2026年10月10日の投稿

嬉しい出会い、香港からのお遍路さん

香港からのお客様


香港からのお遍路さん

南国・土佐にも心地よい風が吹き抜ける季節、思いがけない、そして胸が熱くなるような嬉しい出会いがありました。なんと、一人のお客様が、はるばる香港から海を越えて虎竹の里のに立ち寄ってくださったのです。そのお客様は、これまでにも何度か来日されては四国霊場を巡られている、筋金入り(?)のお遍路さんの方でした。実は昨年、巡礼の道中で使うための網代笠をご注文いただいていたご縁がありました。今回は再びお遍路の旅に来られて、第37番札所の岩本寺に向かう道中で直接立ち寄りたかったと足を運んでくださったのです。


四国遍路の長い道のり、日差しを遮り、小雨程度ならしのいでくれる笠として網代笠を被って歩いてくださっている。そのことだけでも竹屋冥利に尽きるありがたいお話なのですが、さらに深く心を揺さぶられる出来事がありました。それが手渡してくださったお土産の包みだったのです。それは、香港で知らない人はいないと言われる老舗のお菓子屋さん奇華餅家(Kee Wah Bakery)のお菓子でした。創業80有余年を誇る老舗ですが、かつては時代の変化とともに伝統菓子が敬遠され、深刻な経営の危機に瀕した時期があったそうです。しかし、三代目を継承された経営者の方が立ち上がり、伝統を守りながらも時代に合わせたモダンな商品開発や、新しい販売方法にも果敢に挑戦され、その結果見事に再生を果たし、今では香港のみならず中国本土やマカオ、台湾などにも
多くの店舗を構えるほどの大成功を収められています。


奇華餅家、竹虎四代目(YOSHIHIRO YAMAGISHI)


竹虎も奇華餅家と同じ

はるばるご持参いただいた、お土産をボクに手渡しながら、お客様が真っ直ぐな瞳でこう話してくださったのです。


「竹虎も、時代の荒波や厳しい経営の時期を乗り越えて今があると知りました。このお菓子屋さんの歩みと全く同じだと思い、香港から持ってきたのです」

この言葉を聞いた瞬間、胸の奥底から込み上げるものがあり、言葉を失うほど感動してしまいました。プラスチック製品の台頭や生活様式の変化によって、日本の竹産業が厳しい冬の時代に直面した時のことが蘇ります。それでも、祖父や父の背中を追いかけ、四代目を継がせてもらった自分が虎斑竹の灯を消してはならない、そう思いもがき続けている姿を奇華餅家の中にご覧になられたようです。


奇華餅家、竹虎四代目(山岸義浩)


思いのこもった手土産

高知の田舎にあるボクたちような小さな竹屋の歴史や歩みを、遠く香港の地でこれほどまでに深く理解し、心を寄せてくださっていたとは思いもよりませんでした。老舗が伝統を守るために変わる痛みを、ご自身の地元にある老舗の名店と重ね合わせ、わざわざそのお菓子を選んで運んでくださったそのお心遣いに、ただただ感謝しかありません。


一閑張り笠、竹笠、しぶか笠


先に進む大きな勇気

ちょうど竹虎では、国産の竹骨に和紙を貼り、柿渋を塗り重ねて仕上げる一閑張りの笠を新しく試作している途中です。竹の骨組みに和紙と柿渋が重なり合っていく手仕事の風合いを手元でご確認いただき、笠を手に一緒に記念写真も撮らせていただきました。ものづくりへの深い敬意を感じるその笑顔が、本当に印象的で嬉しかったです。


「自分たちの信じて歩んできた道、発信し続けてきた想いを、こんなにもしっかりと見て、受け止めてくださる方がいる」それだけで、どれほどの励ましとなり、これからの先に進む大きな勇気をくれたことでしょうか。四国の遍路道に戻っていかれるお客様の後ろ姿に、心の中で深く手を合わせました。どうか道中ご無事で、素晴らしいお遍路の旅になりますように。



コメントする

竹虎四代目

竹虎四代目
YOSHIHIRO YAMAGISHI

創業明治27年の老舗竹虎の四代目。100年守り続けた日本唯一の竹林を次の100年に繋ぐ。日本で二人だけの世界竹大使。

TAG

おすすめタグ

関連タグの記事一覧

記事一覧