竹の刃物

竹割包丁


竹細工を初めて一番先にやることは刃物の研ぎ方を覚えることです。一般的には刃物というものは切れるのがいいとされていますが、竹細工に使う刃物で切れていいものはあんまり無いというのをご存知でしょうか。


もちろん削ったりする切り出し小刀やの表皮を薄く剥ぎ取る磨き包丁などは、切れなければいけません。でも竹割包丁や竹の幅を揃える幅取りナイフ、竹の厚みを揃える裏スキ銑などは切れすぎてはいけないのです。


切れすぎると刃が竹に食い込んで、割りにくかったり、刃物に竹が取られて均等に割り剥ぎができないからです。もちろん最初は綺麗に切れるように研いでから、刃先を少し潰して切れにくくするのですが、その微妙な切れ具合を調整するのが面倒で、いつも割り剥ぎばかりをしているわけではない私などはあんまり研ぐということはしていないのです。


特に竹の幅を取る時に使う左右対称の幅取りナイフなどは、2本を向かい合わせて立てて使うので、左右のナイフの切れ具合が違うと、どちらかに竹が取られて綺麗に幅を揃えることができないので、余計に今の切れ味が変わるのが嫌だったりするのです。


そんな刃物たちでも、たまにはこうして磨きあげて油をしみこませてあげる。こういう作業が気持ちをリセットすることになったりするのです。いろんな刃物があり、それぞれの切れ味があって、それぞれの持ち味の仕事をしていくっていうのは人間も同じのような気がするのです。