御用籠の歴史を受け継ぐ、暮らしと自然に寄り添う真竹コンテナ手提げ籠バッグ

真竹コンテナ手提げ籠バッグ


真竹コンテナ手提げ籠バッグを久しぶりに販売させていただく事ができました。「再販お知らせボタン」からお問い合わせを頂いておりました皆様、本当に長い間お待ちいただきありがとうございました。残念ながらお求めいただけなかった方々には、お手数ですが改めてご登録をお願いいたします。次回は、3カ月から4カ月後程度をメドに再販予定で準備をすすめています。


さて、そんな真竹コンテナ手提げ籠バッグのルーツは、日本の暮らしに欠かせなかった御用籠にあります。竹細工が盛んだった頃、荷物を運ぶといえば、この御用籠がその役割の多くを担っていました。時には自転車やバイクの荷台に取り付けられ、自転車籠としても親しまれてきた歴史も持っています。幅広の竹を使った力竹を巧みに配することで実現された、その並外れた丈夫さが特徴で、重い荷物を運ぶための堅牢な作りは、まさに実用性を追求した先人の知恵の結晶と言えるのです。


真竹コンテナ手提げ籠バッグ


この堅牢な御用籠に、現代の使い勝手を考慮して、パイプ持ち手を付ける事で真竹コンテナ手提籠バッグは誕生しました。ちょっと大袈裟ではありますものの、伝統的な御用籠の丈夫さを保ちつつ、現代の多様なライフスタイルに対応できるように進化させたのです。日頃のお買い物はもちろんのこと、キャンプなどのアウトドアシーンや、道具入れ、あるいはキッチンでの野菜を入れる野菜籠としても活躍します。


真竹コンテナ手提げ籠バッグ


特に注目いただきたいのは、サイズへのこだわりです。当時、御用籠は様々な荷物を運ぶためのものでした、竹虎の工場でも竹端材入れとして、リヤカーに載せて運ばねばならない程の巨大な籠がありました。元々、そのように無骨な籠を、女性の方でも気軽に持てるように小さく軽量化するのは実は難しく、熟練の技が必要です。製作は難しく、面倒でもあるため、効率も悪いのですが、一人でも多くの方に、この秀逸な角籠の事を知っていただきたい思いが強く、古老の職人にお任せしギリギリまで小さく、そして軽く持ちやすい籠に仕上げているのです。


真竹コンテナ手提げ籠バッグ


竹は自然素材であり、そのため真竹コンテナ手提籠バッグも、製品ごとに微妙に異なる表情を見せます。編み上がったばかりの竹籠には、竹本来の青々とした色合いが残っているものもあれば、少し前に作られたものは既に色が落ち着き始めているものもあります。いずれ、使い込むうちに青竹の色合いは徐々に落ち着き、やがて全体が均一な色合いへと変わっていきます。


真竹コンテナ手提げ籠バッグ


竹の温もりを、皆様の日常にお届けしたいとの思いと、古き良き御用籠の強さと便利さを伝えたいと考えて登場した真竹コンテナ籠から受け継がれてきた職人の技を感じていただきたいです。それが、ご愛用の方々の毎日に、きっと豊かな彩りをもたらしてくれるはずだと確信しています。





国産山葡萄の桝網代編み手提籠バッグの修理について

国産山葡萄手提げ籠


竹虎では、全国の皆様がご愛用いただく竹籠などの竹細工の修理を賜っております。実際、自分たちが製造したものでないと修理以来を受け付けていただけない所が多いようで、手直しをお断りされた方々には大変喜んでいただいており、ボクたちも本当に嬉しく思っています。


最近、多くなっているのが竹素材の製品だけでなく、山葡萄手提げ籠バッグやアケビといった自然素材の手提げ籠バッグです。これからの籠は、素材が丈夫で数十年お使い頂く方が普通なので、長くお手元にある中で、どうしても傷みなどが出てしまいます。今回も、そんな山葡萄の手提げ籠が修理に届きました。


国産山葡萄手提げ籠バッグ持ち手修理


箱から取り出した山葡萄の手提げ籠を見てアッと声が出ました。この籠は、竹虎が限定で販売させて頂いた、ものでした。特徴的なのは普通の網代編みでなく、桝網代とよばれる枡形の模様に編みこまれた手提げバッグだったのです。持ち手部分が少し細めだったので、内側の芯が折れてしまっていました。


国産桝網代編み山葡萄


近年は、海外製品からの技巧的な編み込みのものか多く、ボクなど昔ながらの国産山葡萄しか知らない者にとっては少し違和感を覚えていますが、この桝網代は無骨とか野暮ったいと言葉が似合うような、決して整いすぎていない美しさがありました。型にそってキチンと編み上げられた、洗練された籠とは一線を画しています。専門の山葡萄職人というよりも、地元の山で採れた山葡萄の蔓を、農閑期にコツコツと編み上げた、そんな素朴さを感じていた籠でした。


持ち手は取り換えねばなりませんので、もちろん、それはあります。けれど、とにかく修理に戻ってきた桝網代編みの山葡萄の成長ぶりに目を見張ります。野葡萄の樹皮は、使い込むほどに人の手脂などで、ゆっくりと馴染んで漆黒のツヤを帯びていきますが、それもご愛用の方次第。きっと毎日手元に置かれて使い込まれている幸せな籠だと感じます。


山葡萄セカンドバッグ


ボクも母から譲られたセカンドバッグを愛用していますが、まるで黒革のような質感と黒光りです。この黒光りこそ、山葡萄の真骨頂なのですが、このツヤが、最初はぼんやりとしていた桝形の網代編みの模様を、くっきりと、鮮やかに、しかし優しく、浮かび上がらせています。


国産桝網代山葡萄手提げ籠バッグ持ち手


現在の山葡萄の手提げ籠バッグは、ご存じの方もおられるかと思いますけれど、輸入品も含めて非常に高価なものになっています。ものによっては数十万円もの作品のようなモノまであります。ところが、この山葡萄買い物籠バッグは、驚くほどお求めやすい価格でした。なのに、お客様が愛情こめて数年お使いいただくと、このような大変身を遂げるのだと感激します。


国産山葡萄手提げ籠バッグ


何とも言えない深みのある風合いを醸し出し、まるで長年連れ添ったパートナーのように、お客様と共に時を刻んできたに違いありません。暮らしの風景がにじみ出る買い物籠バッグなどと言えば少し大袈裟かも知れませんが、傷みやすい底の四隅には革で補強をされているあたり、本当に大切にされているのが伝わってきます。


国産山葡萄手提げ籠バッグ


現代社会においては、効率性や均一性が重視されてきました。けれど、だからこそ、手仕事の温かみや、自然素材の持つ豊かな表情が、より一層尊く感じられるのではないかと考えています。竹細工も同じで、使い捨ての文化とは対極にある、まさにサステナブルな逸品たちです。日本の豊かな自然の恵みを最大限に活かし、永く使えるものを作る。それは、先人が長年大切にしてきた手仕事の精神そのものです。また、この桝網代に会えるだろうか?30年、40年、もしかしたら50年先でしょうか(笑)。




こちらのYouTube動画は、同じタイプの桝網代編みの買い物籠バッグです。手直しの仕方も今回とは少し異なっていますが、よろしければご覧ください。



根曲竹の籠の魅力と伐採現場の裏側

根曲竹角八ツ目手提籠バッグ


根曲竹(ねまがりだけ)という竹は、非常にユニークな特徴を持った竹です。この30年ブログ「竹虎四代目がゆく!」にも、たまに登場していますが寒い地域に成育する笹の仲間です。直径も2センチ程度の細さで積雪地帯に自生するこの竹は、雪の重みに耐えながら育つため「根曲」の名前の由来ともなっているように、根元が湾曲しているのです。


いわゆる日本三大有用竹の孟宗竹、真竹や淡竹のような直径の太い竹とは異なり一見細くて頼りも見えますが、冬の間、そうやって鍛えられているので、驚くほどの強度としなやかさを兼ね備えた秀逸な竹材です。「真竹より篠竹、篠竹よりスズ竹、スズ竹より根曲竹」東北には、そうした言葉があるほど、根曲竹はその堅牢さと、竹細工にした時の美しさにおいて特別な存在として知られてもいます。


根曲竹角八ツ目手提籠バッグ


根曲竹角八ツ目手提籠バッグも、この特性を最大限に活かした逸品です。この手提籠バッグの目を引くのは、その美しい編み目。細く割った根曲竹を丁寧に編み込んだ八ツ目編みは、竹材そのままの無骨さを残したままでも洗練された印象を与えます。自然素材である竹の温もりと、職人の手仕事による丁寧な仕上がりは、使うほどに愛着が深まります。




さて、この美しい根曲竹を手に入れるまでには、実はあまり知られていない想像以上の苦労があります。虎竹などの竹林と同じように、根曲竹が生息するのは急峻な山深い地域、ただひとつ大きく違うのがクマとの遭遇があることです。根曲竹の伐採現場に行くと、笛を吹き鳴らし爆竹に火をつける物々しさなのです。是非、ご関心のある方はYouTube動画もご覧になってみてください。


根曲竹角八ツ目手提籠バッグ


虎竹の里でも、誰もいない山中でイノシシに出会う事があります、縞模様のある小さなウリ坊なら良いですが、真っ黒いイノシシは小さくてもドキリとします。人に向かってくる事もあるクマなら、どれくらい恐ろしいか想像してしまいます。そうした苦労を経て伐採された根曲竹は、熟練の職人の手によって丁寧に加工され、この美しい手提籠バッグへと生まれ変わっているのです。


根曲竹角八ツ目手提籠バッグ


根曲竹の魅力は、堅牢さと使い込むほどに色合いが深みを増し、独特のツヤと光沢を放つところ。同じ自然素材でも、ボクたちの虎竹や、白く晒した白竹とは又違う竹の魅力があります。



白石白雲斎さんと竹虎二代目の、煤竹と白竹の昭和レトロな網代手提籠バッグ

煤竹網代手提籠バッグ


竹虎の倉庫で棚の奥深くに仕舞われていた竹手提籠バッグは、ただ古いだけの「竹」ではありませんでした。箱を開けた瞬間に、まるで何かを語りかけてくるような存在感、本物の煤竹だけが醸し出す雰囲気にボクは一瞬で心を奪われます。煤竹(すすだけ)と白竹を組み合わせて、丁寧に編み込まれた網代編み、特徴的なのは竹籠バッグが作られ始めた頃に良く使われていた、持ち手と本体を繋いでいる金具です。今ではあまり見かけないデザインに昭和レトロを感じる逸品でした。


煤竹網代手提籠バッグ


深い飴色に輝く竹肌の煤竹とは、古民家の囲炉裏やかまどの煙で、100年、150年、時には200年という気の遠くなるような年月をかけて自然に燻されて生まれた竹です。昔の日本家屋では、竹材が天井や屋根材に多用されていました、そこに日々立ち上る煙が、長い時間をかけて竹の表面を深く美しい色合いに変えていったのです。まさに「時間職人」だけが作り出す事の出来る、宝石のような竹材。囲炉裏の生活がなくなった現代では手に入れるのが非常に難しい、希少な素材です。


煤竹網代手提籠バッグ


一方で白竹も、晒したばかりの真っ白な色合いが経年変色して落ち着いた色目になっていて、煤竹の編み込みに馴染んでいます。この二つの異なる竹が、網代編みされて一つの籠の模様を作り出している所が、この籠のひとつの魅力です。重厚な煤竹が時間の重みを語り、白竹が現代の空気感をまとわせる...もしかしたら、作家の方がそんな感覚を持って創作されたのだろうかと想像してみました。


煤竹網代手提籠バッグ


実はこの手提げ籠バッグは、竹虎二代目・山岸義治が特注で製作を依頼したものでした。祖父である義治は、虎竹の里にしか成育しない虎斑竹の育成と普及に尽力した人でした。江戸時代には、土佐藩の特産として藩外に出す事を厳しく制限された虎竹ですが、それ故に、知名度が低かったのです。その竹を全国区にして、土佐の竹虎として名声を広めたのが義治でした。


煤竹網代手提籠バッグ


この煤竹バッグは、そんな義治が特別に注文して製作されたという事が、ボクにとっては更なる重みを与えてくれます。製作を依頼されたのは、竹虎二代目と非常に懇意にして下さっていた竹工芸家・白石白雲斎(しらいし はくうんさい)さんではないかと思っています。白雲斎さんは、伝統を重んじながらも、常に新しい表現に挑戦してきた職人で、多くの秀逸な作品を遺されています。特に虎竹を使った花籠などは、オーソドックスでありながら、他の竹人が真似のできない高みの技を感じます。


決めてとなったのは、生前に白雲斎さんから譲られたフィリピン製の籐編み籠と同じショルダーストラップ用部材が取付られている事です。国産の煤竹バッグに、一見このような違和感のある設えができたのは、祖父の注文なのか?作家の遊び心なのか?今となっては正確には分かりませんが、おそらくその両方だったのかも知れません。


煤竹網代手提籠バッグ


更に、この竹籠の魅力は、昭和らしさが漂う、懐かしい持ち手と本体を繋ぐ金具や、どこか男性的な力強さを持った直線的で凛としたフォルムも印象的です。煤竹という和服はもちろん、現代の洋服ともよく馴染む、自然素材が長い年月をかけて醸し出す風合いを眺めていると、おのずと竹虎の創業から百年以上、竹と共に歩み続けてきた歴史に思いをはせます。この手提籠バッグも、四代繋いできた社歴の中で生まれた物語のひとつです。





竹虎スタッフ愛用!小さ目のスズ竹市場籠で感じる、毎日の暮らしに竹細工

スズ竹市場籠でピクニック


さて、皆様ゴールデンウィークもいよいよ本日限りとなりました。今回の連休は少し短かったこともあり、また航空機運賃も高めだったそうで、近場で楽しまれる方が多いと新聞に書かれています。そこで、もしかしたら身近に行けるピクニックやキャンプ等にお出かけになられた方も多かったのではないでしょうか。


車積スズ竹市場籠


なにも、黄金週間に限ったことではありません。たまの休日には、自然の中でリラックスされたいと思って、海や川あるいは山に向かわれる事でしょう。そんな屋外での行楽に活躍するのが、スズ竹市場籠です。この手提げ籠が活躍するのはお買い物だけではありません、幅広いフォルムは車に乗せても安定感があり、荷物の出し入れがしやすい上に、とにかく丈夫なのでアレコレ何でも放り込めるから使い勝手も最高です。青空の下、スズ竹市場籠が活躍している光景は、ボクたち竹虎としても本当に嬉しいものなのです。


竹虎スタッフの使う市場籠バッグ


でも、皆さんが市場でご愛用されたり、行楽に連れて行ったりするスズ竹市場籠と、竹虎のスタッフが毎日使っている籠とは、実はちょっとサイズが違ったりします。そうなのです、確かに荷物が沢山入れられる大きなものが人気ですが、竹虎社員が毎日通勤に使っているサイズは(小)だったり(特小)だったりします。なぜかと言うと、日常使いには、あまり荷物が入り過ぎても重たくなってしまうから。毎日使うものだからこそ、これくらいのサイズが本当に手ごろなのです。


小さめスス竹市場籠


通勤やお買い物など、日々の暮らしの中では、ピクニックほど多くの荷物を入れることは少ないと思います。お財布、スマートフォン、手帳、小さなポーチ、お弁当箱、ハンカチ...。そんな「いつもの荷物」には、大きな籠よりも(小)や(特小)サイズの方が、使い勝手が良い場面が多いんです。籠自体が軽い上に、必要以上に物を詰め込みすぎることもないので、一日中持ち歩いても負担になりにくいと言います。


スズ竹


スズ竹は、東北など寒い地域に自生する、非常に粘り強い性質を持った竹です。竹と名前がつくものの、ボールペン程度の太さしかない笹の仲間ですが、厳しい自然環境が育んだその強靭さとしなやかさがあるからこそ、毎日使ってもへたれない、頼りになる市場籠が生まれます。


スズ竹市場籠ピクニック


自然素材である竹の籠が、いつも隣にあることは単に便利なだけでなく、どこか心に豊かさをもたらしてくれる気がします。豊かな日本の自然と、編み込みから伝わる職人の手仕事の温もり、使い込むほどに増す風合いは、ささやかだけれど、かけがえの無い価値です。環境に配慮した暮らしや、本物の素材を大切にしたいと考える方々にも、きっと共感していただけるのではないかと思っています。


スズ竹市場籠


大きなサイズのスズ竹市場籠はもちろん魅力的ですが、もし「毎日使える竹籠や竹バッグを探している」「普段使いできる竹の手提げ籠が欲しい」と探されているのでしたら(小)や(特小)サイズのスズ竹市場籠にも目を向けてみてください。買い物籠としてだけでなく、日々の生活の相棒として、竹ならではの心地よさと彩りを添えてくれるはずです。



蘇るスズ竹市場籠、世代を超えて人に寄り添い続けるために

スズ竹市場籠


竹手提げ籠の中でも、一番日常的に皆様がお使いいただいてるのはスズ竹市場籠かも知れません。何と言っても抜群の丈夫さと使いやすさ、しなやかで軽いのに、重たい荷物を入れてもびくともしない。だから、毎日のお買い物や野外へのお出かけはもちろん、かつての築地市場や現在の豊洲市場でも、プロの料理人の方々が買い出しに愛用するほど、実用性に優れた竹籠なのです。


使い込まれたスズ竹市場籠


これだけ日々活躍してくれる籠ですから、どうしても傷みやすい部分が出てきます。実際、市場が移転する前には、東京の出張の際に何度か早朝の築地を歩いた事がありますが、本当にかなりの高い確率で、使い古したスズ竹市場籠の壊れた部分にガムテープで補強した強者の籠に出くわしました(笑)。


手提籠持ち手


「手にされている、その籠!写真に撮らせてもらえませんか?」何度、そう言いかけた事か...(笑)。


スズ竹行李


スズ竹は、主に東北などの寒い地方で育つ、細くしなやかでありながら非常に丈夫な竹です。その強さと柔軟性から、かつては市場籠だけでなく、衣類を入れる行李も大量に製造されていた時代があります。




しかし、このスズ竹もプラスチック製品の登場により活躍の場を段々と失くしていきます。そして、他の竹細工と同じように職人の高齢化と共に編まれる量が激減し、更には近年の120年に一度の開花時期を迎え、その後一斉に枯れてしまうという大自然のサイクルで材料が手に入りにくくなり、スズ竹製品の減少に拍車がかかってしまっているのです。だからこそ、せっかくの市場籠は、修理して使い続ける価値があると、ボクは強く思っています。


スズ竹市場籠経年変色


先日も、長年大切に使われてきたスズ竹市場籠の修理をお預かりしました。編みあがった時には、少し青みかがっている竹肌が、籠全体に渡って美しい飴色に変化し、深いツヤを放っているのを見ると、どれだけ持ち主の方に愛され日々の暮らしに寄り添ってきたかが伝わってきます。


市場籠四隅の穴


竹細工の素晴らしいところは、たとえ傷んだり壊れたりしても、修理によって再び命を吹き込むことができる点です。特にスズ竹市場籠は丈夫なため、部分的な手直しをすれば、まるで新品のようになり、生まれ変わった籠となって何十年も使えることが多いのです。


輸入手提籠底四隅を籐補強


なので、これからも末永く使っていただきたいという想いで、傷んだ部分を丁寧に補修させていただきます。持ち手を取り換え、穴の開いた四隅はスズ竹素材を持っていないため真竹で代用して補強し、その上を籐でかがっています。


市場籠の縁巻


また、縁巻も場合によっては内側に使われている芯竹が古くて弱っていたり、折れたりしている場合には、全て新しい竹でやり替え、新しくして籐で巻き直すと、籠はまた新しい輝きを放ち始めます。


スズ竹買い物籠修理完了、竹虎四代目


修理を施した箇所は、最初は新しい竹の色合いですが、古い素材と真新しい素材のコントラストは良いものです。これが、使い込むうちに周りの色合いと馴染んで、さらに味わい深い表情になっていくのも、たまらない魅力です。


スズ竹市場籠ハイキング、キャンプ、お花見


それぞれのお客様がご愛用されてきた籠は、同じ修理でも実はひとつひとつ程度が異なり別注品の竹細工を製作するようなものでもあります。そのため、時にはお客様が想像されているよりも修理費用がかかってしまうこともあります。でも、若干の出費はありますものの、出来あがったお品をご覧なられた皆様は、こちらのお客様のようなご感想を言っていただきます。


市場籠経年変色


(お客様のお声)

お直しの竹かご受け取りました!丁寧にしっかりとお直ししていただきありがとうございました、また使用できるの楽しみです!さすがの技術に感動してます。竹虎さんの、カゴも欲しくてSサイズも購入させていただき使っています、まわりから素敵と褒められます、両方とも大切に使います。どうぞ皆様によろしくお願いします。インスタストーリーにお直しカゴがでてきて、感動してました。ほかの商品も魅力的で竹製品、気になります。


野外の行楽に竹手提バッグ


こうして喜んでいただけることが、職人たちにとっても何よの励みです。愛着のある籠を、再びお客様の元へお返しできた時の感激は、言葉になりません。


新品手提籠


竹製品を修理して世代を超えて使い続けることは、まさにSDGsやサステナビリティを目指す現代社会に合った、昔から日本にある、素晴らしい伝統文化だとボクは思います。プラスチック製品なら捨ててしまうような状態でも、竹細工なら修理して使い続けることができる。これは、日本の「もったいない精神」であり、物やひいてはコトや人を大切にする心そのものではないかと感じるのです。


クルミ手提げ籠バッグ


YouTube動画やインスタグラムで情報発信するせいもあって、竹籠修理のお問い合わせが増えています。竹編みだけではなくて、時には山葡萄やクルミ、アケビの籠などのご相談もいただきます。お客様の物を大切に使い続けたいと言う気持ちがある限り、できるだけの対応をさせて頂いています。




この30年ブログ「竹虎四代目がゆく!」をご覧の皆様の中でも、もし、ご愛用のスズ竹市場籠や、その他の竹籠、竹細工の傷みでお困りでしたら、諦めるのは早いです(笑)。その前にぜひ一度、創業131年となりました竹虎にご相談ください。心を込めて、大切な籠を蘇らせるお手伝いをさせて頂きます。





虎竹パーティーバッグ

虎竹パーティーバッグ


手のひらに収まるほどの、小さな竹籠をひとつ、今日はご紹介させてもらいます。虎竹で編み上げた、クラッチバックと呼んでいいのか?海外では女性の方が小さな化粧品などを入れて手にする、いわゆるパーティーバッグです。この竹バッグの魅力は、虎竹を使った見た目の渋さもそうなのですが、何と言いましても手に取ったときに感じる感触です。竹ならではの"しなやかさ"と"ハリ"が同居する、不思議で心地よい質感。手の平に触れる編み目の柔らかさからは、職人の手の温もりすら感じる気がします。


虎竹手の平サイズのバッグ


開閉を留めるのは小さなマグネット、虎竹独特の縞模様に染籐も馴染んで控えめながらしっかりと個性を放っています。


虎竹ハンドバッグ


もちろん、こけだれコンパクトな作りなので収納力はそこまでありません。ほんの小さなハンカチやアクセサリー、鍵などが入る程度なので、アクセサリーなど大切にされている小物入れにされても良いかも知れません。


虎竹バニティー‐ケース


バッグの内側には、虎竹をイメージして特注で作ってもらった裏地を使用しています。この布地がまた、仕上げにぐっと華を添えてくれているんです。


虎竹ポーチ


虎竹パーティーバッグは、長年竹に向き合ってきた熟練の職人が、一点だけ試作として製作したものです。量産はされておらず、同じものは今のところ製作予定はないので、手にされた幸運な方にはぜひじっくりと楽しんでいただきたいと願っています。


渡辺竹清作パーティーバッグ


そういえば、ボクが年に一度だけ元旦に持つあのバッグを思い出します。古い民家の屋根で150年、200年と燻されて自然にできた煤竹を用いて網代編みされた、渡辺竹清先生のパーティーバッグです。


渡辺竹清作煤竹バーティーバッグ


佇まい、手触り、品格、それらすべてが心にしみる特別な存在です。今回の虎竹パーティーバッグもまた、そんな特別な逸品として、ご愛用の方の手元で静かに輝いてくれることを願っています。



春の竹籠バッグ、心地よさと機能性

白竹手提籠バッグ、竹虎四代目(山岸義浩)


すっかり春です。このような陽気になると、お出かけのお供は自然と、軽やかで明るい色目の白竹の出番です。近年では、季節によって持ち歩く手提の色合いなど、あまり気にされる方は少なくなりましたが、やはり自然と白竹に手がのびるのです。今日の気分にぴったりだったのが白竹蓋付き手提げ籠バッグ、と言っても、どこにでもあるような竹バッグではありません(笑)。


白竹蓋付き手提げ籠バッグ


この籠バッグは、地元高知の"レジェンド"と呼ばれる熟練の竹職人さんが、長年培ってきた技を注いで編み上げた特別な逸品。集大成と話されるだけあって、厳選した白竹を使った丁寧な仕事ぶり、特筆すべきは籠の上蓋です。上蓋の裏側には丈夫な竹を通して補強を施し、何といっても開閉がカチリと気持ちよく決まる構造!縁の仕上げには矢筈巻や芯巻の籐が丁寧に巻かれ、見た目だけでなく耐久性もしっかりと備えています。この蓋があることで、外出先での使い勝手は全く違ってきます、県外への出張にも安心して持ち歩く事ができるのです。


竹籠にノートパソコン


実は以前、街で革のトートバッグをカッコよく持ち歩いている方を見かけて以来、国産メーカーや海外ブランドのバッグをいろいろ見て回った時期がありました。どれもおしゃれだし、機能的で、試しに肩に掛けたりするとワクワクするのですが...どうも、何かが足りない。そう、やっぱりボクには竹の持つ温もりや、その技の向こうに竹人の見える竹籠しかないのです。最初からこんなに素敵な竹籠がすぐそばにあったのだから、実は探し回る必要などなかったのです。


竹籠にPC


ボクもそうですが、ノートパソコンを持ち歩く方は多いと思います。そこで、たまに「竹籠は、中にノートパソコンを入れたらキズがつくのでは?」と聞かれることもあるのですが、そこはちょっと工夫をしています。以前購入して、そのままになって使っていなかったTUMI(トゥミ)のバッグに付属していたPC保護スリーブを中に入れて使っているのです。竹籠自体が適度なしなりと強さを持っているので中身も安定していてとても快適です。


白竹蓋付き手提げ籠バッグ


少し使い込んで飴色になりつつある白竹の自然な色合いと軽やかな素材感が、作務衣の藍色にも馴染みます。涼しげで、ナチュラルな雰囲気もあって、出先で「素敵なバッグですね」と声をかけていただきます。春風と一緒に、軽やかな気持ちで出かけたい日には、こんなナチュラルで個性あふれる竹籠バッグがぴったり。毎日の暮らしの中にこそ、ちょっとした特別感と自然の温もりを添えてくれるのが竹手提籠です。





40年前!竹虎三代目の竹アタッシュケースをリニューアルします

竹アタッシュケース


今年で創業131年目となる竹虎は、社歴が長いだけあって、時おり素敵な贈り物のような「竹」が見つかる事があります。今回、倉庫の奥から現れたのは、40数年に渡ってしまわれていた一個の竹アタッシュケース。製作されたのは、祖父の代から懇意にしている竹工芸作家・宮川弘尚先生によるもの。なので、てっきり竹虎二代目だった祖父の依頼と思い込んでいたのですが、実は三代目の父が特別にお願いして誂えた品でした。自分たちが100年にわたって守り続けている、虎竹で刻み込まれたロゴマーク見ていたら泣けてきました。


竹アタッシュケース


素材には、まっすぐに伸びた真竹を使用しています。と、言っても一体どこが竹なのか?と思われそうですが、細く取った竹ヒゴを丁寧に布に貼り付けて、その布を今度は正確に四角く切り取り、さらに市松模様のように縦横に並べて仕上げられているのです。おそらく当初は真っ白だった竹ヒゴは、長い時を経て、見違えるような艶やかで深みのある飴色へと経年変化していました。その美しさには思わず息をのみ、しばらく見惚れてしまうほどでした。


竹虎三代目の竹アタッシュケース


あまりに素晴らしい出来栄えに、さっそく何度か出張にも持って行ってみました。道行く方から「それは何でできている鞄ですか?」と尋ねられることもしばしば。考えたらそうですよね、初めてこのアタッシュケースを見て、まさか竹だとは思う方は多くありません。七変化する竹の魅力を改めて感じられる、そんな時間ともなりました。


竹虎三代目の竹アタッシュケース


そして、さらにこの竹アタッシュケースを進化させたいと思い、現在リニューアルを計画中です(笑)。プラスチック製の持ち手部分を、日本唯一の虎斑竹(とらふだけ)に変えて、より竹虎らしい特別な一点に仕上げようと考えています。虎竹独特の自然模様と、使い込むごとに変わっていく風合いが、また次への新しい物語を刻んでくれることを期待しています。リニューアルが完成しましたら、改めて皆様にもご覧いただければと思っております。どうぞお楽しみに!



経年変化を楽しむスズ竹市場籠の魅力

スズ竹市場かご


スズ竹市場籠は、今もなお昔ながらの手仕事で丁寧に編まれている、日本の暮らしに根ざした道具のひとつだ。軽くて丈夫なスズ竹を用い、しっかりと編み込まれた籠は、日々の買い物や収納に最適。使い始めはシャキッとした青みがかった色合いをしているが、使い込むほどに竹の表情が変化し、落ち着いた飴色へと育っていく。その色合いの変化は、天然素材ならではのもので、時間をかけて付き合っていく楽しさがある。


竹虎四代目使用スズ竹市場籠


実は、ボクもこのスズ竹市場籠を長年愛用している。自慢の愛用品は、少し背が低めの特注タイプ。日常づかいにちょうどよいサイズ感で、車の足元にもすっと収まり、使い勝手がとても良い。使い始めて十数年が経つその籠は、新品と見比べるとまるで別物だ。


愛犬が子供の頃に噛んでしまって傷んだ口巻部分も、手直ししてワンポイントのようになりかえって自分だけのストーリーがあり愛着が深まっている。籐の持ち手部分も、最初の明るい色合いから、手に馴染んだ深い飴色に変わり、艶も出てきた。まさに時と共に育った証。握るたびに、手仕事の温もりとともに、これまでの暮らしの記憶までもよみがえってくるようだ。


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スズ竹市場籠を新しい順番に積み上げてみた(笑)。こうした天然素材の道具は、便利さや効率だけでは語れない魅力があると思う。暮らしの中で長く寄り添いながら、少しずつ変化し、自分だけの風合いになっていく。その変化を楽しみ、丁寧に使い続けることで、愛用する道具との関係もより深まっていくように感じている。


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何もスズ竹市場籠に限ったことではないものの、ただの「かご」ではない。使い手の暮らしにそっと寄り添い、日々の風景に馴染んでいく相棒のような存在。まだ、手にされた事のない皆様にも、四代目の籠のように長年連れ添える籠に出会い、ひいては日本の竹文化を知って欲しいと願っている。