巻き竹

巻き竹


庭に間仕切りや目隠しととして置く虎竹玉袖垣ような袖垣の骨組みは直径が大きく、強度のある孟宗竹で組んでいます。曲がりの部分は熱を入れて曲げているのではなく、内側に細かく数か所に三角の切込みをいれて切り取り、曲げています。そして柱に穴を開け、切り込みを入れた横竹を差し込んで、竹釘で固定して骨組みを作ります。


そうして組んだ骨組みに格子用の竹で格子を組み、交差した部分を2日ほど水に浸けて柔らかくした四万十カズラで結んでいきます。四万十カズラも太さがいろいろあるため、太くて結びにくいカズラは手で半分に裂いて細くして結んでいます。


格子を組んだら、骨組みとして組んだ孟宗竹に巻竹と呼ばれる細く割った虎竹を巻きつけていきます。青い孟宗竹の骨組みに油抜きをした綺麗な虎竹を巻きつけることで、装飾の意味合いと同時に強度も強くなり、長持ちに繋がっています。


巻竹は丸い竹を幅2cmほどに荒割りしますが、竹は縦の繊維に沿って割れるため、真っ直ぐには割れず、波打ってしまうことがよくあります。その際に隣同士が綺麗にくっつように、順番に番号をふって割っておき、順番通りに並べて貼っていくのです。


山から取ってきた竹をカットし、油抜きをして、荒割りした後はこのような鉤で裏の節を竹の裏のアールに沿って削りだします。そして最後には貼り付ける物によって枚数を変えながら手割りをしていきます。袖垣の柱を巻く巻竹一つをとっても、たくさんの工程や工夫があり、その作業があってこそ、綺麗に出来上がっているのです。

ものつくり研修会

ものつくり研修会<br>


先日、トヨタ自動車(株)の社内団体であるEX会という団体にお招きを頂き、ものつくりについての講演と花かご作り体験、竹を割ったり剥いだりの体験をしてもらう研修会に参加させていただきました。


竹細工は場合によっては竹を切るところから始まり、油抜きをし、竹を割り、剥ぎ、それで籠を編み、物によっては塗装もすべて自分でやって、一つのものを一人で完結させることが多い仕事です。


しかし、自動車を作るという現場では、組み立てや板金や塗装など、各パーツでの仕事しかなく、ものを作っている感覚や喜びが薄れがちで、またお客様の顔も見えないために、気づけないことや、忘れがちなこともあるようで、それをもう一度再確認するための勉強会のようでした。


各製造部署のチームリーダー的な人たちが集まり、中には世界技能オリンピックの金メダリストになった人もいるような、その道のエキスパートの方々を前に何を話してよいかわかりませんでしたが、竹細工の現状や技術的なこと、自分なりのものつくりの考え方や、課題などを話させていただきました。


一番驚かれていたのは、竹細工で使う刃物が切れたらいけないということでした。ほとんどの刃物は一旦綺麗に研いでおいてから、刃先を潰すのですが、そんな竹細工では当たり前のことが大変珍しかったようです。


しかし、自分の使う道具を自分の使いやすいように自分なりに工夫、加工しながら使うのはどこのものつくりの現場でも同じようです。機械がやってくれていることの多いようなイメージの自動車を作る現場でも、その道のプロがいて、技術者の技能やほんのちょっとしたことで、自分たちにはわからない差ができ、またそれをなくし、もっと上を目指す職人さんがたくさんいることがわかりました。


オートメーション化され、流れ作業の中で組み立てられているかのような自動車の製造も、人によって作られ、たくさんの技術者の技術が結集して作り上げられていることを、今回の研修会に参加して気づくことができました。


またその技術の向上や若い人への継承、人に教えることや伝えることの難しさはどこでも同じだと実感しました。ものを作るということの本当の難しさはやってみないとわかりません。私とはレベルが違いすぎる人たちですが、ものつくりの難しさや矛盾や葛藤など、共感し合えることが多く、そんなレベルでの話ができる仲間のいることを大変うらやましく思いました。


職種は全く違いますが、世界最高峰レベルでのものつくりを実際されている方々との時間は大変貴重な、また心地の良い時間となりました。

竹馬

竹馬


竹馬と聞くと竹の竿に横木をつけ、それに乗って遊ぶ遊具を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。ここで言う竹馬は、江戸時代に竹を棒が通せるように曲げたものを組み立て、それを天秤のように前後で担いで物を運ぶための竹馬です。


これは参勤交代の際に、お弁当代わりのおにぎりを運ぶために使われたそうです。これに底板を付けて、布をかぶせて使用していたそうで、大名行列の後方にこの竹馬を担いだ人が道具を持った人達と一緒に付きしたがっていたそうです。


これはある地域のお祭りで大名行列をやるところがあるらしく、その保存会からの依頼で製作したものです。最初はそう難しく考えていなかったのですが、棒を通すために竹を薄くして熱を入れて曲げる部分でつまづいてしまいました。


竹を曲げるためには熱を入れて曲げるのですが、厚みがありすぎると割れてしまいます。ある程度薄くする必要があるのですが、削った厚みが不均等だと、薄い部分が負けてしまい、そこだけが大きく曲がってしまって綺麗な曲がりにならないのです。


結局、出来るだけ削らずにうまく熱をいれながら、竹の特性を生かして大きく曲げることにしたら、なんとか綺麗に曲がってくれたのでどうにか作ることができました。やはり初めて作るものはやってみないとわからないことがあるなと痛感しました。


しかし出来上がったものをお届けした保存会の方には、よくできていますねと合格点をいただき、ホッとしたところです。今回こうしてご注文を頂いたおかげで、こういう竹馬があることを知れましたし、こうして竹が昔から人々の暮らしの中にあったことや、それを今こうして改めて竹虎が形に出来たことが嬉しかった製作でした。

磨き包丁

磨き包丁


竹には表皮部分に固いガラス質の皮があり、それが竹独特の艶となったり、虎斑竹や黒竹のように、その皮部分に色や模様がついている竹では、その表皮部分がその竹ならではの色合いを出しています。


竹細工での「磨く」ということは、その表皮部分を磨き包丁と呼ばれる湾曲した刃物で薄くそぎ落としていくことを言います。青竹や白竹では表皮の傷を削りとったり、乾燥を早めたり、経年変化が早くなることなどから、磨き加工をすることがあります。


また染色をする場合でも、表皮のつるつるした部分には染料がつきにくく、その表皮を剥いでおくと、その内側の繊維に染料が染みこみやすくなるため、色が付きやすくなるのです。


磨く竹は1~2日ほど水に浸けておき、表皮を柔らかくしておきます。そして節の出っ張った部分を竹割り包丁で削り取る節くりと呼ばれる作業で節の出っ張りを削っておきます。


竹をしっかりと固定するか、足などでしっかりと動かないようにはさんで磨き包丁で表皮部分を長く削っていくのですが、包丁を強く当てると傷になったり、節の部分で包丁が跳ねて、傷になったりすると、ヒゴにした時に折れやすくなるので、注意しながらの作業です。


なんでもそうですが、こういった最初の作業が、出来上がりの良し悪しを大きく左右するものです。この磨き包丁から籠作りは始まっているのです。

籐かがり

籐かがり


背負いかごの背負いヒモを通すループが切れてしまったとお客様から修理の依頼がありました。このループは籐で出来ているため、長年の使用による擦れなどで、どうしても切れてしまうことがあります。


この籐の巻き方は虫止め、虫かがりと呼ばれる籐巻きの技法の変形ではないでしょうか。何回か素巻きをしておいて、その素巻きの上にくるくる籐を巻きつけるという簡単な技法ではありますが、なかなか決まった巻き方ができるために、籠の手の取り付けや、脚の取りつけの際によく使われています。


強度だけを考えれば化学繊維でできたヒモで作ればいいのですが、やはり竹の籠にはこうした自然素材のものが似合うのです。

回転ブラシ

回転ブラシ


外壁や庭などに使われる杉や桧などの木材を長持ちさせる方法には塗装をかけたり、薬剤を注入したりと、いろいろな方法がありますが、昔から一般的に行われてきた方法に焼きを入れるという方法があります。


通常、木材は塗装しなければ劣化が早くなり、色も変わりやすくなります。その木材の表面を高温で焼き、炭化させることによって表面が保護され、塗装しなくても腐りにくく、虫害の被害を防いだり、色の変化を抑えたりする効果があります。


竹虎では各種袖垣の柱に使う桧や屋根材や焼板木戸などに使われる杉板などには塗装ではなく、焼きを入れて自然の風合いを生かしながら木材を保護し、それを使った物作りを心掛けています。


以前は杉板などの大量に使用していたため、まとめてバーナーで焼きを入れたあと、竹虎工場横に流れている川に杉板を浮かべながら表面の余分な炭を水で洗い流す作業をしていました。


しかし最近では作業性の向上のために工業用の回転ブラシを使っています。機械はほとんど手作りですが、モーターをつけてブラシが回転するように作ってあります。ブラシの毛の部分は工業用ブラシを製造しているメーカーさんに何個かサンプルを作ってもらって、固さやコシ、板に傷がつかないかなどを判断しての別注品です。


平面の板ばかりを擦っていれば、そうでもないのですが、桧の丸い柱なども同じように焼き入れしたあと、このブラシで表面の炭を擦って落としていくので、長い間使っていく間にブラシの毛の真ん中部分が削れて、ギザギザになってしまいます。


この回転ブラシもそろそろ替え時です。新しいブラシが届いたので丸い輪に付いた12枚のブラシを交換しました。新しいブラシをつけただけで、なんとなく次回の焼板製造が待ち遠しくなってきました。

くじり

くじり


くじりとは穴をあけるキリに似た道具で穴を開けたり、結び目をほどくのに用いる先のとがった道具のことです。竹皮下駄の鼻緒をすげる際に、編みこんだ竹皮に鼻緒を通すために編み目を広げたりするのに使ったり、一閑張買い物かごの持ち手を通す穴を開けたりに使っている道具です。


縁通しとも呼ばれ、このように平たいものや溝のあるものも平くじり、溝くじりと呼ばれ、竹細工には欠かせない道具の一つです。これは主に縁巻きの際に、籐や巻き縁用の竹を通す時に、隙間を開けるのに使います。


溝くじりは、隙間に差し込んでおいて、その溝に籐や竹を差し込んで、編んだ竹の隙間に通していくのです。平くじりは隙間をあける以外にも、編んだ竹を寄せたり、ずらしたり、ちょうど手の爪のような役割で使うことが多く、無くてはならない道具です。


なんてことない小さな道具たちですが、こんな道具たちが集まって、竹細工は出来ていっているのです。

竹用キリ

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を割ったり、剥いだりする機械は、竹専用に特別に作られた機械があります。竹を割る機械は菊割りという丸い輪の中に数枚の刃の付いた金具を取り付けた装置で、竹をその刃の枚数で割っていく機械です。竹を剥ぐ機械は横に取り付けた刃を上下に調整しながら、竹を剥いでいく機械です。これには同時に幅を取ったり、面を取ったりできる機械もあります。


しかし、竹を切るノコギリの機械や竹に穴を開けるドリルの機械などは、一般の木工用に使われるノコギリやドリルを使用しています。丸ノコギリの刃は竹を切るために、あまり毛羽立たないように、刃の細いチップソーなどを使うことが多いです。


5mmや3mmの小さな穴を開ける場合は一般に売られているキリ先をドリルに取り付けて使用していますが、9mm以上の穴を開ける場合にはショートビットという中心の先に小さなキリがついている大きめのキリを使用します。


木材用にはこの中心の先がドリルのようになっていて、木材にもみこみながら、周りの大きな刃で穴を開けていきますが、それでは竹が割れてしまいます。そのため竹用には、このように先が刃になっていて、切りながらもみこんでいくショートビットが必要になってくるのです。


竹は木材に比べて固く、粘りがあり、割れやすく、中が空洞になっています。それがゆえに、割りはぎしやすく、いろんな編組物に使うことができ、切るだけで器になったりします。


よく木材と比較されるのですが、その特性は大きく違っています。竹は竹用の、竹の特性にあった道具を上手に使っていくことも、とても大事なことなのです。

十字しばり

十字しばり


はもともと丸いものですので、割ったり、剥いだりして、一本の平たいヒゴにして編んでいきます。しかしながらねじたり結んだりということはなかなか難しい素材でもあります。竹細工の籠の縁の内縁と外縁の2枚の竹をとめたり、手をつけたり、補強や装飾を施したりするのには籐を使うことが多いです。


籐は東南アジアに多く生育する植物で、大変柔らかい性質を持っています。ラタンとも呼ばれ、家具などに多く使用されている素材です。こちらももともと丸いものですので、それぞれ籐を細かく割って、幅を揃え、厚みを揃え、面を取り、場合によっては染色をして色を付けて、やっと使えるようになるのです。


また籐は竹にくらべて大変柔らかいために、割ったり剥いだりするのには大変気を使う素材でもあります。幅取りナイフで割った籐を同じ幅に揃える場合でも、ナイフが切れすぎたり、ナイフの角度がきつかったりすれば、すぐに籐がナイフに食い込んで、綺麗に幅を揃えられなくなります。厚みを揃える時も同様で、一気に裏の厚みを取るのではなく、少しずつ取っていかなければならないのです。


そうやって取った籐で、籠の手や足をつけたり、底の力竹などの十字になった部分を固定するのに一番簡単に使われるのがこの十字しばりです。これにも何パターンかのやり方があり、十字編みをして網目を見せる巻き方や、このように籐を立ててくるくる巻く方法などがあるのです。


こんなちょっとした巻き方の違いなのですが、その見え方によって、その籠の雰囲気はだいぶ違ったものになってきます。伝統的な、基本的な巻き方であっても、どの巻き方で籐かがりをするのかで作った人の気持ちや思いは伝わってきたりします。そういう意味でも気の抜けない、悩む作業でもあるのです。

「マゴ」、「コスベ」、「イチイチ」

虎竹ピクニックバスケット


秋の運動会や行楽で大活躍間違いなしの虎竹ピクニックバスケットですが、この籠は他の一般的な籠とは作る上でちょっとした違いがあるのですが、おわかりになる方がいらっしゃるでしょうか。それはヒゴの種類の多さです。籠を編むのには一種類の同じ長さや幅のヒゴで底から編み始め、立ち上げていくのが一般的ですが、こちらは数種類のヒゴを編むというより、組み合わせながら作っていくのです。


そのヒゴというか部材の呼び名が「マゴ」、「コスベ」、「イチイチ」なのです。「マゴ」は四隅の角に縦にいれてある竹のことで、「コスベ」とは縦横に7本ずつ入れてある骨のことです。「イチイチ」は横にいれていく竹ヒゴのことをそう呼んでいます。ほかにも「小割」、「まわし」、「皮竹」などいろんな呼び名のある部材を組み合わせてこの籠は出来上がっているのです。


虎竹ピクニックバスケット


なぜこんな名前がついているんだろうかと、私がこの籠を習った職人さんに尋ねたことがありましたが、「わしが始めたころからずっとこう呼びよったし、わからんな~」で終わってしまいました。角物と呼ばれるこういう技法での第一人者のこの職人さんがわからないであれば、誰に聞いてもわからないな~と思ったことでした。


名前はさておき、この籠を編み始めるのにはいろんな種類のヒゴがいるので、ヒゴを取るための材料も数種類必要になってきます。その材料を揃え、その長さにカットして、割って、剥いで、やっと制作にかかっていくのです。