竹職人の指先から用の美
日本人の暮らしに古くから寄り添ってきた竹細工。その魅力はなんといっても、清々しい青竹の香りと、熟練職人の指先から生まれる無駄のない用の美にあります。今回、ぜひ皆様にじっくりとご覧いただきたいと思って動画が作りました。竹編み一筋の熟練職人が、一本の青竹から美しい菊底編み青竹蕎麦ざるを編み上げていく、その見どころを凝縮しています。
竹割り
竹細工の仕事は、まず竹割りから始まります。まっすぐに伸びた青竹に刃を入れ、迷いなく割っていく手さばき。竹の繊維を見極め、小気味よい音とともに竹が割れていく様子は、見ているだけでも背筋が伸びるような心地よさがあります。そして、割って表れる身竹の白さと竹表皮の青さ、このコントラストが又気持ちいいのです。
つき剥ぎとヒゴ取り
続いて行われるのが、つき剥ぎとヒゴ取り。竹の厚みを均一に揃え、幅を美しく揃えて極細の竹ヒゴに仕立てていく。指先の感覚だけでコンマ数ミリの世界を削り出す、まさに長年の経験がなせる職人技です。材料作りこそが竹細工の命であり、編み始める前のこの丁寧な下ごしらえに、職人の技がこめられています。
竹編みの工程
そしていよいよ編み込みの工程へと移っていきます。まずは中心となる底回しです。細く繊細なヒゴを使い、放射状に組んだ骨竹にくるくると編み込んでいきます。動画内では、後から差し込むヒゴと下の骨が平ら(フラット)になるよう、途中で縄目編みを一周挟み込むという緻密な工夫も披露されています。大輪の菊の花が開いたかのような見事な幾何学模様は、すでに思わず息をのむ美しさです。底面が編み上がると、クセをつけながら立ち上げを行います。
縁巻と仕上げ
クライマックスは縁巻きです。目打ちで穴を開け、太い竹ヒゴを力強く、かつ狂いなく3周巻き上げていきます。撮影中、若手職人から「どうして竹ヒゴを細かく割っているのですか?」と質問が飛ぶ場面があります。熟練職人は「隙間なく見せるのと、節に負担がかかって折れるのを防ぐため」とさらりと答えます。美しさだけでなく、長く丈夫に使い続けられるための知恵と工夫が、細部にまで息づいているのです。
最後に余分な毛羽を火で焼き払い、磨き上げて完成した青竹蕎麦ざる。みずみずしい緑と端正な編み目が調和したその姿には、日本の手仕事が誇る美しさが凝縮されているようです。この竹ざるで食す蕎麦は、どれほど格別な味わいでしょうか。竹ざるは、馴染があり一見何でもないような素朴なキッチン雑貨のひとつなので、日頃あまり気にかける事もないかも知れません。だからこそ、無駄な動きが一切ない職人の指先、竹が擦れ合う心地よい音...、職人のこだわりが詰まった約20分間の動画をご覧いただき日本の竹文化の神髄を、少しでも感じていただけると嬉しいと思っています。これが日本の伝統をつなぐ竹細工です。
※全行程を1時間13分の長さで紹介するノーカット版は近日公開予定です。
