竹網代ドリッパーで淹れる一杯の驚きと竹細工の新たな魅力

竹網代コーヒードリッパー


「竹でコーヒーを淹れる」と聞いて、すぐにイメージが湧きますでしょうか?30年ブログ「竹虎四代目がゆく!」のご購読者の皆様は、ある程度はどのようなものかお分かりになられている方もおられるでしょうか。しかし、多くの方は、竹といえば籠やザル、あるいは花器などが思い浮かべは良い方で、竹でコーヒーと言われてもサッパリなのかも知れません。竹虎では、以前から日本唯一の虎斑竹(とらふだけ)を使ったゴザ目編みと六ツ目編みの二種類の虎竹コーヒードリッパーをご提供しており、お陰様でご好評をいただいています 。  


虎竹コーヒードリッパー


さて今回、ボクはゴザ目編みでもない、六ツ目編みでもない、もうひとつの竹網代(あじろ)編みタイプの竹製ドリッパーで淹れたコーヒーを味わう機会に恵まれました。


竹網代コーヒードリッパーの職人の工房


竹網代ドリッパーと同じ網代編みされたお盆で出していただく一杯は、驚くほど口当たりがまろやかで、雑味がなくボクの好きなスッキリした味わい。


竹コー!フィルター


緻密な網代編みなので、紙のフィルターは必要ないのでは?と思っていましたが、職人さん宅では手間を考えて使用されていました。


塩取りかご


竹網代ドリッパーは、実は目新しいものではありません。昔は、塩取り籠と呼ばれて海水を煮詰めて塩をとる際に使われてきた円錐形の竹籠がありました。


竹コーヒーフィルター


その籠を応用して、一本の竹を割り、薄く剥ぎ、ミリ単位で厚みを揃え、寸分の狂いなく繊細な編み目の工芸品と呼べるほどの美しい竹編みにされています。


竹網代コーヒードリッパー


網代編みの竹ドリッパーが、竹職人の手仕事の素晴らしさを伝えると同時に、更にその元となった塩取り籠を知っていただくキッカケになればと思います。工房で作られている籠を眺めながら、日本人の暮らしに無くてはならない存在だった竹を改めて知る思いです。





鰻筌の季節に考える竹の多様性

国分川


土手を車で走っていると、あまりの天気の良さに川べりに下りてみたくなりました。ちょうど堤防があり、流れ落ちる水の音も心地よく、遠くまで眺められる空と雲を見ていると、他には何もいらないような幸福感を覚えます。しかしこの時期、清らかな水面を見ていると決まって思い出すのは子供の頃の記憶です。当時から早起きが得意ではありましたが、川へ鰻を捕りに行く日には朝日が昇と共に起きていたように思います(笑)。


竹製鰻筌


ボクたちが鰻を捕るのは(ウケ)と呼ばれている竹編みの筒状の道具でした。中には餌になるミミズを一塊入れて栓をすれば準備完了です。前日の夕方に鰻の通り道とおぼしき川底に、ブクブクと鰻筌を沈めて浮き上がらないように川石を上に積み重ねておきます。翌朝、早くにその鰻筌を上げにいくのです、漁を教えてもらった小学の先輩からは「明るくなると、中の鰻が逃げてしまう事がある」と聞いていたので、友人たちも皆早朝に河原に集合していました。


竹、エギ


当時は、まさか竹虎で鰻筌を編むようになるなんて考えもしなかったのですが、実際に製作するようになりエギという竹の弾力を活かした鰻の入り口は、一度入ると外には出られないようになっていて実際は必ずしも朝早く行く必要はなかったです。ただ、やはり、鰻が入っているかなあ?とドキドキしながら夜を過ごしていましたから、言われなくとも早起きしていたと思います。なにせ、学校に行くまでには帰らねばなりませんでしたので。


田園


さて、釣果のほどですが、すぐ近くの川に仕掛ける事が多かったのですが、当時は稲作も盛んで小さな用水路にも勢いよく水が流れていました。本当にそんな深さが20センチ程度の用水路に仕掛けた鰻筌にはも10数匹もの鰻が入る事もありましたので、それだけ川が綺麗で、鰻がたくさん生息できる豊かな自然が身近にあったということでしょう。あの頃の川の賑わい、生命力あふれる光景は、今も鮮明に心に残っています。この原体験があるからこそ、この文化を繋いでいきたいという想いが強くなり、地元で編まれていた鰻筌への復刻へと繋がるのです。


古いタガ、米研ぎざる


ちなみに、捕った鰻はすべて自宅で食していました。当時はどこの家庭にも鰻をまな板に打ち付けるキリが常備されていた程です。それで、鰻は店で食べるものではなく、川で捕まえて食卓にならぶものと、ずっと思っていました。前にも書いたように思いますが、はじめて鰻を店で食べたのは祖父に連れられて来た大阪千日前の今はなき「いづもや」さんです。学生時代は、その味が懐かしくてアルバイトして何度も通った覚えがあります。


竹虎四代目(山岸義浩)、鰻釣り用竹ヒゴ


現代では、天然鰻は高知でもあまり見かけなくなりました。鰻筌を仕掛けている方は、1シーズンに一人見かけるかどうかくらいなので川は昔と変わらずありますものの、獲物の鰻の数が少ないのです。そう言えば、昨年だったか鰻釣り用の竹ヒゴを十数本だったか作ったことがあったので、全くいなくなったという事ではないようです。しかし、鰻は養殖ばかりで、実際に鰻筌の最後の職人が仕事ができなくなってから暫くは製造できない状態でしたが困る事はありせん、でも、丈夫な孟宗竹を使い豪快に作り上げる鰻筌の伝統を少しでも繋ぎたい思いは消えません。


鰻筌、ころばし


そこで、何とか技術継承して復刻することにしたのですが、昔のように大量に安価に作るということではなく、竹の一番外側の竹表皮部分だけを使うことにしています。竹材は沢山使うので(竹が沢山あるから安いというような考えは、皆様どうが捨ててください、伐採にどれだれの技と苦労があるか)、コストはかかりますがより堅牢で付加価値の高い製品になります。


孟宗竹


ボクたちの鰻筌には、孟宗竹(もうそうちく)を使います。竹細工というと、マダケやハチクなどが使われることが多くて、孟宗竹を使って編組細工をするなど全国的にも皆無と言っていいほどです。けれど、孟宗竹はその太さや丈夫さから、鰻筌のようなある程度の強度と大きさが求められる籠作りには適した素材です。地域に根差した伝統の技を伝えていくには、地元高知で手に入りやすい孟宗竹しかないのです。


鰻魚籠


正直なところ、昔に比べて鰻が捕れる川が減り、鰻筌自体を知らない方も増えました。「今さら鰻筌を作っても...」と思われるかもしれません。ただそれでもボクたちは、この伝統の技法を受け継ぎ、鰻筌を製造し続けています。それは、単に昔を懐かしむだけではなく、この漁具に込められた知恵や、竹という素材の素晴らしさ、そして高知の川と共にあった文化そのものを、形として残し伝えたいからです。幸い、今でも鰻漁ができるような川が若干残っていているようです。この技が生きる場所がある限り、作り続ける意味があると考えています。


今日は、鰻筌という多くの方には、あまり身近でない竹細工のお話になってしまいました。でも、鰻筌は竹の多様な可能性を示すほんの一例にすぎません。竹は、竹籠やザルといった日用品から、インテリア、家具、建築材、楽器や庭園装飾さらには竹炭といった健康・環境分野、タオルや衣類などにする竹繊維、メンマや筍という食材、家畜の餌などへの活用など驚くほど幅広い用途を持つ、持続可能な天然資源です。皆様が、竹の持つ無限の可能性と、暮らしや文化を豊かにしてきたその魅力に、少しでも触れていただけるよう、これからも頑張ります。





イカスミと炭(タケスミ)との違いとは何か?

竹炭パスタ


最近、ちまたで「黒い」食べ物を見かけることが増えたと思われるの事はないでしょうか。真っ黒なパン、うどん、ギョーザやカレーさらにはスイーツまで、その印象的な見た目は多くの人の目を引きます。この黒色の立役者が本日お話させていただく竹炭パウダーです。古くから黒い食材といえばイカスミがお馴染みですが、竹炭パウダーーにはイカスミとは異なる、独特の特徴と可能性があります。


竹炭パウダーを使った料理

ボクたち竹虎が創業以来こだわり続ける竹、その竹から生まれる竹炭パウダーと、伝統的な黒い食材であるイカスミを比較しながら、それぞれの魅力や使い方、そして竹という素材そのものの素晴らしさについて考えてみたいと思います。


竹炭パウダー、bamboo charcoal


竹炭パウダーは、その名の通り、日本の豊かな自然が育んだ竹を原料として作られた、炭の微粉末です。古来より日本人の生活に深く関わってきた竹が、今、現代の食文化の中で新しい価値を生み出しています。竹炭パウダーが持つ最大の特徴は、まず無味無臭であることです 。これが、独特の風味を持つイカスミとの決定的な違いと言えます。料理やデザート、あるいは飲み物に深い黒色だけを加えたい、素材本来の繊細な風味を損なわずに見た目のインパクトを高めたい、そういった場合に竹炭パウダーは理想的な素材なのです。


竹炭パン


特筆すべきは、その粒子の細かさです。竹虎の竹炭パウダーは15ミクロン(0.015ミリメートル)という、非常に微細な粉末状になっています 。


竹炭猫クッキー


この細かさにより、液体にも混ざりやすく、また食した際の舌触りも滑らかで、ザラつきを感じさせません。パンやクッキー、麺類の生地に練り込んでも食感を損なうことなく、美しい黒色を表現できるのです。


竹炭の孔


竹炭には電子顕微鏡で見ないと分からないような無数の微細な孔が空いています。実は、この多孔質な構造が竹炭の優れた吸着力の秘密なのです。様々な物質を吸着する性質があるため、水の浄化や臭いの吸着などに利用されてきました。原料は竹炭ばかりではないものの、世に出回っている消臭剤には、この炭の特性を活かしたものが多数あります。竹炭パウダーに関しても、この吸着力によって体内の不要な物質を吸着し、排出を助ける、いわゆるデトックス効果への期待が言われているのです。現代の健康志向の高まりの中で、チャコールクレンズ(Charcoal Cleanse)として最近では海外でも注目されています。


竹炭パスタ


竹炭パウダーは無味無臭と申し上げましたけれど、その特性から現在では食材への活用は思う以上に進んでいます。ボクが前に頂いた竹炭パスタは、その真っ黒な見た目のインパクト、トマトソースとのコントラストが忘れられません(笑)。同じ黒いパスタと言っても、イカスミパスタとは全く異なります。イカスミは独特の風味、味、香があるのに対し、竹炭パウダーは黒の色素のみをプラスできるので色々なソースとの組み合わせができるのも面白いところです。この違いが、食材活用の幅広さに繋がっているようです。和食、洋食、中華、エスニックといったジャンルを問わず、また、主食からデザート、飲み物に至るまで、あらゆるメニューに使われています。


竹炭スイーツ


繊細な和菓子や、フルーツを使った爽やかなデザートにも、黒という色彩のアクセントを加えることができるのです。まさに、自由自在な黒!作り手の創造性を刺激するのではないかと思います。


竹炭を使うパリのシェフ


そんな自由な発想に刺激を受けたのでしょうか?竹虎の竹炭パウダーの品質と使いやすさは、海を越えて食の都フランス・パリのパティシエの皆様にも愛用されています。


bamboo charcoal、竹炭パウダーを使うパリのシェフ


繊細な味覚と美しい見た目が極めて重要視されるフランス菓子の世界において、素材の風味に一切影響を与えることなく、深く鮮やかな黒色を表現できる竹炭パウダーは、もしかしたらパティシエの方々が待ち望んだ理想的な着色料だったかも知れません。


竹炭ムース


パリ市内のあるお店でランチをいただきました。あまりの美味しさにモグモグ食べていると、シェフが一皿手にして厨房から出てきました。「食べてみて」と言われても、お皿の上にはスプーンが二本...いったい何だろうか?


竹炭ムース、bamboo charcoal


実はスプーンにのせて出していただいのは竹炭のムースでした。口に入れると、すぐに溶けてなくなる淡雪のような感じ!そして竹炭パウダーが本当に入っているのかと思うような後味で下にザラつきが全くありません。シェフは、このことを伝えたかったようです。ヨーロッパでは、スプーンは幸せをすくうラッキーアイテムとされているようですけれど、まさにボクにとっては、このスプーンは幸せそのものとなりました。


bamboo charcoal、竹炭パウダーを使うパリのパティシエ


竹炭パウダーはその自然さゆえに、フルーツやチョコレート、クリームなど、あらゆる素材と組み合わせることが可能です。お伺いしたパリのスイーツ店やレストランでは、皆様に喜んでいただけている様子で本当に嬉しく思いました。


竹炭パウダー、竹炭微粉末


竹虎がお届けする竹炭パウダーは、その原料となる竹の選定から、製造方法に至るまで、一貫したこだわりを持って作られます。原料には、地元四国産の良質な孟宗竹(もうそうちく)のみを使用しますが、最も重要な竹炭作りには、効率を優先した機械窯ではなく、昔ながらの土窯を用いた伝統的な製法を守り続けています 。


国産竹炭窯


熟練の炭焼き職人が経験と勘を頼りに、最高級品質の竹炭を800度から1000度の高温でじっくりと焼き上げます。土窯は、温度管理が難しく季節や天候によって焼き上がりが違う上、一窯に2週間もの時間がかかるのです。


孟宗竹


竹は、「継続利用可能な唯一の天然資源」と言われるほど成長が早い植物です。その貴重な資源が日本国内では放置され、ほとんどが活用されずにいます。竹は竹林で人の役に立ちたがっているのです、安価な海外産の竹炭も多いように聞きますが、美しい自然と四季のある日本の竹の品質は世界一だと思います。海外からは竹の国とも見られている国産の竹に親しみ、愛用することが竹を明日に繋ぎます。竹炭パウダーも、竹という数千年来日本人に寄り添ってきた親友のような存在だと、その価値を再認識させてくれます。





国産竹製茶漉しが倉庫の片隅から

国産茶漉し


国内の竹細工や竹製品は高齢化が進み、お客様のご要望があっても製造できなかったり、形はできても満足な品質でなかったりするものも多くなりました。熟練職人の仕事が見られなくなりつつあるのは寂しい事ではありますが、そんな中でも時折、思いがけない出来事に出会うことがあります。


国産竹製茶漉し


この日もそうでした、懇意にしてもらっているメーカーさんの倉庫を訪問していた時、談笑しながらふと何気なく視線を棚の下段奥に向けると、少し埃をかぶった箱が目に入りました。そこには、長らく欠品が続いていた竹茶漉しが、ひとつ置かれていたのです。そこで、その箱を取り出して中を確認してみたら、何と現れたのが編んでいた職人がいなくなり姿を消していた国産竹茶漉しでした。


国産竹製茶漉し


いつから置かれているのか分からないものの、竹虎の店舗に置いてあったものと全く遜色ない状態のようだったので、ひとつひとつ確認してみる事にしました。すると、やはり細く取った竹ヒゴが弾いていたりするものもありましたが、そのままお客様がお使いいただける良品もあります。そこで、それぞれ選り分けて皆様にご紹介させていただく事にしたのです。


国産竹製茶漉し


そう言えば、もう最後だと言うことで、YouTube特別販売としてお一人様一点限りとして無料でお譲りさせていただいた事がありました。あれから2年になります、メーカーさんの倉庫を訪れる事もありませんでしたが、何と再びデッドストックの状態になっていた茶漉しがあったとの連絡をもらい、今回改めて皆様にご紹介できることになりました。


国産竹編み茶漉し


もともと熟練職人が丁寧に編み上げた茶濃しなので、わずかな折れが見受けられるものも、日常使いには支障なくお使いいただけそうなので、前回同様にお買い得としてご用意しています。



時が磨いた竹の宝石「煤竹」の魅力とは?

煤竹バッグ


竹というのは本当に奥深い素材で、知れば知るほど魅力に引き込まれます。そんな竹の中でも、特にボクが「時間職人」なんて呼んでいる、特別な竹のお話をさせていただきます。それは「煤竹(すすだけ)」と呼ばれる、まさに時間が磨き上げた竹の宝石です。この網代編みのハンドバッグも煤竹であまれています、色の濃淡にも秘密があるので、そのお話はまた後で(笑)。


煤竹、古民家


日本には竹が600種類以上あると言われていますが、そんな竹の中で煤竹とは一体どんな竹でしょうか?普通は、ピンとこない方ばかりだと思いますが、この30年ブログ「竹虎四代目がゆく!」をご購読の皆様でしたら、ご存じの方もいらっしゃるかも知れません。煤竹は、孟宗竹とか真竹とかの品種ではなくて、昔ながらの茅葺き屋根の古民家で、100年、150年、長いものだと200年もの間、囲炉裏(いろり)の煙でじっくりと燻されて自然に出来た竹のことなのです。


囲炉裏


昔の家では、毎日のご飯を炊いたり、暖をとったりするのに、囲炉裏で火を焚いていました。ガスや電気じゃなくて本物の炎です、今でも風流な料理屋さんに行くと囲炉裏の煙が店内に漂い、見た目にも香りにも懐かしく心地よい気持ちになることがあります。その煙が、家の中、特に天井裏や屋根を支える骨組みに使われていた竹を、ゆっくりゆっくりと燻していくのです。


葺き屋根の家がなくなり、囲炉裏のある生活も遠い過去のものとなってしまった現代、ほとんど見られなくなった、日本の暮らしが生み出した竹。だからこの煤竹は、ただ古い竹というだけじゃなくて、失われつつある日本の原風景や暮らしの記憶が染み込んだ、本当に貴重な存在だと思っています。


煤竹


煤竹の一番の魅力は、何と言ってもその色合いと艶です。囲炉裏の煙に長年燻されることで、竹は自然に深い飴色や、こげ茶色、時には赤黒いような独特の色合いに変化します。これは塗装や着色では絶対に出せません、いくら熟練の職人と言っても、さすがに悠久の時には勝てないのです。


そして、煤竹をよくご覧いただくと、濃い部分と薄い部分があることに気づかれると思います。これは、昔、竹を梁(はり)などに固定するために縄で縛っていた跡なのです。縄が巻かれていた部分は煙が直接当たらなかったので、元の竹の色に近い色が残っている。これがまた、一本一本違う模様、いわゆる「景色」となって、煤竹の表情を豊かにしています。最初にご紹介している煤竹バッグの色合いが異なっているのも、このためです。


古民家から譲り受けた煤竹は、最初は煤で真っ黒だったりしますが、それを丁寧に洗い、時には少し火で炙って油分をにじみ出させ、磨き上げることで、しっとりとした奥深い艶が生まれます。まるで竹自身が内側から輝いているような、そんな美しさです。虎竹が一本一本、模様が違っているように、煤竹もまた長い年月での燻され方で同じものはひとつとありません。


煤竹


これだけ魅力的な煤竹ですが、今は本当に手に入れるのが難しくなっています。さっきもお話ししたように、煤竹が生まれる環境、つまり囲炉裏のある茅葺きの古民家が、日本から姿を消してしまったからです。新しく煤竹が作られることは、もうほとんどないと言ってもいいでしょう。


古い民家が解体されると聞けば、遠くまでトラックを走らせて、譲っていただいた事もありましたが、近年それもなくなりました。でも、そうやって苦労して手に入れた煤竹が、すべて使えるわけではありません。何しろ100年以上も前の竹です、乾燥しすぎていたり、虫食いの穴があったりして、細工物には向かないものも少なくありません。


使える部分を慎重に見極めて、丁寧に手入れをする。そういう手間ひまもかかるから、煤竹は竹材の中でも特に高価なものとして扱われています。京都の老舗竹屋さんで見せてもらった立派な煤竹が、一本100万円もすると聞いて驚いたこともありました。希少なだけでなく、その背景にある物語や、扱う難しさも含めて、煤竹は特別な価値を持っています。


煤竹筏花入


さて、このように時間と人の営みが作り上げた煤竹は、その希少性と美しさから、昔から特別な工芸品の素材として珍重されてきました。特に茶道の世界では、茶杓(ちゃしゃく)や花入、結界(けっかい)といった茶道具に煤竹が使われると、その場の雰囲気がグッと引き締まり、深い趣きが生まれる気がします。


もちろん、茶道具だけではありません。熟練の職人の手にかかれば、煤竹は繊細な編み込みの竹籠になったり、特別なお箸になったりもします。ボクも日常的に使っているペーパーナイフ、ペーパーウェイト、耳かき、ペン皿などは煤竹で作られた物を愛用しています。100年人の暮らしに寄り添った煤竹の良さを最大限に引き出し、美しい竹細工へと昇華させて次の100年への命を授ける。煤竹の作品には、自然が作り出した美しさだけでなく、それを活かす職人の技と思いが込められているようで気に入っています。


煤竹壁掛(白石白雲斎作)


今日はずっと煤竹の魅力についてお話ししてきましたが、実は、この貴重な煤竹を使って作られた竹製品を、特別にご紹介する機会を設けました。竹虎のYouTubeチャンネルで、店内で目にとまったいくつかの煤竹製品をピックアップして、特別価格で販売させていただく動画を公開しています。どれも長い年月を経てきた煤竹ならではの風格がある、特別な品々、中には長く竹虎の店舗で展示していたものや、一点限りのものもあります。


煤竹製品は、写真だけではなかなかその深い色合いや質感が伝わりにくいものです。なので少しでも、その魅力を動画とボクの言葉で直接お伝えできればと思いました。お時間ある方は、是非「時間職人」が生み出した煤竹の世界に触れてみてください。今回のYouTube動画が、一つ一つに物語が宿っているかのような煤竹と皆様との出会いになれば嬉しいです。





えっ、担げるの!?虎竹の重みとバランス

虎竹の山出し


いやはや、驚きました。昨日の30年ブログでお伝えしましたように、7月に予定している大阪万博に向けて、東京から動画撮影の方々が取材に来てくれていました。日本で唯一の虎竹を使った電気自動車「竹トラッカー」も展示する予定で、その時に会場で流すPR動画の撮影でした。工場長が虎竹で花籠を編む様子や、竹の油分を抜く「油抜き」という伝統的な作業風景、そして何より美しい虎竹が茂る竹林の様子などを撮ってもらっていましたが、その時にちょっとした出来事があったのです。


虎竹を担いでもらう


撮影は順調に進んで、虎竹の竹林での撮影になった時のことです。今年は少し山出しが遅れている所があり、ちょうど伐採された虎竹が山積みになっていました。虎竹の伐採シーズンは、毎年晩秋から1月末までと決まっています 。だから、この時期(撮影は4月でした)の竹は、伐採直後の水分をたっぷり含んだ重い状態とは違って、多少は乾燥して軽くなっているのです。しかし、それでも、竹というのは、特に長いものは、ただ重いだけじゃなくてバランスを取るのが本当に難しいのです。ボクたち竹屋にとっては当たり前の作業でも、慣れていない人にはかなり大変。


竹虎四代目、虎竹


そこで、ふと、どれくらい大変か体感してもらいたくなって「ちょっと、この虎竹を担いでみませんか?」と、取材の一人に声をかけてみました。都会から来た方に、竹林での作業の苦労を少しでも知ってもらえたら...そんな軽い気持ちでした。すると、取材の方が「やってみます!」と挑戦してくれました。


虎竹伐採


実は、以前も何度か同じようなことを試し頂いた事があったのです。日ごろ重い荷物を運んでいるという180センチを超える大きな男性も、竹を束ねた重量と肩の負担に耐えかねてギブアップしたこと思い出します。そこで、ボクは内心、「いやいや、無理だろう」と、たかをくくっていたのですが、何と!ひょいっと肩に担いで、スタスタと歩き始めたではないですか!?


虎竹の山道


思わず大きな声が出てしまいました。本当にびっくりです。山出しされたばかりの長い虎竹を、こともなげに担いで歩くのです。もちろん、伐採期を過ぎて少し軽くなっていたとはいえ、あの長さとバランスの難しさを考えれば、大したものです。


竹虎四代目(山岸義浩)、虎竹


試しにもう一度担いでもらいましたが、周りにいたスタッフの方々も、ボクの驚きっぷりを見て大笑い。予想外の出来事でしたが、なんだか嬉しい驚きでもありました。この方は天性の竹屋なのかも(笑)。


虎竹を担ぐ


しかし本当に、竹を担ぐのは難しいんです。特に伐採したばかりの、水分をたっぷり含んだ竹はズシリと重い 。国内最大級の孟宗竹のような太くて肉厚な竹はもちろん、ボクたちが主に扱っている虎竹(淡竹の仲間です)だって、それなりの長さと重さがあります。難しいのは、やはりバランス、長いものは重心を見つけるのが大変で、ちょっと気を抜くとフラフラしてしまう。だから、今回の方が軽々と担いだのを見て、本当に感心したんです。


竹虎四代目(山岸義浩)


まあ、伐採シーズンの、一番重い状態の竹だったら、また違ったかもしれません、それと、竹林でも年々高齢化が進んでますので一束の太さが小さくなり軽くなっている事もあるかも。それでも、竹という素材の持つ独特の性質、その扱いにくさを知ってもらいたいという試みは大失敗だったのです。


虎竹本社前にて


この日の虎竹の竹林や工場での仕事の様子は、万博会場にてご覧いただけるかと思いますが、ボクの「竹担ぎ大失敗動画」はそれとは別に、竹虎のYouTubeチャンネルにて公開予定です(笑)。



大阪万博、日本の竹文化を次世代に

虎竹の竹林


EXPO 2025 大阪・関西万博が始まりましたが、竹虎も7月にほんの少しだけ参加させていただくことになりました 。短い期間ではありますものの、この機会にボクたちが守り続けてきた日本の竹、土佐特産の虎斑竹(とらふだけ)の魅力をお伝えできればと考えています。


竹虎にてEXPO2025大阪・関西万博用の撮影


先日、万博出展に向けたPR動画の撮影のため、東京からクルーの方々が虎竹の里まで来てくださいました。その様子をご覧いただきながら、虎竹と日本の竹の可能性についてお話しできればと思います。


虎竹電気ev


創業明治27年(1894年)、今年で131年目を迎える竹虎は、一貫して日本の竹、特にこの地ならではの虎竹にこだわり、その価値を守り伝えてきました 。今回の万博出展も、未来へ繋ぐための一つの機会ですので、日本唯一の虎竹電気自動車「竹トラッカー」を展示します 。虎竹を使い職人技で装飾した「走る竹工芸」であり、CO2を出さない電気自動車として、竹の持続可能性を体現しています 。この竹トラッカーは、遠くメキシコや台湾の世界竹会議でも走行し、日本の竹文化をアピールしてきました 。


竹虎にてEXPO2025大阪・関西万博用の撮影


動画撮影では、虎竹伐採の様子、竹の艶と強度を高める「油抜き」の工程、職人による虎竹の花かご製作などが撮影されました 。しかし、なぜ、この地の竹だけに虎模様が入るのか?虎竹(虎斑竹)は、高知県須崎市安和の限られた谷間でしか美しい虎模様が現れない、非常に珍しい竹です 。


竹虎にてEXPO2025大阪・関西万博用の撮影


他の土地に移植しても模様は出ず、世界的な植物学者であられた牧野富太郎博士も移植に成功しなかったと記録を残されています。自然の模様を持ち、温暖な気候と美しい自然の中に育つ 、日本唯一の貴重な虎竹の美しさを万博でお伝えできればと思います。


竹虎にてEXPO2025大阪・関西万博用の撮影


ブースでは「竹トラッカー」の展示と同時に、竹職人による竹細工の実演、虎竹製品の展示販売を予定しており、簡単な花籠作りワークショップも検討中です。手仕事の温もりや国産竹細工の価値を肌で感じていただければ嬉しいです。


竹虎にてEXPO2025大阪・関西万博用の撮影、油抜き


竹虎の歴史も、日本の竹と共にあり、竹籠などは日本の伝統文化そのものです。しかし、その文化はずっと岐路に立たされています。安価な輸入品やプラスチック製品の普及により、国内の竹材生産量は大きく減少し、竹林の荒廃は皆様もご存じの通りで日本の貴重な竹文化、伝統技術の継承にも危機感を持っています。


竹虎にてEXPO2025大阪・関西万博用の撮影


それでも、ボクたちが国産にこだわるのは1985年から「21世紀は竹の時代」と言いづけてきた竹の成長の早さ、持続可能な素材そのものの良さと、長い伝統で繋いできた竹職人の技に価値があると信じているからです。


竹虎工場


地域資源とも言える虎竹は、この土地独特の自然が生み出す模様を持ち、職人が手間ひまかけて作る竹籠や竹細工には、工業製品にはない温もりと味わいがあり、自然素材の優しさ、使うほどに増す風合いが暮らしに豊かさをもたらします。


竹虎にてEXPO2025大阪・関西万博用の撮影


この7月に大阪・関西万博の会場で、お会いできる皆様はほんの一握りかも知れません。竹虎のブースで、日本唯一の虎竹の美しさ、職人の技、そして日本の竹が持つ可能性に直接触れていただけない皆様にも、インターネットを通して素晴らしい竹文化を次世代に繋いでいく竹虎の志をお伝えしていきます。



筍の季節と竹林と

京都の筍


今年も京都から立派な筍が届きました。春の訪れを知らせてくれるような瑞々しい筍に、思わず笑みがこぼれます。しかし一方で、今年は裏年にあたるため収穫量が少なく、さらに海外からの害虫による被害で、竹林の管理が難しくなってきているという話もよく耳にします。竹の生育か芳しくなく、良質の筍が収穫できない等、かねてより懸念されていたことが、少しずつ現実となって表れてきているように感じられます。


筍田楽二色


先日お邪魔した筍料理の老舗でも、仕入れに大変苦労されているとのことでした。それでも供されたお料理は、まさに春のごちそうそのもの。筍田楽二色、朝堀り筍の造り、名物の筍鏡煮、木の芽和えに木の芽焼きまで、筍の多彩な表情が丁寧に引き出されていて、素材と向き合う料理人の真心が伝わってきました。


朝堀り筍造り


朝堀り筍鏡煮


かつては当たり前のようにそこにあった春の恵みも、今は守らなければ失われてしまうかもしれない。そんな危機感が年々強まっています。竹は単に食材としてだけでなく、竹細工や竹製品などの実用品としても、また暮らしの道具や文化と深く結びついてきた素材です。


筍木の芽和え


しかし、高度経済成長の中、生活様式の変化や新素材の登場で出番が少なくなり、竹林の管理が追いつかなくなって久しいところに、近年は害虫被害や温暖化が拍車をかけています。


朝堀り筍木の芽焼き


それでも希望がないわけではありません。全国には、若い世代を中心に竹の価値を再評価し、手入れの行き届いた竹林を維持しようとする"竹人"たちがいます。自分たちも、そうした方々の取り組みに目を向けつつ、せめて食卓に上るこの一皿の筍同様に、この虎竹の里にしかない竹の行く末を考えねばなりません。


筍の海老挟み、竹米あられ揚げ


時代が変わり、自然の恵みを「いただく」ことの意味が、より重く、深くなってきました。そんな今だからこそ、この清らかな筍の味わいが、身体に沁みるのです。





別誂えの竹細工について

虎竹


別誂えの竹籠にお問い合わせを頂くことがあります。オーダーの竹籠や竹製品は、たとえ一つであっても、そのためだけに竹を選び、寸法を測り、材料を整えるところから始まります。たとえば、定番で編んでいる普段の製品をほんの少し大きく、あるいは少し小さくするだけでも、竹材の長さや幅、厚みがすべて変わってくるため、既製品の竹素材を流用することはできません。


竹籠素材


場合によっては、普段使わない編み方や技術が必要となり、試行錯誤を重ねながら試作を何度も繰り返すこともあります。一つの籠のために、三つ、四つと試作を重ねることすら珍しくないのです。


竹手提籠


そうして出来あがる別注の竹籠は、まさに世界にひとつ。だからこそ、あまり簡単にオーダーできるものではないのかも知れません。価格だけを見て判断される方には、定番の籠をお選びいただきたいと思っています。


竹虎の竹職人


「どうしてもこの竹籠が...」「惚れ込んだから、とにかく一つ...」そんな熱い想いを感じられている方はおられます。いつでも、そんなお声には応えていきたいと考えています。ただ、日本のモノ作りは皆様が想像される以上に空洞化が進みました。質の高い竹細工の別注品は、ある種の志と覚悟とが必要です。



虎竹三段ピクニックバスケットと時代を感じる白竹ランチボックス

虎竹ピクニックバスケット、虎竹ランチボックス、虎竹弁当箱<br>


皆様、お花見を楽しく過ごされた方もおられるかと思います、お弁当を持って外にお出かけするには最高の季節になりました。暖かな日差しの中、公園もいいですし、山や海など自然の中でのんびり過ごすひとときは、心までほぐれていくようです。


虎竹三段ピクニックバスケット


そんな行楽のお供にご愛用いただいている、日本唯一の虎斑竹を使った虎竹ピクニックバスケットや、虎竹ランチボックスなど角物を集めてみました。


虎竹三段ピクニックバスケット


一本一本に異なる虎模様が浮かぶ虎斑竹は、自然の力で生まれる世界に一つだけの模様。熟練の職人によって丁寧に編み上げられた三段になったピクニックバスケットは、竹編みならではの通気性と軽さそして強さを兼ね備え、お使いの人数によって二段でもお使いいただく事もできます。


虎竹三段弁当箱


ピクニックバスケットとして使わない時は、手付きの小物入れや果物籠などとしてお部屋に置いても雰囲気を損なわず、和洋問わず自然に馴染んでくれるのも良いところです。


虎竹三段ピクニックバスケット


この虎竹のぬくもりを感じられる落ち着いた佇まいは、いかがでしょうか?自然の中で過ごす時間に、伝統の自然素材の道具を使えば、大切なお出かけの時間をもっと心地よく、豊かなものに変えてくれるような気がしています。




虎竹三段ピクニックバスケットは、YouTube動画でも詳しくご説明しています。よろしければ、ご覧ください。


昔の白竹ランチボックス


ところで、現代の角籠は作りやすさを優先して、底から上蓋にかけて真っすぐな立ち上がりとなっています。ところが、昔の角籠を良く見てみると底になるに従い少し狭く作られている事に気づきます。沢山の部材を必要とするランチボックスに、このような手間をかけた秀逸な製品があったのには驚きます。


白竹のヒゴの中に、緑色に染めた竹ヒゴを入れて編まれているのも時代を感じさせます。当時は、このように手間暇かけて少しでも皆様の手に取っていただく工夫がされていました。蓋を留めるための金具が錆び付いて渋い雰囲気です(笑)。





虎竹パーティーバッグ

虎竹パーティーバッグ


手のひらに収まるほどの、小さな竹籠をひとつ、今日はご紹介させてもらいます。虎竹で編み上げた、クラッチバックと呼んでいいのか?海外では女性の方が小さな化粧品などを入れて手にする、いわゆるパーティーバッグです。この竹バッグの魅力は、虎竹を使った見た目の渋さもそうなのですが、何と言いましても手に取ったときに感じる感触です。竹ならではの"しなやかさ"と"ハリ"が同居する、不思議で心地よい質感。手の平に触れる編み目の柔らかさからは、職人の手の温もりすら感じる気がします。


虎竹手の平サイズのバッグ


開閉を留めるのは小さなマグネット、虎竹独特の縞模様に染籐も馴染んで控えめながらしっかりと個性を放っています。


虎竹ハンドバッグ


もちろん、こけだれコンパクトな作りなので収納力はそこまでありません。ほんの小さなハンカチやアクセサリー、鍵などが入る程度なので、アクセサリーなど大切にされている小物入れにされても良いかも知れません。


虎竹バニティー‐ケース


バッグの内側には、虎竹をイメージして特注で作ってもらった裏地を使用しています。この布地がまた、仕上げにぐっと華を添えてくれているんです。


虎竹ポーチ


虎竹パーティーバッグは、長年竹に向き合ってきた熟練の職人が、一点だけ試作として製作したものです。量産はされておらず、同じものは今のところ製作予定はないので、手にされた幸運な方にはぜひじっくりと楽しんでいただきたいと願っています。


渡辺竹清作パーティーバッグ


そういえば、ボクが年に一度だけ元旦に持つあのバッグを思い出します。古い民家の屋根で150年、200年と燻されて自然にできた煤竹を用いて網代編みされた、渡辺竹清先生のパーティーバッグです。


渡辺竹清作煤竹バーティーバッグ


佇まい、手触り、品格、それらすべてが心にしみる特別な存在です。今回の虎竹パーティーバッグもまた、そんな特別な逸品として、ご愛用の方の手元で静かに輝いてくれることを願っています。



春の竹籠バッグ、心地よさと機能性

白竹手提籠バッグ、竹虎四代目(山岸義浩)


すっかり春です。このような陽気になると、お出かけのお供は自然と、軽やかで明るい色目の白竹の出番です。近年では、季節によって持ち歩く手提の色合いなど、あまり気にされる方は少なくなりましたが、やはり自然と白竹に手がのびるのです。今日の気分にぴったりだったのが白竹蓋付き手提げ籠バッグ、と言っても、どこにでもあるような竹バッグではありません(笑)。


白竹蓋付き手提げ籠バッグ


この籠バッグは、地元高知の"レジェンド"と呼ばれる熟練の竹職人さんが、長年培ってきた技を注いで編み上げた特別な逸品。集大成と話されるだけあって、厳選した白竹を使った丁寧な仕事ぶり、特筆すべきは籠の上蓋です。上蓋の裏側には丈夫な竹を通して補強を施し、何といっても開閉がカチリと気持ちよく決まる構造!縁の仕上げには矢筈巻や芯巻の籐が丁寧に巻かれ、見た目だけでなく耐久性もしっかりと備えています。この蓋があることで、外出先での使い勝手は全く違ってきます、県外への出張にも安心して持ち歩く事ができるのです。


竹籠にノートパソコン


実は以前、街で革のトートバッグをカッコよく持ち歩いている方を見かけて以来、国産メーカーや海外ブランドのバッグをいろいろ見て回った時期がありました。どれもおしゃれだし、機能的で、試しに肩に掛けたりするとワクワクするのですが...どうも、何かが足りない。そう、やっぱりボクには竹の持つ温もりや、その技の向こうに竹人の見える竹籠しかないのです。最初からこんなに素敵な竹籠がすぐそばにあったのだから、実は探し回る必要などなかったのです。


竹籠にPC


ボクもそうですが、ノートパソコンを持ち歩く方は多いと思います。そこで、たまに「竹籠は、中にノートパソコンを入れたらキズがつくのでは?」と聞かれることもあるのですが、そこはちょっと工夫をしています。以前購入して、そのままになって使っていなかったTUMI(トゥミ)のバッグに付属していたPC保護スリーブを中に入れて使っているのです。竹籠自体が適度なしなりと強さを持っているので中身も安定していてとても快適です。


白竹蓋付き手提げ籠バッグ


少し使い込んで飴色になりつつある白竹の自然な色合いと軽やかな素材感が、作務衣の藍色にも馴染みます。涼しげで、ナチュラルな雰囲気もあって、出先で「素敵なバッグですね」と声をかけていただきます。春風と一緒に、軽やかな気持ちで出かけたい日には、こんなナチュラルで個性あふれる竹籠バッグがぴったり。毎日の暮らしの中にこそ、ちょっとした特別感と自然の温もりを添えてくれるのが竹手提籠です。





竹職人とおやつと

竹職人


竹細工の職人さんや内職さんの工房を訪ねると、いつもいつも心温まるおもてなしを受けます。コーヒーが大好きなボクは、色々な所でお茶を飲むことがありますが、昔から内職をやってくださっているおばちゃんが庭先のムシロで天日干しした番茶ほど美味しいお茶はありません。


焼餅


そして、今時はどこで売っているのだろうか?と思うような懐かしいお菓子の数々。小さな包みを開けると、子供の頃に駄菓子屋さんで見かけたようなお菓子や、遠い記憶にある素朴な甘さの飴が出てきて、思わずほっこりとした気持ちになるのです。


キンカン甘露煮


職人さんの奥さんが漬けた漬物を必ず出してくれる所があります。その漬物やキンカンの甘露煮など、まさに絶品!そのやさしい味わいが、ご夫婦の暮らしぶりや仕事ぶりまで伝えてくれるのです。


ぼたもち


片口ざるとスモモ


季節には自分の編んだ片口ざるに入れたスモモが出てきたり、薪ストーブで焼いたお餅を振る舞ってくれたり、手間ひまかけて作ってくださるぼたもちなども並びます。まるで実家に帰ってきたような、懐かしい気分になります。


竹職人のイカ


そして、極めつけは近くの海で獲れたばかりのイカ!自分はイカやタコも大好きなので、そのお皿が目の前に出てくると、話をしながら一皿ぺろりと平らげてしまいます。プリッとした歯ごたえと、噛むたびに広がるうま味。こんなおいしいものを、笑顔と一緒に出していただけるなんて、本当にありがたいことです。


こうした交流のなかに、に関わる人々の温もりがあります。竹を割る音、削る音、編む音と笑い声、昔ながらの暮らしに人と人とのつながり。そんな時間を過ごすたびに、「この竹達をもっと多くの人に知ってもらいたい」、あらためて心から思っています。



無塗装炭化竹しゃもじの使い方

無塗装炭化竹しゃもじ


毎日の食卓に欠かせない道具のひとつに「しゃもじ」があります。近年では、お米不足なども聞きますし、消費量も年々減っていてピークの時の半分くらいだそうですが、それでもやはりご飯は日本の主食であり、特に湯気のたつ炊き立ては美味しくて感動することもあるくらいです(笑)。無塗装で仕上げた炭化竹しゃもじは、そんなご飯のため竹節を持ち手に一つ入れてアクセントにして作っています。できるだけ材料を効率よく使いたいので節の位置はバラバラです。


無塗装炭化竹しゃもじ


防虫、防カビ効果を高めるために炭化加工を施した竹材を無塗装で仕上げていますので、少しくすんだ感じがあり、せっかくの炊きたてごはんがしゃもじにベタベタついてしまう、そんなお声もいただいています。


無塗装炭化竹しゃもじ


無塗装炭化竹しゃもじは、一本一本が職人の手によって削り出された製品です。シンプルな形ながら、使うたびに手にしっくりと馴染み、その軽さに驚かれる方も多いのですが、ご飯のひっつく竹しゃもじを快適に使っていただくためには、ちょっとした「コツ」があるのです、それは「使う前に水で濡らすこと」です。


竹しゃもじ


上の画像のウレタン塗装された物に比べて、乾いたままの竹しゃもじを使ってしまうと、ごはん粒がしゃもじにくっつきやすくなってしまいます。でも、使用前にサッと水にくぐらせるだけで、竹の表面に薄い水の膜ができ、ごはんがつきにくくなるのです。水分を含ませることで竹素材がごはんの粘り気を吸い込みにくくなり、スルッときれいによそうことができます。


無塗装炭化竹しゃもじ


また、お手入れも大事なポイントです。使い終わったら洗剤などは使用せず、やさしく洗って水気を拭き取り、風通しのよいところでしっかり乾かしてください。直射日光や長時間の浸け置きは避けていただくと、より長持ちします。無塗装の素朴な天然素材の手ざわりと使い心地で今日のごはんが、もっと美味しく、もっと楽しくなるかもしれません。



足元から整える、青竹踏み健康法

青竹踏み


青竹踏みは、30年ブログ「竹虎四代目がゆく!」に度々登場する、日本に古くから伝わる伝統的な健康器具です。丸い竹を半割にしたシンプルな形状ながら、昔から多くの方々に親しまれてきました。足裏を刺激することで健康を保つという、先人の知恵が詰まった道具です。昨年から伐採を続けてきた孟宗竹を、乾燥させて湯抜き加工しています。実はただ竹を割っただけではなく、厳選された国産の孟宗竹を使用し、職人の手によって一本一本丁寧に仕上げられています。強度を考えて一本の青竹踏みに節を二つ入れたり、ソリや歪みで出来たガタつきの調整など、案外と手間ひまかけた製品なのです。


青竹踏み


足裏には全身の器官とつながるツボ(反射区)が集まっていると言われており、踏むことで様々な効果が期待されています。足のむくみや疲れの軽減は、どちら様にも実感いただけるのではないかと思いますが、その他にも冷え性の改善、頻尿、さらには新陳代謝を高めてダイエットをサポートする働きなども挙げられます。


青竹踏み


これらの効能は、東洋医学やリフレクソロジーなどの考え方をベースにしており、足裏刺激によって自律神経や血流に良い影響があることを示す研究も存在します。まだ科学的には十分に証明されているとは言えないものの、実際に青竹踏みをご愛用頂くお客様から「足の冷えが改善された」「むくみが軽くなった」「毎日踏むのが楽しみ」という青竹踏みへのお声を数多くいただいております。


青竹踏みの感想


毎日数分、スマホをつつきながら、電話をかけながらでも手軽に続けられるので、無理なく健康習慣として取り入れていただける青竹踏み健康法。無塗装で天然素材のぬくもりをそのまま感じられる青竹踏みで、足元から整える心地よさを是非ご自宅で体験してみてください。





40年前!竹虎三代目の竹アタッシュケースをリニューアルします

竹アタッシュケース


今年で創業131年目となる竹虎は、社歴が長いだけあって、時おり素敵な贈り物のような「竹」が見つかる事があります。今回、倉庫の奥から現れたのは、40数年に渡ってしまわれていた一個の竹アタッシュケース。製作されたのは、祖父の代から懇意にしている竹工芸作家・宮川弘尚先生によるもの。なので、てっきり竹虎二代目だった祖父の依頼と思い込んでいたのですが、実は三代目の父が特別にお願いして誂えた品でした。自分たちが100年にわたって守り続けている、虎竹で刻み込まれたロゴマーク見ていたら泣けてきました。


竹アタッシュケース


素材には、まっすぐに伸びた真竹を使用しています。と、言っても一体どこが竹なのか?と思われそうですが、細く取った竹ヒゴを丁寧に布に貼り付けて、その布を今度は正確に四角く切り取り、さらに市松模様のように縦横に並べて仕上げられているのです。おそらく当初は真っ白だった竹ヒゴは、長い時を経て、見違えるような艶やかで深みのある飴色へと経年変化していました。その美しさには思わず息をのみ、しばらく見惚れてしまうほどでした。


竹虎三代目の竹アタッシュケース


あまりに素晴らしい出来栄えに、さっそく何度か出張にも持って行ってみました。道行く方から「それは何でできている鞄ですか?」と尋ねられることもしばしば。考えたらそうですよね、初めてこのアタッシュケースを見て、まさか竹だとは思う方は多くありません。七変化する竹の魅力を改めて感じられる、そんな時間ともなりました。


竹虎三代目の竹アタッシュケース


そして、さらにこの竹アタッシュケースを進化させたいと思い、現在リニューアルを計画中です(笑)。プラスチック製の持ち手部分を、日本唯一の虎斑竹(とらふだけ)に変えて、より竹虎らしい特別な一点に仕上げようと考えています。虎竹独特の自然模様と、使い込むごとに変わっていく風合いが、また次への新しい物語を刻んでくれることを期待しています。リニューアルが完成しましたら、改めて皆様にもご覧いただければと思っております。どうぞお楽しみに!



たった10枚から注文できる、プロ品質の別注・オーダーメイド国産竹簾

別注・オーダーメイド竹簾


さて、今日から新年度のスタートと言うことで、お陰様で長く続いてきた30年ブログ「竹虎四代目がゆく!」も、フレッシュな気持ちでやっていきたいと思っています!よろしくお願いいたします。まず、本日は簾(すだれ)のお話をしてみたい。


簾と聞くと、どうでしょうか軒先に吊るして使う、夏の日よけを思い浮かべる方も多いかもしれません。竹虎には、あまり他では見かけなくなった竹表皮を残した、丈夫な竹簾がありますが、実はもっとコンパクトなサイズの竹簾が、飲食業や食品加工の現場で活躍しているんです。




これらの竹簾は、職人が一本ずつ丁寧に選別した竹ヒゴを使用し、小さなサイズの竹簾も一つひとつ編み上げています。だから、別注としては驚愕(?)の、わずか10枚から別注オーダーが可能なのです!だから、飲食店さんや、量販店さん、あるいは食品加工をされる多くのプロの皆様に、お店や作業内容にぴったり合った、自分だけの使いやすいサイズが作れると喜んで頂いているのです。




たとえば、和菓子やお寿司の盛り付けの下に敷いて見た目を引き立てたり、加工食品の水切り、乾燥や冷却工程での敷き台として使われたりと、その用途はさまざま。お客様の声から生まれたサイズの中には、「こんな使い方があったのか!」と驚くような工夫もたくさんあります。


既製品ではなかなか見つからない「ちょうどいいサイズ」。けれど特注となるとロットが大きすぎて諦めていた方にも、別注竹簾はぴったり。日本の竹を使った国産で、しかも10枚からの小ロット対応だからこそ、個人経営のお店や少人数の現場にも、お気軽にご注文いただけているのです。