網代籠の図面

網代籠の図面


どんなものでもそうだと思いますが、物を作るにはある程度の図面や計算やバランス感は必要です。もちろん、編んでみないとわからないことも多く、やってみながら決めることもよくあることですが、籠の大きさや手の長さ、編みヒゴの幅や厚さなど、最初から想定しておくことはいろいろあります。


その中でも網代の籠を決められた大きさに編むのには、このような図面を書いています。内側の長方形は籠の底部分になり、外側の長方形が高さの部分になります。そして長方形に斜めに入っているラインがヒゴの入る方向となります。


底の部分から編み始めるのですが、真ん中の正方形を345mm角に編んでおいて、そっから編み替えて内側の長方形の4つの角に向かって4方向に245mm編み進めたところが、籠の底の部分の角になります。その部分を線で結んでいくと、内側の長方形になります。


その結んだ線に沿って焼きゴテで熱を入れ、平面の網代編みを立体的に起こしていくのです。そして起こした部分の隣り合わせのヒゴを編んでくっつけていきながら、上に編んでいくのです。


この図面の便利なところはこの籠を編むためのヒゴの長さや本数がすぐわかることです。1/5の縮尺で書いていますので、この図面の5倍が実際の大きさになります。真ん中部分は長いヒゴが要りますが角に近い部分はそんなに長くは要りません。


また熱を入れて立ち上げる部分に節が来ないように考えたりもしやすいですし、この図面を見るだけで平面の網代編みを立体的に考えることができるのです。久しぶりに書いてみて、この図面の便利さを改めて実感したのです。

インターンシップが始まりました。

インターンシップが始まりました。


毎年恒例となっている大学生や専門学校生を迎えてのインターンシップが始まりました。今年は8人の学生さんが竹虎にやってきてくれました。2週間のうち、1週間は本社工場や店舗での実習、後の1週間はその実際に竹を扱ったりした体験をもとに、このインターンシップのHPを学生さんに作ってもらうといったプログラムです。


まず最初に驚かれるのが朝礼です。朝礼は単なる報告、連絡をする場ではなく、社員のベクトルを合わせ、仕事への意欲を高め、今日一日頑張ろうとスイッチを入れる場でもあると考えているので、元気な挨拶実習や意見を言い合うことを大事にしています。普段通りの朝礼ですが、学生さん達には非常に元気だと感じてもらえているようです。


必ずやってもらっているのが、虎斑竹をバーナーを使って油抜きをすることです。山から伐り出されたままの竹が釜であぶられ、油がにじんできたところを表面の汚れと一緒にウエスで拭き取ります。真夏の工場内での火を使った作業はとにかく暑く、学生達は苦戦しながらも、本当にまじめに取り組んでくれています。


教えないというのが自分の中での基本姿勢としてあります。当然仕事内容や意味は教えないといけないのですが、そこから先はこの作業を通じて学生さんに気づいてもらうようなインターンシップになればいいなと思うからです。


毎日少しずつ、学生さんと話をしたり、感想を聞いたりしながら、いろんなことを提案したり、目標を作ったりしていくなかで、気づかなかったことや、見えなかったものが見えて来ているようです。学生さんたちの成長が見えてくる毎日の感想文を読むのが楽しみなインターンシップ週間なのです。

竹割り機

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竹を割るにはいろいろな方法がありますが、まず思いつくのが菊割りといって、丸い輪の中に数枚の刃がついている金具で、いっぺんに丸い竹を数枚の平たい竹に割る道具を思いつく方が多いのではないでしょうか。


1本1本大きさの違う竹を同じ幅で割ろうとすれば、大きな竹は割り枚数の多い菊割りで割り、小さい竹は割り枚数の少ない菊割で割っていきながら、割竹のだいたいの幅を揃えていくのです。竹虎にある菊割りも3枚割から22枚割くらいまでの菊割が揃っています。


この竹割り機は主に4mくらいまでの長い竹を均等に割るためのものです。以前は土壁の土台となる竹小舞用の割竹を割る機械として、大活躍してくれていましたが、今は枝折戸を編むための割竹や、袖垣の格子用の割竹を割るのになくてはならない機械の一つです。


均等に割ると言っても、ちょっとしたことで偏って割れることもよくあることで、菊割の真ん中に竹をあてがって、真っ直ぐに割っていくことが基本です。


しかし、そんなに均等に割れるわけでもなく、この機械で荒割りをするものは、あとで幅を揃えたり、あまり精度を問わないものに限ります。機械で割ることは効率的ですが、場合によってはそのあとの作業が大変になってくる場合もあります。


竹の性質も1本1本微妙に違います。自然のものを均一にやろうとすることには無理がでてきます。ほとんどが手作業で機械の入るところの少ない作業ですが、効率と精度、材料の良し悪しや、無駄の出来具合など、いろんなことを考慮しながらやり方を決めているのです。

虎竹の出荷

虎竹の出荷


虎竹は秋から冬にかけてが伐採時期です。今の時期は山から下してきた竹を工場内に取り込んで、油抜きをし、あるいはそれと同時に内装材などにも使えるように真っ直ぐに矯正する製竹作業が本格化しています。


自分が入社したころは、職人さんも数十名もいて、それこそ一年中ひっきりなしに油抜きや矯正作業をして、虎竹を製品として出荷するために製竹作業をしていました。その中で一緒に作業をすることで、仕事を体に覚えさせることができたように思います。


見よう見まねでやることは誰でもできますが、ある程度の量や質をこなさないと見えてこない、わからない本当の技術というのは間違いなくあります。教えてもらっても、聞いてもわからなかったことに気がついて初めて、その作業が本当の意味でわかってくると思うのです。


もちろん、竹は1本1本違うので、それに合わせての作業にもなり、いつまでたっても完璧と思えることやすべて満足のいく仕事というのはできないものです。


今年も製竹された虎竹が、少しずつではありますが出荷されています。割り剥ぎされて籠に生まれ変わるのか、内装材として店舗や施設のアクセントとなってくれるのか、行先は様々ですが、虎竹の里からここにしかない虎竹をこうして発信し続けていけることは、ありがたいことだと思うのです。

杉板の名前

杉板の名前


昔から天日干し用のかごとして広く愛用されてきたのがえびら(竹編み平かご)と呼ばれるかごです。しらさやじゃこなどの海産物をはじめ、大根やお芋などの農産物を干したり、梅干しの土用干し用に最適なかごとして、今も重宝されています。


15mmほどの幅に割った孟宗竹のヒゴを網代に編み、それを杉板の枠に挟み込んで、しっかりと強度ももたせています。食べ物を乗せるかごですので、杉板も出来るだけ節の無い、赤目の少ない物を選んで、カンナで表面を綺麗に加工して使っています。


いつもお世話になっている製材所にたくさんある杉板の中でも、こちらの希望の厚さ、節の無さ、色目などをクリアした杉板はそう多くありません。そんな材が出た時に選り分けてもらっておいた杉板には、こうして竹虎(株)山岸竹材店の「山岸」という文字が書かれてあり、えびらの材料としての出番を待ってくれているのです。

竹を矯める

竹を矯める


竹は真っ直ぐというイメージがあるようですが、実は結構曲がっているものです。竹はタケノコで生えてきて約3ヵ月で親竹と同じ大きさに成長すると言われています。しかし大きく成長しても竹自体の中はまだ成長しきれておらず、少しずつ身が入って、固くなっていきます。


大きくなってすぐの竹をさわると、竹本来の固い物ではなく、柔らかく、ぶよぶよした感じさえあるほどです。そんな竹が数メートルから10数メートルの高さまで成長して山に立っている状態ですので、風の影響で曲がったり隣に立つ竹や木に邪魔をされながら曲がったりと、いろんな原因で曲がってしまうものなのです。


そんな曲がっている竹も用途によっては真っ直ぐにしないと使えないことも多くあります。建材用や庭垣用、虎竹縁台などの並べて使う用途のものはまっすぐでないと綺麗に並べられません。箒の柄なども曲がっていると使いづらいものです。


その曲がった竹をまっすぐに矯正することを竹虎では矯めると呼んでいます。この大きな木材に竹の大きさに合わせていろんな大きさの穴を開けているのですが、これは矯め木と呼ばれるものです。これも当然職人の手作りです。


先月、矯め職人として長年勤めてきた職人さんが退職されました。これからは自分がこの矯め木の前に立って、前のガスバーナーで熱を加えられ、柔らかくなった竹を1本1本真っ直ぐに直していくことになります。


竹虎に入ってくる竹はすべて1本1本見ています。しばらくやっていませんでしたが、ここでもまた1本1本見ていきながら、真っ直ぐにしていきながら竹に向き合う機会ができました。虎竹のそれぞれの特性や曲がりを見ながら、虎竹に向き合っていこうと思います。

虎竹箸の材料

虎竹


竹のお箸の材料にするには、厚みがあって、節間もそこそこ長い物が必要なため、大きくて厚みのある孟宗竹が使われることが多いです。箸に限らず、スプーンやレンゲなどのカトラリー類の多くも、できるだけ厚みがあり、平たい部分の多い大きな竹の材料が必要なために、孟宗竹が使われることが多いようです。


しかし、虎竹や真竹で作られた物には、虎竹の独特の模様の美しさであったり、真竹の綺麗な清々しさがあったりと、それぞれの竹のよさが出る一品となっています。


虎竹は大きい竹が少なく、また大きい物は虎の模様がつきにくく、直径が大きいものでせいぜい7~8cmしかありません。厚みも他の竹に比べて薄いためにお箸を作れるような材料は、ほんの一部です。


山から伐り出して、工場で用途に合わせて切断する際に、大きな厚みのある竹は選り出しておいて、虎竹削り箸などのお箸類や名人作虎竹耳かきなどの厚みの必要な材料とするのです。それぞれの竹の特性や素材を見て、最適な材料でのものつくりを心がけているのです。

マスト用の竹

マスト用の竹


運動会シーズンが近づきました。今は少なくなりましたが、以前はたくさんの小学校で定番の競技だったマストのぼり用の竹を用意しました。これは大きさも強度も必要なので、大きくて厚みもある孟宗竹を使っています。


は真っ直ぐに伸びているイメージがありますが、倒してみると微妙に曲がっていたり、大きく曲がっていたりと、そうそう真っ直ぐのものはありません。たくさんの竹の中から苦労して4本を選別しました。


またマストのぼりという競技用のために、4本の大きさができるだけ揃っている必要があります。元の大きさもそうですが、伸びている先の大きさも揃えるようとすると、なかなかこれといったものがないのです。


真っ直ぐに伸びて、大きさの揃った竹を指定の長さにカットしたら、次は節の出っ張りを削ります。竹には節があり、多少出っ張りがあるために、それで登っている人が痛かったり、怪我をすることのないように削るのです。


節を削るのはグラインダーですが、最初は粗い目で荒削りをしておき、仕上げに目の細かいもので仕上げ削りをして、つるつるにして仕上げています。


この竹も先日の日曜日の小学校の愛校作業でPTAの方たちによってグランドの中に立てられたようです。グランドの中に竹が立ち、それを囲んで楽しく、にぎやかに運動会が行われている光景を思い浮かべると、なんだかうきうきした気持ちになるのです。

自動カンナ(プレナー)

自動カンナ(プレナー)


プレナーという自動カンナをご存知でしょうか。これは木材の表面を削り、厚みを揃える、いわゆる分合わせをする機械です。竹屋に木材を削る仕事があるのかと思うかもしれませんが、虎竹縁台や黒竹すのこ、えびら(竹編み平かご)、袖垣など、竹を組んだり、枠を作ったりする場合には骨組みなどに木材を使うことが多くあります。


一般的に木材を購入するのにはホームセンターを思いつくのではないでしょうか。ホームセンターなどで売られている木材は綺麗に加工をしてあって、大変手軽に手に入れられ、使いやすいものだと思います。木材というのはあんな綺麗な材料としていつも売られていると思われている方も多いのではないでしょうか。


竹虎では木材は大工さんたちと同じように製材屋さんから買っています。四万十ひのきの丸棒などは近くの森林組合さんにお願いして作ってもらっています。


木材も竹と同じようにある程度の規格があり、たとえば1寸角や1寸5分角といった桧や米松の角材や5分や6分の厚みの杉板などが、原木の大きさや取り方などで作られています。ですから木材を使う場合には、使いたい大きさに一番近い規格のものを取ってくるか、欲しいサイズを注文して作ってもらうことになります。


しかし製材所の大きなノコギリでカットされた木材は多少のブレがあったり、表面がなめらかではなく、毛羽立ちなども多い材となります。その木材の大きさを綺麗に揃えたり、表面を綺麗に削るためにこの自動カンナ(プレナー)は大活躍をしているのです。


物によっては、その後にベルトサンダーでやすりがけをして、さらに表面を滑らかにする場合もあります。お客様が実際に手に取って使っていただく商品だからこそ、自然素材の色や匂いや風合いを残しつつ、見た目も綺麗に、持った感じも優しい感じになるようにといつも心がけているのです。

職人のリアカー

職人のリアカー


最近はめっきり見ることが少なくなりましたが、竹虎本社工場ではまだまだ現役で頑張っているのが、このリアカーです。本社工場から少し離れた倉庫に置いてある材料や製品を取ってきたり、袖垣用の孟宗竹を竹置き場でカットして持ってくるのに、職人が使っています。


クルマを使うほどの距離でもなく、かといって人ひとりが担いで持ってくる量は知れたものですし、何かに乗せて来たいことは結構あるものです。そういう微妙な距離感や量や重さの物を運んでくるのにリヤカーはうってつけの道具なのです。


このリヤカーは自分が知っている限りでは2代目なのですが、先代が壊れて買い替える時に、まわりに売っていなくて困った思い出のあるリヤカーです。結局、知り合いの自転車屋さんにお願いして取り寄せてもらったことを思い出します。


一昔前は、クルマの免許を持っていない人が自転車の後ろにリヤカーを取り付けて、人力トラックとして使っているのをよく見かけたものでしたが、最近はめっきり見かけなくなりました。しかし竹虎工場では、まだまだ有効に、効率よく、エコな運搬道具として、ずっと活躍していきそうです。