スズ竹より根曲竹
「真竹より篠竹、篠竹よりスズ竹、スズ竹より根曲竹」とも言われる根曲竹。そんな秀逸な竹材で編まれる竹細工は、堅牢で特有のしなりがあり、使い込むほどに艶のでる大好きな竹のひとつです。母から譲られた濃い飴色に変色した手提籠、花籠、小物入れ、ペン皿、魚籠など、更にはこれは持っている方は少ないと思いますがステッキまで、ボクの近くを見回すだけで色々な根曲竹の製品に囲まれています。そんな中でも、毎日愛用しているのが、これもかなり珍しい根曲竹の玉入れ籠!しかも、玉入れ籠を物に入れに使うのではなく、逆さにしてサイドテーブルにしているのです。かなり重たい鞄など置いても全く平気だし、まれにオットマン替わりにするくらいの耐久性だから可愛くって仕方ありません(笑)。
根曲竹の伐採
さて、そんな根曲竹ですが、伐採は一体どんな風に行われているのでしょうか?この根曲竹伐採のYouTube動画をご覧ください。テレビでも、北海道や東北でのクマ出没が報道されています。伐採は、そんなクマへの警戒をしながら爆竹を鳴らし、笛を吹きならしての仕事です。根曲竹の筍は最高に美味しいのですが、クマも筍が好物との事で、特に5~6月のシーズンには注意が必要との事です。
竹材伐採の場合は、9月末~11月上旬なので、筍の季節よりはリスクは低いと言うものの、誰一人いない山深い竹林に分け入るのは、実際現場に来ないと分からない怖さもあります。
それでも、この地に来て竹に触れたら、なるほど昔の名人たちが愛した理由が分かる気がします。真竹や淡竹とは又違った、野趣あふれる生命力と力強さに心打たれるのです。
クマイザサの開花
それにしても、所変われば竹の伐採も全く異なるものですが、北海道の根曲竹の心配は他にもあるようです。実は、すぐ近くにあるクマイザサ(信濃笹)と呼ばれる笹の開花が2年ほど前から始まっているとの事。地元の新聞によれば、120年前に花が咲いた記録があったそうなので、これは一斉開花の可能性が高いと思っています。道内の他の竹林で開花を見たという方もいるそうです。ただ、国内の竹・笹は、種類だけで600種もあるほど種類が多いので、本当に根曲竹なのかと言えば不確かな部分もあります。けれど、根曲竹も竹と名前が付くものの、笹の仲間なのでクマイザサ開花があれば、同じように開花もあるのでは?と危惧されています。
根曲竹の虫害
実は、根曲竹はあまり虫害にあう事の少ない竹材でした。ところが、数年前から、根曲竹の製品にもかなりの割合で小さなヒラタキクイムシが入っている事が見受けられます。
細身の根曲竹は、丸竹のまま買い物籠の持ち手に使われたりするのですが、その竹に小さな穴が開いています。北海道、東北など寒い地域の竹は大丈夫だと思ってきましたが、近年の異常気象で害虫が過ごしやすい環境になっているのではないでしょうか。
そして、これはボクの自論ですが、竹開花に向かう竹は数年かけて少しづつ生命力が落ちて、抵抗力も減少しているのではないかと考えています。虎竹でも、以前は見られなかった天狗巣病が発生していて、何か変化が起こっていることをずっと感じてきました。
竹の抵抗力が落ちていると思うのは、淡竹の開花に向かっている虎竹の里の竹だけでなく、すぐ近くに産地のある黒竹も同じです。だから、もしかしたら根曲竹にしても、大自然のサイクルの中で、開花のタイミングに近づいているのかも知れないと思うのです。
ミステリアスバンブー
竹は不思議な植物です、木でなく、草でもなく、独特の生態で生き抜いているように見えます。成長の早さ、地下茎で竹林全体を守り広げていく強さ、その反面デリケートな部分もあり、遠く離れた竹林同士が、まるで呼応するかのように開花します。日本は狭いと教わりましたけれど、実は南北に長く、豊かな自然と四季があり、変化に富むそれぞれの地域ならではの竹が育ち、竹文化が育まれてきました。根曲竹も、そんな竹の中のひとつ、雪の重みで鍛えられて根元の曲がった根曲竹から、しばらく目が離せません。
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