竹の節打ち

竹の節打ち


日本唯一の虎竹玉袖垣(たまそでがき)などの竹垣製作には、まず孟宗竹を使って骨組みを作ります。「こんなに大きい竹をどうやって曲げるのですか?」とよく聞かれるのですが、虎竹玉袖垣のような曲がった部分は熱を加えて曲げるのではなく、内側に三角形の切り込みを入れて曲げています。そうやって組んだ骨組みの孟宗竹の部分に、細く割った虎竹を貼りつけていくのです。


竹は割れやすいという習性がありますが、竹垣などの雨にさらされたり、直射日光が直接当たったりする場所に置く物なら尚更割れやすかったりします。しかし、こうして割った竹を貼り付けることで割れることなく、また節をずらして美しい模様に見せることもできるのです。


その貼り付ける竹のことを竹虎では巻竹(まきだけ)と呼びます。竹垣に巻きつけるので巻竹というそのままの呼び方です。使う場所によって長さが違うのはもちろんですが、虎竹玉袖垣のような曲がっている部分に使うには出来るだけ薄い竹を選び、割り幅も狭くしないと曲がりに沿って綺麗に貼り付けれないために、用途によって数種類の巻竹を準備しています。


まず丸い竹を菊割という金具で均等に割りますが、その際に竹に番号をふって隣合わせを分かるようにしておきます。それは竹は縦の繊維に沿って割れるために、そうそう真っ直ぐには割れません。だからバラバラになると同じ1本の竹のものでも綺麗に沿って並ばないのです。


また、割った時に竹には節がありますので、内側にこうした節が残ります。この節があると孟宗竹に貼り付けることができないために、綺麗に取っていきますが、内側もこうしてアールがついています。鉈で払っていけば簡単ですが、真っ直ぐな鉈ではどうしても中の部分が残るので、その部分が貼り付けた時に盛り上がってしまいます。


だから、こうしたアールのついた鉈で一個一個、節を取り除いていく必要があるのです。その後、その荒割した竹を用途に合わせた割幅に手で割っていくのです。パッと見ただけでは一本の竹で組んだかのように見える竹垣も、こうして一つ一つ段階を経て、出来上がっていくのです。こういう竹垣や袖垣を見る機会があれば、是非近くに寄って、割った竹を貼りつけているのを見て欲しいなと思います。

黒竹御簾垣

黒竹御簾垣


数ある庭垣の中で一つ好きな庭垣を選ぶとしたら御簾垣(みすがき)になるでしょうか。親柱の内側に縦溝を掘り、そこに横格子を落とし込み、表裏から縦の押し縁を当てて作られる、表裏のない目隠し垣です。場合によっては屋根を付けたりもするのですが、自分的にはこのように杉板一枚をちょこんと乗せるだけで十分だと思うのです。とてもシンプルで洗練されてスッキリしたこの御簾垣が私の一番のお気に入りです。


日本唯一の虎竹で作った御簾垣と言いたいところですが、この黒竹で作った御簾垣がなんとも言えず好きなんです。黒竹の濃い色目がどんなお家にもしっくりとなじみ、庭を引き締めてくれます。そのままの丸竹を使うので、竹素材の良さが非常にわかる垣だと思うのです。


黒竹といっても自然の色目なので、少し色の薄いものや濃いものがあり、その色目をわざと揃えずに作るのが良いようです。あまり色を揃えすぎてしまうと、遠目に見ると人工竹にも見えてしまうからです。また見る角度によって、向こうが透けて見えたり、全く見えなくなったりするのもこの御簾垣の面白いところではないでしょうか。


また、いくらくっつけて並べたとしても竹には節があり、節の部分は膨れているために、どうしても隙間が空いてしまいます。そのおかげで風が通り抜けてくれて、垣が風を遮断することもないのが、この御簾垣の良いところでもあると思うのです。


だから迷われているお客様には選択肢の一つとして、いつも御簾垣をお勧めしてしまいます。でもその分、御簾垣に決めてくれて、施工後出来上がった御簾垣を見る度に、お客様にこれにしてよかったと言っていただける度に、やっぱりこの垣はいいなって思ってしまうのです。

祖父の白竹屋根付建仁寺垣

白竹建仁寺垣


祖父・竹虎二代目義治が亡くなって30年近くにもなるのですが、先日祖父に作ってもらった白竹建仁寺垣が傷んだので、作り変えて欲しいとお客様からご依頼がありました。祖父に作ってもらった白竹建仁寺垣を壊してしまうのは忍びないですが、ともおっしゃって頂きました。


一般的にはもう少し早いサイクルで交換されることが多いのですが、祖父の作った白竹建仁寺垣は、お客様のお宅で長い間、愛され、親しまれ、お客様と祖父と共にあったんだなと思うと、なんだか凄く嬉しくなりました。


その当時のものとは仕様が多少違うかもしれませんが、大きさなどはほとんど一緒です。祖父の作った白竹建仁寺垣と今回作った白竹建仁寺垣。これを取りつけた時に、お客様にどう感じていただけるか。同じように感じてもらえたらこんなに嬉しいことはありません。


また、今回作らせて頂いた白竹建仁寺垣も、何十年後に古くなって交換される時に、取り壊すのは忍びないと思って頂けたらいいな。そう思ってもらえるような商品作りはもちろんのこと、そんな会社になってなきゃいけないな。この出来上がった白竹建仁寺垣を見ながら、そう感じました。