山道の石積み

山道の石積み


虎竹の里の虎竹の山には、麓の道から人が一人通れるくらいの細い道が何本も山の上の竹林に向かって伸びています。その道は竹切り職人がキャタピラの付いた竹の運搬機と一緒に竹林に向かい、伐採した竹を麓の道に下してくるための細い道です。


重機も何もない時代から、先人たちが何もない山を虎竹を出すためだけに切り開いて作ったこの道に足を踏み入れるごとに感じることがあるのです。先人たちがどうやって、どんな思いでこの道を作ったんだろう?この道を作るのにどれだけの年月がかかったんだろう?自分でこの道がつくれるのだろうか?などと考えることが最近は特に多くなりました。


車が通れる道から、人が通れるだけの細い道を15分ほど上がったところの山道をこの石積みは支えています。山というのは山があり谷がありというように、でっぱたり、へこんだりしている地形の連続です。その地形通りに道を作っていくと、どうしてもきついカーブの多い山道になってしまいます。


真っ直ぐの竹を下してくるためには、できるだけ真っ直ぐな道がいいのです。でっぱった部分は削り取り、へこんだ部分は石積みなどをして山道を出してやることで、カーブはゆるくなって行きます。


この石は山道を作るときに出た石を積み上げたものだと推測されますが、それにしてもこのような小さな谷に石を集めて積んでいくことの大変さはどれほどのものだったか想像さえもできません。またここは私有竹林です。山主や切り子さんが自分の竹林から虎竹を出すためだけに自ら作った道なのです。


こういう場所がいたるところにあり、それを見るたびに先人たちの想像さえもできない苦労や、この虎竹の里や虎竹の歴史の深さや重さによって竹虎が支えられていると感じます。年齢と共に今はリタイアしているけれど、いつも会っては笑顔や言葉を交わしてくれる切り子さんが私の周りにはまだまだたくさんいます。その人たちにもずっと支えられ、今も支えられています。


虎竹は日本唯一の虎竹というだけではない、この地域と地域の人々と歩んできた竹でもあるのです。この地域と虎竹の歴史を支えてきた人たちに感謝と尊敬の念を抱きつつ、これからはこの虎竹の歴史をしっかり繋げていくことが竹虎の役目だと思うのです。