国産蒸籠と中華蒸篭
只今人気の蒸籠には、大きく分けると薄く剥いだ檜を何重にも重ねた強度の高い国産檜蒸籠と、お求めやすい海外製の中華蒸篭の二種類があります。機能性はどちらも同じですが、やはり日本製にこだわり長くご愛用頂きたい方は檜蒸籠を選ばれるし、初めて蒸籠料理に挑戦される皆様は中華蒸籠を購入されています。最近蒸籠を使いはじめたというお客様の中には無印良品で知ったという方も多いかも知れません。でも、蒸籠料理は蒸気で調理するのでスチームフードなどとも呼ばれて、竹虎でも20数年前から定番として静かな人気商品でした。
さて、今回修理に戻ってきた蒸籠は、国産の檜蒸籠です。見るからに堅牢そうな側面の檜部分は、ちょっとやそっとでは壊れそうにもありません。ところが、蒸籠の上下には竹が使われています。底部分には蒸気が通り抜けやすく熱が伝わるように、切れ込みの入った幅広の簀(す)が並べられていて、蓋部分には、登ってきた蒸気と熱を適度に受け止める竹網代編みが使われています。
修理のご依頼があったのは、底の簀(す)部分、害虫に喰われて穴が開きボロボロになっていたのです。店舗のように頻繁に使っていると、毎日熱が加わるため虫など皆無ですが、ご家庭での使用の場合は、お使いされるのが寒い季節に偏りがちな事も多いので仕舞っているうちに食害にあったりします。少しくらいの虫喰いであれば、熱湯での対処でお使いいただけますが、今回の場合は部材の交換をご希望されていました。
実は国産の蒸籠であっても、この竹材部分については国内製造できず、ほぼ輸入竹材が使用されています。前に竹虎にも底の簀や、蓋の網代編みができないだろうかと何度かお問い合わせいただいた事もあります。ご覧になられた皆様のご感想は、どうでしょうか?蓋の網代編みは、編み込む技術もあるし大変そうだけれど、底の簀は簡単な竹ひごだから製造できるのではないか...。そんな風に思われましたでしょうか。
確かに見た目は単純な幅の広い竹ひごのように見えますが、このようなシンプルで竹材を活かした部材ほど日本では製造できる所は皆無となりました。竹虎で竹楊枝や竹割り箸を国産で復刻する話したこともありますけれど、比較的安価に大量に製造せねばならないものは国産ではすっかり消えてなくなっています。そもそも竹を伐採する職人自体も少なくなり、このような竹製品用の竹材を確保するのも難しいのが残念ながら国内竹産業の現状です。
今回、国産蒸籠メーカーさんに修理をお願いしてやり替えてもらった部材も中国製のものです。この部材だけを中国国内で大量に製造してもらって、日本製の蒸籠製造の伝統を守っています。網代編みの蓋部分も、網代編みされた状態で輸入して国内で蒸籠蓋に取り付けられます。キッチンに並べて、食べ物に使う竹製品ですから、屋外や室内装飾に使用される竹のように、防虫剤・防カビ剤といった薬剤は使用できません。また、防虫のために旬のよい時期だけの竹材を使うなどという細やかな管理も難しいかも知れませんので、一番の虫対策はできるだけ「使う」ことです。
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