竹炭(タケスミ)とイカスミと

竹炭パスタ


最近、ちまたで「黒い」食べ物を見かけることが増えたと思われるの事はないでしょうか。真っ黒なパン、うどん、ギョーザやカレーさらにはスイーツまで、その印象的な見た目は多くの人の目を引きます。この黒色の立役者が本日お話させていただく竹炭パウダーです。古くから黒い食材といえばイカスミがお馴染みですが、竹炭パウダーーにはイカスミとは異なる、独特の特徴と可能性があります。


竹炭パウダーを使った料理

ボクたち竹虎が創業以来こだわり続ける竹、その竹から生まれる竹炭パウダーと、伝統的な黒い食材であるイカスミを比較しながら、それぞれの魅力や使い方、そして竹という素材そのものの素晴らしさについて考えてみたいと思います。


竹炭パウダー、bamboo charcoal


竹炭パウダーは、その名の通り、日本の豊かな自然が育んだ竹を原料として作られた、炭の微粉末です。古来より日本人の生活に深く関わってきた竹が、今、現代の食文化の中で新しい価値を生み出しています。竹炭パウダーが持つ最大の特徴は、まず無味無臭であることです 。これが、独特の風味を持つイカスミとの決定的な違いと言えます。料理やデザート、あるいは飲み物に深い黒色だけを加えたい、素材本来の繊細な風味を損なわずに見た目のインパクトを高めたい、そういった場合に竹炭パウダーは理想的な素材なのです。


竹炭パン


特筆すべきは、その粒子の細かさです。竹虎の竹炭パウダーは15ミクロン(0.015ミリメートル)という、非常に微細な粉末状になっています 。


竹炭猫クッキー


この細かさにより、液体にも混ざりやすく、また食した際の舌触りも滑らかで、ザラつきを感じさせません。パンやクッキー、麺類の生地に練り込んでも食感を損なうことなく、美しい黒色を表現できるのです。


竹炭の孔


竹炭には電子顕微鏡で見ないと分からないような無数の微細な孔が空いています。実は、この多孔質な構造が竹炭の優れた吸着力の秘密なのです。様々な物質を吸着する性質があるため、水の浄化や臭いの吸着などに利用されてきました。原料は竹炭ばかりではないものの、世に出回っている消臭剤には、この炭の特性を活かしたものが多数あります。竹炭パウダーに関しても、この吸着力によって体内の不要な物質を吸着し、排出を助ける、いわゆるデトックス効果への期待が言われているのです。現代の健康志向の高まりの中で、チャコールクレンズ(Charcoal Cleanse)として最近では海外でも注目されています。


竹炭パスタ


竹炭パウダーは無味無臭と申し上げましたけれど、その特性から現在では食材への活用は思う以上に進んでいます。ボクが前に頂いた竹炭パスタは、その真っ黒な見た目のインパクト、トマトソースとのコントラストが忘れられません(笑)。同じ黒いパスタと言っても、イカスミパスタとは全く異なります。イカスミは独特の風味、味、香があるのに対し、竹炭パウダーは黒の色素のみをプラスできるので色々なソースとの組み合わせができるのも面白いところです。この違いが、食材活用の幅広さに繋がっているようです。和食、洋食、中華、エスニックといったジャンルを問わず、また、主食からデザート、飲み物に至るまで、あらゆるメニューに使われています。


竹炭スイーツ


繊細な和菓子や、フルーツを使った爽やかなデザートにも、黒という色彩のアクセントを加えることができるのです。まさに、自由自在な黒!作り手の創造性を刺激するのではないかと思います。


竹炭を使うパリのシェフ


そんな自由な発想に刺激を受けたのでしょうか?竹虎の竹炭パウダーの品質と使いやすさは、海を越えて食の都フランス・パリのパティシエの皆様にも愛用されています。


bamboo charcoal、竹炭パウダーを使うパリのシェフ


繊細な味覚と美しい見た目が極めて重要視されるフランス菓子の世界において、素材の風味に一切影響を与えることなく、深く鮮やかな黒色を表現できる竹炭パウダーは、もしかしたらパティシエの方々が待ち望んだ理想的な着色料だったかも知れません。


竹炭ムース


パリ市内のあるお店でランチをいただきました。あまりの美味しさにモグモグ食べていると、シェフが一皿手にして厨房から出てきました。「食べてみて」と言われても、お皿の上にはスプーンが二本...いったい何だろうか?


竹炭ムース、bamboo charcoal


実はスプーンにのせて出していただいのは竹炭のムースでした。口に入れると、すぐに溶けてなくなる淡雪のような感じ!そして竹炭パウダーが本当に入っているのかと思うような後味で下にザラつきが全くありません。シェフは、このことを伝えたかったようです。ヨーロッパでは、スプーンは幸せをすくうラッキーアイテムとされているようですけれど、まさにボクにとっては、このスプーンは幸せそのものとなりました。


bamboo charcoal、竹炭パウダーを使うパリのパティシエ


竹炭パウダーはその自然さゆえに、フルーツやチョコレート、クリームなど、あらゆる素材と組み合わせることが可能です。お伺いしたパリのスイーツ店やレストランでは、皆様に喜んでいただけている様子で本当に嬉しく思いました。


竹炭パウダー、竹炭微粉末


竹虎がお届けする竹炭パウダーは、その原料となる竹の選定から、製造方法に至るまで、一貫したこだわりを持って作られます。原料には、地元四国産の良質な孟宗竹(もうそうちく)のみを使用しますが、最も重要な竹炭作りには、効率を優先した機械窯ではなく、昔ながらの土窯を用いた伝統的な製法を守り続けています 。


国産竹炭窯


熟練の炭焼き職人が経験と勘を頼りに、最高級品質の竹炭を800度から1000度の高温でじっくりと焼き上げます。土窯は、温度管理が難しく季節や天候によって焼き上がりが違う上、一窯に2週間もの時間がかかるのです。


孟宗竹


竹は、「継続利用可能な唯一の天然資源」と言われるほど成長が早い植物です。その貴重な資源が日本国内では放置され、ほとんどが活用されずにいます。竹は竹林で人の役に立ちたがっているのです、安価な海外産の竹炭も多いように聞きますが、美しい自然と四季のある日本の竹の品質は世界一だと思います。海外からは竹の国とも見られている国産の竹に親しみ、愛用することが竹を明日に繋ぎます。竹炭パウダーも、竹という数千年来日本人に寄り添ってきた親友のような存在だと、その価値を再認識させてくれます。





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