国産竹網代の浪人笠
厳選した国産の真竹を、細かな柾目の竹ヒゴへと加工し、伝統的な網代編みで仕立てた浪人笠です。仕上げには柿渋と漆を用い、深い色合いと上質な艶を備えました。日本で古来使われてきた技法と質感にこだわりぬいた逸品です、本物の繊細さと存在感ある竹網代笠です。
奇跡の復刻
お客様からお預かりした、竹網代笠を忠実に再現するために石膏粘土で型を取る事からはじめました。型が出来あがったところで、それを原型として竹を知り尽くした熟練の職人が一つひとつ手で編み上げた浪人笠。目を奪われるのは、富士山の裾野のようにゆるやかで美しいシルエット。極細で正確な竹ヒゴで編まれているからこそ実現できる、なめらかで優しい流れるようなラインには一点の曇りもありません。見本と寸分の狂いもなく再現されたこの曲線は、長年の流鏑馬笠や竹網代笠の経験が積み重なって初めて到達できる領域です。
一本の真竹から
9メートルもの長さの真竹の伐り出しは10月から年末までの間。その旬の良い時の竹だけを使い、割って細く薄く取った竹ヒゴを使い網代編みして竹笠は作られます。
専用の木製型
竹網代笠の製作には、専用の木製型を使います。この型にのせて編み込む事により、均一なラインの美しい笠が編み上がります。
柾目割り
柾目の竹ヒゴ
竹編みを難しくしているのは柾目の竹ヒゴを使っている点です。柾目とは丸い竹材を縦に割っていくものなので、竹の厚み部分がヒゴ幅になります。虎竹細工など竹表皮部分を活かす場合の板目に比べると、圧倒的に多くの材料が取れるので竹細工の盛んな頃には良く使われていたものの、現在では殆ど見かけなくなりました。すぐ思い浮かぶのは、自宅で使っている輪弧編みの竹ペンダントライトくらいではないかと思います。従って柾目の竹ヒゴを取る機械なども、流鏑馬笠と網代笠の復刻でもなければ見る事もなかったと思います。
網代笠の流れるような竹編みは、この柾目の竹ヒゴがあってこそなのです。当社にある青竹細工でも、60センチサイズの竹ざるなど竹表皮を取った後の竹の身部分を二番ヒゴ、三番ヒゴと取っていきます、一本の竹を出来るだけ使い切るのが昔から伝わる編み方なのです。けれど、同じ身部分の竹ヒゴのように見えても柾目の竹ヒゴは柔らかく、しなやかな性質をもちながら、それでいて竹で一番丈夫な竹表皮部分が竹ヒゴの片側に必ず備えられているから強いのです。
しなやかで丈夫
編みに使われている竹ヒゴはすべて柾の竹ヒゴです。竹の中でも繊維が密に集まり丈夫な表皮部分を含んでいる、まさに贅沢な材料。そのため強靭でありながら驚くほどしなやかで、細かく美しい網代編みが息をのむ精度で並びます。製作を担当したのは、流鏑馬笠や網代笠など、特別な笠を手掛けてきた希少な職人。竹笠づくりの技を継承する職人が少なくなっている現代において、まさに貴重な手技の記録とも言える内容です。
縁部分
この竹網代笠の特筆すべき点のひとつが、この縁のあしらいです。何と、本体の網代編みと同じような細い竹ヒゴを使い、しっかりと編み込んで縁を作っているのです。国産の竹笠など見かける事はありませんが、もしあったとしても、ここまでのこだわりで作られる竹笠はありません。
内側も美しく
笠の内側には3本の力竹を通しています。中央に向かってなめらかなカーブを描いています。
五徳をご使用の際は別途ご準備ください
五徳は付属しておりません。また、取り付けもおこなっておりませんので、別途ご用意のうえご使用ください。五徳を装着することで着用時の安定性が向上し、快適にお使いいただけます。
匠の技
緻密に規則正しく編まれた網代編みは惚れ惚れするような出来栄えです。
柿渋と漆
今回の浪人笠は、直径が62センチと大きいサイズだけに仕上げにも特別な一手間がかけられています。本来の網代笠なら柿渋のみで仕上げるところを、まず柿渋を2回塗り重ねその上に色目を整えるために着色用柿渋を3回、さらに少し強度を加えるために漆を3回塗り重ねました。大きく繊細な竹笠をより長くご愛用いただけるよう、耐久性を高めた特別仕様となっています。見本から型を起こすところから膨大な工程と時間が積み重なりましたが、本物中の本物と言える浪人笠が出来上がりました。日本の竹、日本の手仕事、日本の職人技が静かに息づく竹笠です。
サイズ
天然素材を手作りしておりますので、形や色目、大きさが写真と若干違う場合があります。
※保管方法
保管の際には直射日光を避け、風通しの良い場所でお願いいたします。ビニール袋など通気性の悪いものにいれての保管はカビの原因となりますのでご注意ください。