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「手直し迷子」の山葡萄籠と、作り手・売り手の責任

母から譲られた山葡萄セカンドバッグ


母から譲られた山葡萄セカンドバッグ

ボクが日頃から愛用している山葡萄のセカンドバッグは、ノートパソコンがすっぽりと収まる絶妙なサイズ感で、本当に重宝しています。もともとは半世紀ほど前、母が職人さんから直接分けていただいたもの。それを十数年前にボクが譲り受けて以来、かけがえのない大切な相棒となりました。内側には自分の生まれ年(廻り年)を染め抜いた藍染めの生地を縫い付けて使っています。本来、山葡萄の籠というのは、こうして何十年と世代を超えて使い継ぐことができるほど堅牢なものでした。


破損した山葡萄手提げ籠バック


手直し迷子

ところが最近、一体どうしてこんなに壊れてしまうのだろう?と首をかしげたくなるような籠が、時々竹虎へと届くようになりました。もちろん本当は、製作された職人さんの元に返して直してもらうのが一番のはずです。けれど、どういうワケか作り手へ帰ることができず、いわば「手直し迷子」になってしまった籠たちなのです。



日本の暮らしは持続可能だった

竹細工にしろ山葡萄にしろ、傷めば修理をしながら何十年と使い続けるのが日本では当たり前の光景でした。自然の恵みをありがたくいただき、手入れをしながら慈しむ。そんな日本人の暮らしは、サステナブルなんていう今風の横文字を使うまでもなく、ずっと昔から自然と持続可能なものだったのです。だから竹虎では、自社でお買い上げいただいた製品に限らず、ボクたちの手で直せるものであれば、全国から寄せられる手直し迷子の竹細工や籠をできる限りお引き受けし、修理させていただいています。


持ち手を取り付けた山葡萄買い物籠


山葡萄手提げ籠バッグの修理

今日は山葡萄の修理を中心にお話しさせていただきますが、確かに以前から、持ち手を取り付けてほしいという別注のご相談をいただくことはありました。けれどそれは、かつて畑や山仕事で使われていた古い背負い籠、あるいは腰籠を普段使いできるよう、新しく持ち手をあつらえるといった加工がほとんどだったのです。最近届く修理品は、近年の気候変動の影響による素材そのものの品質なのか、採取時期の問題なのか、職人の世代交代による技法の違いなのか、あるいは海外製品だからなのか、これまでは無かったような頼りなさを感じる籠があります。


修理した山葡萄買い物籠


SNSでのお客様の声

先日SNSで山葡萄の修理の様子をご紹介したところ、フォロワーの皆様から多くの反響をいただきました。「本物の見分け方や、正しい手入れ方法が分からない」など寄せられた声を読みながら、少し胸が締め付けられる思いです。ただ、本物という言葉が、日本製を指しているのでしたら少し違うようにも感じています。どこで製作されたものであれ、作り手が高い技術で心をこめた品物は素晴らしいものです。反対に国産といえども、未熟な技の籠があるのかも知れません。今回こうしてブログを書こうと思い立った一番の理由は、せっかく自然素材の手仕事に心惹かれ、使ってみたいと手を伸ばしてくださった若い方たちが、不安や不信感を抱いてしまうような現状を残念に思ったからなのです。



【竹虎】日本製と海外製の竹籠手提げバッグの違い! 竹チューバー竹虎四代目の世界


スズ竹市場籠にも共通する「国産と輸入品」

もう4~5年ほど前になりますが、スズ竹市場籠の国産品と輸入品の違いについて、YouTube動画でお話しさせていただいたことがありました。動画の中でもお伝えした通り、国産のスズ竹市場籠は非常にしなやかで堅牢。親から子へと、何十年も使い継いでいける抜群の強さを持っています。一方で、海外からの輸入籠は、素材や編み方、耐久性こそ国産に劣りますが、お求めやすい価格で手に入るため、竹細工の入門編や気軽な普段使いとして親しみやすいという、魅力と良さがあります。


ですからボクは、海外製だからダメだとは思っていません。海を越えた異国の地であっても、ものづくりに真摯に向き合う職人さんたちに出会えば、その情熱は何ら変わりありません。日本であれ海外であれ、竹と暮らし竹と生きる職人たちは、等しく心を通わせる「竹人」として同志なのです。それどころか、竹製品に関して言えば、現代の日本では到底真似できないほどの高い技術と品質を誇る素晴らしい海外製品に、これまで幾度となく出会ってきました。


修理した竹手提籠


問われる売り手の目利き

本当に問題なのはモノそのものではなく、お客様に正しく製品のことを伝えられていない事です。海外製を国産と誤って販売することは論外ですが、販売側の勉強不足や目利きの甘さによって、適正な価格や品質の違いが語られていないケースを度々目にします。たとえば、せっかく竹に興味を持ってくださったお客様が、すぐに壊れてしまう籠を見て、「竹なんて、こんなものか」とがっかりしてしまうのが一番悲しいことです。


傷んだ山葡萄籠


海外製の山葡萄の手提籠バッグ

ボクの知る限り、今から20年ほど前から市場に海外製品が出回るようになった山葡萄の籠バッグ。海外製の品質が向上するとともに値段も上がり、今や価格の違いだけで見分けることは難しくなりました。ずっと身近で山葡萄を見続けてきたボクでさえ一瞬迷ってしまうことがあるほどですから、一般の方が戸惑われるのも無理はありません。ただ、国産と遜色ないものがある一方で、海外の山葡萄に蔓の中には国産に比べると耐久性が低く、風合いも少し異なる製品もあります。だからこそ、届ける側が確かな知識と眼力を磨き、それぞれの良さや背景をお知らせしていかねばならないと思っています。実は一時期、ボク自身が山葡萄から関心を失いかけたことがありました。国産と謳われていても経験の浅い手の若い職人による籠があったり、過度な技巧に走るものが目につくようになったからです。



山葡萄の森

けれど、祖母や母から受け継いだ伝統の技を守り、山葡萄の森に誇りを持って向き合い続けている職人さんたちの姿を目の当たりにした時、ハッとさせられました。「これは、虎竹の里に生きる自分たちとまったく同じではないか、それなら職人さんを応援したい」そう思い直し、今でもこうしてウェブサイトでご紹介を続けています。竹細工も変化していますので、同じように山葡萄細工もこうして変わっていくのだと思っています。


野ぶどう手提籠バッグ、竹虎四代目(YOSHIHIRO YAMAGISHI)


もちろん、日本の山葡萄がいくら堅牢で、熟練の職人が編み上げた籠であっても、長年愛用する中で持ち手や底の四隅が擦れ、傷んでくることはあります。しかし、ボク自身がトートバッグ代わりにハードな県外出張へ連れ出し、すでに20年使い込んでいる山葡萄の籠は、今でもビクともせず元気そのものです。だから、度々届く修理の数々を見ながら、本来の山葡萄の強さはどこへ行ってしまったのか?と、少し疑問を抱かずにはいられないのです。


古い山葡萄腰籠


手仕事の未来

作り手、売り手、そして使い手。その三者がそれぞれ誠実に道具と向き合う先にしか、世代を超えて受け継がれる手仕事の未来はないのだと思います。今日も手元の相棒にそっと触れ、手に持ち、撫でてみると何と滑らかな感触でしょうか。自然素材が持つかけがえのない尊さと、それを正しくお届けする大切さを、改めて深く感じています。



竹虎四代目

竹虎四代目
YOSHIHIRO YAMAGISHI

創業明治27年の老舗竹虎の四代目。100年守り続けた日本唯一の竹林を次の100年に繋ぐ。日本で二人だけの世界竹大使。

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