竹の日、2018年7日7日

竹林


今日は何の日かと言いますと一般的には七夕だと思います。竹の葉に願い事を書いた短冊を飾り、夜空を眺めると織姫と彦星の天の川...というのが多くの方が思い描く7月7日です。しかし、もうひとつ日本最古の物語とされている竹取物語に登場する、かぐや姫が誕生日が7月7日ではないかという説がある事から1986年に全日本竹産業連合会が「竹の日」として制定されています。


せっかくの記念日ですので、気持ち良く晴れて竹の清々しい風を感じたいと思っていましたが先日からの長雨です。高知でも川の氾濫など被害があって心配です、午後から雨も小康状態になってきましたが土砂崩れなどないことを祈るばかりです。


竹虎工場


この時期の長雨は覚悟はしていて竹の管理には毎年気をつけていますが、さすがに今回は長期間に渡り降り続いています。来週にやってくる、海の日の連休に子供たちのイベント用に製作していたガリガリとんぼと言う昔ながらの玩具がピンチです。


竹のガリガリとんぼ


遠目には何という事もないのですが近づいて良く見てみると黒い斑点が...!これはカビが生えているのです。急なご注文で生竹を十分に乾燥させる時間がなかったのも原因ですが、竹をそのまま加工することの難しさのひとつです。


竹のガリガリとんぼ


羽根の部分にも同じようにカビが発生しています、まだ荒削りの状態でしたのでこれから表面を削り綺麗な状態に仕上げていきます。


このような玩具だけでなく、たとえば青竹踏みなども十分に吟味して乾燥もさせている竹材を加工した製品でも、梅雨の季節は湿気をすって短時間でカビができてしまいます。場合によっては作業場にて2回も3回もカビを拭き取らねばならない事がありますし、箱詰めする時には何ともなくてもお客様のお手元に届くまでにカビが生えることもある等、青竹の管理は思うよりずっと大変なのです。


ガリガリとんぼが、どのような竹玩具なのかご存じない方は動画をご覧ください。羽根の回転で雨雲が吹き飛べばと思っています。




日曜日の竹虎工場にて

虎竹やたらソファベンチ


日曜日の工場も良いものです。いつもは加工する機械音が鳴り響いている工場が、シーンと静まりかえっています。こんな時には日頃は聞こえて来ない竹達の話声がするものです。面白い話を聞きながら製作途中の虎竹やたらソファベンチに寝転がります。


虎竹やたら椅子


先週は台湾はじめお客様が沢山お越しになられていましたが、製作途中に置いてあった虎竹ベンチも関心を持ってご覧いただきました。


虎竹縁台


来客の方が多くて慌ただしい一週間だったと振り返りながら、やはり思いだされるのは皆様の笑顔。


竹虎本社工場


人は竹林に入るとリラックスしますが、それは竹を身近に感じた時も同じです。


虎竹の里竹林


国内の方なら高知観光のついでに又か来られる機会もあろうかと思いますが、海外からの場合は余程のことがないと再度足を運んでいただける事はありません。


一期一会、梅雨時ではありますがタイミング良く雨が止んだり、好天に恵まれたり。竹に関わっておられる方々が多かったので虎竹の里も気を利かしてくれているのか...まあ良かったと思いながら一眠りするのです。


竹製の電気自動車「竹トラッカー」危機一髪

虎竹製の電気自動車「竹トラッカー」


竹は成長が驚異的に早く、伐採しても次から次に毎年生えてくるところが木材などとは大きく違います。継続利用可能なか唯一の天然資源と呼ばれる所以なのですが、環境に優しい素材の代表選手ですから、そんな竹で製作する自動車は二酸化炭素を排出するようなガソリン車ではいけません。


少し余談になりますが先日テレビを見ました。今のように温暖化が進み、もし南極・北極の氷がすべて溶け出すとしたら海面がどれくれらい上昇するかという質問だったのですが、何とビックリの66メートルでした!自分の聞き間違いであれば良いのですが、どうやら本当のようです。まさか、そのような事態になるとは思いませんが、そんな日が来れば虎竹の里はすっかり消滅しますし高知県など森林率84%と言ってるのが100%、山しか残らない形となってしまいます。実際のその日の放映ではシュミレーションで日本地図が出されていましたが、やせ細った国土になっていました。


このような地球規模の変化に自分達個人の力は微力です。なのでつい自分事として捉えられずにいたのが、ここ数年顕著になってきた虎竹の里の竹の色付きの変化に遅ればせながらようやく肌で気温の変化と影響を感じています。


温暖化の原因となるCO2など温室効果ガスの排出を防ぐための脱炭素化はこれから進めていかねばならない方向であり、遠からずして道を走る車は電気自動車(EV)になっていくであろうと思います。


虎竹製の電気自動車「竹トラッカー」


そこで日本唯一の虎竹自動車竹トラッカーは光岡自動車製Like-T3という電気自動車がベースです。充電時間の長さや、連続走行距離に普通車としての使用には多少劣るものの家庭用コンセントが使えるという利便性があり、現在このタイプの車の中では唯一の二人乗りというのが良いのです。


ところが、しばらく乗っていなかったらこの冬の寒さで起動用バッテリーがすっかり空になっています!こうなると電気自動車はウンともスンとも言わずお手上げぜよ。チャレンジラン横浜で1000キロ走破した時には、事あるごとに見て電気残量を確認したメーターの灯りも消えてしまっています。


しばらく相手にしなかったのでダダをこねているかのようですにゃあ。高知はすでに初夏の陽気の日もあります、バッテリー交換したら又こまめに乗りたいと思うのです。


使い込まれた竹ヒゴ取りの機械がやって来た

休日の竹虎工場


竹笊や竹籠をご覧になられていたお客様から「これは機械で編むのですか?」という質問をいただく事があり少し驚くことがあります。しかし、一度や二度ではないので結構多くの方が細かい仕事なので、ある程度機械化が進んでいるのではないかと疑問に思われている事なのかも知れません。


竹の湯抜き機械


竹素材一本、一本が太さも形も材質も違うものなので竹製造で機械化できている工程は素材加工の部分で本当に簡単な道具ある程度です。職人の補助的に使われている少し珍しいモノで、熱湯で油抜きをする時に拭き上げる機械などもあります。




竹割には、このような一人で使う小型の機械から、かっては色付きの良くない虎竹の多くは3メートルの長さに切断して壁竹用に割っていましたので三人がかりで使うような大型の割り加工機械までありました。


竹ヒゴ取り


竹編みをする場合に丸い竹を細く割って竹ヒゴ取りをせねばなりません。この竹ヒゴの工程に多くの時間と労力がさかれるので、効率化を求めて長い竹ヒゴの厚みを薄く剥いでいく工程には動力を使った機械が作られています。


竹のヒゴ取り機械


この竹ヒゴ取りに使う機械というのは竹細工が盛んだった一昔前に別誂えで製作されたものです。先日竹虎の工場にトラックで運ばれて来たのも、もちろんご覧になられてお分かりのように使い込まれたものばかり、実は昨年廃業した竹工場から引き取らせてもらった機械達なのです。


特殊な竹加工機械であり他に活用される所もありませんので、引き取らせて頂く事は以前からボツボツとありましたがここ数年特に多いように感じています。日本の手仕事の空洞化は想像以上に進んでいますが、そんな側面がこの機械達でも分かるのです。


休日の竹虎工場にて2018

休日の竹虎工場


誰もいない静かな竹虎の工場を一人でいると色々なアイデアが沸いてくるので好きなのです。長尺ものの竹を立てかけて保管するために高い天井にした工場は自分が入社した翌年に完成しましたので、ちょうど社会人としての自分と共に歩んできました。思えば同級生のようなものぜよ。


新虎竹2018


一際存在感があるのは新竹を立てかけている一角。竹伐採は今月末までですので、まだ竹も少ないものの油抜きをしたばかりの竹は、やはり迫力が凄い、生命力と覇気にあふれている気がします。


虎竹の里を飛び出して活躍したくてウズウズしているような気がします。「虎」を名前に冠した竹です、「虎は千里往って千里還る」と言う言葉がありますが、いつも思い出すのです。


竹虎工場


工場に来られた方々は、こんなに沢山の竹など見た事もないと言われますが、その通りだと思います。竹は根から稈、枝、葉にいたるまで全てを有効活用できる素晴らしい素材であり、どのような品質の竹であっても、一本の竹がすべてが使えることを前提として成り立ってきた仕事です。


竹虎工場


これらの竹材は新しいものばかりではなく古いものも多くあります。虎竹にも一等、二等と品質があり、部材によっても使用頻度に大きく差があり足りない素材と、余ってしまう素材ができているからです。


在庫として積み上げられる竹材は種類、太さ、長さ、節間などにより様々な商材に使われますが、これらを見るだけで竹製品の移り変わりが分かるようです。これからは、もっと一つの竹細工の後ろにある景色をお伝えせねばなりません。それが付加価値というものだろうと、竹の微かな甘い香りを感じながら思っています。


別注の竹籠、竹製品は面白い

竹職人、別注竹ざる


竹虎には時々色々な竹細工や竹製品が持ち込まれて来ます。今までお客様の近くで竹編みをされていた方が仕事ができなくなったりした場合、代替え品になる事も多いのかも知れませんが、やはり竹でないとダメだと言う事になれば、壊れかけた現品を持って来られる方もおられます。


壊れかけた竹籠


竹細工と言っても全国的に見ますと、同じ用途の籠でも呼び名が違っていますし、本当に千差万別なのです。昔から生活に密着してきた竹だけに地域の特性や気候、風土、文化により異なるのは当然で興味深いものではありますが、別注の竹籠、竹ざるについては出来るだけ見本となる現品を見せていただく事にしています。


山葡萄の腰かご


単純にサイズや用途だけ聞かせていただいたり、画像を拝見させて頂いても籠の作りや細かいあしらいが分かりません。別誂えの細かい所は全て当社お任せでお願いしていますが、それでも出来るだけオリジナルに近づけて再現したいと思っていますし、時によっては竹素材でない事もありますので、やはり現物が一番ぜよ。


古い竹籠


直径が70センチもある大きな竹ざるもサイズと深さだけなら測ってもらえば分かりますが、竹ヒゴの厚みやカマボコ状になった形までは分かりません。このサイズなら、かなり丈夫な作りでないと長く使うことはできませんので堅牢さが重要です。簡単な仕事ではありませんが、わざわざ遠くから探してお越しいただいているので自分達の力で何とかできるのであれば、と毎回思ってやってきました。


けんど、まったく同じものは出来ることもあれば、できない事もあります。価格や数量、納期、素材など全て含めて自分たちの限界が竹の限界と思っています。


ミニ竹籠


竹細工の種類は多いので一人の職人が何でもできるわけではありません、それぞれの職人が編み方や作りによって得意、不得意があります。孟宗、真竹、淡竹(はちく)が三大有用竹と言われちょりますが、竹素材にしても日本列島北から南まで見渡せば他にも様々な竹の種類があり製品に使われていますが性質は全く違っていて、その素材自体を扱った事がない場合もあります。熟練の職人ほど新しい事は苦手な事が多く、使ったことのない竹素材はなかなか使おうとしないのが普通です。


しかし、自分たちが思いもしないような竹製品の復刻に挑戦するのは実に面白い。竹の知らなかった魅力を教えてもらう事もあり楽しいのです。


青竹踏みの自然乾燥倉庫?

青竹踏み


休日の竹虎の工場には色々なものが乾燥のため広げられている事があります。「青物」と呼ばれる、竹素材をそのまま油抜きする事なく加工する細工は十分乾燥させているつもりでも高知の高温多雨の気候のせいかカビなどの品質管理に気を使わねばならない事が多いのです。


先日の三連休には青竹踏みがズラリと並べられていました。長尺物の竹を扱う竹工場は天井の高さと広さだけは十分にとってあるので、このような竹材を広げて乾燥させるのにも非常に好都合です。


こうして裏返してみると良くお分かりいただけますように青竹踏みには竹節を必ず二つ入れるようにしています。竹節は根元が間隔が狭く、ウラ(先端)は広くなりますので節の位置は様々ですが、強度を確保するためにこのような細かい配慮も実はされた竹製品なのです。


この竹節は、お客様がご使用されているうちにエアコンなど室内環境によって割れることがありますがご使用には全く問題ありません。製造過程でも自然にヒビが入る事がありますので薄い竹節部分を削り取る場合もありますが、本体部分に影響があるワケではありませんので何度か客様からご質問もいただく事がありますが、どうぞ安心してご使用いただきたいと思っているのです。


ある日の竹虎、3時おやつ時間

竹虎本店


先日は沖縄のお客様から商品のお礼にと届いた贈り物に社員が感激してお礼の電話をしています。まっこと、このような事がある度、竹虎は四国の高知という地方の中でも更に県都から西にずっと離れた田舎の虎竹の里にあるにも関わらず北海道から沖縄まで全国の方々と繋がり支えてもらっているのだと改めて感じるのです。まっこと、ありがとうございます!


お客様より頂いた黒糖


本来であれば、社長である自分が社員の労をねぎらい、言葉をかけて感謝の気持ちを表すのでしょうが、不器用なせいかなかなかそのような事ができていません。ところが、その代わりと言うたら何なのですが、自分が出来ていない分をお客様からお褒めの言葉を頂戴する機会もままあって心から温かなお客様のお気持ちには感謝しています。


黒糖パン


電話をかける社員の笑顔をみているのは何とも嬉しいものですが、今回はこれで終わりませんでした。頂きましたのは西表島産さとうきびを使った黒糖でした。そしたら、いつの間にか一人の社員が黒糖を持ち帰っていたようです。


黒糖クルミ


次の日に会社に持って来たのは、この黒糖を使って焼いた黒糖パンと、黒糖をたっぷりまぶした黒糖クルミぜよ。


竹虎工場三時のおやつ


サイレンが鳴って、時間はちょうど三時のおやつになりました。社員は早速、工場の職人はじめ社内で一緒に働く仲間達にパンとクルミを配って歩きます。


竹虎三時のおやつ時間


少ない人数で、この地域の特産である虎竹を全国発信しようと志を同じくして頑張っているメンバーです。


竹虎工場三時のおやつ


毎日の竹虎を支えてくれている、このチームワークの良さは何か特別な事をしているからではありません。先人からの伝統でもあり、また現場にずっと立ってきた母や専務の人柄の賜ですろう。


先祖へ


クリスマスイブに、竹のリース

竹リース


籠は竹表皮部分を使って編みますので、剥ぎ取った後の竹身部分は使われる事はありません。ところが職人さんの工房にお伺いすると、この身部分を上手く利用してリースを作られていたのです。竹の柔軟性やしなりを活かせますし、そもそも捨ててしまう端材の活用なので、これは面白いと思います。


今日はちょうどクリスマスイブ、あちこちの店舗ではもちろんですがご家庭でも色とりどりのリースを飾られているかと思いますが、竹は自然な素材感、色合い、軽さ、加工のしやすさなど美しいリースを作っていくのにも適材ではないでしょうか。


竹虎工場、剥ぎ竹


実はこのアイデアは、たまたま工房に来られた一般の方から言われた事だと聞きました。竹虎でも枝折り戸の編み込みのために竹表皮部分だけを機械を使って剥いでいきますが、この時に竹身部分が沢山できるのですが今まで何かに利用しようと考えた事はあまりありませんでした。


言われれば簡単な事にようにも感じますが、いつも身近にあって同じ仕事の流れの中では小さなリースひとつ思いつくことはできません。少し俯瞰した観点がいつも大事だと言いながら非常に難しい事なのです。竹の世界は来年も大きく動いていきます、今までを大事にしながら、今までを捨てていく一年はもうすぐです。


ステファンさんデザインの竹ベンチ

ステファンデザイン竹ベンチ


一昨年から2回来日されて虎竹の里にお越しになられたドイツ人デザイナーのステファン(Stefan Diez)さんが、孟宗竹を使ってシンプルな竹ベンチをデザインされています。


Stefan Diezデザイン竹ベンチ


簡単な構造のように見えますが、脚の部分をロープのテンションを使ってカッチリと固定させるアイデアは従来の竹製品にはなかった新しさを感じたのです。


竹ベンチ


最初の作品は昨年2月にストックホルムで展示され多くの方にご覧いただく機会を得ましたが、先日までソウルの展示会で飾られていました。韓国は先の世界竹会議の開催された場所でもあり、竹の伝統が日本と同じように脈々と続いてきた土地柄でもあります。アジアはひとつの竹文化圏と考えた時、更にその評価などが気になります。


Stefan Diezデザイン竹ベンチ


新春の2017年1月には、台数を増やしてドイツのケルンで展示が予定されていて既に製造も完了して配送手配をしている所ですが、可能性と課題とがありながら世界のそれぞれの地域で竹を見て頂ける機会があるのは嬉しい事だと思っているのです。