孟宗竹で編むエビラの下地

 
孟宗竹ヒゴ


竹は伐採する時期が決まっていると言っても、どの竹でも同じという事ではない。日本は南北に長いので、地域によって気候が違うので自ずと伐るタイミングは違うし、竹の種類によっても異なり、また山の職人によってもそれぞれ別な場合がある。ただ伐り始める順番は決まっていて、日本三大有用竹である孟宗竹、真竹、淡竹の中で、一番早いのは孟宗竹だ。だから例年なら今頃だと既に新竹が積まれていなければならないのに、今年は諸事情重なってようやく先日竹が運び込まれてきた。


孟宗竹の新竹


さて、この孟宗竹で一体何をするのか?実はエビラの下地を編むのである。全国的に見ても太くて硬い孟宗竹を竹ヒゴに取って編組細工に使うなど他の職人からしたら驚きだろう。しかし、土佐竹細工には孟宗竹を使った花籠作りや盛り籠の伝統があり、古老の職人ほど好んで孟宗竹を使ってきたから、自分たちもその技を繋いでいる。


エビラ籠素地


孟宗竹は他の竹材に比べて繊維が少し粗い、けれどそれが土地の竹編みの風情を醸し出し、自分達の心にしっくり馴染む。100年前に編まれた、すっかり色の変わったエビラを見ると、この堅牢な竹肌が日焼けした筋肉隆々のスポーツ選手のような逞しささえ感じさせてくれる。


エビラ竹職人


土用干しに多用されるエビラは、直前になって編み始めても間に合わない。


四ツ目エビラ下地


数年前に、どうしても復刻させたい四ツ目編みのエビラもラインナップに加わった。昔から使われてきた生活道具を、昔からの竹材で昔と同じように作る。ごく普通の仕事を、今年も変わらず続けていきたい。




コメントする