最新の投稿

石舞台の巨大真竹インスタレーション

草月流第四代家元・勅使河原茜氏作の真竹インスタレーション


勅使河原茜氏の竹インスタレーション

先日は所用があって奈良に行ってました。実は、竹虎が大阪天王寺で創業する前、ボクの曾祖父や祖父は奈良の地に暮らしていたこともあります。なので、遠く土佐・虎竹の里にいる今でも、奈良という場所にはどこか浅からぬご縁と身近さを感じている土地です。そこで、明日香村の石舞台に凄い「竹」があるという話を耳にしました。草月創流100周年記念として展示されている、第四代家元・勅使河原茜氏による巨大な作品でした。


草月流第四代家元・勅使河原茜氏作の真竹インスタレーション


この方の作品は、前に一度拝見してことがありますので少し足を伸ばすことにしました。この日は、ぬけるような青空が広がる気持ちのよい朝です。飛鳥歴史公園の石舞台下芝生広場に着くと、広大な敷地に地元の真竹約310本を使ったという巨大な竹のうねりが姿を現しました。


草月流第四代家元・勅使河原茜氏作の真竹インスタレーション


竹の波

作品に足を踏み入れると、まるで竹の波にそのまま呑み込まれていくような、言葉にできない不思議な感覚に包まれます。頭上を、足元を、視界のすべてを覆い尽くさんとばかりに幾重にもうねる竹の帯。幼い頃から竹に囲まれているのが日常でしたが、これほどまでに圧倒的な竹のうねりに身を委ねたことはありません。


草月流第四代家元・勅使河原茜氏作の真竹インスタレーション


竹のしなりが生み出す柔らかな曲線、何百本もの竹が織りなす力強い影と木漏れ日のような光。どこを見上げても、どこに視線を移しても、そこにあるのは竹、竹、竹。まさに竹に溺れるという表現がぴったりなほど、全身が竹の世界へと沈み込んでいくようです。


草月流第四代家元・勅使河原茜氏作の真竹インスタレーション


溺れると言うけれど、それは決して恐ろしいものではなく、どこまでも穏やかで懐かしい感覚です。竹林に吹く風に力強く包み込まれる心地よさとでも言いますか。誰一人いない清々しい早朝の空気のなか、身体が竹で満たされていくような幸福感が胸いっぱいに広がっていきます。


草月流第四代家元・勅使河原茜氏作の真竹インスタレーション


しばし我を忘れてその渦の中に佇み、竹とひとつになるような至福の時間を味わっていました。


勅使河原茜氏作の真竹インスタレーション


虎竹かっ!?

さて、圧倒的なスケールに見惚れていたとき、ふと、ドキリとする瞬間がありました。青々とした真竹のなかに、まるでボクたちが見慣れた虎竹のような深い色合いの竹が混ざり合っているように見えたのです。ところが、当たり前ですが虎竹ではありません。真竹を割った、竹表皮の裏側、身竹(みだけ)の部分でした。


勅使河原茜氏作の真竹インスタレーション


青竹の難しさ

実は、その理由はすぐに分かっていました。本来なら割ったばかりで真っ白だったはずの身竹に、黒っぽいカビが一面に生えていたのです。ボクが拝見したのは、ちょうど展示の最終日でした。制作されたばかりの頃は、青竹の緑と瑞々しい身竹の純白のコントラストが、さぞ鮮烈に映えていたことでしょう。竹を青竹のまま使うことの難しさは、まさにここにあります。


竹は水分を多く含む植物です。伐採した瞬間から刻々と変化し、少しの湿気でもすぐにカビを呼び寄せてしまう。だからこそ、青竹酒器などは傷みやすい夏の盛りの製造を見合わせていましたし、現在も皆さまにお届けさせて頂いている青竹踏みにしても、梅雨時など湿気の多い季節の製品管理には細心の注意を払っています。自然の竹を扱う仕事は、常にこの湿気やカビとのせめぎ合いなのです。


勅使河原茜氏作の真竹インスタレーション


移ろいゆく竹

けれど、この姿を目の当たりにして、ボクは決して残念だとは思いませんでした。むしろ、このような時の流れのなかで移ろいゆく色合いも楽しめるのが、竹という素材の素晴らしいところだと感じています。青々と輝く竹はもちろん見事ですが、その役目を終え、静かに色褪せ、落ち着いていく佇まいにこそ、自然の機微を感じ取ることができます。偶然、最終日に行き当たったのは、このいう事だったのかも知れません。それでも巨大なインスタレーションの圧倒的な美しさと迫力は、何ひとつ変わらないのです。



竹虎四代目

竹虎四代目
YOSHIHIRO YAMAGISHI

創業明治27年の老舗竹虎の四代目。100年守り続けた日本唯一の竹林を次の100年に繋ぐ。日本で二人だけの世界竹大使。

TAG

おすすめタグ

関連タグの記事一覧

記事一覧