
筍の季節
今年もこの季節がやってきました。創業明治27年、130年を越えて竹と共に歩んでいますボクたちにとりましては、虎竹の伐採、山出し、仕入れが一段落つく、この季節は格別なものです。先日、この30年ブログでもお話したばかりの筍ですが、祖父の代よりご縁をいただいている京都の竹職人さんから、それは見事な春の便りが届きました。箱を開けた瞬間に広がる、清々しくて生命力に満ちた土の香りは大好きです。思わず、ちょっと背筋が伸びるような、凛とした佇まいは、やはり、京都の筍。地元高知の野武士のような荒々しさの筍と違って品があります。

京都の筍畑での土入れ
さて、そんな京都の筍なのですが、まさに畑で生産される野菜と同じという事をご存知でしょうか?たとえば、高知県などでしたら、普通筍は竹林に自然と生えてくるもの、山の恵みというイメージしかありません。ところが、京都の長岡京市、向日市、京都市西京区といった名産地の筍は、一年を通して手入れされた畑のような竹林で生産されているのです。どの竹を活かし、どの竹を間引くか?太陽の光が地面にまで降り注ぐよう、計算された管理がされ、秋になると、広大な竹林一面に藁を敷き詰め、その上に土を被せる「土入れ」という作業が行われます。この土入れは大変です、竹林全体に5~10センチの厚みで土を撒いていくそうなので、その労力を考えただけで気が遠くなりそうです。
累積地温という農業現場で使われる指標があります。これは、一定期間での毎日の地面の温度を計測した値で、筍の成育もこの累積地温で決まるそうなのです。土入れをすると地温が上がり早く筍が成長するという利点と、土壌を柔らかくしておくことで柔らかい筍が収穫できます。皮までも白く、えぐみがなく甘味があって最高級のブランド筍は、白子と呼ばれ日光に当てないように、地中から頭を出す前に掘ります。丁寧に土入れされた畑からでないと生まれない逸品だと思います。

筍づくしの料理
届いたばかりの筍を、筍ご飯、筍煮、筍の和え物、筍お吸い物と筍ずくしでいただきました。繊維が細かいのでしょうか、やさしい歯ごたえ、柔らかさ、上品な甘みがあって、京都ならではの風土と、竹職人の誇りが凝縮されている気がします。竹には衣食住すべに関わる色々な顔があって、日本唯一の虎竹のように竹細工や竹工芸して人の役にたつ竹もあれば、こうして食として人を喜ばせてくれる、やはり竹の可能性の高さには改めて驚かされるのです。

豊かな実りの竹林
日本全国に広がる放置竹林が問題となっている事は度々お話させていただいています。手入れがされなくなり、荒れ果てた竹林が増えているのは、竹に携わる者として悲しいことです。けれど、この京都の筍のように、人が愛情を注ぎ、竹と共に生きる竹林には、これほどまでに豊かな実りがもたらされます。竹は、ただそこにある資源ではなく、人が手を入れ、育むことで、初めてその真価を発揮するものだと思います。

300年の伝統野菜
京都の筍の歴史き300年と書かれています。日本に孟宗竹が入ってきてから続く伝統野菜、春の味覚の王者です。竹虎も、百年守ってきた竹林を次の百年に繋いでいくために、筍畑の情熱を見習わねばなりません。
