収穫の秋の腰かご

腰かご


今思うたら、ワシの小さい頃は恵まれちょりましたちや。虎竹の里は果樹園芸の盛んなところでもありますきに、いろいろな果物をあちこちで作りよりました。みかん、ポンカン、文旦らあは畑があちこちあって、遊びよったらおんちゃんが食べえ言うてくれるし、トマトもビニールハウスで友達のおばちゃんから食べきれんばあもろうたちや。


太陽の光がサンサンと入った明るうて、ぬくい温室に、いざって(座って)、ムシャムシャ皆なあで食べるがはみずみずしゅうて、独特やったにゃあ。スイカも、そこにハネちゅうがを持って行けいうてくれるし、そういうたら果物はいろいろ農家さんくで食べさせてもろうたちや。あと、ビワらあは遊びにいった家の庭先に成っちょったし、何いうたち特別ながは山モモぜよ。


実は虎竹の里はお年寄りに聞いたら山モモが多い土地がらで、自分くの山の竹林で遊びよったち、竹林の中にポツンと大きな、大きな山モモがあったりしたぜよ。山深いところで誰っちゃあ採りもせんきに、根元には熟れた実がいっぱい落ちちゃある。こりゃあ、食べなイカンいうて、競うように木登りしたけんど、あの木の上で山モモを食べる姿を今見たら、


「えっ?お猿............?」


と思うかもしれんちや。こんな、おんちゃんになったら、さすがに木登りは気をつけなイカンけんど、あそこな山に久しぶりに行ってみろうか?


「けんど、こりゃあ、びっと紐が短いにゃあ」


こじゃんと丈夫なスズ竹丸腰かごやけんど、コレいっぱい採ってくるには、もう、若うないかも知れんぞね。


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