職人の野菜

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竹虎工場の職人が家で作っている野菜を持ってきてくれました。キャベツに大根、水菜にチンゲンサイ、サニーレタスです。どれもこれもみずみずしくておいしそうな野菜ばかりで、女性社員は大喜びでした。


田舎に住んでいるとはいえ、市場やスーパーで売られている野菜を買うことが多いので、こういう取れたての、作った人の顔の見える野菜を頂いて、食べれるということは、それだけで贅沢な、嬉しい気持ちになれるものです。


この職人の人の良さそうな、控えめな笑顔で分かるように、そっと事務所前に置かれていたので、誰が置いてくれているんやろう?と言い合っていましたが、後で恥ずかしそうにみんなで分けてと言って来てくれました。


机に上にお土産のお菓子のおすそ分けが置かれていることも、度々で、その度に社員さんがどこかに出かけていたことを知ります。たべてくださいと、家で採れたものをみんなにおすそ分けしてくれる人もいます。みんなが喜んで分けていただきます。


そんな仲のいい社員さんに支えられ、助けられて竹虎はやっていけています。ただの業務ではなく、竹虎のために力を貸してくれている人ばかりです。そんな社員さんに感謝を忘れず、認め合いながら、毎日楽しく、いきいきと仕事できるような職場でありたいと、この野菜を見ながら改めて思うのです。

矯めない矯正法

矯めない矯正法


竹というものは真っ直ぐに伸びているイメージがあるようですが、実は倒してみると結構曲がっているものです。それをガスバーナーで油抜きをした際に、その熱を利用して矯め木という道具を使って真っ直ぐに矯正することを矯めると呼んでいます。


竹は熱すると金属や木材と同じように、柔らかくなる性質を持っています。熱くなっているうちに竹の曲がっている方向の繊維を伸ばして、矯正し、そのまま冷まして真っ直ぐにしていくのです。籠を作る材料としての竹以外は、ほとんどこの加工をして真っ直ぐに矯正して出荷しています。


虎竹玉袖垣などの袖垣の骨組みに使うのは孟宗竹という一回り大きな竹です。よっぽど大きな袖垣を組む以外は、そんなに長さを必要としないので、1本の竹の中で、極力真っ直ぐになっている所を使うようにしています。それでも自然のものですので、多少の曲がりがあり、作っていく段階で矯正が必要な場合も出てきます。


そんな少しの竹の曲がりを調整するのが、竹に切込みを入れて、その中に竹で作ったくさびを打ち込むという方法です。たとえば右側にほんの少し曲がっている竹があるとします。その右側に曲がっている部分に切り込みを入れ、くさびを打ち込むことによって、その部分が少しですが伸びて、竹がほんの少しですが、左側に戻るのです。


当然切り込みをいれるので、竹の強度は落ちてしまいますが、その上に割った竹を貼り付けて銅線で巻き、固定してしまいますので、問題はありません。見えないところでのこんな細工は、職人だけが知っている、職人にとってはなんてことのない技なのです。

山の境界

山の境界


住宅用の土地などはちゃんと測量もしてあって、それぞれが登記もしてあって、しっかりと境界がわかるようになっていますが、山の境界は登記自体が曖昧であったり、昔からの手書きの測量地図で区分をしていたりと、はっきりしていないことが多くあるようです。


土地の登記はしっかりしてあっても、山自体が広いために範囲が広く、すべての境を見て取引をしていなかったり、先祖代々受け継がれた山であっても、田舎から出ていったままで、その山に足を踏み入れなかったりすれば、全くわからないということになるでしょう。


焼坂の山を取っても、山主さんが10数人ほどいて、それぞれ境界でわかれています。竹虎の山もその一つなのですが、境界を知っているのは自分以外には実際に山に入った切り子さん数人ぐらいではないでしょうか。


境界は谷で分かれていたり、道で分かれていたり、川で分かれていたりと様々ですが、広すぎることもありますし、塀をしたり、柵をしたりと人工的に境界を作ることはほぼ不可能に近いと思います。


先人が境界として作ったものの一つがこの木の並びです。それは杉であったり、桧であったりと様々ですが、こうして真っ直ぐに境界に植えているのです。不規則に立っている木ですが、あるところで真っ直ぐに並んで立っていることで、それを境と認識できるのです。


しかし、それも知っていればこそ真っ直ぐに見ることのできる程度のもので、やはりしっかりと知っておく必要があるのです。竹林の中の境界にはあまり大きくない木が目印として植えられている場所もあります。それで私たちは竹林の境界を知ることが出来るのです。


最近、山の境界は主に木の伐採をする森林組合さんなどが管理している場合が多いようです。木材の価値が下がり、山の仕事が減り、山からどんどん人が遠くなっていると感じます。こういう時代だからこそ、山にもっと入って、山を知り、竹を知るところから何か見えていないものが見えてくるような気もするのです。

結束用の道具

竹結束用の道具


職人の仕事は、実際にやってみないと大変さが本当にわからないことが多いのですが、自分で山に入ってみて、山の仕事で一番そう感じたことがを束ねることの難しさです。それまでは竹の広がった土場の竹を束にしたり、工場内で竹を束にすることしかしていませんでしたが、10数年前に山に入って伐採をして初めて分かったことでした。


切る時期の竹を選別したり、枝打ちしたり、急な坂の山道をスリップしながらも運搬機を上げていくなど、大変なことは山ほどありますが、ある程度想像できる大変なことでした。しかし竹の立ち並ぶ山の斜面の中で、数本の竹を揃えて束することが、これほど難しいことだとは思いもよりませんでした。


虎竹の山は斜面の場所が多く、山の斜面で切った虎竹をある程度の大きさに結束してから、運搬機に乗せて下してきます。伐採し、斜面に倒してある虎竹をある程度の本数で束ねようとすると竹が竹の上に乗る形となって、竹の上で滑って、斜面に沿って滑り落ちていってしまい、束にしようとしても竹が滑って元が揃えられないのです。


そういう時に活躍してくれるのが、この結束用の道具なのです。切り子と呼ばれる、山で虎竹を伐採してくれている職人さんの手作りですので、名前などありません。しかし昔からそれぞれの切り子さんが木製であったり、四角であったりと、形は違いますが、この斜面で竹を結束する道具を手作りし、山で虎竹を束にしてきたのです。


この道具に竹を入れて元を揃えて滑らなくしておいてから竹を束にしていきます。ただそれだけのことなのですが、斜面の山ではこれが無くては竹をヒモで縛って束にすることさえも一苦労となるのです。虎竹を伐採している山に行くと、無造作に、当たり前のように置いてあるこの道具ですが、斜面で竹を結束するのに無くてはならない道具なのです。