技をYouTube動画にした。簡単そうに見える竹の扱いは、この職人ならではだ。達人の域だと思ってご覧ください。




日本製と海外製の竹籠手提げバッグの違いとは

 
国産と輸入の竹籠、竹虎四代目(山岸義浩)


竹は熱帯性の植物で東南アジア一帯に成育している。いやいやアジアだけでなく、赤道に近い国なら南米にもアフリカにも竹は多い。そして国や地域によって竹質は異なるものの成長が早く、加工性は高いので、世界中のこれらの国々に竹細工がある。住宅用の建材に使用するなど日本では考えられない竹の活用方法もあれば、遠く離れた国なのに全く同じような竹編みの生活道具があるから竹の世界は感動に満ち溢れている。大阪の国立民族学博物館に展示されているネパール西部で編まれたという魚籠が、父親から作り方を教わったという古老の竹職人の魚籠と瓜二つで驚いた事がある。


魚籠、腰てご


そんな竹だから、日本伝統の文化や細工にこだわりお客様に伝えていく使命があると思っている。「日本製と海外製の竹籠手提げバッグの違い」というYouTube動画を作ったのは、何度も言っているが海外製が悪いと言いたいのではない。二つを見比べれば、ほとんどの方が間違えるほどに、品質的に言えば海外の竹細工の方が良いものさえあるから時代はどんどん変わっている。正すべきは、本当の竹を伝えられない自分たちであって、世界は竹でひとつなのだ。


虎竹の里


ただし中には日本の竹籠をベースにしたような品質の劣る籠が作られて輸入されている、これ自体は価格も安く、大量に製作されるので竹を気軽に使いたい方には喜ばれると思う。しかし、この海外の籠を日本の職人が編んだかのようにして紹介するのは間違っている。そもそも、その竹は何という名前の竹か?日本のどこに生えているのか?


値段をいくらに付けようが勝手だが、さすがに記載に国産や日本製はない。結局は竹全体の評価が下がり、人々の関心がますます竹から離れてしまいそうだ。自分たちは、竹をもっと好きになり、竹をもっと知らなければならない。




痒いところに手が届く孫の手

 
竹曲がり孫の手


竹林に真っ直ぐに立っている竹を何度かはご覧になられた事があると思う。実際に里山に来られた事はなくとも、何かの映像や写真でも凛として垂直に伸びる竹の姿は皆様容易に思い浮かべられるのではないだろうか。だから竹は真っ直ぐなものとお思いの方が多いけれど、実は真っ直ぐな竹などそうあるものではない。全ての竹が丸くなく、曲がりや歪みがあったりするのが自然な姿なのだ。


竹曲がり孫の手刻印


ただ、竹には素晴らしい特性があって、熱を加える事によりその曲がりが矯正できて冷やすとそのまま固定される。この特性を活かして竹を真っ直ぐに加工し、竹虎では虎竹縁台や、袖垣、枝折戸、自在垣、黒竹玄関すのこなど様々な竹製品を製造している。また反対に熱を加えて曲げる事により更に多くの竹細工が可能になるのも竹素材の素晴らしい所だ。


竹曲がり孫の手


この竹曲がり孫の手も、昔から愛用されてきた製品に少し工夫を加えている。本体部分に緩やかなカーブを持たせることにより、背中の掻きやすさが断然違うのである、まさに痒い所に手が届く孫の手だ。

まだまだ青い、竹ショルダーバッグ

 
真竹ショルダーバッグ、竹虎四代目(山岸義浩)


この真竹ショルダーバッグは、かれこれ7年くらい前から使っている。肩にかけるタイプのバッグを持つ場合には竹虎のロゴマークがバッチリ入った前掛けショルダーバッグが多いので、実はそれほど出番は多くないものの、それでも色合いは随分と良くなってきた。


青竹ショルダーバッグ、竹虎四代目(山岸義浩)


なんせ使い初めの頃は、こんなに真竹の青々とした若い感じだったのだ。まあまあ年季が入ってきたなあと思っていた。


竹ショルダーバッグ


ところが毎日のように愛用している職人の籠はどうかと言うと、この色合いだからビリビリくる(笑)。自分の籠も使い方が足りないようだ、まだまだ青いのである。




経年変色は竹の魅力のひとつ、良いものを時には手直ししながら長く長く使っていく。日本の竹細工はそうやって続いてきた。使い捨ての風潮の中で、この国が忘れてしまったものが見直される時期に来ていると感じています。


虎竹温泉籠(湯かご)の作り方

 
虎竹スクエア手付き籠(温泉かご)


お盆休みも終わったけれど、コロナ禍の温泉街はどうだったろうか?やはり厳しい状況が続いているようだ。ワンランク上の温泉籠を作ろうと思っていた時には考えもしない時代だが、いつか沢山の笑顔が戻ってくるだろうし、その時には湯治客の手に虎竹の手付き籠があれば嬉しいと夢想している。


虎竹スクエア手付き籠


虎竹スクエア手付き籠(温泉籠)は四ツ目の底編みから始まる。本体編みを立ち上げ編み込み、口巻、持ち手を付けて完成するまでを動画でご紹介する事にした。


虎竹スクエア手付き籠(温泉かご)製造


竹職人動画を作るようになってから沢山の方からご感想をいただけて本当に嬉しい(笑)。考えてみれば当然かも知れないが、使い手の皆様は籠がどうやって形になっていくのか見る機会も少ないので、画像だけではお伝えしにくい竹籠が立体的になっていく様子をご覧いただきたい。


虎竹スクエア手付き籠(温泉かご)作り方


まだ公開していない動画だれれど、30年ブログご購読の皆様には一足早い公開です。


虎竹スクエア手付き籠(温泉かご)竹職人


虎竹スクエア手付き籠(温泉かご)工房




八月、あの竹職人さん

 
竹林


何処に行くにもカブに乗っている職人さんだった。田舎では公共交通機関が整っていない、虎竹の里でもJRもバスも一日に数本しかないから自分で運転できないと少し不便なのだ。だから、数台を乗りつぶすほど毎日の乗っていた。ここまでなら特別な話でもないが、実は時効だから言うけれど職人さんは無免許だった。この年齢でまさか免許を持っていないなんて誰も思っていない(自分もずっと知らなかった)、そのかわり交通ルールを守って一度も違反せず警察に止められた事もないから生涯一度も免許証とは無縁だった。


竹林


職人さんは高校野球が大好きで、春と夏は甲子園が始まると全く仕事をしない。とにかく朝から晩まで一日中野球放送を観ていた、仕事もあるのだれどこれほど好きなら何も言うまいと思った記憶がある。お盆だからか、今日は色々な職人の姿が思い出されては消えていく、ほんの短い時間でも両手の指で足らなくなった。熱戦の方は日程が進み、勝ち残った球児たちが日本一を決める日が近づいてくる、あの竹職人さんならテレビの前から一歩も動かないに違いない。


虎竹抱き枕の試作が出来ました。

 
虎竹抱き枕


先月の終り頃に10数年前に編んだきり作ることのできなかったと職人が言う虎竹の抱き枕のお話しをした。竹抱き枕は白竹の六ツ目編みかゴザ目編み、磨きの物ばかりで、いずれにせよ真竹だ。前々から待ち焦がれていた虎竹で、ようやく取り組めるようになったので早速試作を編んでもらい試すことになった。


虎竹抱き枕


白竹の抱き枕は、竹ヒゴを二枚はぎにして編んでいる、つまり竹ヒゴは二重になった形だからザックリした六ツ目編みに見ても丈夫だ。今回の虎竹抱き枕は、竹ヒゴを沢山使い編み込みを密にする事で弾力と強さを両立させたいと考えている。強度と共に何点かある課題はお盆休み明けから解決させて、暑い季節の終わりには間にあわせたいと思っている。




猫も大好き?虎竹ねこ手提げ籠

 
虎竹ねこ手提げ籠


この虎竹手提げ籠に近づこうとすると、傍らに鎮座している番猫がユラリ起き上がり当方を威嚇してくる。「この籠はワシお気に入りの専用寝床や、勝手に触ったら許さんでぇ~」とでも言っているかのような目つきである。


虎竹ねこ手提げ籠


まあ、そんな勝手な想像も、もしかしたら当たっているのかも?と思えるほど素敵なのが虎竹ねこ手提げ籠。猫ちゃんが休むのにちょうどだからと言うネーミングだが、新しいデザインではなくてずっと昔から編まれてきた籠を虎竹でアレンジしたものだ。


虎竹ねこ手提げ籠(竹虎四代目)


お洒落な雑誌の中で、センスの良さそうなモデルさんがこんなポーズで籠を下げて歩いていた。自分も真似てみたが、ご覧の通りである(笑)。


虎竹ねこ手提げ籠


「ふん、ワシには関係ないわ!」そんな風に思っているのだろうか?ボクは犬派だが、猫も悪くない。


アダン手提げ籠バッグの作り方

 
アダン手提げ籠バッグ


竹富島にヤミカゴと呼ばれていた買い物籠があった、戦後の小さな島には農地が少なく食料不足なので近くの石垣島から食材を買ってきたのだそうだ。その時に使われていのが今回のアダン手提げ籠バッグの元となった竹富島に自生していたンーマニという植物の皮で編まれた手提げ籠だった。


ンーマニとはクロツグの事で南西諸島に自生するヤシ科の植物とある。石垣のジャングルのような山中で蓬莱竹を見せてもらった事があるが、亜熱帯気候では植物のパワーも質も凄いが種類も豊富なのだ、全国各地にあったヤミカゴをこちらの島ではンーマニで編まれていた。その復刻したのが現在のアダン手提げ籠バッグなのだ。


アダン手提げ籠バッグ作り方


アダンの手提げ籠バッグと呼んでいるが、現在編んでいるものはアダンと同じタコノキ科の近縁種であるタコノキの葉で作られているバッグだと言う。アダンとタコノキは似ているようで違う、しかし、確か一番最初はアダンだったように記憶していてそのままになっているのだ、もしかしたら別の職人さんの話だったかも知れないし、違う籠だったかも知れない。


アダン手提げ籠バッグ職人


とにかく竹富島をルーツにする民具には稲ワラ、クバ(ビロウ)、クージ(トウツルモドキ)、アダン、月桃、ンーマニ(クロツグ)、ブー(苧麻)、バシャ(芭蕉)、シーチ(ソテツ)、ユッキ(ススキ)、茅、タコノキ、蓬莱竹など豊かな自然を表すかのように色々な素材があって楽しい。


アダン手提げ籠バッグ製造


アダン手提げ籠バッグ持ち手


天然素材をあますところなく活かし、型を使って丈夫で美しい手提げ籠にしていくのだ。この籠の最大の特徴は持ち手にあって、一本のループ状になった編み込みを本体底から固定して仕上げられているので本当にしっかりしている。使い手の事を十二分に考え抜いた創意に頭が下がる。




竹炭シフォンケーキの作り方

竹炭シフォンケーキ


さて本日は竹炭パウダーを使ったシフォンケーキ作りを皆様にご覧いただきたい。竹炭を食品に使うなんて真っ黒いのに大丈夫?と心配される方もいるかと思うけれどデトックス効果などが言われて近年様々な食べ物に使われるようになっている。すでに認知が広がっていたところに、数年前ニューヨークで人気とバンブーチャコールジュースなるものが紹介された辺りから若い方々に浸透したように思っている。


竹炭シフォンケーキ制作


今回シフォンケーキに取り入れて頂くのは地元高知では知らない人がいない有名店、海辺のスイーツ店風工房さん。虎竹の里の隣町にある漫画「土佐の一本釣り」の舞台でも知られる中土佐町久礼にある。


竹炭シフォンケーキ、風工房


「土佐の一本釣り」ってカツオでは?そうです、カツオです(笑)。ならば、どうしてこのカツオで有名な漁師町でスイーツなのかをお話ししますと、実はこの地域ではカツオのアラを堆肥にして甘い甘い苺を生産していた、その苺のケーキ作りから始まった店舗さんなのだ。


竹炭シフォンケーキ、bamboo charcoal、竹炭パウダー


竹炭パウダー使い方


入れる竹炭パウダーの量は8%と普通の店舗さんに比べて多い。色合いと食感のバランスで決めた配合だとパティシエの方は話されていた。


竹炭シフォンケーキ作り


竹炭スイーツ焼き上がり


甘いものが大好きな自分は、スイーツの香りに包まれて幸せだったがシフォンケーキ作りなどを初めて拝見して意外と時間がかかる事を知った。やはり美味しいものは手間暇かかるものである。


竹炭シフォンケーキ、風工房


竹炭シフォンケーキ


竹炭ケーキ


焼き上がった竹炭シフォンケーキに、自慢の苺クリームをたっぷり入れて完成!風工房さんは久礼の道の駅「なかとさ」にある、ここは地元の新鮮な海の幸はもちろん、評判のパン屋さんもあったりして近くに来られたら是非立ち寄りたいオススメのスポットだ。




ヤチャラ椅子の20年

 
虎竹ヤチャラ椅子


「遠くへ行きたい」と言う長寿番組がある。ちょうど夏休みなので、知らない土地に行ってみたいと思われている方も多いと思うけれど実際はなかなか簡単に出かけられない。特に今はコロナで外出を控える人も多い、そんな方々の代わりに目となり耳となって遠くを旅してくれるのは本当にありがたい。


虎竹ヤチャラ椅子


そんなテレビが竹虎にやって来たのは2004年の事だから随分と古い話だ(笑)。しかし、あまり頻繁にある事ではないので、来社いただいた女優の水木薫さんが当時注文で試作していた虎竹ヤチャラ椅子に腰かけて笑っている姿は今でも覚えている。定番の製品は高さが50センチ程度ある大きなものだったが、ちょうど30センチの低めの椅子を店内に展示してあった。低いと言ってもこの迫力だから、誰かのお宅に遊びにいってリビングにこのような椅子があったら驚くに違いない。


虎竹ヤタラソファベンチ


ヤチャラとはヤタラとも言うけれど「ヤタラメッタラ」のヤタラの事で、規則正しい竹編みではなくて職人の感性で仕上げていく乱れ編みの事だ。


虎竹ヤタラソファベンチ製作


ヤチャラ椅子に続いてソファベンチを製作することになったが、その時には強度を考えて中に鉄製の骨組みを入れる事にした。


虎竹ヤチャラ椅子、竹虎四代目(山岸義浩)


竹の可能性をいつも追い続けているからボクはいつまでも座っていられる。しかし、機能的には正直革の椅子やソファに竹はかなわない、経年退化があって体重のかかる過酷さには耐え続けられない部分がある。それでも魅力のある竹だからスツールや椅子が今でも創作されている、虎竹縁台もずっと作り続けていくつもりだ。




遂に完成した三角形の革持ち手買い物かご

 
真竹三角革持ち手買い物かご、竹虎四代目(山岸義浩)


初めて皆様にご紹介させて頂いたのが昨年末だった、自分が愛用するうちに使い勝手もよいものだから竹虎をご愛顧の方々にも手にしてもらいたいと思い製作に取り掛かっていた。革持ち手に思った以上に時間がかかってしまい少し遅くなったものの、ようやく真竹三角革持ち手買い物かごが完成した。


真竹三角革持ち手買い物かご


まだ真竹の青さが淡く残った編み込み表皮に革の色合いが良く似合っている。革も天然素材なので実は色も風合いも少しづつ異なっているので、すべての籠がこのような色の革という事ではない。


真竹三角革持ち手買い物かご


しっかりとステッチの入った革持ち手は幅広で持ちやすく、買い物籠全体のアクセントともなっている。自分の使う革持ち手より本当に若干だけれど短くした、その方が持ちやすい気がする。


真竹三角革持ち手買い物かご


底には力竹、実はこのように三本並んで入れたタイプとバッテンに入れたタイプとがある(笑)。


真竹三角革持ち手買い物かご、竹虎四代目(山岸義浩)


面白いデザインで持ち歩くだけで、ちょっと嬉しくなるのはずっと変わらない。ただ良い事ばかりではない、底が狭くなっているので置いた時には当然安定感は良くない。そして、買い物した物によっては持っている時にもバランスを崩しそうになる事がある、たとえば大根や長ネギなど籠から飛び出していれる場合は籠の片方にばかり重さがかからないようにしてもらいたい。そんな簡単なことを注意すれば楽しいお買い物にでかけられるはずです。




スペインビトリアで出会った日本人

 
日本唯一の虎竹電気自動車「竹トラッカー」


スペインにレースに行った時に知り合った日本の方がいる。こう言っても前から竹虎をご存じの方以外は何の事かサッパリだと思うので簡単に説明したい。レースとはボックスカートレースの事で、日本ではあまり馴染みがないのだが欧米では結構盛んに開催されている、要するにエンジンのついていない車輪だけの車体で坂道を下り降りる大会なのだ。遊びのようでもあり、スポーツのようでもあって、楽しいウケ狙いの車から空気抵抗まで考えたスピード追及の車体まであって、それぞれの方が楽しむお祭りのようなレースだ。


岡田邦雄、竹虎四代目(山岸義浩)


スペインでも美食の地として知られるバスク地方にビトリアという町がある。そこで開催されるレースに誘われたのは、メキシコで開かれた世界竹会議に日本唯一の虎竹電気自動車「竹トラッカー」で登壇させてもらったからだった。おまけに、その虎竹編みの車で街を走ったものだから竹の車体をみたイバンさんが是非竹の車で走りに来ないかと言うのだ。


スペインレース、竹虎四代目(山岸義浩)


前置きだけで長くなってしまったけれど、こんな経緯で虎竹ボックスカートを製作しビトリアのレースで走ろうとしている、まさにその直前にフッと目の前に現れたのが岡田さんだった。日本人などほんどいない地方の町なので驚いた、いや今思えば自分以上に岡田さんの方がビックリされていたのかも知れない。


岡田邦雄、竹虎四代目(山岸義浩)


後から知ったが岡田さんは大の車好きでクラシックカーの集いなども主催されているような方なので、レースと聞いて見物に来られていたのだ。面白い方と出会ったなあと思っていたけれど、帰国してから数年、コロナなどもありなかなか再会する機会がなかったのだが、ようやく虎竹の里にお越しいただく事ができた。はじめて出会った時のスペインの澄み切った青空のように気持ちの良い方は、古い町並みを吹き抜けてゆく風みたく、いつも飛び回っているようだ。




牧野富太郎博士と虎竹と

マキノ缶


高知県出身で「日本の植物学の父」と言われる牧野富太郎博士は生誕160年の節目でもあり、来春から始まるNHK連続テレビ小説「らんまん」の主人公でもあるので注目が高まっている。先日、たまたま羽田からの飛行機で隣の席になった方は、世界の名だたる有名ブランドとコラボしたお菓子を展開されている凄い社長さんだった。話の中で、近日発売予定である牧野博士のクッキー「マキノ缶」を見せていただいた。タブレットの画面からも色とりどりの容器とお菓子が楽しさを感じさせてくれてワクワク心が躍った。


高知新聞掲載牧野富太郎博士クッキー


全国に先駆けて高知の蔦屋書店にて販売を開始すると聞いていたので、すぐに買いに行ったが現品の並んだ売り場は機内で感じた高揚感以上にハッピーな気持ちにさせてくれる。高知新聞に掲載された写真からもお分かりいただけるように、思わず笑みがこぼれるようなお菓子たちだ。


それらを見ながらふと考えた、自分はできる事はないだろうか?


日本唯一の虎竹


土佐虎斑竹は何を隠そう牧野富太郎博士の命名だから、実は自分たちとも浅からぬ縁がある。もしかしたら竹虎初代宇三郎とはどこかで出会っていたのかも知れないと思うくらいだ。その理由は話だしたら長くなるので今朝は割愛させてもらうが、とにかくこの節目に自分たちにしか出来ない事をするべきだと思うようになった。


虎竹の里、竹虎四代目(山岸義浩)


出来る事を思い当たるのに、そう時間はかからなかった。虎竹の里から牧野植物園には博士との事もあって虎竹が数株移植されている。虎竹は不思議なことに虎竹の里以外で育つ事のないと言われていて、今まで全国各地に移されてきたが期待するような成果は上げられていない。さすがの牧野植物園でも同じで、どうも元気な姿でないことが日頃から気にかかっていた。




竹虎YouTubeチャンネルでも紹介しているけど、弱々しく虎竹特有の色づきもなく、シラクモやテングス病と虎竹の里の竹林とは大違いだ。そうだ、虎竹をもう一度移植させていただく事はできないか?これなら自分たちにしか出来ない事だ、元気な虎竹を改めて移植させてもらえれば来春以降沢山の方が園を訪れた時にも美しい虎竹をご覧いただけるに違いない。


海辺のスイーツ店、風工房の竹炭シフォンケーキ

 
風工房の竹炭シフォンケーキ


オープンしてから、もう20年以上になるので地元ではすっかり人気も定着して、高知では知らない人のいないケーキ屋さんとして有名なのが風工房だ。海辺のスイーツ店となっているように、こちらの工房と併設されたカフェは漫画「土佐の一本釣り」の舞台となった高知県は中土佐町久礼にある。カツオで全国に何を馳せる漁師町で何故スイーツなのか?不思議に思われる方もいると思う。実は元々コチラでは、カツオのアラを堆肥にして甘い苺が生産されていた、そして、その苺を使ったケーキ作りから風工房は始まったのだ。


風工房の竹炭シフォンケーキ


今回、この特産苺を活かしたスイーツの新商品開発にお声をかけて頂き、コラボさせてもらったのが竹虎の土窯作り最高級の竹炭パウダー。竹炭のデトックス効果など機能性はもちろんだが、真っ黒な色合いと赤い苺のコントラストがお客様に喜んで頂けるのではないかと言う風工房社長の清岡さんの思いがあった。


竹虎スタッフ竹炭ケーキ試食


さっそく試作された竹炭シフォンケーキが竹虎に届いた。パティシエの方が何度も試行錯誤して焼き上げたケーキは黒くてフワフワ、淡い色合いの苺クリームが上品に仕上がっている。瞬く間になくなった竹炭シフォンケーキが販売されるのが待ち遠しい(笑)。




コロナの夏、ソーシャルディスタンス帽子

 
ソーシャルディスタンス帽子


重症化する方が少ないとは言え、高知県でも2日連続で感染者数が1000人を超えてしまっているので緊急事態だ。今日、虎竹の里に訪問いただく予定だったお客様も濃厚接触との事で急遽来られなくなった。実は、先月からこのようなキャンセルは自分の周りでも何件かあるので、観光や飲食は大変なのではないかと心配している。そこで、思い出したのが本店の片隅に置かれている虎竹編みの巨大帽子、名付けてソーシャルディスタンス帽子。


コロナ感染防止帽子


社員が書いた絵がカワイイ(笑)、「よっちょれ♪」と書かれている。来週に開催される南国土佐の祭典よさこい祭りの掛け声なのだが、このような時なのでコロナと暑さと両方に気を付けて元気に踊ってほしい。自分も、この帽子をかぶって応援に行きたいけれど、沢山の人の中で邪魔だ、いやいや元々これだけのサイズなので車にも乗れないから簡単に移動できない。動画でも、海の美しさから有名になっている安和駅から汽車に乗ろうとして乗る事ができなかった(笑)。




自然素材の馬それぞれ

 
竹編み馬


古くから馬は縁起がよい動物とされている。もう2年前になるけれど懇意にしていただく香川県はさぬき竹一刀の西村文男氏にお会いした時にも煤竹に文字入れしたもらったお守りは「左馬」だった。実はいろいろな言われがあるようだけれど、仔馬が元気にはねる姿に子供の健やかな成長を願ったりするのは自然な事で、玩具に馬のデザインが多いのもそのせいだと思う。一般的には藁細工の馬をご覧になられる事が多いのではないだろうか、田舎にある小さなお社で見かけた事もある。しかし、自分の場合はやはりが気になり、ついつい手にしてしまう。




七島藺(しちとうい)馬


七島藺(しちとうい)の円座をご覧いただいただろうか?




圧倒的な強さと耐火性もありながら、イ草のように機械化できなかったために本当にわずか10軒足らずの農家さんが生産するだけとなった素材を使って素晴らしい渦巻の円座が編まれている。職人さんが仕事の合間に編まれていたのも、やはり馬だった。


イタヤカエデ


日本は南北に長く自然が豊かな国だとつくづく感じる。北の方にいけば竹は少なくなるけれど、イタヤカエデというしなやかな木の皮を使って箕や弁当箱まで編まれてきた。古人の創意工夫には頭がさがるけれど、やはりここにも馬があった。


アダン馬


南に下れば亜熱帯から熱帯地域で育つアダンで生活道具が作られる。八重島から届いたのは、このアダン馬。




籐細工の馬


籐は日本にない素材ではあるけれど、実は随分と昔から貿易船で運ばれてきた物がその秀逸な強さと粘りから細工に取り入れられてきた。何と言っても量が多くないので当時はかなりの高級品で庶民は見た事もなかったかも知れない。こうして籐細工の馬が普通にある現代は嬉しい時代とも言える。




虎竹アウトレット漆箸と温暖化

虎竹アウトレット漆箸


今日も朝からムシムシしていて何とも空気が重い感じがする(笑)、危険な暑さに警戒とニュースにあったけれど40度を超える地域もあるようだ。まさに、ここ何年がずっと言われ続けている温暖化、気候変更の真っただ中だと感じている人も多いと思う。しかし、自然はこの異変をもっと前に敏感にとらえていて、例えば海の魚の生育域が変わったり、昆虫の分布の北限が北に伸びている等聞くのだが、実は日本唯一の虎竹にも影響を及ぼしている。


虎竹伐採


それが虎竹の色付で、特に10年ほど前から微妙に虎模様が美しい竹が少なくなってきた。そもそも虎竹の里の竹も全てが虎柄になるわけではなく、伐採した竹の中から製品になる竹は一本づつ選り出している。


虎竹


近年は選り出して一級品として使える竹が減少傾向にあるのだ。虎模様があっても無くても急峻な竹林から竹を伐り出す苦労は変わらないので山の職人には大変な思いをしてもらっている。しかし、アウトレット虎竹漆箸は二級品の虎竹を使って製造しているのではない。


虎竹アウトレット漆箸


製品用として運んできて油抜きもした立派な虎竹なのだが、竹全体に虎模様が入っている竹ばかりではないのでお箸のように細く割った場合に、虎柄が入っていないモノができてしまう。そのような特に色の薄いものを選別してアウトレットとしてご紹介している。同じ虎竹を同じように製造されたものなので、持った細身の感触も同じです。




日本の夏に、国産籐枕

藤まくら

 
籐と竹は細く割って使われていたりすると見分けがつきにくいようで、同じ素材だと思って時々間違われる場合がある。しかし、籐は竹のように稈に空洞がなく、柔らかさや強さの点で竹には真似のできない製品作りが可能な凄い天然素材なのだ。


籐枕職人


ソファーや椅子、ベットなど丈夫でそのうえ軽い家具が作り出せるのは籐ならではだし、しなやかさは手提げ籠などを編むのにも適している。ただ日本国内に産地がなくて全て海外からの輸入材なので、昔から使われてきた素材ではあるものの古い時代は高価な物で庶民が手にすることはなかったに違いない。


籐まくら作り方


戦後にGHQが籐製の椅子やテーブルを大量に発注するようになって忙しくなり、それまで竹細工をされていた方が籐細工に転向して随分と腕を振るったという話を職人から聞いた。このような籐枕は、今のようにエアコンのなかった当時には現代とは比べ物にならないほどの必需品だったと思うので、さぞ多くの製品が作られていたと想像する。


籐まくら職人


籐まくら製作


海外から素材だけでなく同じような製品自体が輸入されるようになってから、国内の職人が減って産業が衰退してきたのは竹と同じ歴史だけれど、国産には国産ならではの丁寧な仕事ぶりがある。


籐鼓椅子


籐に鼓椅子というロングセラーの製品がある。竹虎にも来客用に何個もあって小さい頃から馴染みのある椅子だけれど、元々はある女優の方が和楽器の鼓をモチーフに作れないだろうかと相談されたのが最初だと言う。こちらの工房に置いてある先代が製作した品など、生命力さえ感じるような力強さに圧倒されて声を失った。


籐枕製作


確かな技が息づく籐工芸の枕は、形にもこだわりがあってただの楕円形ではない。なんと片方が高く、片方が低く作られているので愛用いただく方の好みで使い別ける事ができる。