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見直される竹花籠と、その裏に隠された意外な課題

虎竹花籠


誰か花籠を食っとるのか?

何年前になるでしょうか?30年、いやもっともっと前のことになります。竹が、まだまだ身近で、多くの皆様に求められていた頃です。今では見られなくなった沢山の竹細工や竹製品があって、それぞれが好調で、当時竹虎の工場にいた40名ほどの職人の熱気は凄いものがありました。そんな中でも、特に花籠などは、まさに目の回るような日々で、竹の花籠の現場でも、あまりの忙しさに籠を編み上げる職人たちからは、「おいおい、誰かこの花籠をバリバリと食べている人がいるんじゃないか?」なんて冗談が飛び出すほどだったと言います。今から思えば、信じられないような夢のような時代です。


花籠、竹虎四代目(山岸義浩)


花嫁修業の時代

もうずいぶん昔のことで忘れかけていましたが、まだまだ当時は、世の中に花嫁修業という言葉がしっかりと生きていたのかも知れません。茶道や華道を習われる方も多く、それは特別なことではなく、嗜みや教養の一つとして身近にありました。都会のデパートに催事販売で出かけて行きますと、ご購入いただくお客様は既に自宅には5個や6個は竹の花籠を持っていますよ、という方ばかりだったのを覚えています。


虎竹花籠の在庫


竹細工・冬の到来

しかし、そんな華やかだった竹編みの花籠にも、時代の変化とともに厳しい冬の時代がやってきます。ライフスタイルの洋風化や、習い事をする方の減少に伴い、花籠がパタリと売れなくなってしまったのです。注文がなくなれば、当然そこから若い職人が育つことも難しくなり、一人、また一人と、長年仕事を支えてくれた熟練の花籠職人たちは姿を消していきました。手作りの伝統が失われていく様子を目の当たりにするのは、本当に切なく、危機感を覚える日々でした。ゆったりとしているものの、大きな時代の流れに何もできない自分の無力さも感じました。


虎竹花籠


長い氷河期の後に

ところが長い長い氷河期のような時を経て、今度はまた時代がまた少しずつ変わりつつある気配を感じています。竹の花籠の魅力が再び見直されてきているようなのです。とは言え、何か流行っている製品があるとか、ヒットを飛ばしているワケではありません。以前と比べれば、少しづつお客様のお問い合わせの頻度も増え、注目を集めることもあるのかなあ、と思う程度です。


虎竹掛花籠


モダンなお部屋にも似合う花籠

花籠を沢山製造していた全盛期の頃、作り手は競い合うようにして、どんどん新しい形や編み方の種類を増やしてきました。そのため、今となっては正確にどれくらいのデザインがあるのか、職人自身でも数え切れないほどです。でも、それだけに、よくよく見渡せば今のご家庭にもピッタリと似合うような竹細工は多いのです。例えば、この小ぶりな花籠なんかも本当に可愛らしい佇まいをしています。伝統的な和室だけでなく、現代のモダンなご自宅のリビングや玄関にポ掛けていただくだけでも、驚くほどしっくりと馴染みます。


竹花籠竹筒オトシ


竹花籠が直面する新たな問題

竹の花籠は、実はもっともっと現代の暮らしの中で見直されるべきだと、ずっとそう信じてきましたので、ようやくそんな竹の温もりや美しさが、皆さんの暮らしに浸透する兆しなのだうろかと少し嬉しく思っています。けれど...花籠の復活を素直に喜びたいところなのですが、実は一つ、大きな問題に直面しています。籠本体は何とか間に合っても、困ったことに品薄になっているパーツがあるのです。それが、花籠の中に入れるオトシ(お水を張るための筒)です。


竹花籠プラスチックおとし


プラスチック製のオトシ

これまで、比較的安価で手にとりやすい日常使いの花籠には、扱いが簡単なプラスチック製のオトシをオススメしてきました。もちろん、高級な竹籠には職人が手をかけた塗の竹オトシが良いのは言うまでもありません。けれど、竹は自然のものですから、絶対に割れない竹などこの世にありません。特に価格を抑えた量産型の場合、そこまで竹の材質を厳選することが難しいため、環境によっては大きく割れてしまうオトシも多々ありました。だからこそ、気軽に毎日お花を楽しんでいただくためには、軽くて耐久性があって水漏れの心配がないプラスチック製のオトシが十分な役割を果たしてくれていたのです。


染竹花籠


工業製品の落とし穴

ところが、このプラスチックのオトシとなると、製造の仕組みや単位がボクたちの竹の手仕事とは全く異なります。プラスチックはまさに工業製品ですから、型を起こして製造するとなると、二桁、三桁、つまり何千個、何万個という膨大な製造数で発注しなければならず、籠とのバランスが全くとれず、とても注文することができません。いくら花籠のサイズが沢山あって、それぞれに融通しあうとは言えども、新しくプラスチック製オトシを作るというのは、現実的に少し無理があります。


竹筒おとし


竹製オトシ

そこで、やはり少数単位で柔軟に製造できて、小回りのきく竹製のオトシを作ればいいじゃないか、という話になのですが、そう都合よくはいきません、手仕事の厳しい現実があります。大量に流通していた時には、プラスチックに頼ってきた部分が大きく、竹のオトシなどほとんど製造することなく来てしまいました。そのため、今になって竹筒のオトシを製造したいと思っても、材料となる適切な竹材も、それをこなせる職人の数も、圧倒的に足りないのが現状です。


竹職人


日本の手作りの伝統

手作りの技、伝統の技というのは、一度途絶えてしまうと、復活させることは本当に難しいものです。竹の場合でも、竹林からエンドユーザーまで、長く細い道が途中でブツリブツリと切れてしまっていて、考えていたら気が遠くなりそうなくらいです。その割には、竹筒のオトシなど、激動の時代をよく頑張って生き残ってくれた方かも知れません。けれど、いろいろと仕様を工夫したりしても、やはり一つひとつを手作業で仕上げるには、当然時間がかかってしまうのです。


虎竹花籠


竹は、決して一部の数寄者や愛好家だけしか見向きもしないような、高価で遠い存在の工芸品ではありません。本来は、誰もが気軽に、身近に毎日の生活の中で使って楽しめるべきもの。それこそが竹という素材が持つ一番の魅力であり、原点です。このオトシの課題についても、竹のある暮らしを届けられる道筋は少しづつでも見つけていかねばなりません。





竹虎四代目

竹虎四代目
YOSHIHIRO YAMAGISHI

創業明治27年の老舗竹虎の四代目。100年守り続けた日本唯一の竹林を次の100年に繋ぐ。日本で二人だけの世界竹大使。

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