虎竹の異変
皆様のお住まいの近くにも、美しい山や森、川がありますでしょうか?たとえ東京の都心におられても公園の緑など、何がしかの自然と共に人は暮らしています。そのような自然は、何気に見ていると全く変化していないように見ますが、実は同じでいることは一つもなくて変わり続けています。たとえば、ボク達の虎竹でも近年の温暖化によって色づきは数十年前とは大きく違っています。虎竹は3年竹から色づきが顕著になってくるものの、年数を経ても虎模様が付かない竹が増えているのです。虎竹の里には昔から、「霜が降りると虎竹の色が付く」と昔から言い伝えられてきましたが、冬でも温かく霜が降りない昨今、どうやらその通りだったと感じています。
さて、先日東京を歩いていて聞きなれない鳥の声に立ち止まりました。大都会の中で鳥の声とは意外かも知れませんけれど、よく注意していればメジロの遊ぶ声など何度も聞くことができます。メジロは案外人の近くにやってくる小鳥で、ボクが小学校の頃までは多くのご家庭で竹製の鳥籠(高知ではコバンと呼びます)で飼われていました。だから、コバン作りの職人さんもそれぞれの地域に一人くらいはいたように思います。綺麗な声で鳴くので、メジロの鳴き声大会のようなものさえ開催されていて優勝者には大きな楯が贈られていました。
あれはサンジャク!?
まあ、それはさておきまして、ボクが足を止めて空を見上げたのは、以前虎竹の里の竹林で遭遇したサンジャクという外来種の鳥を思い出したからです。この鳥は、もともと中国中南部やベトナムに生育するカラス科だそうですが、愛媛県の公園施設から逃げ出したものが野生化していることがニュースで報じられていました。高知県の県鳥となっているヤイロチョウや、さきほどのメジロなど在来種の生息を脅かすと問題になっているので気にかかっていたのです。鳴き声が明らかに日本にいる山鳥とは違っている気がして、見上げると7~8羽の大きな鳥が大木の上を飛んで行きました。尻尾までいれると優に40センチくらいはある大きな鳥で数羽いるとなかなかの迫力です。確かに四国にはいたけれど、いつの間に北上して東京まで来たのだろうか?
恵まれた自然環境、日本唯一の虎竹
自分の撮った画像を見ながらインターネットで調べてみると「サ...サンジャクぜよ!」、これは大発見かも知れないと思い画像と共に日本野鳥の会に問い合わせました。そしたら野鳥保護区事業所の方から丁寧にメールをいただきました、急いで確認してみたら、なんと在来種のオナガとの事でした(笑)。少し安心しましたが、子供の頃から親しんできたメジロなど里山の小鳥の大敵サンジャクのことが頭にありましたので、似たような鳥が数羽群れていたのを見てもしやと思ったのでした。
日本は世界でも有数の森林国です、四季があり美しい自然の中で最高品質の竹材も育まれています。この恵まれた自然環境を後世に伝えていく責務は、きっと一人一人にあるのではないかと思います。