竹の声に導かれた大火災の夜

 
竹虎大火災


この世の中には、目に見えない力があるとずっと感じています。しかし、それは別に特別な事ではなくて、いわゆる「虫の知らせ」とか言われるようなものであり、長い人生の中では時折訪れて導いてくれる大事な瞬間であると思っています。37年前の今日、普段は寝つきの良い自分は全く眠る事ができず何かの声を聞いて布団から起き出しました。網戸の向こうでは雨がシトシト降っています、いつもと変わらぬカエルの鳴き声だけがする静かな夜でした。


竹屋の火事


今でも大学の夏休みで帰省中の自分が、どうしてパンツ一丁の丸裸のまま傘もささずに母親のサンダルを足先に引っ掛けて真っ暗な工場に向かったのか不思議でなりません。大火災の第一発見者となった時の事を思い出すのは楽しくはありません、文字に書くのも同じです。


山岸竹材店の火災


とにかく、竹虎は大火災となり我に返ると翌日の正午でした。


竹虎火事


竹虎四代目が第一発見者となった大火災


地域の皆様にはご心配をおけかし、夏の間はずっと後片付けに追われる竹虎を助けていただきました。遠く県外からも続々と応援の方々が駆けつけてくれて感謝しかありませんでした。


竹虎火災


何十年経っても竹虎の燃える炎を見ていると心臓がドクドクしてきます。けれど、あの火が今でも自分の中で燃え続けているような気がします、きっと竹虎四代目はあそこで生まれたのです。




韓国のお客様からの手紙と虎竹

 
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韓国のお客様から丁寧な日本語の文字で手紙が届きました。高校生の時から「いつかは、いつかは...」と心の中で何度も思いながら手にできる日を楽しみにして下さっていたとは!感激すると共に日本唯一の虎竹を守っていかねばと奮い立つような決意を新たにしています。


虎竹、竹虎四代目(山岸義浩)


これから先に見える自分達の行く道は、虎竹の里の竹林に向かって続く細く曲りくねった険しい山道と同様に厳しいものです。けれど、このような方の支えがあると知れば又明日から一歩、また一歩と進んでいけます。




筮竹(ぜいちく)について

 
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当たるも八卦、当たらぬも八卦と占い師の方が良く口にする言葉ですが、八卦とは古代中国の考え方で天、沢、火、雷、風、水、山、地の8つの要素が世を支配していると言います。そんな占いに使われるのが筮竹(ぜいちく)と呼ばれるで作られたヒゴです、見本として送られてきたものには塗装がほどこされていましたものの今回はこの筮竹を塗料を使わず仕上げて欲しいとのご依頼でした。


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竹のスプーンをはじめカトラリー類や竹箸にはウレタン塗装をかけて仕上げています。ところが最近はこの塗装をせずに自然の竹そのままに使いたいというお客様もおられます。食事にご使用されて水洗いしてという毎日の繰り返しで湿気の多い環境ですから色染みやカビなどの問題をしっかりご理解いただいた上でご愛用いただく事が大事です。


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しかし、筮竹のように占いにお使いなられる道具であれば無塗装であっても問題はないかと思います。是非、竹が正しく人を導く占いの手助けになれば嬉しいです。


パリで青竹酒器の乾杯がしたい

 
パリ竹細工展示会


パリでは遂にマスク解除になったという事を聞きました。昨年の1月にスタートしたものの、程なくコロナウィルスの影響を受けて開催したり、閉まったりを繰り返してきたフランス国内巡回展「日本の日常生活の中の竹」ですが、少し明るい兆しが見えてきたように思いました。


パリ竹籠展ポスター


会場は1, rue Dante, 75005 Paris(tel : 01 44 41 50 10)です。実は昨日もヨーロッパ在住の方から日本の竹についてお問合せを頂いていましたけれど、パリ近郊にお住いの方でしたら是非一度電話で確認の上、展示会の竹籠たちもご覧いただけると嬉しいです。


パリ竹籠展


パリ展示用竹籠、竹ざる


竹展示会には昔から日本の暮らしで使われきた道具としての竹籠を、数百点の中から38点にしぼっています。日頃沢山の竹細工に囲まれて生活していても選択するという事はあまりなかったので今回の展示のために時間をかけて竹籠と向き合ったことは新鮮な経験でした。


パリ竹細工展示会メゴ笹籠


パリ展示会ポスター


会場には横浜まで1000キロランを走った竹トラッカーや、スペインのレースで特別感謝賞を頂いたREIWA-125号のパネルなども作っていただいてます。


パリ竹籠展


パリ竹工芸展


青竹酒器、日本酒


オープニング時の会場地下冷蔵庫には日本酒と自分が持ち込んだ青竹酒器が入れられていました。


パリ展示会、竹虎四代目(山岸義浩)


青竹酒器、竹虎四代目(山岸義浩)


日本でも蒸し暑くうっとおしい雨空を吹き飛ばす青竹酒器が人気です、酒器もお酒もキリリッと冷やして呑めば竹の清々しい香りが口に広がります。会場で再び青竹で乾杯できる日を待ち望むばかりです。




竹の記憶

 
遠くに見える竹林


高知は山深い、曲がりくねった道路から谷間を挟んだ向こうにが見えた。「竹の秋」の季節だがそれとは違う、山の中腹あたり緑に囲まれて開花しているのか何なのか、立ち枯れしたように色が変わっているので良く目立つ。あれはきっと誰かが植えた竹、かってはあの場所にも人の暮らしがあったに違いない。


里山の竹


多くの人は田舎に行けば竹は何処でも見られるし、時には邪魔者扱いにすらされる程なので日本の竹林は広大だと思っているかも知れない。ところが、竹は思うほど沢山あるわけでなく全国の森林面積に占める竹の割合は、わずか0.6%しかない。数千年に渡って衣食住すべてに関わり役立ってきたので人の近くに植えられているから目立つだけなのだ。川沿い延びる竹林も護岸のために人工的に整備されてきた。


だから里山から離れて人家が遠退くほどに竹は少なくなる。竹の花は60年、120年に一度咲くだけなので自ら繁殖するチャンスは多くない、こんな県境にポツリと生える竹は誰かが必要として植えた、そして山から人々の暮らしが無くなった後も、昔の記憶をとどめるかのように茂っているのだ。


オプリンズ(Oprins Plant)社の竹

 
Oprins Plant、竹虎四代目(山岸義浩)YOSHIHIRO YAMAGISHI


フランスやイギリスなどヨーロッパの国々は海外旅行でも人気ですしメディアでも毎日のように触れる機会がありますので世界の中でも身近に感じる地域です。そこで、何となく気候も日本と同じくらいなのかなと思っていたら何と意外に緯度が高いので驚いてしまいます。地図で見ているとREIWA-125号でボックスカートレースに参加したスペインのビトリアで何と北海道の釧路あたりです。2月に下見に行ったとき道路が凍結していてブレーキ効かなくて怖かったのですが、そのはずです(笑)。パリなど北海道よりずっと北に位置していますし今回登場しますオプリンズ(Oprins Plant)社のあるベルギーは更に北なのです。


日本でも北海道には南方系の植物である竹がなくて竹製品を珍しがっていただきますけれど、ヨーロッパでも同じように珍重されています。パリの街を歩くと観葉植物として青々とした緑を風に揺らしている竹を多く見かけます、そしてその竹を生産されているのがこのオプリンズ(Oprins Plant)社なのです。


Oprins Plant、オプリンズ農園


Oprins Plant、オプリンズ


Oprins Plant、オプリンズの竹


広大な敷地には見たこともないようなビニールハウスが建っていて、その中で育てられているのは竹です!日本では増えすぎて困っている竹林が少なくない中で、このように大量に、そして大切にされている竹を見て感動します。


Oprins Plant出荷場


Oprins Plant、オプリンズ


Oprins Plant


竹はポットに入れられトレーラーでヨーロッパ中に運ばれているそうです。竹の逞しい生命力が石造りの街に彩りを添えているのです。


Oprins Plant、竹虎四代目(山岸義浩)YOSHIHIRO YAMAGISHI


Oprins Plant、オプリンズ


オプリンズ(Oprins Plant)社にお伺いしたのは2015年の事でした。非常に短い動画でしかご紹介できていませんでしたので今回詳しくご覧いただける動画を改めて作ってみました。




四代田辺竹雲斎さん、アートフェア東京2021(Art Fair Tokyo)

 
四代田辺竹雲斎(Chikuunsai)、竹虎四代目(山岸義浩)


四代田辺竹雲斎さんは世界で活躍される竹工芸家で、ご自身の作品はじめ会場に設える大型インスタレーションにも日本唯一の虎竹をお使いいただいています。コロナウィルスで海外の個展が中止になる中、今回の東京国際フォーラムで開催されたアートフェア東京2021(Art Fair Tokyo)には圧巻の展示をされるとの事でお伺いしました。


四代田辺竹雲斎(Chikuunsai)


アートフェア東京には2017年に「Installation kaguya」という企画で虎竹を提供させてもらった事があります。竹組の中での花士(はなのふ)珠寳さんの神々しいばかりの献花を今でも思いだしますが、会場全体を包む先進アートの創作への熱量が普通ではないと感じていました。


四代田辺竹雲斎(Chikuunsai)


そこでワクワクとしながら会場入りしたのですけれど、他を圧倒する田辺さんのインスタレーションは予想以上で釘付けとなりました。日本中から集まっているアートの渦にあって、まさに突出しています。


四代田辺竹雲斎(Chikuunsai)


四代田辺竹雲斎(Chikuunsai)


広い会場の上のフロアから見えていた巨大インスタレーションは見る角度によって印象が異なりました。大きな塊のように思っていても後ろに回ると、まるで二人が寄り添っているようで幸せな気持ちになります。




新荘川の竹

新荘川の竹


虎竹の里からもすぐ近くに流れる新荘川は高知県津野町から須崎湾に注ぐ24.1キロの二級河川です。美しい自然の多く残された高知には最後の清流と言われる四万十川や、仁淀ブルーとして近年知られる仁淀川がありますが、この新荘川は日本で最後にニホンカワウソが確認された川として有名です。


しんじょう君、竹虎四代目(山岸義浩)


小さい頃にはこの川を泳ぐカワウソの姿をテレビニュースで何度か観ましたし、生存を調べるための調査団が度々来られてもいました。最後には近くを走るタクシードライバーに使い捨てカメラが配られて、何とか姿を見つけられないものかと地域一丸となって頑張っていた事もあります。とうとう、2012年に環境省から「カワウソ絶滅宣言」が発せられましたものの、現在ではマスコットキャラクターゆるキャラ「しんじょう君」のモチーフとして生きています。


蓬莱竹、シンニョウチク


しかし、今回はこの新荘川のニホンカワウソではなく川岸に続く竹林に注目したいと思っています。日頃、優しく穏やかな流れの両岸に当たり前のように思って見ている竹林が、実は台風でも来れば一変して恐ろしい濁流となり水害を起こしてきた大自然への備えとして機能してきたのです。


護岸には南方系で株立ちの高知ではシンニョウチクとも呼ばれる蓬莱竹(土用竹)が植えられているのを多く見かけますけれど、新荘川では真竹や女竹など小振りな竹が密集して生えています。場所によっては竹林が二重になっている所もあり度々大水に悩まされてきた事を知る思いです。


竹根


「灯台下暗し」の言葉どおり地元を遠く離れた地域で竹の防災力を考える機会は多々あるものの新荘川は近すぎて見過ごしていた部分がありました。強靭な竹の根は縦横無尽に伸びて土をがっしりと掴み天然の鉄筋コンクリートとなります、もう少し先になりそうですが、地震の時には竹林に逃げろと教わってきた竹の力をこの川でも検証できればと思っています。




総務省ふるさとづくり大賞個人表彰(総務大臣表彰)伝達式

 
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総務省主催の「令和2年度 ふるさとづくり大賞」にて竹虎四代目(山岸義浩)が個人表彰(総務大臣表彰)を受賞させていただきました。ふるさとづくり大賞は全国各地でそれぞれのこころを寄せる「ふるさと」をより良くしようと頑張る団体、個人を表彰することにより、ふるさとづくりへの情熱や想いを高め、豊かで活力ある地域社会の構築を図ることを目的としています。


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東京での表彰式がコロナで中止のため、室戸市むろと廃校水族館さん、お茶生産の津野町三原大知さんとご一緒させていただいての「ふるさとづくり大賞」、今年は県庁にて行われました。全国21団体、8名なので高知県の受賞率は異常に高い!魅力ある産品の豊かさと、何より強い郷土愛を感じます。


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地域の大切な資源、そして「宝」である虎斑竹を地域・人とその技術を活用して海外にまで発信していることを評価していただきました。竹虎が100年にわたって地道に築き上げてきた歴史が認められた結果だと考えています。こうした日本にとどまらず世界に向けて発信を続けていくことがやがて大きなうねりとなり、高知県須崎市安和の虎竹の里に帰ってくると信じ、挑戦を続けていきます。


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今回はせっかくの受賞式なので日本唯一の虎竹電気自動車「竹トラッカー」で走っていきました。うまくしたもので、虎竹の里から高知県庁まで乗っていくと電池が無くなるタイミングです。ドアもなければ、当然暖房もない竹トラッカーですが温かい日差しに助けられました、春はそこまで来ています。




これぞ土地の守り神!百年蓬莱竹

蓬莱竹に驚く竹虎四代目(山岸義浩)


今日は驚いています!本当にビックリして目が飛び出しそうでした(笑)一体何があったのかをお話させていただきたいと思います。最後に更に詳しくお分かりいただけるYouTube動画も用意してありますので是非ご覧いただけると嬉しいです!


竹虎四代目(山岸義浩)、護岸竹


竹は「衣食住」全てに関わり古くから人々の暮らしの身近にあって、なくてはならない存在だったのですが、実は防災という面からも大きな役割を担ってきました。小さい頃から「地震の時には竹林に逃げろ」と教わってきましたけれど、これは強靭な竹の根が天然の鉄筋コンクリートと呼ばれるほど縦横無尽に走り地面をしっかり固定しているからなのです。そこで、護岸工事の発達していなかった当時から治水のための堤防、護岸などには竹が植えられ今に至っています。


蓬莱竹伐り株


四国や九州など温かい地域では南方系の蓬莱竹(ほうらいちく)、高知県ではシンニョウチクと呼び親しまれてきた株立ちの竹が多くみられます。真竹や淡竹と違い竹根が伸びていかないのが特徴で、川の合流地点や急流点などピンポイントで川岸を補強したい時にはこれほど便利な竹はなかったはずです。ところが、この蓬莱竹が見事に伐採されていたのです!


蓬莱竹伐り株、竹虎四代目(山岸義浩)


しかし怪我の功名と言いましょうか、伐竹いただいたお陰で蓬莱竹の株の様子を皆様によくご理解いただけます。一本一本、非常に堅牢でしなりのある竹が、これだけ密集して生えているのです。


シンニョウチク、蓬莱竹断面


別名「沈竹(ちんちく)」と呼ぶこともある蓬莱竹。空洞であるはずの竹の稈部分が、水に沈むほど厚みのある身が特徴でもあります。この竹材を使う竹細工は地元でも多くはないものの、小物入れや弁当箱にも編まれていました。鹿児島日置の箕として知られる竹細工は、この蓬莱竹をうまく活用した一番有名で美しい逸品です。


孝行竹、蓬莱竹根


この竹根を御覧ください、何という生命力!ものすごいパワーを感じます。「波動」という言葉をご存じでしょうか?世界的にも有名な経営者の方で竹を好きでたまらなくて目には見えない力に魅かれると言われていましたけれど、この力強さを見ると分かる気がします。


竹虎四代目(山岸義浩)、蓬莱竹


次々生える子供たちが親竹から離れませんので孝行竹という名前もあります。色々と名前がある事から考えても、身近で皆に愛されてきた竹だという事なのです。


蓬莱竹伐り株と川


この季節は雨も少なく静かな川の流れです、ところが台風銀座とも揶揄される南国高知にあって集中豪雨などが一旦あればこのゆるやかな景色は一変してゴーゴーと大きな音をたてる恐ろしいような流れになります。


シンニョウチク、竹虎四代目(山岸義浩)


その急流を受け止め、人命と財産を守りつづけてきた蓬莱竹。まさにこれが、土地の守り神なのです。