タイワンマダケ・桂竹(けいちく)とは?

タイワンマダケ・桂竹、竹虎四代目(山岸義浩)


いよいよ明後日から台湾での世界竹会議だが、今回は更に台中繊維博物館で開催される国際竹工芸フォーラムにて講演させて頂く予定だ。台湾には優れた竹工芸が数多くあるけれど、その竹の技を支えているのが、前に現地を訪れた際に良く見かけたタイワンマダケではないだろうかと思っている。そこで、今までは見るだけだったタイワンマダケを実際に手にしてみる事にした。


実は、台湾真竹は日本にも1913年に導入されたと言うことで、数量は多くはないが成育している。耐寒性もあると言われるけれど、元々が温かい地域に育つ竹なので日本ではあまり太くならないようだ。同じ「マダケ」と名前が付いていても、一番異なっている所は筍かも知れない。タイワンマダケは柔らかく甘みがあり食用としても多用されると聞くが、日本の真竹は「苦竹」と書くこともあるように苦みがあるからか筍を食する機会は少ない。


タイワンマダケ・桂竹


そんな台湾真竹は、桂竹(けいちく)とも呼ばれており、見た目はスッーと節間伸びた美しい姿だけれど、実際に触ってみると節も低く竹編みにしやすそうな竹材だ。


台湾干しざる


台湾では人の暮らしの中に、まだまだ竹ざるや竹籠が普通に使われていて嬉しくなった覚えがある。


台湾真竹・桂竹


割って竹ヒゴにした感じは粘りがあり、やはり竹細工には適しているようだ。


台湾竹籠


そう言えば、産地に行けば色々な竹籠があったのを思い出す。もしかしたら全く知らない竹を使った、想像もしない「竹」に出会えるのではないか?あるいは日本と同じ竹に感動するのかも。竹は知れば知るほど奥が深い。



京の筍2024

京都の筍


竹の旬と書いて「」、まさに季節ならではの美味が、今年も本場京都から届いた。この丸々とした形は早堀筍と言って、まだ地表に顔を出す前の筍を専用の道具で掘り出して収穫されている。地面から大きく伸びた馴染の筍も食べ応えがあって美味しいが、さすがに京都の雅を感じさせる筍は味も上品だ。できるだけ早くいただかねばならないので早速美味しく頂戴した。


筍、竹虎四代目(山岸義浩)


竹林には地下茎が縦横無尽に伸びていると、いつもお話しさせていただくが、そんな地下茎から毎年こうして筍が生えてくる。あそこにも!ここにも!と思ってみていると、竹林は本当に筍だらけだったりする。


孟宗竹タケノコ


そして、その筍の成長力が凄まじい。十分な水分があれば、1日に1メートル以上も伸びて行くので、少し山に行かないと、竹林の景色が変わって見えるほどだ。


孟宗竹、竹皮


現在、竹の利活用は全く不十分だが、ほんの数十年前までは多くの竹林が人の手によって管理され、筍が大きくなる過程で脱ぎ落としていく竹皮までもが製品として収入の一部になっていた。


孟宗竹


それにしても、さきほど竹ざるにのせていた小さな筍が、わずか3カ月でこのような20数メートルの大きな竹になるなんて信じられるだろうか?神秘的とも言える竹の力、持続可能な社会にむけて竹の果たす役割はもっとあるのではないか?そんな問題提起が、今週はじまる世界竹会議台湾でも交わされる。





竹笠の季節

竹虎四代目愛用の国産竹網代笠


今日も朝から随分と暑い(笑)、締め切った倉庫に入るとムッとする熱気で、もう夏がやって来たのかと思うほどだ。日差しも段々と強くなってきた、まだまだ太陽の光が優しいなんて油断していたら大間違い。確か真夏よりも、4月から5月あたりの方が紫外線の量は多いと聞いた事がある。そこで屋外に出る時に活躍するのが竹笠だ。




実は、日頃の生活の中では竹笠を被る機会はそれほど多くはないけれど、ずっと前から国産の竹笠を個人的に持っていた。その笠をモデルにしてもらって復刻した国産竹笠の細やかな編み込みを動画でご覧いただきたい。


竹笠、流鏑馬笠


竹網代笠の他にも、流鏑馬笠や托鉢笠など、かなりレアな笠を並べている。「こんな笠を被ってる人なんて見た事ない...」、確かに皆様が想像されるように需要が多いわけでは無いし、探せば海外製の笠がいくらでもあるのだが、せっかく残されている伝統の技が消えてしまうのは残念だと思って復刻させている。


竹網代笠


しっかり編まれた国産竹笠を大事に、年々深まる柿渋の色合いを楽しんでもらいたいと思う。





旅の相棒、虎竹パスポートケース

虎竹パスポートケース


とにかく田舎者なので海外に行くと目が回る(笑)。日頃なら考えられない事をしてしまう場合もある、ジャカルタのスカルノハッタ国際空港がそうだった。あまりの空港の広さに驚いた、乗り換える飛行機にどうやって行けば良いのか皆目分からない。一番最初に作ったプロトタイプの虎竹パスポートケースを手に迷ってしまい、締め忘れたジッパーからパスポートはじめチケットやら何やら全てをロビーに落としていた!


虎竹パスポートケース


自分でも、そんな事するのか?と今でも思うけれど、実際に落としていたのだから仕方ない。親切な現地の方に声を掛けてもらって紛失は免れたが、知らない土地では平常心を失ってしまう事があるのだなあと、しみじみと感じた。ちなみに、その後も親切な現地の方に出会ってシャトルバスに乗る事ができ、さらに親切な方に降りるターミナルで「ここだよ」と教えてもらい乗り継ぎの飛行機に間に合った。


虎竹パスポートケース


帰国してからパスポートケースは、ジッパーが開いていても中身が落ちないように革仕切りを工夫した。海外では大事な相棒、少し重くて硬い本体だが作務衣の内ポケットにスッポリ収まる虎竹を一生使うだろうと思っている。



忘れられたミカン籠(竹編み盛り籠)

鉄鉢竹籠


昭和の時代、家族の集まる居間には必ずと言っていいほどコタツがあって、その上には決まって竹編みの盛り籠があった。おじいさん、おばあさんから、お孫さんまでが揃ってミカンを剥きながらテレビを観ると言うのが冬の定番だったからミカン籠とも呼ばれたりしていたが、「ミカン籠って何ですか?」と声が上がる。


竹職人


果樹園を経営する友人が、当時と比べて今や柑橘類をはじめとした果物の消費量は半分になっていると話す。なるほど、コタツは無くなる、テレビは無くなりスマホでそれぞれが部屋で楽しむ、そして果物は食べないとなれば、ミカンを入れる盛り籠は知らなくて当然かも知れない。


ミカン籠


しかし、そんな時代の流れの中でも細々ながらも生き続けている、かつてのミカン籠の代表選手のような鉄鉢籠。修行僧が托鉢の時に用い鉄の容器に形が似ているから名付けられた竹籠で、当時は何種類もサイズがあり沢山編まれていた中から、今では一番手頃な大きさを作っている。


虎竹盛り籠


先日、たまたま手の平サイズの小振りな竹籠の別注があって、職人が久しぶりだと楽しそうに編み出した。実は籠は小さいものが手間がかかり難しいが、ちょっとした小物入れに最適なカワイイ虎竹鉄鉢が完成した。





地震に負けるな、いよいよ来週開催!2024世界竹会議台湾(World Bamboo Congress in Taiwan)

世界竹大使、World Bamboo Ambassador


いよいよ台湾で開催される世界竹会議が来週に迫ってきた。実は台湾の竹工芸や竹の活用は、日本などよりも先進的で非常に面白い。もう10年前になるけれど、新しい竹を生み出す源泉をどうしても知りたくなって主だった工房を回り、職人さんにお会いさせていただいた事がある。


そもそも何より竹と人の暮らしが、まだまだ色濃く残っていて、ワクワクするような空気感が漂っていた。そんな台湾で開催される第12回目の世界竹会議、一体どんな新しい竹と人に出会えるのか今から楽しみで仕方ない。一応、ボクは日本に二人だけの世界竹大使(World Bamboo Ambassador)となっているので出来るだけの事はしなければならないと思っている。


世界竹会議台湾(World Bamboo Congress in Taiwan)


そこで、少しでも会議が盛り上がり台湾国内外の耳目が集まればと、虎竹電気自動車「竹トラッカー」が登場するのである。ちょうど本日、予定どおり台北の港に到着するとの連絡をいただいて安心したところだ。今回は輸送についても、これほど手間と時間がかかってしまったけれど、それに似合うだけの成果を期待している。


世界竹会議台湾(World Bamboo Congress in Taiwan)竹トラッカー走行コース


新竹市の国立陽明交通大学(National Yang Ming Chiao Tung University)にご用意いただいたのは、全長2キロの特設コース。リチウムバッテリーも新品に載せ替えているし余裕で何周でも走る事ができる。竹の明日に向かって走りたい。





蓬莱竹、復活した地域の守り神

蓬莱竹、水防竹林


春雨で水かさも少しましている土手では「あの蓬莱竹」が新しい枝を伸ばしてイキイキと復活しつつあった。「あの蓬莱竹」とは、虎竹の里の隣町にある鰹の一本釣りでも有名な漁師町久礼を流れる川岸にある大きな株の事だ。いつだったか根元から綺麗サッパリ伐採されてしまっており、ビックリして思わず動画を撮った蓬莱竹なのだ。




YouTube動画をご覧いただきますと、今は川の流れに沈んでいる根元部分が、いかに巨大で川岸をしっかりと堅固に守っているかがお分かりいただけると思う。竹は、このように竹細工として生活用品として、仕事道具として人の役に立つだけでなく、防災機能としても大きな役割を果たしてきた。


防災用竹林


川の流れに沿って五三竹の竹林が続いている。大水が出た時には、手前の田畑を守るためにずっと働いてきた竹たちだ。平常時は、もちろん竹細工や箒の柄などとしても適時伐採され使わる事によって、手入れ管理されてきた地域の竹林だ。


護岸竹


普通の方は、あまり意識していないけれど、川岸にポツリとある竹林に見覚えはないだろうか?大きく川が蛇行するポイントや、流れが合流する場所に竹が植えられている事も多い。


水害防備竹林


川下の向こう側にあるのが蓬莱竹。株立で横に根を張らず広がっていくことがないので高知や九州など温かく雨の多い地域では、一番よく見られる竹のひとつだ。この竹は節間が広く、柔軟性に富んだ竹質で古老の職人ほど好んで使う。近年、若い職人が使わないのは、この竹材を知らない事と、竹細工と地域の暮らしの距離が離れてしまったせいである。



土用干し、干し野菜づくりに安心・安全な国産竹ざるなら、レアな四ツ目編竹ざるもあります

国産竹ざる、竹虎四代目(山岸義浩)


竹細工の代表のひとつである竹ざる。あまり身近でない方でも、ホームセンターや荒物屋で気軽に手にできる価格で並べられているのを、ご覧になられた事はあるのではないだろうか。そんな輸入の竹製品と思いつつも、短い期間と割り切ってお求めいただくのは悪くないかも知れない。が、しかし、やはり土用干しに使用したり干し野菜作りに利用されるのなら、安心できる国産のしっかりしたモノをお選びいただきたいと思う。


国産四ツ目編竹ざる


特に今年はできるだけ沢山製造しようと考えている四ツ目編の竹ざるがイチオシだ。日本国内はもちろんだけれど、海外で編まれるものでも、この通気性抜群の四ツ目編はあまり見かけない。


日本製四ツ目編竹ざる


目の詰んだ網代編みの竹ざる同様に、四ツ目編にも60センチタイプと40センタタイプの2種類のサイズがある。お使いの用途に合わせてお選びください。





台湾国際竹工芸フォーラムにて講演します

国際竹工芸フォーラム、竹虎四代目(山岸義浩)


台湾の台中繊維博物館で開催される国際竹工芸フォーラムにて講演させていただく事になった。実は昨年5月にも、台湾宜蘭県で開催されたアジア太平洋ソーシャルイノベーションサミット2023で登壇させてもらったが、その時には地域資源としての虎竹や日本の竹文化を中心にお話しした。今回のフォーラムに参加される皆様は、竹工芸や竹の仕事に携わる方も多いとの事なので、先進的な竹に取り組まれている台湾の竹人にお会いできると楽しみにしている。


以前から交流のある盛志華台湾竹美術館々長の徐氏、台湾竹工芸の竹彫り師である施氏のお二人と共に国際竹工芸フォーラムを盛り上げます。申し込みフォームは、繊維博物館や国立聯合大学にもあるそうだが、竹に興味のある方なら、どちら様でも参加できるようなので是非お越しいただきたい。


お申込みこちらから→國際竹工藝論壇


竹は伝統的に日本文化に深く根付いており、言語や生活習慣など日本人の暮らしや心情に深く関わり、様々な形で日本人の生活に欠かせない植物だ。ところが近年、長きに渡って寄り添い合ってきた竹を現代の日本人は忘れているように思う。講演では、日本文化はもちろん、アジア圏での竹と人との深い関係を考えながら、知られていない竹の素晴らしさ、そしてこれからの竹活用についてスポットライトを当てたい。


ディスカッション
■徐暋盛 竹織り職人 - 盛志華台湾竹美術館館長
2015年 第3回世界籐織物芸術祭~サードプレイス~夢の世界~
2023年 第5回世界籐織物芸術祭 準優勝

■施惠閔 竹彫り師
2020年 台湾クラフトコンペティション 新光三越特別賞
2023年 ウズベキスタン第2回国際手工芸フェスティバル 伝統手工芸技術継承賞

開催日:2024/4/22(月)
開催時間:午後1時30分~3時30分 国際職人フォーラム
イベント場所:台中繊維博物館

指導単位:教育省
主催:国立統一大学研究開発室イノベーションインキュベーションセンター、デザイン学部アボリジニ学士号プログラム
共催:台中市文化局、台湾竹工芸協会




このYouTube動画は、2023年5月に台湾宜蘭県で開催されたアジア太平洋ソーシャルイノベーションサミットで登壇させて頂いた時の様子です。



スズ竹市場籠の三色変化

スズ竹市場籠の経年変色


昨日に続いて竹手提げ籠の話題をお話ししたいと思う。
さて、問題です(笑)こうして3つの竹手提げ籠が並んでいますが、スズ竹で編まれたものはどれでしょうか?


チッチッチッチッチッ......チンッ!


そう、ご名答!すべて同じスズ竹で編まれた市場籠です。


スズ竹市場籠の経年変色


それでは2問目(笑)、同じスズ竹で編まれたものなのに色が違うのはなぜ?


チッチッチッチッチッ......チンッ!


またまた正解!時間の経過と共に自然と色合いが変化していくのです。


スズ竹市場籠の経年変色


最後の3問目(笑)、それでは一番古い籠はどれでしょうか?


チッチッチッチッチッ......チンッ!


大当たり!一番上に積まれている飴色になった渋い色合いの市場籠です。


今回の問題は、この30年ブログ「竹虎四代目がゆく!」をご購読いただいている皆様にとったら簡単な問題だったかも。けれど、このように青々とした若い色合いの竹籠が、時を経てこんなになるのだから、まさに自分で籠を育てると言う感覚がピッタリだ。