2025年8月18日の投稿

美しき竹帽子

竹帽子


猛暑の必需品

今年の猛暑では、外を歩く方が日傘を差しているのを見る事が多くなったと思いませんでしょうか?女性の方のみならず、男性の方でも使う方が増えたせいか、余計に目立つようになった気がしています。男子が日傘なんて、少し前なら日焼けでも気にする、極一部が使うものなんて思ったかも知れませんが、この暑さに外出するのなら、誰でも関係無く日傘は必需品のように思えてきます。


竹帽子、竹虎四代目(山岸義浩)


名人作、自慢の竹帽子

ボクの場合は、日傘は差さないのですが、その代わりに竹帽子を被ることが多くなりました。この竹帽子は、かつて高知で竹籠はじめとした竹製品の品評会が開催されていた頃、毎年のように優秀賞を受賞されていた竹細工名人にお願いして製作してもらったものです。


編みあがったばかりの竹帽子


最初の竹帽子

もう随分前に、別件で仕事場にお伺いした時に、壁にかけられていたのを見つけて、形の良さと編み目の美しさに一目惚れしてしまいました。竹細工の師匠だったお父さんが、たまの休日に好きだった映画を観に行く時に被っていた帽子を思い出し、見よう見真似で作ったと聞いて更に好きになり、ボクが当時被っていた帽子をサンプルにして、ひとつ製作してもらいました。


磨き細工


磨き細工

竹帽子は、お洒落にかぶるファッションアイテムなので、青竹そのままに使うと言いましても、荒物の籠のようにはいきません。見た目も大事ですので、竹表皮のシミや汚れを目立たなくするように、一手間かけて薄く表皮を磨き(剥ぐ)ます。


磨きの竹細工


竹表皮を磨く時には、締め切った部屋なんかだと、清々しい竹の香にむせるくらいで好きなのですが、ここ名人の所では香りはあまり楽しめません。なぜなら、昔ながらの職人らしく、多くの古老がそうだったように庭先にゴザを敷いての仕事だからです。


名人竹職人


名人の竹職人

自宅の庇から日除けのテントを張って、黙々と竹ヒゴを操る姿は、本当に格好がいいものです。編み込みを続けている横を、放し飼いにしている地鶏が歩いて通ります。少し前は、このような光景がどこの集落でも普通に見られていたのではないでしょうか。現在は、車の駐車場のようになっている事も多い農家の庭先は、かつては竹細工はじめとして、薪を割ったり、収穫物を仕分けたり、の作業スペースでもありました。


菊底編み


菊編み

竹帽子は、まず菊底編みから始まります。底になることの多い編み方ですが、この竹帽子では反対に頭のてっぺんになります。つまり竹帽子は、頂上から編み始めて作られているのです。


竹帽子製作中


はじめての竹帽子

最初のひとつが完成したとの事で、その日のうちに飛んで行き被ってみました。ところが、期待したような被り心地ではありません。布製の帽子をサンプルにしていたので、同じサイズに出来あがっているのに何故だろう?実は、細い竹ヒゴ一本一本は、しなやかで柔らかいのですが、緻密に編みこむと丈夫さもでるし、思った以上の硬さが出てしまうのです。布には若干の伸縮性があるので、少しくらい小さ目の帽子でも使えますが、竹編みの場合は少し余裕があるくらいでないと被れない事が分かりました。


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9回のチャレンジ


そこで、次は少し大きめのサイズに編んだものを製作してもらいました。しかし、今度は少し大きすぎて頭を動かすとズレたり、うつむくと落ちそうになったり(笑)やはり出来あがった帽子のフィット感が良くありません。けれど、どうしても竹帽子を被りたかったボクは、「今度は、ほんの少しだけ小さめに、浅めにしてみましょうか」などと言いながら、いつの間にか次々に製作していただく事になっていました。


竹帽子


そして、とうとうイイ感じに被れる帽子ができたなあと思う頃には、手元には9個の竹帽子が編みあがっていました。今になって思うのですが、人の頭というのは実は丸くなく、前後に楕円形になっています。丸い形では、どうしても被り心地には限界があるようです、また、最初は良いと思って被っていても、数時間、あるいは一日使用する事も多い帽子なので、ちょっとした竹ヒゴの頭への当たりが痛くなる事もあります。帽子の多くは、柔らかく、ある程度の伸縮性もある素材で作られていて、硬い素材の帽子というのが見当たらないのは、こういう理由があるのではないかと思います。


竹編みの帽子では、ボクが小さい頃に虎竹の里で全員が愛用者というくらい流行していた竹ハットがあります。機械で竹ヒゴを取って、大量に製造される安価な製品ではありましたけれど、あのようなソフトな編み目のモノが実用性が高い竹帽子なのかも知れません。





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竹虎四代目

竹虎四代目
YOSHIHIRO YAMAGISHI

創業明治27年の老舗竹虎の四代目。100年守り続けた日本唯一の竹林を次の100年に繋ぐ。日本で二人だけの世界竹大使。

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