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タイムスリップしたかのような幸せな時間。失われたはずの「凄技」幅広の竹ヒゴ、葛籠職人との出会い

張籠竹ヒゴ作り


孟宗竹を使う幅広の竹ヒゴ

昨日、お話しさせていただいたばかりの伝統の茶籠「おおかご」修理ですが、結構大変な仕事でした。というのも、その茶籠には、現代ではもう誰も作っていないような孟宗竹のを使った幅広の竹ヒゴが使われていたからです。近年、同じような作りの籠を見かけること自体が少ないですし、ましてや職人さんも残っていない手仕事のため、竹虎でも全く同じ幅の一枚の竹ヒゴを再現することができませんでした。


伝統の茶籠


苦肉の策として、今回は一枚の竹ヒゴを使う代わりに、二枚の竹ヒゴをきれいに並べて手直しを終えたのです。昔の職人さんの技術はすごい、もうこの幅広のヒゴを取れる職人は日本に誰もいないのかも知れない...。社員がつぶやく声を聞いて寂しさを少し感じていたのですが、それが思わぬ方向に!事態は劇的に変わります。


一閑張り下地


幅広竹ヒゴの職人

なんという巡りあわせなのか?まさかの偶然です!幅広竹ヒゴを作る職人などいなくなり、誰もしていないと思われていた仕事を、目の当たりにする幸運がやってきたのです。今も現役で行李を作られている職人さんに、出会う奇跡は突然やってきました。この行李は、古くから全国で愛されてきた葛籠(つづら)とも呼ばれる、日本の伝統的な衣類を仕舞うのに使われてきた収納箱です。


葛籠竹素材


歴史ある葛籠を守り続けている現場に巡り会えたのは、たまたま、昔からの知り合いの竹職人さんに同行させてもらっていた時でした。いきなりの、孟宗竹が運び込まれている工房にテンションがマックスまで高まります。


幅広孟宗竹ヒゴ


驚きの凄技

そして、実際に作業されている様子を拝見して、ただただ驚きました。迷いのない手つきで、竹からあの茶籠修理の時に見た幅広のヒゴが次々と生み出されていく凄技です。


張籠職人の凄技


丸い円を描く竹ヒゴ

素材は孟宗竹なのでこの長さになれば節が2つか3つは入ってしまいます。けれど、節が入っているにもかかわらず、この幅の広い竹ヒゴが綺麗な円を描いて丸くなっていくのです。これが、この職人さんの卓越したヒゴ取りの技術。ヒゴがどこを触っても均一な厚みになっている証拠に他なりません。お茶農家さんの籠修理で苦労したばかりだったからこそ、その技術の凄さが身にしみて伝わります。


一閑張り行李


丸籐で補強

完成した葛籠は、独特の明るい色合いであまり見かける機会も少ないと思っていたら、幕内力士の方が使われているとのこと。角には丈夫な丸籐がしっかりと補強に入れられていて、とても実用的な作りに仕上げられています。こうした伝統と職人技が、現代でも大相撲の舞台を支えているのだと深く感じ入りました。このような幅広の竹ヒゴを使った籠がたくさん編まれていた当時は、まさにこうやってヒゴを取って、あの茶籠も製作されていたのだと、まるで少し前の時代に戻ったかのような感覚に包まれます。


一閑張り工房


タイムスリップしたかのような幸せな時間

当時はきっと、あちこちの工房から竹を割る音やヒゴを引く音が響き、当たり前のようにして、この技で竹籠を編んでいたはずです。その活気ある風景や、関わっていた人たちの息遣いまでが工房に蘇っているようでした。編組細工の仕事場に見える竹が孟宗竹なんて、土佐伝統の竹細工だけかと思っていたので、それだけでも感動もの、本当に幸せな時間でした。もう途絶えてしまったとばかり思っていた技術が、こうして今も実直な職人さんの手によって守られ、静かに息づいている。竹の世界は、奥が深く、まだまだ知らないことばかりのようです。





竹虎四代目

竹虎四代目
YOSHIHIRO YAMAGISHI

創業明治27年の老舗竹虎の四代目。100年守り続けた日本唯一の竹林を次の100年に繋ぐ。日本で二人だけの世界竹大使。

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