別注スリッパ

黒竹


身体のゆがみやいろいろな原因で左右の足の長さが多少違うということはよく聞きますし、実際整体などに行くと自分の足の長さもゆがみでずれており、治してもらったことも何度かあります。それでも明らかに左右の長さが違い、左右高さの違う履物を履かれている方もいるようです。


そんな方から竹皮スリッパの片方だけ高くできないか?というお問合せをいただき、何度か作ったことはありますが、今回はそういう理由ではなく、雨の日に少しでも水がかからないように履きたいので、両方を高くしたいというご要望でした。


厚底スリッパ用のスポンジを背中合わせに2枚貼り合わせ、片方の地面につく部分を平らに削って、そこに竹皮草履を貼り付けます。貼り合わせたときは貼り合わせ部分がはっきりとわかる感じでしたが、草履部分からはみ出たスポンジを削ると、貼り合わせ部分も目立たなくなりました。


別誂えということでお値段も少し高くはなりますが、それでもこの竹皮草履の気持ちよさを分かってくださり、自分の好みにしてまで履きたいと思ってもらえることは、とても嬉しいことなのです。

黒竹切断

黒竹


伐採した黒竹を竹虎工場に持ち帰っての切断です。大きさや竹の伸びなどを見ながら4mや2mなどの規格の長さに切断します。その後、枝を払ったあとの節部分を目打ちして取り除きます。そして油抜きをし、矯正作業で真っすぐにして、黒竹の製品にしていきます。


その規格の長さに切断した黒竹の先の末竹を、今度はまたいろんな用途に合わせて切断していきます。虎竹縁台の腰かける部分用の竹や袖垣の黒竹張の部分に使用する竹、枝折戸の横部分に使う竹など様々な用途に、これも大きさや伸び具合などを見ながらの切断になります。


伐り出してきた竹を、その竹を見ながらいろいろな用途に切り分けていくこの切断作業を、竹虎工場で一番大事な作業だと常々思っています。1本1本違う竹を、最適な用途に切り分けていくには経験と竹を見る目、そして工場内の仕事がわかっていなければできない作業です。


今の竹虎でこの椅子に座れるのは工場長とこの若い職人だけです。ちょっとした竹の大きさの違いなどで出来上がる商品の見え方が違ってくることや、何が今、一番竹虎工場で欲しい材料となるのかなど、まだまだ気づかない部分もありますが、この作業の大切さは本人もよくわかっています。


このあとの油抜きや矯正作業、そして商品作りを通して、自分が切断した仕事の是非がわかります。いろんな作業をしていくことで、見えてくることもたくさんあります。そういうことに気づいていって欲しいから、この大事な作業を若い職人に任せているのです。

黒竹伐採

竹林


日本唯一の虎斑竹の生産地である高知県須崎市安和にある竹虎は虎竹を主に扱っていますが、黒竹も扱っています。黒竹の二大生産地の一つである中土佐町は隣町であり、昔から黒竹の組合があり、最盛期は何十万本もの黒竹を生産していました。


黒竹は名前の通り黒っぽい竹で、昔から室内の装飾用や庭に植えたり、鉢植えにしたりと、その竹の美しさから虎斑竹と同じような用途で使われることが多いようです。また新竹は緑色ですが、1~2年目からだんだんと色が付いてくるのも同じです。


虎斑竹に比べると柔らかく、粘りがあるので、竹細工に使いたい方が多いのですが、大きさが直径2~3cmくらいのものが多く、節間も短いため。割り剥ぎをしてヒゴを作るのにはあまり向いていません。やはり黒竹は丸のまま使うことが多く、竹虎では黒竹すのこや虎竹縁台の座面部分、黒竹箒など、さまざまなものに使っています。


黒竹も虎斑竹と同じで、伐採する切り子さんの高齢化などにより、伐採する人が減っており、数年前から自分たちでも山に入って伐採をしています。色の付き方が虎斑竹と同じ感じなので、色付きや竹の年齢などを見ながらの伐採ですが、黒竹の方が細く、長さも短いために数段扱いやすいと感じます。


とはいえ細いためにかなり伐ったと思っても、束にすると思ったより少なく、トラック一車伐るとなるとかなりの本数を伐ることになり、枝打ちも含めるとかなりの時間を要します。


以前は切り子さんが出してきてくれた黒竹でしたが、自分たちでやることで伐採の苦労やありがたさがよくわかります。以前よりもさらに思いの詰まった竹たちを、大事に製竹し、商品にして、虎竹の里から送り出していきたいと思うのです。

新竹の油抜き

虎斑竹


虎竹の伐採シーズン真っ最中です。伐り出された虎竹の入荷も少しづつではありますが始まっています。温暖化による色の付き具合の悪さも心配していましたが、整備された虎竹の山からは綺麗な虎竹が出てきており、とりあえずホッとしているところです。


伐り出された虎竹はトラックに積み込んで竹虎工場に運び込まれます。それを色付きや大きさや曲がり具合などを見ながら規格の長さにカットし、選別します。竹細工用の虎竹はできるだけ真っすぐで素直に伸びている竹を選びます。また割って剥いで編むために、当然竹の品質の良い物を選んでいます。


虎斑竹


それを窯で油抜きをします。虎竹は表面にロウ状の白っぽい汚れが付いているため、それをガスバーナーの窯で焙り、竹の中からも油を噴出させ、油をウエスで拭き取ります。綺麗にするのはもちろんですが、そうして竹の油を抜くことで変色や虫の害から竹を守ることにもつながります。


この綺麗になった虎竹は竹細工職人さんのところに行きます。この竹がまた素敵な竹細工となって帰ってくるのが楽しみになった新竹の油抜きとなりました。

門屋根製作

門屋根


門屋根のご注文をいただきました。柱や取り付けはお客様自身でやられるということで、杉皮を使った屋根部分だけの制作となりました。柱の間口や屋根の高さなど、何度もご相談をさせていただいてからの製作です。


値段を抑えられるという理由から、焼き杉板を貼った屋根もお勧めしていたのですが、杉皮を貼った屋根がご希望ということで、予算もお聞きしながらの少し簡易な杉皮貼りの屋根です。


とはいえ、杉板を貼った屋根はどうしても厚みを出すことができませんが、4枚ほど重ねた杉皮は程よい厚みができ、屋根自体に重厚さが出ます。柱の大きさや間口、屋根の大きさなどもふまえ、バランス的に少し高さを低くするようにお勧めしました。


本格的な門屋根となると、2人でも屋根を柱に乗せることができないくらい大きく、重くなってしまうのですが、これくらいの大きさなら、1人でも立てた柱の上に乗せられますし、お値段も抑えられます。


ご自分で楽しみながら柱を立て、取り付けられるというお客様のお役に立てるというのはありがたいことです。どのような取り付けをされて、どのようにお客様のお家を飾れるのか、大変楽しみな屋根製作となりました。

虎竹の運搬機

虎竹の運搬機


虎竹を伐ってくれる切り子さんの高齢化により、切り子さんが減っています。以前は農家の農閑期のいい収入源という側面もあった虎竹伐採も兼業農家が増え、仕事の休みに農業をやるという人も多くなったことも原因の1つとしてありますし、色付きの虎竹が減ったり、山が荒れて山の整理をやってまでキツイ虎竹伐採をしないという人も増えました。


切り子さんがたくさんいた時には、すべての虎竹を切り子さんに伐ってもらっていたので、自分たちで虎竹を伐採するということはしていませんでした。ずいぶん以前に竹虎の山を伐ってくれていた切り子さんが休んだ2年ほどの期間、竹虎の山に入って伐ったくらいです。


そんなこともあり、伐る人が少なくなれば自分たちで伐ればいいということで、近年から竹虎も自分たちでどんどん山に入って行っています。しばらく入っていない山の整備や道の整備、これからもずっと入る山や道としてしっかりと管理していきたいと思います。


ずっと以前に竹を出していた近所の人に古い運搬機を譲ってもらいました。もう10数年は使っていないらしくエンジンは当然かかりませんでしたが、幸い中古のエンジンが見つかり乗せ換えました。この運搬機は他の人が使っているものより、ほんの少しだけ大きいような気がします。


虎竹の山は道がすぐあるという場所は少ないですし、上から竹を滑らせて下ろしていると竹に傷をつけてしまうため、ほとんどの場所でこの運搬機は欠かせません。遠い山は車で行けるところから、さらに30~40分ほど細い山道を登って行くようなところもあります。


山の整理や急な斜面での伐採だけでも大変です。それに運搬機を使っての運び出しなどを自分たちで全部やることで、社員たちが今まで以上に虎竹のプロとしての知識を学び、自覚し、そして虎竹を身近に、大事に感じてくれることも期待しての伐採です。


虎竹の伐採シーズン真っ盛りです。これからはこの運搬機に大活躍してもらえるように、山の整備や道の整備、そして虎竹の伐採に頑張らねばと思うのです。

孟宗竹の伐採

孟宗竹の伐採


竹虎では日本唯一ここだけにしか生育しない虎斑竹と黒竹を主に扱っていますが、袖垣などの骨組み部分には孟宗竹を使用するため、少しではありますが孟宗竹も伐採しています。


孟宗竹の山にはイノシシの罠が仕掛けられていることが多く、ここにも入口に檻の捕獲機と少し入った所にワイヤーかなにかの罠が仕掛けられていました。罠を仕掛けた人の名前と電話番号の書いた札が吊り下げられているので、電話をして罠の場所を確認して山に入ります。


孟宗竹は太く、長さも長いため1本倒すだけでも一苦労です。近くの竹や木に引っかかってしまうことが多いため、重い竹の元を持って出口の方向に歩きます。またうまく切らないと思った方向に倒れてくれず、変な方向に倒してしまうと、あとで運び出しに苦労することになります。


たくさん生えているように見えても、実際切るとなると曲がりや竹の質を見ながらの伐採になるので、その場所でそんなに多くは切れません。また竹虎で欲しい大きさは元の直径が11~9cmほどですので、元のほうの大きい部分は切り捨てて、欲しいころ合いの部分からカットします。


選別しながらの伐採ですし、孟宗竹はあまりまとまって生えていないので、数ヵ所での伐採です。各地でよく見られる孟宗竹ですので、いくらでもあるように思われがちですが、実際使うとなるとなんでもいいのでもなく、良い物を探して切るとなるとそんなに簡単ではないのです。

草刈りと竹切り

山道,虎竹の里,高知県須崎市安和


先日、虎竹の里の草刈りが行われました。安和青壮年会では年に2回、安和駅、安和交流会館、安和小学校、放棄畑や小学生がお米を作っているあわたんなどの草刈りをしています。自分たちの地域で出来ることは自分たちでやろうという取り組みで、当たり前のようにみんなが集まって自主的に草刈りをしています。


特に安和駅は海岸が真下に見える綺麗な駅で、地域の人にとって言葉には出しませんが、この地域の自慢できる、それぞれの想いのある大切な場所です。自分にとっても高校生のころにはこの景色を見ながら毎朝通学した思い出深い場所となっています。


春と秋にこの草刈りは行われますが、秋の草刈りのあとには竹の伐採があります。これは安和天満宮の秋の大祭での竹練りという踊りに使用する竹を伐採するためです。花取りを教える郷土芸能保存会や神役などもありますが、天満宮の大祭の行事の段取りは主に青壮年会に任されています。


1年に1回、神様が御旅所まで出ていきますが、その道を竹を割りながら清めていく竹練り踊りやそれを警護する天狗役など、神事に欠かせないものを受け持っています。前日の祭りのふれ太鼓や、提灯設営、当日の出店なども青壮年会の役目です。


安和で生まれ育った子どもはほとんどが花取りや竹練りを経験します。そのことで天満宮のことを知り、地域の大人を知り、自分たちがやらないといけないことを知ります。そして大人になったら今度はそれを子どもたちに伝えていくという役目があります。そのおかげでこんなに小さい地域でもなんとか人が集まり、続けられているように思います。


竹練りの竹も自分たちで切ることで、日本唯一ここでしかない虎竹があることを直に知り、山に入り、伐り方を学べます。そんな経験が若い人たちの心の中に少しでも残れば嬉しいなと思います。そしてこの大好きな地域のために一緒に動く仲間がいて、その中で自分も何かできるということは幸せなことだと思うのです。


山道,虎竹の里,高知県須崎市安和

山道の整備

山道,虎竹の里,高知県須崎市安和


虎竹の伐採時期を控え、山道の草刈りを行っています。山といっても一般の土地のように細かく分けられていて、それぞれに土地の所有者がいます。宅地のようにはっきりとした境界はなく、谷川や目印となる木を植えてそれを境界としていることが多いです。


竹虎の土地も一方は谷、もう一方には木を真っすぐに植えて境界としています。この境界を知っているのも自分以外には、以前にこの山の虎竹を伐ってくれていた切り子さんくらいしか知りません。竹虎の山でさえ、それくらいの認知度ですので、他の山主さんの境界も山主さん以外ははっきりとわからないことが多いようです。


以前はこの山の山主さんも元気で、数人が切り子さんとして虎竹の伐採をしていましたので、焼坂地主会という会を作って毎年この山の所有者で草刈りや道の整備をしていました。山主さんの高齢化に伴い焼坂地主会も解散し、数年前から竹虎で山道の整備をさせてもっています。


舗装された道ではないため、台風や大雨などでどうしても道が崩れたり、削れたりするため、2年に一度は重機をいれた整備を行います。その重機をいれるための下準備がこの草刈りです。


自分たちが毎年虎竹を取りに通うこの道を自分たちで整備することは当たり前のことなのですが、以前までは誰が整備してくれているのかさえ考えずに当たり前に整備された道を通っていた社員や職人にこの作業をやってもらいます。


仕事は増えますが、実際に自分たちでやることでいろんなことに気づき、考えるいいきっかけになります。虎竹を知ることはこっから始まっているのです。

四つ目垣施工

四つ目垣,四ツ目垣,竹垣


四ツ目垣の施工に行ってきました。今回は病院のバルコニーのような場所に付けていた四ツ目垣が古くなったということで、お声をかけていただきました。以前ついていた物は白竹で作っていたようですが、今回は同じ仕様のものを虎竹で作らせてもらいました。


お客様の病院に見せてもらいに伺い、要望を聞き、いま付いている垣の作り方や仕様の確認、採寸をまず正確に取ります。それから今ついている垣の取り壊し方法や、新しく作ってきた垣の取り付け方法の検討とそれに必要な道具や材料をその場で決めます。


そして持ち運びの導線の確認とトラックの停車位置の確認をして、最後に現場の写真を撮って、現場での見積りは終わりです。その後見積書を作って、お客様に納得していただいてから製作にとりかかります。


庭に施工するのであれば柱を土に埋め込んで立てる方法で施工していきますが、ここでは手すり部分に固定していく形です。本当は手すりの柱の土台の上に四ツ目垣の柱を全部乗せていきたいのですが、土台の位置が一定ではなく、こういう形での施工となりました。


立てる位置がはっきりと出せない場合や、ちょっとした四ツ目垣であれば現場で作ったほうが正確にできるので、現場で作ることが多いのですが、今回は採寸だけしっかりとしておけば竹虎工場内で作っておいて持って行った方が早くて、病院内でお騒がせをする時間も短くなりますので、施工と言ってもほぼ取り付けという形です。


とはいえ、4mの長さの四ツ目垣をそのまま階段で2階にあげることは難しく、2mにばらしたもの2枚をバルコニーで4mに繋げてからの取り付けとしました。


今回は施工方法が簡単で、はっきりしていたので、現場取り付けは職人2人に任せました。製作も仕様の確認や、バランスの確認だけで、あとは任せていました。製品作りもそうですが、現場での挨拶やお客様対応も非常に勉強になります。いつかは現場確認から見積りまで、任せられるようになればいいなと思っています。