筍の季節と竹林と

京都の筍


今年も京都から立派な筍が届きました。春の訪れを知らせてくれるような瑞々しい筍に、思わず笑みがこぼれます。しかし一方で、今年は裏年にあたるため収穫量が少なく、さらに海外からの害虫による被害で、竹林の管理が難しくなってきているという話もよく耳にします。竹の生育か芳しくなく、良質の筍が収穫できない等、かねてより懸念されていたことが、少しずつ現実となって表れてきているように感じられます。


筍田楽二色


先日お邪魔した筍料理の老舗でも、仕入れに大変苦労されているとのことでした。それでも供されたお料理は、まさに春のごちそうそのもの。筍田楽二色、朝堀り筍の造り、名物の筍鏡煮、木の芽和えに木の芽焼きまで、筍の多彩な表情が丁寧に引き出されていて、素材と向き合う料理人の真心が伝わってきました。


朝堀り筍造り


朝堀り筍鏡煮


かつては当たり前のようにそこにあった春の恵みも、今は守らなければ失われてしまうかもしれない。そんな危機感が年々強まっています。竹は単に食材としてだけでなく、竹細工や竹製品などの実用品としても、また暮らしの道具や文化と深く結びついてきた素材です。


筍木の芽和え


しかし、高度経済成長の中、生活様式の変化や新素材の登場で出番が少なくなり、竹林の管理が追いつかなくなって久しいところに、近年は害虫被害や温暖化が拍車をかけています。


朝堀り筍木の芽焼き


それでも希望がないわけではありません。全国には、若い世代を中心に竹の価値を再評価し、手入れの行き届いた竹林を維持しようとする"竹人"たちがいます。自分たちも、そうした方々の取り組みに目を向けつつ、せめて食卓に上るこの一皿の筍同様に、この虎竹の里にしかない竹の行く末を考えねばなりません。


筍の海老挟み、竹米あられ揚げ


時代が変わり、自然の恵みを「いただく」ことの意味が、より重く、深くなってきました。そんな今だからこそ、この清らかな筍の味わいが、身体に沁みるのです。





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