2026年7月 3日の投稿

50年の時を刻む竹籠の美しさを、竹虎四代目が徹底解説

修理で届いた竹籠


お父様の思い出が詰まった竹籠の修理

竹虎では、出来るだけ皆様のお手元にある竹細工の修理をさせていただくようにしてます。先日も、お客様から竹籠修理をしてほしいとのお問い合わせがあり、ひとつの籠が届きました。半世紀もの長きにわたって愛用されていた竹編みのゴミ箱でしたが、お客様のお父様が体調を崩されて入院されていた際、昇降式のベッドに挟まってしまい、口部分や本体の竹編みがボロボロに壊れてしまったのだそうです。お父様は、お気に入りの竹籠が壊れてしまった...と、大変残念がられていたとのこと。


壊れた竹籠部分


虎竹を使った復刻

その後、長い月日が流れても、ご家族はずっと気になりつつも、なかなか修理に手をつけることができなかったそうです。ようやく気持ちに一区切りがつき、どうしても直してほしいと竹虎にお寄せいただきました。白竹で編まれた口部分が外れて、予想以上に傷んでいる籠を見て、現在竹材も手元にないのでこのまま手直しすると高さも違ってくるしどうしようか?少し迷いました。けれど、お客様のお父様への強い思いに何とか応えたいと、虎竹を使って復刻修理することに決めたのです。


虎竹で修復


職人の技が光る「復刻」の美しさ

そうすると本当に見事に美しく蘇りました!底部分は菊底編みという技法で精巧に編まれており、そこから立ち上がったヒゴに長いヒゴを巻き付けていく伝統的な実用籠です。特に感動的なのは、口部分のねじり編みと籐巻きの再現度です。元々ついている約50年ものの籠のねじり編みと、今回職人が新しく編み直した部分を見比べても、ヒゴの幅、厚み、そしてねじりの表情が全く同じ。籠のあしらいも、お客様の籠そっくりに仕上げさせていただいてます。


青竹温泉籠の菊底編み


スゴイ発見!実は「青竹」から生まれた籠

そして、今回の修理の中で私にはスゴイ発見がありました。一見すると、真竹を湯抜きして作った白竹の籠が50年経って飴色になったものに見えます。けれど、菊底編みの外側部分をよくよく観察してみると、かすかに青みが残っているのです。つまり、この籠は白竹ではなく、真竹をそのまま編み込んだ青物細工の籠だったのです!


青竹湯カゴと修理のチリ籠


足付きの温泉籠(湯籠)

ちょうど今、お客様のリクエストでお風呂でも濡れずに使えるようにと新登場した足付きの温泉籠(湯籠)があるのですが、これは今年伐採したばかりのみずみずしい青竹で編まれています。青竹の温泉籠も、50年経つと飴色のゴミ箱と同じような色合いになるのです。日の当たる周りの部分はすっかり飴色に変わっていますが、ずっと日陰になっていた底の裏側だけに、お父様がお求めいただいた当時の青さが奇跡的に残っています。竹の経年変化の奥深さに、ちょっと感じ入ります。


飯籠


竹は世につれ、人につれ

今回は、素晴らしい竹籠との出会いがありましたので、更に手元に新旧ある飯籠などとも見ながらYouTube動画で解説してみました。昔は炊いたご飯を、保温ジャーの代わりにこういった通気性の良い飯籠に入れ、軒先に吊るして保存していました。日本の夏は蒸し暑いですから、ご飯を傷めないための先人の知恵だったのです。




動画に登場する飯籠も、数年前に壊れた足や蓋だけを真竹で修理したため、修理箇所だけが新しく、本体は年月を経て渋い赤茶色(磨き細工独特の経年変色)に変わっています。面白いのは、昔の飯籠には驚くほど大きなサイズがあることです。考えれば当然なのですが、その頃は大家族で、ご飯の消費量は今とは比べものにならない程でした。ボクの父なども、激しい竹屋の仕事でしたから「竹がご飯を食べる」と言って一人で5合ほどご飯を食べていたそうです。それが時代とともに一世帯の人数が減り、ご飯を炊く量が減るにつれて、飯籠のサイズもどんどん小さくなっていきました。まさに「竹は世につれ、人につれ」。竹籠の形や大きさには、その時代の日本人の暮らしぶりがそのまま映し出されているのです。


それぞれの竹細工


先人の思いを繋ぐ、エコな生き方

ここ数十年、日本ではプラスチック製品が増え、少し壊れたらすぐに捨ててしまう使い捨ての文化が主流になってしまったのではないでしょうか。ほんの数十年前までは、生活の中や仕事で使う道具でも壊れたら丁寧に直して、修理しながら何十年も大切に使い続けるのが当たり前でした。加工性が高く、身近に素材が手に入る竹が好まれた理由がそこにあります。そもそも日本人の暮らしは、エコであり持続可能なものだったという事を忘れてほしくありません。


国産竹ざる


土佐伝統のサツマ(竹ざる)

高知県の伝統的な竹細工は、身近にたくさん生えていて身が厚く、材料が多く取れる孟宗竹を主軸に発展してきた歴史があります。ボクたちが今まさに沢山作っている梅干しざるなども、あえて真竹ではなく、先人たちの知恵と思いを受け継いで同じ孟宗竹を使って復刻させています。


虎竹で修理した竹籠


先人があっての、現在

100年、130年と守り続けてきた竹虎の歴史も、私が一人で築いたものではありません。曾祖父、祖父、父、そして地域の職人さんたちが繋いできてくれたからこそ、今があります。若くて青々とした青春時代の竹も気持ちが良いものですが、20年、30年、50年と歳月を重ねるごとに、深みのある美しい飴色へと変わっていく竹の姿は、人としての理想的な年齢の重ね方をも教えてくれている気がします。今回もひとつの竹籠修理を通じて、竹の持つ強さ、そして直せば何度でも生まれ変わる竹の素晴らしさ、そして、人と竹の繋がりを改めて感じて幸せな気持ちです。



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竹虎四代目

竹虎四代目
YOSHIHIRO YAMAGISHI

創業明治27年の老舗竹虎の四代目。100年守り続けた日本唯一の竹林を次の100年に繋ぐ。日本で二人だけの世界竹大使。

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