経筒

経筒


でできるもの、できないもの、いろいろあると思うのですが、インターネットで少しずつ当社を知っていただいたおかげでいろいろなものを作らせていただいています。


経筒(きょうづつ)は、経典を土中に埋納する経塚造営の際に、経典を納めるために用いる筒形の容器とされています。先祖供養のための五輪塔と呼ばれる供養塔の下に写経を納めることが古来よりのならわしとなっているようです。銅製のものが圧倒的に多いようなのですが、長い年月の間に写経に大地の生気が通って経紙が土に還っていくのが最善だということで、その点で竹を選択していただいたようです。


お客様のご指定の大きさに竹を削って、表皮を剥ぎ、できるだけガタガタしないように大きさを調整して作った蓋をかぶせたものです。ご存知のように竹は真ん丸ではありませんので、蓋とのかみ合わせには苦労しました。これにお客様ご自身で自然塗料を塗って仕上げられるということで、あえて無塗装としています。


ご自身で書かれた写経のほかにいろいろなものを入れて、素焼きの容器に納めて塔の下の空間に置かれるそうです。こちらの商品はお客様はもちろんのこと、ご先祖様にも喜んでいただけるようにと思うと、責任重大ではありましたが、ご満足いただけたと嬉しいご連絡をいただけて、ホッと胸をなでおろしたことでした。


昔からいろんなところで使われている竹ですが、まだまだ知らないことも多く、こうしてお客様に教えていただけることもたびたびです。もっともっと勉強して、竹の文化や竹の良さを多くの人に知ってもらえるようにしていくのが、竹虎の役目でもあると思っています。

竹切り用鉈

を割ったり、剥いだりするのには竹割包丁でヒゴの幅を揃えるのに使うのは幅取り包丁、などといったその作業に合わせた、それぞれの刃物がありますが、これは竹を切りに行く時に持っていく刃物です。一番奥の大きい物が柄鎌と呼んでいますが、竹を切り倒す時に多く使う鉈です。手前の二つは主に竹の枝を払うために使用しています。


竹の枝を払うと言っても、どういうことか分からないかもしれません。竹には当然枝が付いていますが、運搬するのに邪魔ですし、基本的に不要のものですので、山でその枝を切って落としてくる必要があります。いろんな方法があるのですが、竹の幹の表面に傷をつけないように、元の方から枝だけを切り落とす方法を取っています。その作業が竹の枝だけを払っていくので、枝を払うと、この辺りでは呼んでいます。


この刃物はどれも土佐の匠に選ばれた迫田さんの作の物です。昔から先代と付き合いがある関係で懇意にしていただいており、一番手前のオーダーメイドの刃物などは、細かく厚みや刃渡りなどを指定して作っていただきました。こんな立派な刃物を持つと、その刃物に負けない仕事をしようという気になるものです。


弘法は筆を選ばずということわざがありますが、やはり自分の使いやすい、気に入った道具を持ち、それを大事に使い続けていくことが、竹を切ったり、物を作ったりして行く上で大切なことだと思います。

編み台のキズ

編み台のキズ


の籠を編んだりする台の縁にこんなキズが付いていますが、何だかお分かりになるでしょうか?これは幅取りナイフと言う左右対称の刃物をここに立てて、少しだけ幅広に取ったヒゴをその間に通してヒゴの幅を揃えるものです。


ほんの少しずつ幅が違っていて、自分の取りたい幅のところに刃物を差し込んで、打ちこんだり、少しだけ斜めにしたりして、ヒゴの幅が希望の幅になるように調整します。そうしておいて上から竹で押えながら、ヒゴの幅を揃えていくのです。


2ミリや3ミリなどの良く使う幅の穴から、少し広い幅までいろいろとあり、一度しか使っていないところもあります。毎日毎日たくさんのヒゴを取って籠を編んでいる職人さんに比べ、たまにしかこの編み台に向かわない自分にとってこのキズは、その時に作った籠やヒゴの思い出も詰まったキズでもあるのです。

けがきコンパス

けがきコンパス


を割る方法で一般的に考えられるのが菊割りといって、丸い鉄の輪に6枚とか、7枚とかの刃がついていて、それを竹の切口の中心に合わせて、等間隔に割ることを想像される方も多いと思います。しかしそれではなかなか大きさのまちまちの竹を割った幅を綺麗に揃えるということが難しいのです。割る竹の幅が広かったり、大量生産で作る場合は菊割りで割ってから幅を揃えたりすることもよくあるようです。


取りたいヒゴの幅が狭かったり、貴重な材料を無駄にしたくなかったりする場合には、このけがきコンパスで竹に割りこみ用のすみつけをすることもあります。布巻尺や手製の寸法竹などで印をつける方もおられるようですが、それはその方の手法や地域性なども大きく関わってくるのではないでしょうか。


私が修行に行った別府ではこのけがきコンパスで習いましたが、布巻尺や木の物差しで印をつけているかたもいて、どれがいいということはないのかもしれません。このけがきコンパスの刃先を竹に押しつけて、半回転ずつ回しながら等間隔に印を付けていきます。その印にそって竹割り包丁で割り込みを入れ、竹を等間隔に割っていくのです。


5mmのヒゴを取るなら、5.5mmか6mmほどに印を付けて荒割りをするか、11mmに割っておいて、それを半分に割るという方法もあります。それを幅取りナイフで5mmに揃えていくのです。いずれにせよ、職人さんたちは長年の経験の中で、自分のこだわりを持ちながら、作る籠の種類や技法に合わせて、いろいろな方法で物作りをしているのです。

虎竹縁台用の虎竹

虎竹


夏に近づくと竹虎人気の商品の一つに虎竹縁台という商品があります。虎竹で枠を作って、足は四万十桧で頑丈に作ります。座る面には隣町の中土佐町産の黒竹を並べた竹虎のオリジナル商品の一つです。今年も家庭画報さんにも取り上げていただいて、多くの方にご愛顧を頂いています。


この虎竹はその材料用にカットしたものなのですが、虎竹縁台には長さが3種類あり、1m、4尺(約120cm)、5尺(約150cm)とあります。なんてことない節止めでカットした竹に見えますが、その3種類の長さの両方で節止めをする必要があるために、その長さで両方に節がくる虎竹を選別しておく必要があるのです。


どうして節止めをしておくというと、竹はどうしても乾燥などによって割れが生じてくる恐れがあります。割れがきても、針金などで縛っていただくと全く強度的に問題はないのですが、できるだけ割れにくくするためにも節止めにカットしているのです。


大体、虎竹縁台に使う虎竹の直径は1寸5分前後(4.5cm前後)ですが、たくさんある虎竹の中から、その大きさで、その長さで両方に節のくる虎竹はそんなに多くはありません。自然のものなので節の位置や間隔も当然違っていますし、虎竹自体も出来るだけ割れにくそうな竹を選別しなければいけないからです。


だから虎竹縁台用の虎竹は、山から下ろしてきて土場に広げて1本1本選別作業をする際に、抜きだしているのです。それを工場に持ち帰り、油抜きをし、真っ直ぐに矯正をした後に、節止めにカットして、やっと製作にとりかかれるのです。なんてことのない1本の虎竹縁台用の竹ですが、製作は虎竹が山から下りてきたその瞬間から始まっているのです。

竹の刃物

竹割包丁


竹細工を初めて一番先にやることは刃物の研ぎ方を覚えることです。一般的には刃物というものは切れるのがいいとされていますが、竹細工に使う刃物で切れていいものはあんまり無いというのをご存知でしょうか。


もちろん削ったりする切り出し小刀やの表皮を薄く剥ぎ取る磨き包丁などは、切れなければいけません。でも竹割包丁や竹の幅を揃える幅取りナイフ、竹の厚みを揃える裏スキ銑などは切れすぎてはいけないのです。


切れすぎると刃が竹に食い込んで、割りにくかったり、刃物に竹が取られて均等に割り剥ぎができないからです。もちろん最初は綺麗に切れるように研いでから、刃先を少し潰して切れにくくするのですが、その微妙な切れ具合を調整するのが面倒で、いつも割り剥ぎばかりをしているわけではない私などはあんまり研ぐということはしていないのです。


特に竹の幅を取る時に使う左右対称の幅取りナイフなどは、2本を向かい合わせて立てて使うので、左右のナイフの切れ具合が違うと、どちらかに竹が取られて綺麗に幅を揃えることができないので、余計に今の切れ味が変わるのが嫌だったりするのです。


そんな刃物たちでも、たまにはこうして磨きあげて油をしみこませてあげる。こういう作業が気持ちをリセットすることになったりするのです。いろんな刃物があり、それぞれの切れ味があって、それぞれの持ち味の仕事をしていくっていうのは人間も同じのような気がするのです。

虎竹の竹馬

虎竹の竹馬


春の運動会シーズンになると、あちこちの学校や保育園から玉入れかごのご注文を多くいただきますが、近くの保育園から数は多くないですが、ちょこちょこ注文いただく物に虎竹の竹馬があります。


文字通り竹で出来た馬なのですが、最近ではプラスチック製の物も多く見られるようになりました。しかし、当然ながらこの虎竹の里では竹製の竹馬が使われています。それも日本唯一の虎竹製の竹馬です。


自分が子どもの時も竹馬に乗っていましたが、当然虎竹の竹馬でした。だから竹と言えば、こういう虎模様がついているものだと子どものころからずっと思っていました。違う色の竹や模様の無い竹があるのを知ったのは、ずっと後のことで虎竹は珍しい竹なんだと驚いたことを覚えています。


ここ虎竹の里の子どもたちにも、虎竹のことをを知って欲しくて、またここ安和はこんなに珍しい、不思議な、綺麗な竹がある素敵なとこだと気づいて欲しいと思っています。


2年に一回、地元の安和小学校5~6年生を対象にした、虎竹の花かご作り体験をやらせてもらっているのも、そういう気持ちがあるからです。虎竹を知らない全国の方々はもちろんですが、まず何年後かには進学や就職で他の地域に出て行くであろう子供たちに、この虎竹の里のことを、虎竹のことを誇りに思ってもらえるように、竹虎のできることはまだまだ沢山あるように思っています。