
竹虎工場見学
先日、虎竹の里に高知市文化振興事業団さんの取りまとめで、30数名もの皆様が会社見学にお越しくださいました。最近では「産業観光」や「ファクトリーツアー」なんていう格好の良い言葉も聞かれますが、ボクたちのできることは、そんな大げさなものではありません。ただただ、この虎竹の里にしか生えない不思議な竹のこと、そして日本の暮らしを支えてきた竹細工のリアルを、一人でも多くの方に直接お届けしたい。そんな一心でお迎えさせていただきました。

地域資源の竹
この日は絶好の観光日和!大型バスで到着された皆様に、まず虎竹の里のわずか1.5キロの間口でしか成育しない虎竹の山々を遠くからご覧いただきます。あの山の麓から、山頂までは竹があるけれど、峠を越えるとウソのように竹がなくなる、この地域特有の竹林のお話をさせていただきました。

右から左まで山の頂上を見渡して、この山の向こうには虎竹が生えてない不思議。この虎模様は土質の細菌のせいとも、潮風や気温のせいともいわれていますが他の地域に移植しても何故か色づかないミラクルバンブーなのです。

孟宗竹と真竹、淡竹の見分け方が分かりますか?
さて、ここで皆さんに質問を投げかけさせていただきました。日本には、孟宗竹、そして真竹、淡竹(はちく)という三大有用竹があります。「皆さん、孟宗竹と真竹、淡竹の見分け方が分かりますか?」

忘れられる、竹と日本人の深い絆
見学の皆様は人生経験豊富なお年を召された方が中心でした、しかも自然豊かな高知に暮らす皆様なので、内心見分け方をお答えいただける方も二人、三人はおられるだろうと思っていました。ところが、竹のことについて知っているよ、とお話される方はお一人もいません。これほどまでに竹が人々の意識から遠ざかっている。地方に暮らす方々でさえこの状態ならば、都会の皆様はいかほどでしょうか。プラスチックや新素材は素晴らしい面もあるものの、それらに取って代わられ、安価な輸入品に押され、日本の暮らしから竹が消えていく。それは、日本人が古来より育んできた自然と共生して生きる伝統を失うことではないかと寂しい思いがします。

竹取物語、かぐや姫の竹とは?
ボクがどうしてもお話させて頂きたいのが、日本最古の物語である竹取物語のかぐや姫が、どの竹から生まれたかというお話。実は、物語が作られた頃には、大きく立派な孟宗竹は大陸からまだ渡ってきてはいませんでした。真竹か淡竹かのどちらかだと推察されるのですが、虎竹の仲間であり竹表皮に白い粉をふいたような淡竹は、薄暗い竹林などで陽の光に照らされると、その部分がまるで輝いているかのように見えることがあります。そこで、竹取の翁が特別な竹だと思って伐採した竹は、間違いなく淡竹だと思っています。かぐや姫の里は、全国に何か所もあるようなので、虎竹の里も名乗りを上げてもいいかも知れません(笑)。

国産竹ざるとエビラ
工場では、ちょうど国産竹ざるやエビラの製造をしているところでした。国産竹ざるは、高知の竹文化が生み出した伝統ある製品です、地元に多い孟宗竹を多用して無骨ながら堅牢な竹編みが特徴です。また、エビラ(竹編みの平籠)は、かつては養蚕が盛んな頃に蚕棚として作られたものが、農家さんなどで干しざるとして使われてきました。現在では梅干しの土用干しに利用したり、フードロスで関心の高まっている干し野菜に使ったりするのに最適だと再注目されている竹細工のひとつです。

このような干しざるは、ホームセンターに行けば安価な輸入製品がありますけれど、自分の家族のために食材を作ろうとされている主婦の方を中心に安心・安全な国産の竹ざるとして評価をいただけるようになっています。

真竹で編みこむ茶碗籠には、ボクの小さい頃からの思い出があり、ずっとこだわってきました。ご関心のある方は下のリンクから茶椀籠と土佐のおきゃくの関係をご覧ください。
竹茶碗籠のある暮らし~食器の水切り、収納かごとしての魅力~

竹トラッカー運ぶ笑顔
見学の目玉の一つとなったのが、日本唯一の虎竹電気自動車「竹トラッカー」です。この車は、車体から内装に至るまで、虎竹の編み込みで仕上げた世界に一台だけの存在。2016年にクラウドファンディングで皆様に応援いただき、高知から横浜まで1000キロを走破して苦楽をともにした同志のような存在です。「ええっ、これが本当に走るんですか!?」「竹で車ができるなんて信じられんねえ!」展示してある虎竹の車体を目の当たりにした皆様の驚きと、その後の満面の笑み。スマホを取り出して写真を撮る方、そっとボディを撫でる方。竹が忘れさられた古い素材ではなく、新しい未来を創る可能性の素材であることを、ちょっとだけ感じた瞬間でした。

宇三郎の竹
竹は、放っておけば荒れた竹藪になりますが、適切に伐り出して管理すれば、これほど気持ちの良い場所があるのかと思うような竹林になります。また、竹を道具として活用すれば、美しく、力強く、皆様の生活の中でうるおいを感じさせ、毎日を豊かにしてくれる存在はありません。そんな竹の真ん中に、ボクの場合だと虎竹があります。132年前に、初代宇三郎が大阪天王寺で創業していたのに、いつの間にか屋号が「竹亀」から「竹虎」になってしまうほど虎にのめり込み、最終的には本社を虎竹の里に移してしまうほど魅了された竹。そんな気持ちが、ようやく分かりはじめてきたところです。

コメントする