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根曲竹が使われた片口ざるの修理

根曲竹片口ざる修理の職人


大切に繋ぐ竹細工

気がつくと修理依頼の竹籠が2個、3個といつの間にか置かれていることがあります。そんな全国から届く竹籠や竹笊を見つめながら、いつも思うことがあります。昔は何処の街にも一軒くらいは竹屋さんがあって、職人の方がちょっとしたほころびを手直ししながら道具を大切に使い継いできたと思います。


けれど今や近所を探しても直してくれる店がどこにもないと、お困りのお客様から割と頻繁に修理のご相談が竹虎へ寄せられるのです。一般的に竹細工店では、自社で作ったり、販売したりした製品以外は修理を断ることも少なくありません。使われている竹材も編み方も職人ごとに違うため、直すのは新しく編む以上の手間がかかる場合が多いからです。


竹細工修理


竹細工修理の理由

それでも竹虎では、どこで作られたものであっても出来る限り修理を引き受けることにしています。竹細工は手入れをし、修理を重ねて長く使っていくもの、という日本の素晴らしい暮らしの知恵や伝統を次の世代へ伝えていきたいと考えています。スズ竹や篠竹、根曲竹など寒い地方の竹は、手元にほとんどありませんので同じ竹材がなければ、性質の似た代替えの素材で出来ないかと知恵を絞ります。


根曲竹片口ざる修理、穴


老舗餅屋の片口ざる

今回、竹虎に届いたのは北国の老舗餅屋さんで長年使い込まれてきた見事な片口ざるでした。「竹ざるは、水切れが全く違う。これでないとウチの美味しい餅が作れない。」そう言い切るご主人にとって、まさに命とも言える仕事道具です。ざるの縁を見れば、西日本ではまずお目にかかれない太い根曲竹が使われており、寒冷地ならではの驚くほど堅牢な作りに思わず息を呑みました。しかし、横編み部分の真竹のヒゴが無残に折れ、所々ぽっかりと穴が開いてしまっています。これでは大切なもち米がこぼれ落ちてしまい、仕事になりません。


根曲竹片口ざる修理の足技


華麗なる足技

そこで、まずは穴の開いた本体部分。熟練の職人が手と足の指を巧みに使って竹を割り、元の編み目と同じような幅の竹ヒゴをすっと引いていきます。


根曲竹片口ざる修理、竹ひご


折れた箇所へ新しいヒゴを差し込み、編み目を塞いでいきます。手直しした部分は、使いこんだ竹の色合いと、新しい青い竹ひごですぐに分かります。


根曲竹片口ざる修理


片口部分の籐巻

続いては、移し替えに便利なざるの「片口」の部分です。ここにも上下両側に立派な根曲竹があしらわれていますが、竹自体は何ともないものの、留めていた籐巻が長年の使用でプツリと切れていました。


根曲竹片口ざる修理の片口部分


新品のような出来栄え

こちらは新しい籐を用いて、丁寧に巻き直していきます、堅牢な根曲竹が編まれた頃と変わらない丈夫さなので、本当に元通りのように仕上がりました。


竹虎四代目(YOSHIHIRO YAMAGISHI)、片口ざる


全国の竹細工を手にする醍醐味

それにしても、縁に使われている根曲竹の力強さには惚れ惚れするばかりです。根元が曲がってしまうほど、雪の重みにも耐え抜き鍛えられた北国の竹の粘りと強さ。こうして普段は手にする機会の少ない地域の竹細工の息吹を間近に感じられることこそ、全国から修理を預かるボクたちにとって何よりの醍醐味なのです。


竹細工修理の職人


針金で縛る縁巻

仕上げは一番外側の縁巻です。長年の過酷な使用にも竹そのものはビクともしていませんでしたが、留めていた針金が根曲竹の猛烈な弾力に引っ張られ、伸びきってしまっています。これらをすべてグッと締め直して新しい針金で巻き留め、ようやくすべての補修が完了です。


竹ざる修理


何十年と愛用できる新しい命

見違えるように息を吹き返した片口ざる。しっかり手を入れ直したこのざるなら、北国の老舗の厨房で、またここから何十年と美味しいお餅を作り続けてくれるはずです。竹は本当に強く、そして優しい。こうして道具と使い手の絆を未来へ繋ぐお手伝いができることが、竹屋冥利に尽きる瞬間だと、嬉しく誇らしく思っています。





竹虎四代目

竹虎四代目
YOSHIHIRO YAMAGISHI

創業明治27年の老舗竹虎の四代目。100年守り続けた日本唯一の竹林を次の100年に繋ぐ。日本で二人だけの世界竹大使。

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