虎竹の伐採もそろそろ終わりです。

伐採された虎斑竹


虎竹の伐採もあと少しとなりました。竹の伐採には時期があり、毎年虎竹の伐採は1月までと決めてあり、切り子さんもそれを守ってくれています。1月中に伐採し、そのあと枝打ちや運び出し作業を行います。今年はこの期間には竹の伐採をしないほうがいいとされる「つち」という期間が1月に2週間あり、「つち」開けを待って、そのあと慌てて伐採をしているところです。


今年の虎竹は思いのほか色付きのいい竹が増えていたという印象です。竹林の整備をずっと続けてきた結果だとある程度評価はできるように思います。しかし昨年は竹がよく生えていたと感じましたが、今年は自分の入った山には新しい竹が少なく、来年以降の竹林を少し心配しているところです。


最近の温暖化のせいなのか、イノシシなどの獣害にタケノコが食われているのか、そもそも竹が弱っているのか、はっきりとしたことは分かりませんが、毎年いろんな変化が竹林にはあります。自然に生えている竹を相手にしている以上、当然気になるところではありますし、竹虎の職人たちにも気にして欲しい、気づいて欲しいと事あるごと話はしています。


今年の虎竹の色づきは良かったと書きましたが、なにかおかしいとも感じています。虎竹をあまりご存じではない人には見ても全く分からない程度の些細な変化ですが、色の付き方や色合いが微妙に変わってきている竹があるように思います。これも温暖化が原因なのかもしれませんが、そもそも何故色がつくのかはっきりしたことがわかっていない虎竹ですので、何故このような変化が起きているのかも分かりません。


虎竹の里で長い間虎竹を見てきた切り子さん達もみんなこの変化に気づいていて、皆さんと会うたびにその話題となりました。自分だけの感覚ではないと分かって、色の変化に確信が持てましたが、竹としてどうなのか?を、これから油抜きをしたり、虎竹を切ったり、割ったり、剥いだりする中で何か気づけることがあるか、職人たちと共有しながら見守りたいと思います。


伐採もあと数日です。山の整備をしないといけない所もまだ残っていますが、運び出しも含めても、山の仕事もあと少しとなっています。意識の問題もありますが、山の仕事は体力的にもキツイことが多い仕事です。あと少しみんなで頑張って、その次には、その竹を使って虎竹を生かせる仕事ができればいいなと思っています。

伐採のシーズンとなりました。

虎竹の山
竹の伐採時期となりました。時期的には問題ないのですが、まだまだ暑い日が続き、竹が水を上げているので、伐採はもう少し先にするつもりです。今年は以前からの懸案事項であった山道の本格的な整備に入ってもらっています。


この山は竹虎所有の虎竹の山なのですが、道からの上がり口がきつい上に荒れてしまって、運搬機が上がれずに倒してしまった場所なのですが、それ以降は怖くて上がるのを断念していた道です。運搬機が上がれないと、当然人力で虎竹を下ろしてこなければならず、効率も悪く、また人にも大変負担のかかる山でした。


整備された山道


思い切って、山を大きく切り取ってもらって勾配を緩くしてもらいました。切り取った土は新しい道の土台に積み上げてもらっています。所々に邪魔になって切り倒した竹を根ごと埋めています。これは四万十式とも呼ばれる表土ブロック積み工法で掘削した表土や根株を盛り土に入れることで、その中で根が伸びて盛った土が強くなるのだそうです。


運搬機も登りと下りで重心のバランスを変えられるように、前後に重りを載せる枠をつけてもらうように改良をお願いしています。これで運搬機の重心バランスも良くなり、以前は上がれなかった勾配の道も上がれるよう期待しています。


道や運搬機の改良によって、今よりは山の仕事は少しは楽になるかもしれません。しかし管理や伐採、運搬機までの運び出しなどは当然人の手でやらなくてはいけません。環境整備ができたので、これからは良い虎竹が取れるよう、しっかり管理をやっていかねばと、強く思った道作りとなりました。

うなぎの穴釣り用ヒゴ

刃を2本立てた幅取り(左)と厚引き銑(右)


うなぎの穴釣り用のヒゴを作りました。うなぎを取るには鰻筌が簡単で、近くに小川の流れている所にお住いの方は、一度くらいはやったことがあるのではないでしょうか。私も小学生の頃は近くの川にミミズを入れた鰻筌を仕込んで、取っていた思い出があります。


今回、うなぎの潜んでいそうな穴に餌のついたヒゴを差し込んで取る穴釣り用のヒゴ作製の依頼がありました。今までは自分でヒゴを作っていたそうですが、年を取って作れなくなったからとの依頼です。基本的にヒゴなどの製作は微妙なかたさやしなりなどがご本人の希望通りに作ることが難しく、お断りすることが多いのですが、見本を持って来社され、微妙なかたさなどはお客様のほうで修正いただけるということなので、製作することとなりました。


直径は2mm、2.5mm、3mmの3種類で、普段は孟宗竹で作られているそうですが、ちょうど真竹の材料があったので、真竹でも製作することになりました。竹を割って剥いで、幅をそろえたり厚みをそろえたりするヒゴは竹細工を作るのに必要な材料なので作れますが、竹串のような丸いヒゴはあまり作ることのないヒゴです。


少し大きく割っておいて、鉄に開けた希望より少し大きめの丸い穴にヒゴを通していき、少しづつ小さな穴に通していって、小さく丸くする方法はありますが、そんな道具も持っていません。幅2mm、厚み2mmの四角いヒゴを作ってから、そのあと角を取り、丸くしていくことにしました。


左の刃を2本立てた幅取りで幅を揃え、右の厚引き銑で厚みを揃えます。どうしても節のある部分は盛り上がっているため厚くなりがちですが、節部分を削って極力厚みを揃えます。そうして厚みと幅を揃えてから、切り出しナイフで角を取ります。


出来上がったヒゴは0.5mmの差ですが、明らかな違いがあり、場所や狙ううなぎで変えるようです。また同じ大きさでも孟宗竹と真竹ではしなりが全く違います。真竹が柔らかく粘りがある分、同じように持ち上げても真竹のほうが大きくしなります。


同じ大きさのヒゴでも竹の種類によってこんなにも違いがあることにお客様は驚かれていましたが、実際使われたときにどちらのヒゴが良かったのかは、また次回お越しいただいた時にでも聞いてみたいと思います。


竹虎が扱っている虎斑竹は綺麗な模様がついている竹ですが、ただ色が違うだけでなくハチクの一種なので、真竹と比べると少し堅い材質です。白竹網代弁当箱と虎竹網代弁当箱も色の違いだけでなく、なんとなく持った感じが違います。そしてもっと柔らかいスズ竹で編んだスズ竹弁当箱は明らかに柔らかく、弾力のある弁当箱です。


同じ籠でも少しヒゴの厚みを薄くすると、その籠は持った感じも見た感じも柔らかいものとなります。竹の違いや色や編み方だけではなく、日常でいつも使うものだからこそ、竹ならではの軽さや弾力性などの違いも理解してもらって、楽しんでいただければと思います。それも竹ならではの楽しさであると思うのです。

高知県伝統的工芸品等デジタルパンフレット

土佐の手仕事図録.jpg
高知県の作った土佐の手仕事図録(高知県伝統的工芸品等デジタルパンフレット)に掲載していただきました。


高知県では「土佐打刃物」と「土佐和紙」が国の伝統的工芸品に指定されており、高知を代表する工芸品として有名ですが、その他に地域で受け継がれてきた全国に誇りうる伝統的特産品を「高知県伝統的特産品」として指定しており、その中に「虎班竹細工」も指定していただいています。


伝統的工芸品に指定されている竹細工といえば大分県の「別府竹細工」が有名ですが、そのほかに岡山県の「勝山竹細工」や奈良県の「高山茶筅」などがあります。私は大分県別府市にある大分県竹工芸訓練センターの「竹工芸科」で学んだ経緯があり、その経験が自分の竹細工の基となっています。


竹細工といっても、その土地に多く自生している竹を使って製作することが多く、いろいろな歴史があり、それぞれが違う特徴や技法を持っています。「虎斑竹細工」は日本で唯一、ここでしか取れない虎模様のついた虎斑竹を使って製作した竹細工のことで、技法というよりも虎斑竹という竹に光を当てていただいていることは大変嬉しいことだと感じています。


高知県には「虎斑竹細工」のほかにもたくさんの伝統工芸があり、高知ならではの技法や特徴をもっており、それが一堂にみられるのが土佐の手仕事図録となっています。またそれを製作しておられる職人さんの紹介動画もあり、職人さんのものつくりへの想いや製作風景など、大変興味深く、作る物こそ違いますが、ものつくりをしている者としては大変勉強になり、刺激となりました。


こんなに楽しく高知の魅力の一端を知れるデジタルパンフレットですが、実際のところ、あまり見られていないのが残念に思います。ぜひご覧いただき、商品は違っても、その商品ならではの手仕事のこだわりや想いを感じていただきたいと思います。そして竹虎の商品を手に取っていただいた時にも、虎斑竹のことや、職人のこだわりや想いに触れてもらえれば、もっともっと竹製品を好きになってもらえると思うのです。



竹の伐採

竹林
竹は切る時期秋から冬にかけてと決まっており、今シーズンの虎竹の伐採は1月いっぱいで終了しました。その後、枝を払って束にしてから、山からの運び出しの作業がありますが、それもあと1ヶ所を残すのみとなりました。今年は雨が多く、山道が滑って運搬機が上がれないために少し遅れています。


全国的に竹を伐る切り子さんが減っていると耳にしますが、虎竹の里も同様に切り子さんが減っています。竹の伐採といってもただ竹を伐るだけではなく、まず伐採できるように下草を刈ったり、竹を運び出す道の整備をしたりすることから始まります。


それから伐採をし、枝を払い、束にしてトラックの行けるところまで運搬機で運び出さなければいけません。基本的には上から降ろしてくるところが多いのですが、虎竹の山は急勾配の山が多く、運搬機の上がらない場所も少なくありません。今後はそんな山にも運搬機を上げていけるよう、道の勾配を緩くするように整備したり、運搬機の馬力や荷重のバランスをしっかり取るような工夫も必要です。


自分たちの管理している山には道が上にある場所もあり、そこでは運搬機で運び上げができないために人力で運び上げています。こちらもワイヤーを張って引き上げる方法を試したいと考えています。


また虎竹の伐採には竹の年齢を見分けるのはもちろんのこと、その山の色の付き方や竹の生え方を知らなければ伐ることができません。1年だけ伐ればいいのなら、色付きの良い竹をどんどん伐っていけばよいのですが、そうすれば次年度以降の虎竹の色の付き方が悪くなってしまいます。


伐採の知識や経験だけでなく、山道の整備や運び出しまで自分ですべてやらなければいけないと考えるとなかなかの重労働で、ハードルが高く、新しく切り子さんが増えないのも仕方ないのかもしれません。


切り子さんが減り、出てくる竹も減ってきているので、竹虎では10年ほど前から本格的に自分たちで竹の伐採も始めました。これも昔からの山の関係者や切り子さんとの関係があり、すんなりと山に入れる環境のおかげだと感謝しています。


伐採後は竹にキズをつける立ち枯れ竹や陽当たりを悪くしている木の伐採など、来年以降のために山の整備に入ります。暑くなる前になんとか時間を見つけて山に入りたいと思います。竹は伐る時期が決まっているので、その時期だけ山に入ればいいように思う人もいるようですが、そうではありません。


竹は日本中のあちこちで見られ、身近な存在であるのですが、竹屋が使えるいい竹は限られてきます。伐採や山の整備も考えると、自分たちの使っている竹の価値はもっと上がっていいはずですし、その価値に見合うような仕事をこれからもしていかねばと思うのです。

鏡開き

ぜんざい


新年を迎えました。考え方や決まりはいろいろとあるのかもしれませんが、竹虎ではずっと以前から年末の大掃除の後に、しめ飾りを飾り、機械や水場など、社員さんやお客様が使うものに一年の感謝と新年からの安全を祈り、お餅を飾るということだけはして新年を迎えるようにしています。


しめ飾りは松の内が終わったあとに片づけていましたが、今朝早くに川で火を焚いて感謝をして燃やしました。どんと焼きに持って行ったりする時もあるのですが、自分でできることは自分でしっかり感謝して処分したほうがいいと思い、機会があればできるだけそうするようにしています。


飾っていたお餅は、今年はぜんざいに入れてみんなで食べることにしました。一番若い社員さんが買い出しをしてくれ、ぜんざいをたいて準備をしてくれました。お昼の時間はそれぞれ違うので、それぞれで飾っていたお餅を焼いてぜんざいに入れて食べました。工場の職人には3時の休憩に持っていきます。


自分は甘いものがあまり得意ではないのですが、焼いたお餅の入ったぜんざいは非常においしくいただけました。一緒に食べた社員さんには、「私らと食べたきおいしいがよ」と言われましたが、そうだと思います。今年もこの方たちに助けてもらいながら、頑張っていきたいと思えた竹虎ならではの鏡開きとなりました。

黒竹の伐採が始まりました。

黒竹、竹林

竹の伐採の時期になりました。虎竹はもう少し寒くなってこないと色が乗らないので、黒竹から伐採することにしました。黒竹も気温が下がると色がついてくるように思っていますが、虎竹ほどではないような気がしています。伐採の時期が1月末までということもあり、それまでの短い伐採時期に集中して山に入るようになります。


黒竹も虎竹と同じように生えてきたときは緑色の普通の竹の色をしています。真ん中の緑の色の竹は今年の春生えたものでしょうか。生えた竹は3ヶ月ほどでこの大きさになり、これからだんだんと身が入り、色のつくものはだんだんと色をつけてきます。黒竹も虎竹ほどではないですが、、色のつく竹とあまりつかない竹があります。これも原因がはっきりしませんが、陽当たりが大きく影響しているように感じています。


この場所は上に道があり、そちらに集めた方が近いので上に竹を流しています。黒竹は虎竹に比べると大きさも小さく、長さも短いため比較的扱いは楽なほうだと感じます。こうして上に竹を引き上げる現場に行くと、2年前に虎竹を担いで山道を上がっている時に足を痛め、しばらく松葉杖をついていたことを思い出します。


こうして仕事する上で健康はもちろん大事ですが、現場作業でのケガに対する注意も大事だとつくづく思います。一緒に山に入る社員にはケガのないように、十分注意して作業するようにと伝えています。


これから頻繁に山に入りはじめ、山の手入れや竹の運び出しが始まります。竹虎の職人たちも体力的には一番しんどい時期に入ります。しかし、会社に来てもやることがなかったり、作っても作っても売れなかった時代に比べれば、やることは見えており、シンプルに動くしかありません。


この山に入り始めて数年が立ちますが、ここはいい竹は生えないなぁと思っていた場所に綺麗な竹が少し生え始めています。竹林といっても、陽当たりや風当りなど環境の違いはそれぞれで、それぞれの山で生えている竹の違いは感じます。自分たちのやったことで竹林が綺麗になったり、いい竹が生えてきたり、新しい竹が多く生えてきたりするのを見ることだけが、竹林に入るたったひとつの楽しみなのです。

虎竹の里の記録的豪雨

土砂崩れ


先月の7月4日、虎竹の里は記録的豪雨に見舞われました。高知県初の「線状降水帯発生情報」もあり、竹虎のある高知県須崎市では観測史上最大の時間雨量を計測し、あちこちで土砂崩れや浸水被害が出ました。竹虎の倉庫も一部浸水しました。


あちこちで土砂が崩れ、小さな川は土砂でふさがれ、水が道を流れていました。海沿いの集落に行く道は、土砂崩れを防ぐ金網で土砂が止まり、なんとか片側通行できますが、いつ大きく崩れるかわからない状況でした。竹虎の社員が数名住む中土佐町につながる国道は土砂崩れで通行止めになり、高速道路で須崎の町まで出てから、迂回して出社してもらうよう連絡をしました。


今まで崩れたことのない竹虎の斜め前の国道にかかっている橋の下は大きく崩れています。1998年の高知豪雨の時も降りましたが、今回は短い時間に多くの雨が降ったという感じで怖かったです。川をふさぐほど土砂が崩れてきているということで当然山の道や谷なども水があふれて壊れています。大雨も何度もありましたが、ここまで酷い被害は出たことがなく、これも近年の気候変動によるものだろうなと感じています。


橋のたもとの土嚢


あれからふた月が経とうとしていますが、酷い川の土砂を取り除いた他は何も手が付けられていません。隣町に繋がる国道は片側通行のままですし、国道にかかる橋のたもとは、崩れたところに土嚢を積んでいるだけです。


山に向かう道


こういう状況ですので、市道とはいえ、自分たちしか使わないような山に向かう道を早く直してもらうというのは無理があるのかもしれません。10月には虎竹伐採のための準備で山にも入り始めます。今年の虎竹伐採は道を直すことから始まることになりそうです。

えびら製作

えびら制作


梅雨真っ盛りの高知県須崎市安和の虎竹の里ですが、梅雨明けの梅の土用干しに使っていただくえびらの製作に追われています。このえびらには大きさの違った大と小があり、編み方は隙間の空いた四ツ目編みと隙間のない網代編みの2種類があります。


大きさはお使いいただく場所や干す梅や野菜の量などで選んでもらえばいいかと思います。編み方の違いとしては四ツ目編みが隙間が空いている分、通気性に優れていますが、干すものによっては隙間からこぼれてしまったりする恐れがあるので、これも干すものや、お好みで選んでもらえばいいと思います。


この竹編みの生地を編んでもらっていた職人さんが高齢でできなくなったということで、今年から材料となる竹の伐採から、竹割り、竹編み、木枠作りまでを全て竹虎の職人が自社工場で製造しています。高齢で辞められる職人さんが出れば、その職人さんが作っていた籠ができなくなってしまうということもあるので、今後はこのように自社工場で製造しないといけない籠も増えてくると思います。


商品自体は遜色ない物ができていますが、長年やられてきた職人さんの手際やスピードに比べると、やはり熟練の職人さんには敵わず、職人さんのすごさを身をもって感じながら、少しでも近づいていけるよう日々精進しているところです。


製造時間が長くなったり、自社ですべてを手作りで製造するということは、コストアップに繋がり、結局販売価格を上げざるを得ない場合も出てきます。しかし高齢の職人さんが辞めて、作れなくなっていく商品でも、ありがたいことにまだま
だ必要としていただける商品がたくさんあります。それになんとか応え、なくてはならない竹細工を継承し続けていくこといくことも竹虎の存在意義の一つでもあると思うのです。

製竹作業

職人による製竹作業風景


冬場に伐採した虎竹の入荷も終わり、工場内の整理も終わって、虎竹を製品として製竹する油抜き作業が本格化しました。竹は油分の多い植物なので、余分な油抜きをする事で耐久性の向上、竹表皮の汚れ落としやツヤだしの効果が出ます。油抜きによって表面についた汚れを取り除き、綺麗な虎竹独特の虎模様がでてくるのです。


油抜きをしたあとの綺麗な虎竹がそのまま山に生えていると思っていたという人がいて驚いたことがありますが、こちらがわかっていて当たり前と思っていことも、人によっては当たり前ではなく、説明をしっかりしていかないとわかってもらえてないことがまだまだあるように思います。


青物細工のように油抜きをしないで、そのままの竹を使って作るものもありますが、虎竹はすべての竹をまずバーナーの火であぶり、綺麗に油抜きをしてから加工に入ります。建築材料や袖垣などに使用する虎竹は、油抜きと同時に矯め作業を行って真っ直ぐにしていきます。真っ直ぐに立っているイメージの竹ですが、倒してみると結構曲がりがあり、使いにくいためです。


竹はタケノコから3ヶ月で親竹と同じ大きさになり、3年ほどかけて身をつけて固くなっていきます。生え始めの頃は、大きさが大きくてもまだしっかりと身が入っておらす、触るとなんとなく柔らかいように感じます。そんなものが細く、高く立っているので、どうしても風や他の竹などの影響を受け、曲がりがでてしまいます。


虎竹よりも柔らかく、身の薄い黒竹は風などの影響をより受けやすいのか、曲がりの大きいものが多いです。また油抜きをする際に出る油も、虎竹よりも黒竹の油は粘り感があり、重いと感じます。その分しっかり、上手に炙らないと綺麗にふき取りができません。その上、身が薄いために炙りすぎると中の空気が膨張して破裂するリスクも大きいのです。


実際に扱っていると、見た目以上に竹によって性質の違いがあることを実感します。同じ種類の竹でも、乾燥度合いや身の厚さ、強度、粘りなど、それぞれが違うものと感じます。それをしっかり分かったうえで、質感や色や持った時の感じなどでその竹を理解し、それに応じた熱の入れ方や矯め方をして行く必要があります。


わからずやっていれば竹を破裂させたり、折ってしまうことになります。ある程度は仕方ない部分もありますが、それを減らすには失敗の原因や成功の原因をいつも考え、1本1本の竹と真剣に向き合うことです。伐採から油抜き、そして加工の繰り返しをやっている竹虎工場の職人たちは誰よりも虎竹を知っているはずです。それをしっかり自覚し、誇りをもって、日本唯一の虎竹に負けない仕事をしていかねばと思うのです。