
イギリスにある日本の情報発信基地
ロンドンのケンジントン駅近くという、とても便利な場所にあるジャパンハウス ロンドン。遠く離れたイギリスの都心にあって、一カ所でこれだけ深く、本物の日本文化を感じられるモノやコトが集められた施設は他にないのではないかと驚かされる素晴らしい発信拠点です。

日本の竹を知ってほしい
この度、その洗練された特別な空間で土佐虎斑竹の展示を開催していただくだけでなく、特別の配慮と手厚いサポートを賜り、日本の竹ハンドリングセッションを実施せていただく事ができました。広々とした素晴らしい会場の設営から、沢山の準備、そして当日の万全なスタッフ配置まで、温かく迎えてくださった関係者の皆様には心より感謝の気持ちでいっぱいです。センス良く美しく陳列された虎竹の籠たちを目にしたときには、前もって画像で拝見していたとは言え深く感動してしまいました。

竹への意識を変える
そんな最高の舞台で開催させていただいた今回の日本の竹ハンドリングセッション。「一時間で竹への意識を変える」と意気込んで臨んだものの、正直、そんなに時間は必要なかったかも知れません。お集まりいただいた皆様が目を輝かせ、竹の質感や使い心地に触れて驚く姿を見て、誰あろうボク自身が改めて竹の底知れぬ魅力に一番感動し、「やっぱり竹は本当に凄いなぁ!」と胸が熱くなっていました。

竹の油抜き加工
今回のセッションで、ボクがどうしてもロンドンの地で実現したかったこと。それは日本唯一の虎竹の油抜き(火抜き)の実演でした。写真や動画ではどうしても届けることができないのが、竹が放つ香りです。竹は糖分を多く含んでいる植物なので、熱を加えるとふわりと甘く芳ばしい、本当に良い香りが立ちのぼります。「おっ、今日は油抜きをやっているな」と竹虎の工場入り口に来れば、すぐに分かるほど。幼い頃から慣れ親しんできた懐かしいこの香りを、ぜひロンドンの皆様にも直接感じてほしかったのです。

会場では安全への配慮のため炎は厳禁です、そこで一時は諦めかけていましたけれど、何かないかと考え抜いた結果ヒートガンを使う事をひらめきました。ただ、出力は大きなものでないために、虎竹の里では700度の熱で炙る工程を再現するのですから簡単ではありません。

それでも、少しづつ熱せられた虎竹の表面から天然の油分がジュワッと滲み出し、拭きあげることで美しい虎模様と艶がパッと浮かび上がる瞬間、そして漂う甘い香りに、会場中から驚きの声が上がりました。創業から132年、そしてそれ以前のずっと昔から受け継がれてきた、竹を強く美しくする先人の知恵です。

五感で感じる日本の竹
セッションでは「五感で感じる日本の竹」をテーマに、日本三大有用竹である孟宗竹・真竹・淡竹(虎斑竹の仲間)を取り揃え、竹の世界に触れていただきました。タケノコからわずか3ヶ月で20メートルもの親竹と同じ大きさに育つ驚異的な成長スピードは、環境へのやさしさと注目されます。そんな竹の中で、虎竹の里のわずか1.5キロ平方メートルの谷間でしか成育しない竹の神秘。同じ形、同じ作り、同じサイズのランチボックスでも、虎斑竹と白竹では全く異なる表情を見せることから、竹肌の違いがいかに大切かを知っていただきました。

日本古来の健康器具・青竹踏み
竹の丸みと硬さを活かした日本伝統の健康器具青竹踏みの体験では、実際に乗ってみて「痛キモチいい」と笑顔がこぼれる場面も。青竹踏みは、誰が見ても竹と分かるのが良い点です。日本中のご家庭に1本!という壮大な夢には全く及びませんが、前向きに取り組んでいます。

竹の七変化
そんな一方、その硬い竹を薄く割って編み込めば、自由自在にしなやかな籠やざるへと姿を変えます。六つ目編みの手ほどきや、職人の手仕事によるざるの手触りの違い、虎斑竹で作られたハサミの鋭い切れ味、そして竹の硬さを活かした鬼おろしの力強さもご紹介します。

包材としての国産竹皮
乾燥してバリバリと音をたてる一枚の板のようになって扱いにくく思える竹皮も、水に浸すとまるで革のように柔らかくなり、手で細く裂いて紐としても使える竹皮の包み体験。竹皮も集めたばかりは細工に使いにくく、3年程度寝かしたもので竹皮草履を編んだりしています。竹皮には天然の抗菌作用があることを古人は経験的に知っていて、日本ではボクの子供の頃までは町のお肉屋さんにいくと決まって、この竹皮で包んでもらっていたものです。

竹炭、けん玉、竹とんぼ
さらには竹炭を焼き上げる際の煙から生まれるスモーキーな竹酢液の香り、昔懐かしい竹のけん玉や竹トンボまで、会場のテーブルいっぱいに広げた竹たちを実際に手にとっていただきました。

百年竹の美
持参した竹のケン玉は、ただのケン玉ではありませんでした。昔の古民家の囲炉裏に100年、200年と燻されて自然に色づいた煤竹を使って作られています。遊び道具としても楽しいモノですが、日本の伝統的な竹を説明させてもらうのに、ちょうどの見本でした。また、長い年月で炭化され、硬く引き締まった材質からは何とも心地よい音色が響くのも魅力です。煤竹で緻密に網代編みされたパーティーバッグと共にご覧いただきました。

竹の本領発揮
壊れても職人の手で直して何十年も使い続けられること。それはプラスチック製品とは全く違う、自然素材ならではのあたたかみと持続可能性です。いくら丈夫なスズ竹であっても、毎日の暮らしのなかで気に入って使っていればも、どこかが傷んできます。そんな時こそ、全国どこにであって手にいれやすい竹の本領発揮です!

世界共通言語「MOTTAINAI」
そして、日本の古きよき伝統文化である「もったいない」が、手直しできなくなった竹籠や竹笊は和紙を貼り、柿渋や漆を塗って補強してモノに新たな命を吹き込む一閑張りという技法になり今に残っているのです。最後に、そんな誇らしい竹のお話しもさせていただきました。

竹は言葉を越える
遠く離れたロンドンで、国境や言葉を越えて竹が人と人を笑顔で繋いでいく光景を目の当たりにし、竹の持つ無限の可能性と未来への確信を深める素晴らしい時間となりました。ご来場いただいた皆様、そして格別のご尽力をいただいたジャパン・ハウス ロンドンの皆様、本当にありがとうございました!
