細い竹ヒゴを緻密に並べた市松模様の竹家具

竹家具


小さい頃から竹家具に囲まれて育ったのは本当に幸せなことだと思います。祖父である竹虎二代目義治が、竹の世界では異色の作家でもあられた宮川征甫先生と懇意だったので、その独創的な感覚で創作された竹製の調度品を、普通に生活の中で使わせてもらっていたのです。子供の頃には、当たり前だと思って、それが竹だと気づくこともなく、どれだけの技術と時間が費やされているかも知らずにいました。


だから、休憩室に置かれている宮川征甫作の家具たちを、同じように社員が何とも思わず使っていることを責められません(笑)。知らないと、その価値が分からないのです。竹虎で働いて頂いている社員の竹への知識や思い入れは、日本トップクラスだと思いますが、それでも関心がないと見えるものも見えていません。やはり竹については、ボクはお伝えしていかないと誰も知らないままだと教えてもらっています。


竹アタッシュケース


それは、さておき。6月10日の30ブログ「竹虎四代目がゆく!」で持ち手をリニューアルさせた竹アタッシュケースを思い出してください。どうでしょうか?竹のあしらい、製作技法が全く同じだとお気づきになられると思います。数十年ぶりに出てきた、このアタッシュケースを見て、すぐに宮川先生の作品だと気づいたのは、この竹家具を毎日のように目していたからなのです。


竹調度品


せっかくなので、この竹家具を少し詳しくご覧いただきたいと思っています。細い竹ヒゴを一本一本並べていき、正方形にカットしたものを縦横にならべた市松模様。これだけの大きさになると、さらに圧巻、改めて圧倒的な存在感だと魅入ってしまいます。


竹家具


両サイドも、宮川先生ならではの十八番とも言える三角形の竹パーツで表現したデザイン。小学生の頃、竹を切るのは何と難しいだろうと思っていたので、先生に聞いてみたことがあります。一本づつ異なる竹素材を、ひとつ、ひとつ同じ三角形にするために特別な鋸を使っていると先生から聞いたことを覚えています。


竹家具


このブログ書きながら、同じ市松模様にアタッシュを触りたくなって傍らに持ってきました。この家具もそうですが、アタッシュケースにしても、ボクの稚拙なカメラワークでは現物の色合いも風格も表せません。今度の出張には、必ずこのアタッシュと共に行きますから、どこかで見かけたら是非お声をかけてください(笑)。


竹家具


竹家具の背面も、この通り竹のあしらいです。製作当時は真っ白だった白竹が、長い年月で、このような飴色に変わりました。この竹のしつらいは、祖父が初めて作った茶室に向かうドア一面に貼られていました。虎竹が使われていましたが、宮川先生に依頼したものだと今頃知りました。



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