不思議な竹の雄雌

 
男竹


竹冠の付く漢字の多さからも、竹と人の暮らしは古来よりずっと深く結びついてきた。中国のことわざに「可使食无肉、不可使居无竹(食事で肉がないのは許せるが、暮らしに竹がないのは許せない)」と言うものがあると教えられたが、実際日本でも生活に竹は欠かせないパートナーだった時代がある。


女竹


そのせいか不思議な伝承も多く、ひとつが男竹と女竹だ。竹に男女があるのか?筍には聞いた事がある等、いろいろな話があるけれど見分け方は簡単で、竹の根元から見て行って最初に出ている枝の本数で決まる。一本なら男竹、二本なら女竹だ。だから何かが違うという事はないが、一体誰が言いだしたのだろう、オモシロイ。




竹に男や女があると思われるほど、人に近しい関係だった竹。しかし、神秘的な生態には人智を超えるものがあって分からない事だらけでもある。


スズ竹市場籠、竹虎四代目(山岸義浩)


例えば自分が愛用するスズ竹市場籠。ササの仲間の小さな竹だが、粘りが抜群で強さがあるのに優しい手触りとしなやかさがある。修理しながら親から子へ孫へと使える秀逸な素材であるが120年に一度と言われる開花があってスズ竹の竹林は枯れ果てている。真竹や淡竹(はちく)も120年に一度、孟宗竹は60年に一度、イネ科らしく稲穂のような花を付ける。不思議としか言いようがない。




かぐや姫の宿る竹?

 
かぐや姫の宿る竹?


竹取の翁は竹林で光輝く竹を見つけて、その竹の中のかぐや姫を連れ帰ったと竹取物語にあります。実際に光輝く竹などあるのだろうか?実は梅雨時の孟宗竹の竹林で驚くほど明るく光って見えるかぐや姫の竹と出会った事があって以前の30年ブログにも書かせてもらいました。


孟宗竹


この日の葉が生い茂る少し薄暗い孟宗竹の竹林は、所々に明るい日が差し込んでいましたのでその中の一本がまさにかぐや姫の竹のように輝いて見えていました。


かぐや姫の宿る竹?


ところが、前からご購読の皆様は既にお分かりのように日本最古の物語と言われる竹取物語が書かれた頃の日本には孟宗竹はありませんでしたので、竹取の翁が見つけた竹はこんな風ではなかったはずです。それでも白く輝いて何やら話しかけてくれているのを感じます。




竹の秋と竹の花、そして竹てんぐ巣病

 
竹の黄葉、竹の秋


昨日から竹の秋についてお話しさせて頂いている。竹は昔から日本人の暮らしに密着して一日として欠かす事のできないパートナーと言ってもよい存在だった。全国どこで生活される方であっても、多くの場合は少し注意をするだけで身近に繁っている竹を見る事ができるのではないだろうか。


竹の落葉、竹の紅葉


国内の森林面積に占める竹林の割合が、わずか0.6%しかないのにこれほど目につくのは竹がいかに人の生活圏に植えられて役立ってきたかという証である。そして、その竹が紅葉しているのだ。燃えるような真っ赤な色合いで主張しないところが竹の奥ゆかしい所で、紅葉ではなく黄葉と呼ぶのがふさわしいと思う。


竹てんぐ巣病


竹の葉が黄色くなっているお陰で、実は今の山里の景色は決して生命力に溢れる美しさではない。更に近年は北から南まで蔓延している竹てんぐ巣病があって竹林が疲弊しているように見えてしまう。


竹の秋と竹の花


高速道路が貫く高知市北山はかって筍の産地として知られた地域でもある。ここ20年だけでも、久しぶりに帰高した人が驚くほど広がりを見せている竹藪の薊野トンネル付近をご覧いただいている、左手前は黄葉した竹、トンネル口に見える竹は罹患している竹たちだ。


竹の花


そして前にからお話させてもらっているように竹の開花があって、まさに今の竹林には二重苦、三重苦のような状態だ。しかし、竹の黄葉は新しい若葉の芽吹きのためでもあるし、竹の開花も次世代に繋いでいく大自然の営みである。てんぐ巣病も、竹が生まれ変わる時代の過渡期の症状と思って長い目で見ていきたい。


誰にも知られない竹の秋(竹の紅葉)

竹の秋、竹の紅葉


松や梅と共に古来縁起のよい植物のひとつにが数えられているは何故だろうか?きっとそれは、その凛とした姿に人が魅了された事、そして雪の降る寒い季節にあっても青々とした葉を繁らせる神秘的な生命力あふれる様からではないかと思う。だから竹の秋とか、竹の紅葉、竹の落葉と言ってもピンと来る人はあまりいないかも知れない。


竹の紅葉(黄葉)


ところが、一年を通して変わる事がないと思われる竹林にも秋があり、紅葉があり、落葉があるのだ。ただ竹の場合は、普通の樹木とは反対に春に紅葉の季節がやって来る。ちょうど筍が頭を出す頃に、竹の葉は黄色く色づき静かに葉を落とす。


竹の紅葉(黄葉)


多くの竹は人里に成育しているので、実は沢山の方が毎年繰り返される竹の営みを目にしているはずなのに、関心がないのか気づいていない。もしよかったらこの30年ブログを読み終わった後、近くに山があれば竹林を注意深くご覧いただきたい。


竹の紅葉(黄葉)


「そう言えば、いつもの緑色の景色が少し色あせて見えるような...」それこそが竹の紅葉なのだ。


竹の秋、竹の若葉


それでは落葉はどうだろうか?さすがに落葉して裸になった小枝ばかりの竹林なら誰でも気づくはずである。しかし、やっぱり竹には神秘的な力が宿っている。黄色く紅葉し落葉していく小枝には既に次の世代を担う若葉が芽吹いているのだ。古い葉が散っても、交代するかのように青々とした新しい葉が大きく育つので、誰にも竹の秋は知られない。


「ウチは国産竹串を使ってます」

竹串


新型コロナによる行動制限の緩和で飲食店が少しづつ稼働しはじめたからでしょうか、夜の街にも賑わいが戻ってきたようで国産の竹串には週に何度もお問合せを頂くようになりました。焼き鳥屋さんやホルモン焼き、あるいは川魚のお店まで、こだわりのお店も多いようで単価は多少高くなっても日本の竹を使った製品を求められていると感じています。

 
国産竹串、竹虎四代目(山岸義浩)


現在、このような竹串については国内で流通しているほとんどは輸入されたものです。中には海外の竹材が柔らかく肉を刺しづらいので、しっかりした材質の国産品を探されてると言われる方もおられます。ところが、自分達もできるだけ国産竹串を使っていただきたいと思うものの数量が足りていません。


※柔らかいのは海外の竹質のせいだけではありません。肥料を使って筍を生産する竹林の場合、育ちが良く材質が柔らかくなりがちで竹製品の素材としては適していません。これは日本の竹林でも同じ事で筍栽培をする孟宗竹の間伐材は、たとえ沢山あっても使えないのです。


竹串


こじんまりとしたお店で、何とか数は揃いそうでも最後には値段がかみ合いません。「ウチは国産竹串を使ってます」なんて事をウリにする焼き鳥屋さんは、あまり見た事がないです。つまり安価な海外製品が多々ある中で、日本製竹串と言ってもお客様に対してアピール力が乏しく、安心して使いやすいと思いながらも価格の相異に諦めてしまうのでしょう。


何故もっと安価に製造できないのか?竹串など簡単そうなのに。普通に考えれば本当にその通りかも知れません、しかし実際には竹は一年通して伐採できる訳ではないので、これだけでは収入が安定しないから山の職人がいなくなります。材料である竹を苦労して集めたと思ったら、今度は加工せねばなりませんが実はこれも下のYouTube動画で紹介しているように相当な手間がかかっています。工場では加工機械を多用していますものの、この調整が大変で別サイズなど簡単に出来ない理由もお分かりいただけるのではないでしょうか。竹串をお問合せされようと検討される方には動画「感激の国産竹串工場!太い丸竹から細い1本の竹串が生まれる!」を是非ご覧いただく事をオススメします。




発見!タケトラカミキリの蛹

チビタケナガシンクイムシの食害


竹籠をお使いの皆様の中で、久しぶりに手にしたら見慣れない粉が出ていた等という経験のある方もおられるかと思います。年に何度かは竹虎にもお客様からお問合せ頂く事もあるのですが、暖かくなってくる春先から梅雨時にかけては特に多くなります。

 
竹の虫の喰われた竹籠


この見慣れない粉の正体は竹の虫です、今回は古いサンプルを元に復刻していた淡竹で編んだ祝儀籠が虫に喰われています。現在では、ほとんど使われていませんが20数年前までは婚礼の決まった際に鯛を入れて持ち運ぶ、この祝儀籠が地元で活躍していました。竹表皮に小さな穴が開いていますので、体長3ミリの小さな見た目を侮れない強力な食欲を持ったチビタケナガシンクイムシの仕業と分かります。


タケトラカミキリによる根曲竹の食害


自分の右手にもった根曲竹の手付籠の食害は更に酷いもので、このサイズの穴を開けるのは大型のタケトラカミキリが犯人です。持ち手の丸竹はボロボロになるほど食害にあっています、しかし実際見た目には見過ごしてしまうほどですから定期的に手にしていないと気づきません。


テングス病(Aciculosporiumtake)、蔓自然枯


近年の竹の虫の多さは一体どうしたものでしょうか?その原因はいつくか考えられます。ひとつは温暖化による生態系の変化で、先ほどの根曲竹などが典型的ですけれど寒い地方の竹にこれほど虫が入る事はあまり経験のなかった事です。害虫が活発に活動できる環境になっている事に加えて、竹林に広がる天狗巣病も気になります。これからの梅雨時など多湿になりやすい時期に胞子が飛んで感染する植物の病気で、関東あたりまでの竹林では良く見かます。一帯が罹患していて天狗巣病でない竹を探すのが難しいような地域もあるほどです。




竹の生態は不思議で真竹や淡竹は120年に一度、孟宗竹は60年に一度、竹の花を咲かせる言われています。2018年に虎竹の里からも遠くない土佐市での孟宗竹林で日本最大級の部分開花を見つけました。竹林を所有されるお年寄りも一体何が起こったかとビックリされていましたけれど開花すると地下茎で繋がっている竹林は、この動画でご覧いただくように全体が枯れてします。開花に向かうことによって竹自体の生命力が落ちて結果として天狗巣病や害虫に対する抵抗力が弱まっていくのです。


タケトラカミキリの蛹


何とタケトラカミキリの蛹です!虫の喰った根曲竹の持ち手から珍しいものが出てきました。白いイモムシのような幼虫や、竹から竹へと飛び回る成虫は目にする事が多くとも蛹はかなり珍しいものです。


このような竹の虫への対処方は具体的にどうすればいいのか?竹虎ウェブサイト竹製品のお手入れ方法についての中に「竹の虫について」がありますのでお困りの方は参考にしてください。




美しい竹の切り口

 
美しい竹の切り口


とても美しい竹の切り口です、何と竹林から竹を伐採した時そのままの切り口だと言うので驚いて暫く声が出ません。しかし、こうして見ていると竹は竹林に立つ姿が一番ではあるものの、こうした切り口ひとつでも人に熱く語りかけてくるものがあるものです。模様のように見えるのは維管束と言う竹の水分や養分を運ぶ細い管です、竹表皮に近いほど密集しているのがお分かりいただけると思います。だから表皮近くの繊維はしなやかでも強く、竹細工に多用される部分です。


虎竹の切り口


日本唯一の虎竹の切り口はどうか?と言えばこんな感じで、実はあまり美しいものではありません。先程の白竹は丸竹のまま使われますので切り口そのものも作品になるのに対して、虎竹は丸竹で使う事は少なく、その場合でも必ず切り直すので竹林での伐採ではむしろ竹表皮へのキズに注意しています。


虎竹の山出し


竹林からの搬出も一本づつ担いで運び出せるのであれば、それが一番かも知れません。しかし、虎竹の里のように急峻な山道を30分も登っての作業ではある程度の効率を求められますので昔ならキンマ(木製のソリ)、現代は運搬機に載せて山出しします。最終的な製品が異なるので、やり方は違いますが長い時間をかけて培われ最適化した其々の竹の形です。




竹の顔とは?

 
竹一重切用竹材


華道で使われる竹一重切花入を創作されている職人さんのへのこだわりも凄いものがある。広い竹林を歩き回ってようやく一本の竹を選ぶのだが、その竹の切り口を見てあまりに綺麗なので驚いた事がある。人間国宝の生野祥雲斎さんは長い布袋に竹を入れて運び出したと聞く、そこまでではないにせよ同じように竹林からの運搬にも気を付けられている。


竹林


虎竹の里の伐採や搬出とは随分違うけれど、これは竹材の用途に関係している。自然の丸竹そのままを花入れに製作するので竹の姿や竹肌をとても大切にするのだ。シミや自然な割れなども珍重される、流派によるのたろうか?シミの付き具合を見れば好まれる、好まれないが一目で分かると職人は話す。


竹花入れ用竹材


ところで、竹には表と裏がある。虎竹は、太く割ったり細く割ったりして丸竹のまま使うことは稀だからあまり考えた事がない。先程の乾燥させた竹材を油抜きすると天然の油成分が光って美しい竹肌に趣のあるシミが浮かびあがる。さて、どちらが表だろうか?


実は向かって右側が竹の表の部分だ。竹が成長していく過程で太陽の当たる表側は早く硬くなり反対に裏側は柔らかいままに伸び上がり微妙に節間に違いが出るのである。節が少しだけ短い方が表、つまり竹の顔とも言える。節間が短いので、ゆっくりと曲がって頭をたれるイメージか...奥ゆかしい竹らしい。


山深い里の孟宗竹

 
四国の山々


NHK大河ドラマファンなので「鎌倉殿の13人」も毎週楽しく観ています。今のところ物語が始まったばかりなので関東での話が中心ですが、源氏と平氏の戦いが進んでいく中で西日本も舞台となっていくかと思います。ご存じのように、ゆくゆくは平氏が破れてしまうわけなのですけれど敗走して逃れた武者が四国の山深い土地に数々の平家落人伝説を残しているのです。国指定重要有形民俗文化財ともなっている祖谷のかずら橋などは有名です、源氏の追手が迫った場合は谷底に切り落とせるようにかずらで編まれていると言います。源氏の討伐がいかに激しかったかを今に伝える逸話と共に、それでも逃げおおせられるほど四国の山は深く険しいのです。


旬の筍


軽四自動車でないと運転が難しいような細く曲がりくねった山道を登っていきます、自分は今一体どの辺りにいるのだろうか?さっぱり分からなくなりました。車のドアを開けると気温は急に下がっているので標高の高さを感じます。改めて四国の山の大きさを思いながら見渡すと、峰々には人の暮らしがあり、驚くほど家の周りの畑が美しく管理されていて自分たちの土地を大切に愛着を持って生活されている事が伝わってきます。そして、このような山深い場所にも孟宗竹です。かっては貴重な食料として、建材から生活道具、防災まで人の毎日になくてはならなかったからこそ民家の近くに青々と繁っています。


金明孟宗竹


先日ご紹介した金明孟宗竹などは同じ孟宗竹でも鑑賞用です。植えられるようになるのは江戸時代の事、当時どの程度あったのか分かりませんけれど武家のステイタスシンボルとして大きな孟宗竹を庭に植えるのが流行っていたそうなので、もしこんな美しい竹があればさぞ自慢の種で来客も多かったかも知れません。




竹葉が白く枯れている!?

 
枯れた真竹の葉


竹林で葉が白く変色してしまっているを見かけるようになりました。一度や二度ではありません、葉緑体のDNAが突然変異して白くなる事がありますが、それとはまったく異っています。近づいて触ってみるとカサカサに乾燥して枯れてしまっているのです、青々とした生命力に溢れている竹が見る影もないほどなので一体どしたのかと気になります。


白く枯れた竹葉


遠くからでもすぐに気が付くのは比較的本数が少なくて青い竹葉の中で目立つからです。この真竹の場合にも周りには元気な竹が沢山生えていますし、この竹自体も稈の色合いなどみると枯れているようには見えません。


孟宗竹の開花


竹が枯れると言えば開花を真っ先に思い浮かべます。孟宗竹は60年に一度、真竹や淡竹は120に一度という長い周期で花か咲き竹林は全て枯れてしまいます。近年、そろそろ開花時期が近づいてきたのか全国的に淡竹の開花が見られていて、虎竹の里から車で20分程度の孟宗竹の竹林でも部分開花がありました。


孟宗竹の花を見上げる竹虎四代目(山岸義浩)


竹の花と竹虎四代目(山岸義浩)


ところが今回の竹葉が枯れる様子と開花で枯れるのとは様子が違います。同じように白く見えても開花の場合はイネのような花が白く見えているのです。


真竹のテングス病


護岸竹として整備されてきたこの真竹にも他の竹林と同じようにテング巣病が広がっていました。


てんぐ巣病


この病気のせいで枯れていくのだろうか?


竹枯れ


光合成できなくなった竹は当然枯れてしまいます。せっかく生を受けた竹、護岸用として人の役に立ち役目を終えたとも言えるものの、このような姿の竹はやはりあまり見たくありません。