黒竹伐竹

黒竹伐竹


竹を一年中伐っていると思われている方も多いようです、だから作りたくとも竹材が無いので作れないと言う話はお客様によって何度もご説明させて頂くお話しです。そんな伐採のシーズン真っ盛りに黒竹の伐採もはじまりました。


竹林の空


虎竹の里からすぐ近くには、虎竹同様に昔から笛などの素材として好まれた黒竹の産地があります。近年は需要低下や輸入材の影響で多くの職人が竹から離れ荒れている竹林も増えていますが竹虎では無くてはならない竹材です。


虎竹縁台


例えば虎竹縁台、細身の黒竹を並べて座面にすることによって独特のしなりのある座り心地になります。


別誂え黒竹玄関すのこ


黒竹玄関すのこも有難い事に20年前に考案して以来、ずっとご愛用者の方がおられる製品のひとつですが、革靴を脱いでホッと癒されるような気持ちのよい足触りは黒竹あっての事です。


黒竹伐採


自分の記憶にある黒竹の竹林は淡い緑の葉が茂る中に、真っ黒い竹が垂直に立ち並ぶ美しい光景です。竹は竹林にある時がやはり一番、あの生き生きとした竹の表情は忘れません。






根曲竹の生命力

根曲竹竹林


根曲竹は高知などでは身近ではないからかも知れませんが、の中でも非常に気になる素材です。「竹」と名前が付いているものの千島笹とか根曲笹という別名があるように笹の仲間、雪の多い地域で成育するので寒い季節は、ずっと雪の下敷きになっていて、そのために根元が曲がるから根曲竹と言うのです。


根曲竹の山


虎竹の古里焼坂の峠は標高228メートルなので、これほど高い山の竹林にはあまり来る機会はありません。景色の美しさは素晴らしいものですけれど最近多いと聞くクマがどうにも心配です。


根曲竹竹林


根曲竹の竹林は、さすがに笹類だけあって密集して生えていて竹をかき分け、かき分けして中に入るのにも一苦労。なるほど、これは同じ竹の伐採でも孟宗竹、真竹、淡竹などとは全く違います。


根曲竹の束


根曲竹は自分などからすれば籠やザルなどの細工用のイメージしかないのですが、実は農業資材としての一面もあって6尺(約1.8メートル)から9尺(約2.7メートル)まで束にされて販売もされているのです。近年はご多分に漏れず海外から似たような輸入竹材が沢山入ってくるものの、耐久性が倍も違うのでプロ愛用は全てこの根曲竹です。


根曲竹伐採


しかし、竹林に実際に入ってみて実感しますけれど9尺サイズの根曲竹など全体の5%だそうですが本当です。そもそも地面を這うように伸びる竹なのでそんなに背丈の高いものなど全く見当たりません。根曲竹職人は、そんな竹を一本づつ起こしながら伐採していきます。時々「ピーーーーーー!ピーーーーーー!」と笛を鳴らして警戒しながらの山出しが続きます。


根曲竹


前のシーズンの根曲竹が残っているのを拝見した事があります。さすがに一年経つと青々として色合いはなくなり、まるで真っ白く晒したようです。けれど、この竹も良くみればかなりの太さです。竹林にもよるかも知れませんが、これだけの根曲竹を集めるのは大変ではないでしょうか。


生きている根曲竹


そして、こちらが伐採したての生命力に溢れるような根曲竹です。その昔、活躍した超一流の竹作家もこの竹を愛で沢山の作品を遺しました。


飯塚琅玕齋


まだ竹が芸術の世界では認められていない時代。押しつぶされながらも粘強く野趣あふれる竹の姿を、自分達竹人にきっと重ねていたと思います。






敵ながら天晴!...言うてる場合ではない(本当は)

蕎麦せいろ


この夏も暑かったです、そしてコロナでご自宅で過ごされる機会も多かったと思います。ざる蕎麦や素麺など季節定番の食べ物をご家庭で食されるためなのか、竹ざるや蕎麦せいろなども例年に比べて非常に多くお求めいただいたように感じています。


蕎麦せいろ


今年からは竹を高温窯で処理して防虫、防カビ効果を高めた炭化加工の製品に切り替えています。竹製品をご愛用いただく皆様にはあまり気にされる事もなく、ご存知の方もそれほど多くはない竹の虫ですが家庭で多用しますザルや籠にはチビタケナガシンクイムシという小さな虫が入って細かい穴を開けてしまいます。


タケトラカミキリ


身の厚い孟宗竹の製品などにはタケトラカミキリと言うカミキリ虫の仲間が入る事が多いです。この虫の開ける穴は遠くからでも見えるほど大きく、竹材自体にもダメージを与えますのでとてもやっかいです。さすが虎竹の里は竹が多いので普通に実家の玄関にもこうしていてくれたりします(笑)。しかし、さすが竹を喰う虫...美しい、敵ながら天晴!
(ちなみに「タケトラ」と名前付いてますが竹虎は全く関係ありません!当然ですが。)


孟宗竹


旬の良い時期を選び、しっかり管理している竹でも虫害を100%防ぐことはできません。自分の大嫌いな薬剤処理をした竹材でも入ってしまう竹には不思議と虫が入るのです。近年増えて来た虫の原因のひとつには気候変動が考えられます、冬でも寒くなく明らかに昔の季節感とは違っているので害虫の成育に変化が出ているのかも知れないし、竹材伐採時期そのものが微妙に異なってきている事も感じます。


そして大きな原因は山の職人の不在です。竹林を健康に美しく保つためには人の手が欠かせないものの年々高齢化して以前のような管理が困難になりました。竹の元気がなくなると、てんぐ巣病という植物病害が起こりますけれど他の竹林だけでなく虎竹の里でも見かけます。


このような、いつくかの要因が重なり良質の竹材ばかりが山から出てこない中で製品にせざるをえないことが虫害とは無関係ではありません。自分達も最大限の努力と工夫をしながら、この問題とは向き合っていくのは当然ですけれど、これからはお客様にも、このような日本の竹が置かれている現状を少しづつご理解いただいていく事が必要です。





人知を超える竹と笹の違い、竹の花

淡竹

と笹の違いについてご存知でしょうか?何となく背丈が高いものが竹で、低いものが笹と区別されている方が多いようです。これは確かに間違いではなくて概ね当たっています、しかし実は背の低い竹もあって大きさだけでは判断できかねます。竹も笹も筍から大きくなりますが、この筍の皮が成長に伴いすっかり剥れてしまうのが竹であり、ずっと竹皮が剥れないものが笹という見分け方もあります。


矢竹


矢竹などは竹皮がついたまま剥れない種類であり笹類です。しかし、これも竹皮が剥れ落ちる笹類があったり竹皮が付いたままの竹類もあるようで明確に分類することは難しいようです。呼び名についても「竹」と名前がついているのは少しおかしいのではないでしょうか。根曲竹、スズ竹など竹細工に多用されるものも「竹」と呼ばれるものの全て笹の仲間です。反対に高知県で洗濯籠に編まれてきたメゴ笹(オカメザサ、カグラザザ)は「笹」と言うのに竹類です。


こうして呼び名が混乱している事自体、竹と笹の明確な違いの難しさを表しています。世界に1300種類、日本国内だけでも600種ある竹笹ですから仕方ないかも知れません。


黒竹開花


近年、孟宗竹の開花が見られるようになっていますけれど高知県では黒竹の開花も始まっています。一年を通して青々と美しい竹林に、突如としてこのような光景が現れるのですから、竹の開花を不吉な事の前触れとしていた時代もあるのも納得できる気がします。


黒竹の花


120年に一度という人の一生を思えば長いサイクルなので竹の開花のことも詳しくは分かっていません。竹と笹についても、竹の開花についても、虎竹の色づきにつても全て神秘のベールに包まれたまま、竹は人知を超えているのです。






続・恐るべし根曲竹

小菅小竹堂作根曲竹掛花籠


昨日は、ほとんど見られない根曲竹玉入れ籠をご紹介いたしました。雪に鍛えられる寒い地方の竹ですから西日本ではあまり見る機会がありませんが、関東で活躍されていた小菅小竹堂さんの作品に根曲竹の掛け花籠があったことを思い出しました。新潟のお生まれですので身近な竹と感じられていたのかも知れません。


飯塚琅玕斎作根曲竹掛花籠


竹工芸の世界で人気を誇る飯塚琅玕斎作の花籠にも根曲竹は使われています。東日本では日常的に籠やざるに多用されてきた竹材なので、こうして偉大な大作家の方が花籠に編まれるのも自然なことだったのです。


竹ペン置き


そう言えば自分の愛用するペン置きにも根曲竹は使われています。一見根曲のようでないと思われそうなものの実は竹と竹とを縛って留めてある部分が根曲竹。このように細かく、まるで籐のような柔らかな使い方ができる竹材は本当に稀です。


根曲竹ステッキ


ちなみに自分がたまに使う事のあるステッキにも根曲竹のものがあります。この細さで頼りなく感じる方もおられる事かと思います、しかし全体重をのせてもしなりはするものの折れるように素振りは皆無。手に粘りと強さが伝わってくるよう、しかも割れもしない、凄い竹材です。


続・竹と笹

ホウライチク


をお話しする時に、もうひとつ忘れてはならないのがバンブー類です、真竹や淡竹のように地下茎を伸ばして広がることがなく株立ちで成長する竹です。高知で良く目にします蓬莱竹(ホウライチク)は、元々は熱帯系の植物で日本には火縄銃に使うために入って来た竹ですが、株立ちで田畑に広がる事もなく、しっかり土壌を固められる事から護岸用として多用されてきました。


何度かお話ししていますように、川の流れの急になるポイントには良く植えられているので小さな頃からずっと不思議に思っていた竹なのです。高知ではシンニョウダケとも言われる竹、よほど川縁が好きな竹だと勝手に思っていたものの後から考えると全て人が防災を考えて植えたものでした。熱帯系の竹ですので南国土佐の暑い日差しの気候が合うのでしょう、この蓬莱竹もかなりの大きさです。蓬莱竹がこれくらいに成長するには100年近くかかっています、つまり長い間この川の流れを見守り続けてきてくれた地域の守り神とも言えます。

 
蓬莱竹


昔から台風銀座と呼ばれ大雨に悩まされてきた土地柄です、このような蓬莱竹の林は珍しくありません。知らない土地だとしても遠くからでも一目で分かります、こうして並んで繁る蓬莱竹に沿って川が流れています。もちろん護岸用として活躍するだけではなくて、その節間の長さを活かした竹細工にも使われてきました、蓬莱竹(ホウライチク)の竹ざるに少し書いていますので関心のある方はご覧ください。


竹類、笹類、バンブー類と竹と言っても色々と種類があることがお分かりいただけたかと思います。日頃何気にご覧いただく竹も日本人の暮らしに昔から深く関わってきただけに少し知っていると面白い事があるのです。孟宗竹と淡竹、普通の方からすれば太さ以外に見わけのつかない竹も、この動画で簡単に見分けられるようになります(笑)。





竹と笹

孟宗竹林


は木でもなく、草とも違う竹特有の丈夫さ、しなやかという特性を持ち、身近にあって手に入りやすく加工性も高いことから縄文の時代から籠の素材とした使われてきています。竹の生育域というと日本や中国を思い浮かべる方が多いかと思います、しかし東南アジアやオーストラリア、中南米、アフリカなどの温暖で湿潤な地域に広く分布して、世界に約1300種、日本には約600種があるのです。


雪と竹


もともと南方系の植物なので孟宗竹などは日本の北限が青森か函館あたりと言われてきましたが近年の温暖化で少しづつ変化しているようにも感じます。そう言えば30年近く前には北海道のデパートにも売り出しに行ったことがありました、クマザザなどは沢山あるものの大きな竹がなくて竹製品は結構珍しがられた覚えがあるのです。


孟宗竹


竹は他の木と違って、受精しなくても地下茎から毎年筍が伸びてきて生育域を広げていきます。ところが、60年とも120年とも言われる間に一度、竹が花を咲かせることがあります。竹の花が開花すると、群生している竹が一斉に枯れてしまいます。虎竹の里の古老に聞くと虎竹の林も一部で開花した時期があり、やはり一帯の竹がすべて枯れたそうです。


竹の花


では竹の花というのはどんなものでしょうか?実は竹はイネ科の植物です。なので竹の花もまるで稲穂のような姿をしています。日本の竹の品質が世界最高と言い続けています、ササニシキやコシヒカリといった世界最高レベルの美味しいお米ができる日本で同じイネ科の竹の品質が良いのは自然な事だと考えているのです。


孟宗竹皮


そんな竹ではありますけれど竹には仲間に笹もあって、皆さん日ごろあまり疑問も持たずにおられますけれど一体竹と笹の違いをご存知でしょうか?実は最初に答えを言ってしまいますと明確な違いは分かっていないのです。もちろん大まかな選別はされています。まず背丈で別れていて背丈の高いものが竹、低いものが笹。両方とも筍から成長していきますが、その筍の皮が稈からすべてなくなるのが竹皮がずっと残ったままなのが笹といった具合です。


メゴ笹、オカメザサ


メゴ笹洗濯籠


しかし、背丈の低い竹もあって例えば高知ではメゴ笹と呼ばれて洗濯籠などに多用されるものがあります。これは全長で1メートルから2メートル程度の高さで竹としては小さいものですが竹類なのです。浅草の酉の市でオタフクの面をつける素材なので「オカメザザ」とも神楽に使うので「カグラザザ」という呼び名もあります、すべて同じ植物のことで「ササ」と名前がついているのに竹類なのです。


スズ竹


背丈の高い笹もあります、たとえば昔は弓矢の矢にしたことに名前の由来のある「ヤダケ」高さは長いものだと5メートル程度になりますが笹類です。幕末に新選組の副長として活躍した土方歳三が「将来武士になったらこれで矢を作る」と武士になる決意をこめて生家の庭に植えたという話があります。また、数寄屋建築に使われるという事で竹虎でも結構取り扱っていたメンチク(メダケ)も稈の高さは4メートル程度になります、「ヤダケ」「メダケ」と竹のような名前がついているのに笹類です。現在一斉開花はが始まって竹林が枯れてしまっているスズ竹も「竹」と付きながら笹の仲間です。



捨てる所のない竹素材

竹皮草履竹皮鼻緒


長い梅雨がようやく開けて竹皮の整理をしながら少しづつ編み始めている国産竹皮草履です。自分の一番好きな竹皮鼻緒は若干耐久性に劣るため最近ではあまり製造していません。地味ですが実はこれはが昔から主流に履き続けられてきた草履なので少しでも作れるようにしたいと考えています。


国産竹皮草履用の竹皮


しかし、こうして竹皮を天日干ししているのを眺めていると改めて思います。筍が竹へと成長する過程で脱ぎ捨てる竹皮は草履に編まれるほか、おにぎり弁当用の包材としての活用方法もあります。


竹根細工


竹根の部分も地下に埋まっている部分なので活用されていないかと言うと竹根の景色も美しい茶器に変身するのです。


虎竹茶


こうして竹皮、竹根、稈、小枝そして竹葉まで捨てる所なく使い切ることのできるのが竹の素晴らしさ。今年の虎竹茶は仁淀川上流沢渡で作られる紅茶をブレンドして今までで最高の美味しさ、この暑さです冷やしてお試しください。





竹縄鼻緒の下駄を見て

竹縄鼻緒の下駄


渋い、渋すぎる下駄。何が渋いかと言うと鼻緒にご注目ください、これが竹縄鼻緒なのです!竹縄と書いて「たかなわ」と読みます。竹虎の草履には竹皮鼻緒がありますけれど、これは比べものにならない丈夫さ!かって現代のような強度の高いロープがない時代には、お祭りの山車が道路を通る際などに竹縄で結束していないと通行許可が下りなかったという日本では昔から最強ロープとして活躍していたものです。今では知る人も少なくなった竹縄の伝統を守り続けている人々が東秩父村にいるのです。


竹虎四代目(山岸義浩)


実は自分は昔から城郭ファンです(笑)お城そのものも好きですが更に好きなのは石垣。色々な積み方があるのですが驚くようや大きな石をどうやって運んだのか?現代に残るまで、どんな方法で崩れないように堅牢に積み上げたのか?それぞれに先人の知恵が詰まっていると考えるだけで時間を忘れてしまうのです。そして、そんな建設現場でなくてはならなかったのが竹縄だったのではないかと思っています。


山葡萄紐


強いだけなら他の自然素材でも例えば山葡萄のツルなどはかなりの強度があります。何回か職人さんから頂いたことがあって今も手元に持っていますけれど確かに丈夫そのもの、しかし、竹の圧倒的な違いは身近な里山に沢山あって手に入れやすかったことです。


竹林


現代においても継続利用可能な唯一の天然資源と世界的に言われるほどの凄まじい生命力も他にはあまり見られない素晴らしい特徴です。地下茎を伸ばし毎年筍を生やして増える様は自然素材に頼らなければならなかった当時には、まさに夢の素材、天の恵みのような存在だったに違いありません。





淡竹、真竹と孟宗竹の見分け方

虎竹筍


虎竹の里では、そろそろ筍の季節を迎えています。日本唯一の虎竹は淡竹の仲間なので筍も特徴的なのですが、面白いのは竹皮に真竹孟宗竹のように模様がついていない事です。筍の時には模様が付いていないのに大人になって虎模様が付く虎竹と、筍の時には模様がしっかり付いているのにその竹皮を脱ぐと模様のない真竹や孟宗竹、不思議です(笑)。


孟宗筍


淡竹、真竹、孟宗竹という日本三大有用竹と言われる竹の中で筍が生えるのは孟宗竹が一番早く既に今年も何度か食された方がおられるかも知れません。孟宗竹に続いて淡竹(虎竹)が生えて、その後今月~6月中旬あたりに真竹が旬を迎えるのです。


虎竹トンボg


孟宗竹の筍は太くて美味しくて、筍の代名詞とも言えると思いますが淡竹も非常に味が良いので昔から好まれて食されている筍です。だから虎竹もきっと美味しいはず、ところが虎竹は3年ほど経たないと色付きが来ません。つまり筍の時には、良し悪しの判断がつかないので父も祖父も曾祖父も、虎竹と出会って100年間誰も食したことはないのです。


ところで虎竹ばかりと思われがちな虎竹の里にも少しは孟宗竹が植えられています。食料としても建材や加工用としても太く長い孟宗竹は本当に重宝されていたからです。そこでYouTube動画では淡竹、真竹と孟宗竹の簡単な見分け方をご説明しています。