昨年のNHKの朝ドラ「らんまん」のモデルになった高知県出身の植物学者、牧野富太郎博士の業績を顕彰するために開園された牧野植物園に虎竹光悦寺垣と虎竹金閣寺垣を施工しに行きました。
光悦寺垣とは京都光悦寺発祥の格子を組んだ垣で、金閣寺垣とは金閣寺にある垣が原型とされているため、こう呼ばれているそうですが、どちらの垣も有名でどこかで見かけたことのある方も多いのではないでしょうか。光悦寺垣は高さも長さもいろいろ自由にできる垣で、金閣寺垣は一般的には背の低い垣で作られることが多いようです。
牧野富太郎博士は虎斑竹命名の父として知られており、竹虎とは大変縁の深い植物園で、ずいぶん以前から竹を使う造作の時には声をかけていただいています。一昨年には虎竹を園内に植えていただけるということで、職員さんが虎竹の里まで虎竹を掘りに来てくださり、牧野植物園に虎竹を移植しました。その虎竹も見てきましたが、立派に育っており安心しました。
何ヶ所か施工をさせていただいていますが、今回は古くなっている2ヶ所の作り変えです。光悦寺垣は少し珍しい埋め込み式となっており、両端を埋め込んでいる形の垣となっています。埋め込んでしまうと、土から湿気が上がりやすく、どうしても腐りやすくなります。本来は孟宗竹で骨組みを作るのですが、腐って倒れたりしないように、骨組みは塩ビパイプで作っています。
骨組みの塩ビパイプはそのまま使うことにして、その塩ビパイプを巻く巻き竹と格子部分を虎竹で製作しています。塩ビパイプに切り開けられた穴にバランスを見ながら格子を差し込んで組んだあと、虎竹を割った巻き竹を巻きつけていきます。竹は先のほうに行くにしたがって細くなっていますが、塩ビパイプは同じ太さなので、先に行くにしたがって竹が足りなくなってきます。少しずつ足しながら竹を巻く作業です。
金閣寺は柱の焼柱を建て、組んでいくだけの簡単な垣ですが、横に長い垣なので、竹の継ぎ部分が不自然にならないように大きさを合わせ、棕櫚縄で継ぎ部分隠していくのと、高さのレベルを合わせるのを気を付けるくらいです。
今回の施工で一番気をつけないといけないのは、竹垣の施工よりも足元にある植物に配慮することでした。管理されている牧野植物園に無駄な雑草などあるわけもなく、施工する垣の周りにある植物をできるだけ痛めないように気を付けながらの作業でした。
どうしても立ち入らないとできないこともあり、踏んでしまった植物もあり、申し訳ないなと思いながらの施工でしたが、無事に終わらせることができました。多くの方が訪れる植物園に、虎竹が植えてあり、そして虎竹の垣を作らせてもらえることはとてもありがたいことです、また今後の仕事に繋がってほしいと初めて施工に連れて行った職人もおり、いい経験になったと信じています。いろんな意味でありがたいと感じた施工となりました。
四ツ目垣の施工に行ってきました。今回は病院のバルコニーのような場所に付けていた四ツ目垣が古くなったということで、お声をかけていただきました。以前ついていた物は白竹で作っていたようですが、今回は同じ仕様のものを虎竹で作らせてもらいました。
お客様の病院に見せてもらいに伺い、要望を聞き、いま付いている垣の作り方や仕様の確認、採寸をまず正確に取ります。それから今ついている垣の取り壊し方法や、新しく作ってきた垣の取り付け方法の検討とそれに必要な道具や材料をその場で決めます。
そして持ち運びの導線の確認とトラックの停車位置の確認をして、最後に現場の写真を撮って、現場での見積りは終わりです。その後見積書を作って、お客様に納得していただいてから製作にとりかかります。
庭に施工するのであれば柱を土に埋め込んで立てる方法で施工していきますが、ここでは手すり部分に固定していく形です。本当は手すりの柱の土台の上に四ツ目垣の柱を全部乗せていきたいのですが、土台の位置が一定ではなく、こういう形での施工となりました。
立てる位置がはっきりと出せない場合や、ちょっとした四ツ目垣であれば現場で作ったほうが正確にできるので、現場で作ることが多いのですが、今回は採寸だけしっかりとしておけば竹虎工場内で作っておいて持って行った方が早くて、病院内でお騒がせをする時間も短くなりますので、施工と言ってもほぼ取り付けという形です。
とはいえ、4mの長さの四ツ目垣をそのまま階段で2階にあげることは難しく、2mにばらしたもの2枚をバルコニーで4mに繋げてからの取り付けとしました。
今回は施工方法が簡単で、はっきりしていたので、現場取り付けは職人2人に任せました。製作も仕様の確認や、バランスの確認だけで、あとは任せていました。製品作りもそうですが、現場での挨拶やお客様対応も非常に勉強になります。いつかは現場確認から見積りまで、任せられるようになればいいなと思っています。
数年前に施工させていただいたランの展示場の虎竹パテーションを延長するご依頼をいただきました。そこは温室のような作りで、陽がふんだんに入るガラス張りの展示場で、以前は立て簾を立てて、陽が入りすぎの時などは日光の調整をされているようでした。
日本唯一の虎竹を大変気に入ってくださっている社長さんで、他の展示場や併設の喫茶店、そしてご自宅にまで虎竹をたくさん使っていただいています。前回その日よけの立て簾をなんとかしたいとのご相談をいただき、いろいろとご提案をさせていただいた中で低い虎竹パテーションとブラインドの併用と決まり、施工をさせていただいておりました。
大きな展示場ですので全面の施工はせず、入口の両脇付近だけの施工でしたが、今回はその奥に同じ虎竹パテーションを延長施工しました。事前打ち合わせと採寸はしっかりとやりましたが、施工箇所にパイプがあり、それを微妙にかわしながらの施工の為、おおまかに作っておいて、あとは現場で合わせながらの施工です。
パイプに当たる部分は枠組みを作り変えるつもりでいましたが、格子をカットするだけで取り付けできたので、無事施工ができました。格子を組んだだけのシンプルなパテーションですが、格子の幅や間隔、飾り竹の太さなどで印象は違ってきます。格子を縛るのを黒い棕櫚縄から四万十カズラに変えただけでも大きく見た目は違います。
綺麗に並んだ格子の間隔や、横から見ると一直線に並んだカズラの結び目の美しさはシンプルな格子垣ならではのものです。虎竹はやっぱりシンプルな使い方が一番きれいだと感じた施工となりました。
いろいろなやり方や考え方があると思うのですが、竹虎では袖垣の足をそのまま土に埋めて立てるということはしていません。竹で出来た足をそのまま土に埋めてしまうと、その部分が腐りやすく、上はまだまだ綺麗なのに倒れてしまうということもよくあるからです。
通常は腐りにくい焼柱を土に埋めて立て、それに袖垣を銅線などで固定してもらうようにお願いをしています。袖垣の足元は土が絡むと湿気を持つことが多いので、できれば石などを敷いて少し浮かせて置くと、少しでも綺麗に長持ちができるように思います。
どうしても埋め込まないといけない場合は、柱を焼柱にしたり、芯になる孟宗竹の骨組み部分を焼柱やピニールパイプに変えて、それがわからないようにその上を虎竹の割竹で巻いて作ることもあります。
今回はさらに焼柱に腐食防止用の液を注入してもらいました。これでさらに長持ちがすると思います。このお客様のこの別注玉袖垣も3代目となります。次の4代目を作らせてもらえるまで、少しでも長持ちし、お客様の玄関先を飾ってもらいたいと思うのです。
前回のブログで紹介した長い巻き竹を使って、牧野植物園さんに光悦寺垣の施工に行ってきました。牧野植物園といえば、高知が生んだ「日本の植物分類学の父」、そして日本唯一の虎斑竹を命名された牧野富太郎博士の業績を顕彰するために昭和33年に高知市に開園した植物園です。
牧野植物園さんには虎斑竹を移植させてもらったり、温室の中の竹の小屋を作製させてもらったりと、いろいろお世話になっていますが、今回は古くなった大きな光悦寺垣の改修の依頼があり、以前は白竹で作っていた光悦寺垣を今回は虎斑竹で新しく作ることになりました。
この光悦寺垣は緩い曲線を描いており、その上長いものは10mを超す長さがあり、一般的には孟宗竹で組む骨組みも、こちらは塩ビパイプを使用して、元口と末口の大きさの違いが無いようにしてあります。
またその上に巻く竹も1本物では届かず、両方から巻いてきて、途中でつなげるようにしています。技術的にはそう難しいものではなかったのですが、塩ビパイプを使ったので、格子を組む際に切り込みを入れながら組んでいかねばならなかったり、その塩ビパイプが見えないように裏側に竹を細かく差し込んでいく作業に手間取ってしまいました。
2組の光悦寺垣の間には金閣寺垣も施工しました。牧野植物園の栽培技師の方には「虎斑竹にすると締りますね」とお褒めの言葉をいただきました。こういう竹そのままを使った垣には、なおさら虎斑竹の存在感が際立ち、助けられてるなと改めて感じた施工となりました。
直径7mm、長さ500mmの竹の丸棒が届きました。竹虎でも丸竹串を販売していますが、直径は約2.5mmほどですので、これはかなり大きなものと言えるでしょう。実はこの丸棒は15cmほどにカットし、先を削って尖らせて竹釘にするのです。
虎竹玉袖垣などの袖垣は孟宗竹と虎竹の丸竹で骨組みを組んでおき、それから格子を組んだり、孟宗竹の上に割った虎竹を貼りつけたりして完成させます。その最初の骨組みを組む時に、中が空洞の竹と竹を止めるのにこの竹釘は必要となるのです。
竹は中が空洞で身の部分は薄いので、木材のように普通の釘を打ち込むと、まず竹自体は割れてしまいますし、効きません。そのために竹に下穴を開けておき、その穴よりほんの少し大きな竹釘を打ち込んで、かっちりと固定するのです。
虎竹枝折戸などの丸竹で組むものも同様で、その竹の大きさに合わせて細い竹釘を用意しておき、同じ要領で組んでいきます。竹の格子を組む場合も動かないように所々竹釘を打ち込んで固定したりもします。同じ材質の竹ですので、違和感なく目立たないのも利点です。
言われなければわからないほどに目立ちませんし、丈夫さでは鉄の釘に到底かないませんが、竹と竹を組むためには、この竹釘は必要不可欠な脇役なのです。
お客様のお宅の垣が古くなったので、新しい物に作り替えたいとの連絡があり、採寸も兼ねてお話を伺いに行ってきました。そこにはL字の垣があり、コンクリートにパイプを埋めて、そのパイプの中に柱を埋めこんでいました。
新しく作らせてもらう垣も、そのパイプの穴に柱を入れて立てるしかないので、採寸はかっちりやる必要がありました。L字といっても直角のL字ではなく、少し開いていたので、角度は入念に確認し、お客様の希望もしっかり聞いて職人に伝え、製作しました。
施工と言っても、古い垣を撤去し、サイズ通りに作った垣を高さを合わせながら、そのパイプに差し込んで、コーキングを打つだけなので、現場で組んだりする垣よりはある意味簡単です。
でもそれは作っていった垣がそのパイプにぴったりと合ってこそであり、現場に持っていくまでは自分の採寸が正確だったか心配もあり、合わない想定もしながら、それに対応できる道具などは持って行きました。そう言う意味で、現場で組む垣は、その場で合わせて作れるので間違いがなく、柔軟な対応ができるという利点があります。
現場は勾配もあり、L字の角度も直角ではなく、高さを合わせるのにもミリ単位で埋め込む足の長さを調整しながら、高さのレベルを合わせていきました。無事にぴったりと合わせることが出来て、スムーズに取り付けはできました。
施工には若い職人を連れて行きましたが、お客様へのあいさつから始まり、言葉使いや動き方、考え方、最後の掃除など、いろいろな気づきがあったように思います。上手くは行きましたが、その中でも若い職人には反省点や自分に指摘されたこともたくさんありながらの施工でした。
いつもそうですが、お客さまのところに行ってやる施工は、仕事をさせていただいてありがたい上に、若い職人にはいろんな気づきをいただけ、自分としてもいろんな気づきをたくさんもらえる場でもあるのです。
ランを展示販売されているショールームに、虎竹で格子を組んだ化粧板を取り付けさせてもらいました。以前は立て簾を日よけ代わりに立てかけていましたが、竹の大好きな施主様になんとか虎竹を使って造作ができないかと声をかけていただきました。
最初は丸い竹を立て簾代わりに編んで、立てかける案で進んでいましたが、光の調整ができないことや、重量の問題などの理由で計画を変更し、この虎竹の格子の製作となりました。
何度か足を運び、虎竹格子化粧板の高さや格子の幅、間隔、そして虎竹の色目、格子を縛る四万十カズラ、シュロ縄飾りなど、詳細に話を詰め、実際にサンプルを2枚作って見てもらってから、この虎竹格子化粧板の仕様に決定しました。
化粧板の上に取り付けるブラインドも同時進行で進んでおり、ブラインド設置は前日にやっと終わったところでした。ブラインドを化粧板の後ろに垂らすために、虎竹化粧板の取り付け位置がはっきりしてなく、また取りつける場所が直線ではないために、正確な大きさが出せず、ある程度作っておいて、現場で合わせながらの製作、施工となりました。
全長18mの場所になんとか取り付けた後、施主様からは「震えがくるくらい良い」とお褒めの言葉をいただき、ショールームの担当者さんからも、「今日お休みの別の担当者さんが明日出社したらびっくりして喜びます」と嬉しいお言葉をいただきました。
ブラインドとの関係や虎竹化粧板のサイズや施工、何よりお客様に出来上がりを満足してもらえるどろうかと、いろいろ心配もあった施工でしたが、喜んでいただけて、ほっと一安心した虎竹格子化粧板の取り付けとなりました。
枝折戸とは丸竹で作った枠に、両面から割竹を編みこんだ簡単な開き戸のことで、露地と呼ばれる茶庭の中門の代わりに置かれることもある簡単な開き戸です。開き戸の他に壁につるしたり、2枚をL字に組んでパーテーション代わりに使ったり、マンションのベランダ置いて植物を這わせたりと、いろんな使い道があるのです。
丸竹で枠を組んで、四隅に割竹の入る溝を切っておきます。長さ3mほどの虎竹を幅15mmほどに割り、それを薄く剥いで、編みこみ用の割竹を作っておきます。そして最初にその四隅の溝に十字に竹を組むことから枝折戸を編むことは始まります。
その最初に十字に組んで、合わさった部分が編みこみの中心となります。その十字に組んだ竹に沿って、丸竹で組んだ枠をひと回りさせて編んでいくのですが、枝折戸の大きさによってその本数を多くしたり、少なくしたりして、組んだ菱目の枠の大きさがあまり変わらないように調整します。
編み方自体は大変シンプルで簡単です。誰に習う事もなく編み始めましたが、ちょっとした割竹の幅や厚みの違いなどで、編みにくくもなり、また枠の幅の大きさでも編みやすさが違ってきます。しかし一番気をつけなければならないのは枠がゆがんでしまわないようにです。
丸竹を組んだだけですので、そのままですと多少ガタガタ動きます。それに割竹を編みこんで動かなくするのですが、編みこみの際にゆがんだまま編んでしまわないようにするために、時々直角の枠にはめて、ゆがみを確認する必要があるのです。
編み方は簡単でも、材料の違いや大きさの違い、編みの本数などで微妙に違ってくるのが竹の編み作業です。それで同じものを早く、綺麗に作るのには材料の特性を知り、経験や熟練が必要不可欠となるのです。
一般的に虎竹玉袖垣などの袖垣は、まず孟宗竹で骨組みの枠を作り、格子を組んだ後に骨組みの孟宗竹に割った虎竹を貼り付けていきます。その後、ひしぎという呼び名の、丸い竹を少しずつ叩いて板状にしたものを貼ったり、黒竹の枝を入れたりしながら、袖垣を作っていきます。
今回作らせてもらったのは虎竹ひしぎ垣です。枠の中に格子や枝などは入れず、虎竹のひしぎだけで仕上げた袖垣です。形の変化や凹凸のない袖垣になりますが、虎竹の模様が全体に大きく、美しく見えた、すっきりとしたデザインの袖垣となります。
この袖垣は孟宗竹の枠の中にひしぎを入れて納めてしまう必要があるため、まずひしぎを貼っていきます。その後に孟宗竹の枠に細かく割った虎竹を貼り付けていくのです。普段あまり作ることのない袖垣も、こうして作る機会を頂いて作ってみると、虎竹の魅力を再確認するいい機会となるのです。