
竹の美女
竹で描かれた絵と、初めて聞いた時にはどうしてもピンときませんでした。一体どんなものだろう?もう数十年も前の作品なので、老舗竹工場の社長さんや熟練の職人さんにも訊ねてみましたが誰一人として知っている人はいません。あれこれ想像しているうちに、どんどんと妄想が膨らんできました。そもそも、そんな特殊な竹細工なら、どこかに展示されていたり残っていたりしそうなものです。

竹の花
細い糸をたぐるように探していると、遂に現物を拝見する機会を得ました。九州は別府で活躍されていた竹芸作家である故・鬼塚英竹さんの作品は、まさに独特です。細く糸のようにとった竹ヒゴをで絵を描いてみたいなんて何故そんな発想が生またれのか凄いです。

竹の福郎
流れるような細い竹ヒゴ一本一本で表現された福郎もありました。竹で描かれた羽根は面白い、確かによいアイデアだと感心します。


竹の染色を、当時そのままに留めておくのは容易ではなく、時間の経過と共に変色や退色があります。それぞれの絵が丁寧に箱に入れられて光にあたっていなかったのにも関わらず、やはり色彩が薄れているものが多くありました。

竹表皮ではなくて、内側の身の部分を多用されているのでそれらの竹ヒゴが渋く変化しています。色合いが入っているよりも竹の自然な経年変色した作品が落ち着いた雰囲気でもあり好みです。

毛皮をまとった花籠
鬼塚英竹さんは、同じ細い竹ヒゴを自在に使って、まるで毛皮をまとったようなユニークな花籃も創作されています。「真似しようにも、真似のできない」と評される作風は、この辺りかも知れません。

これからの寒い季節に良く似合いそうな竹編みハンドバッグがありました。持ち手の鳳尾竹と本体に取り付ける金具が時代を感じさせてます。

これは、一種のヤタラ編みのようです。乱れ編みとも呼ばれるヤタラ編みの竹バッグは現在でも制作されていますが、竹ヒゴの細さが全く異なっているので一目で異次元の竹籠となっているのです。
