夏が過ぎても、竹皮草履

竹皮草履製造


夏は過ぎて朝晩は随分と涼しくなってきました。竹皮草履は、ジメジメと湿度の高い夏には足裏がサラリとして気持ち良く本領を発揮できる季節ではあるのですが、寒くなってくると自然な温もりがあると好評なので実は一年通して室内履きとして愛用されているのです。


職人さんが出してきた竹皮は一昨年のシーズンに集めた竹皮ぜよ。毎年生える筍の皮を求めて竹林に入るのも竹皮草履職人の仕事ですが、その年の竹皮は広げて乾燥させたあとは束にして保管して数年寝かせるのが普通です。


竹皮草履、五本指ソックス


段々と冬が近づくにしたがって素足では足の甲の部分が寒く感じるようになってきます。そうしたら五本指ソックスの出番、今では流行のお店でも売られるようになった五本指も、少し前までは健康に気を使う一部の方だけが履かれているものだったかと思います。


すっかり定着した五本指ソックス、自分が履くのは竹布製ですが、普通の生地で作られたお洒落なものも増えているようです。竹皮草履をご愛用いただく皆様にも、お近くのお店でお好みの五本指を探していただき冬のフローリング履きとしてお役立ていただきたいと思っているのです。


B級品でも履き心地はA級品、竹皮草履

竹皮草履


先日、室内履きに愛用してきた竹皮草履の鼻緒が遂に切れてしまったとお客様からお知らせを頂戴いたしました。前ツボ部分であれば比較的簡単に直せる事も多く、面倒な場合にはガムテープに仮留めしたまま履く事もあるのですが鼻緒の横が切れてしまうと残念ながら修理もできかねてしまいますので交換時期と考えちゅうがです。


竹皮を編み込んだ足への感触は一度履いたら病みつきとなります、もう普通のスリッパには戻れなくなってしまいますが、機能性の面でも抗菌性や消臭性もあると言われて履き物としては最高の素材ではないかと思っています。


竹皮ぞうり


お客様は鼻緒が切れたとの事やったのですが自分は、うっかり床にこぼしたサラダ油を踏んでしまいました。何度拭き取っても、歩き回る度に油が他の床面に付きそうなので泣く泣く捨てることにしたのですが夏場だけでなく一年中毎日履いている竹皮草履が履けないとなると、これは一日でも結構ツライがです。


新しい足元に自分が選んだのはB級品の竹皮草履ぜよ。形が多少いびつであったり、左右の大きさが違っていたり、編込みが少し緩いモノもありすまぞね。確かに一級品かと言うことはできかねる製品ですが、どれも十分室内履きとして愛用できるレベルであります。鼻緒の履き物は大人から子供まで足のサイズが違っていても履くことのできる履き物なのです。


多少の見た目の悪さ、と言うても一体どこに不具合があるのか?そう思われるお客様もおられるくらいの品もありますが、毎日のように竹皮草履を見ている自分達はやはり違いが分かります。けんど、そこに目をつぶればB級品の竹皮草履であっても履き心地はやはりA級品、ご家庭で活躍する逸品として蘇ります。


熟練の竹皮草履職人だけの仕事とは

竹皮草履


風呂上がりサッパリと汗を流して脱衣場からリビングへと向かう足元には、いつもの竹皮草履があります。フローリングの上履きとして、沢山の方にご愛用いただけるようになっていますが特に雨が続くジメジメしたこの季節は、サラリとした履き心地の気持ち良さを心から実感できるのです。


昔の校舎は板張りの廊下に教室でしたので地元の小学校などでも、ずっと生徒たちの室内履きとしても活躍してきた竹皮草履です。当時の農家さんでは、草履も手作りする事もあったと聞きますが、草履と言えば普通はまずワラのものを思い浮かべるのではないかと思います。ところが、竹皮の草履はワラに比べて水にも強く長持ちするので人気が高かったのです。


それにしても、この竹皮編みの美しさはどうでしょうか?竹皮は乾燥させて保管しておいたものを水に戻し柔らかくしておいてから、細く短冊状にして編み込んでいきます。一枚一枚の細い竹皮がピシッと立って、編み目がしっかりと詰まっています。もともと全国各地で編まれていたものですので今でも地方で見かける事もあるのですが、これだけ完成度の高い竹編みにはまずお目にかかる事ができません。


この竹皮編みは竹皮ベルトスリッパに使われるもので、底にEVAスポンジを貼り付けますので草履の両端が歪んだりしないよう実は竹皮草履よりも更に熟練の技が要求されます。竹皮草履職人の中でも腕のよい職人にだけお願いできる仕事なのです。


ポツリ、真夜中のコカ・コーラ自動販売機

竹虎本店前のコカ・コーラ自動販売機


懐かしい画像を久しぶりに見ることになったがです。自分が学生の頃からずっと竹虎本店の前に設置されていたコカ・コーラの自動販売機ながです。観光バスが一日に何台もやって来るような時代、コンビニなど当然ありませんしお客様のご要望もあって店の前には多い時で3~4台の自動販売機が並んでいました。最後に残った自動販売機を撤去したのは、もう随分と前の事ですけんど、この場所には、ちっくと懐かしい思い出があるがです。


竹皮スリッパ製造前


竹虎で販売させていただいて、お陰様でファンの方もおられる商品のひとつに竹皮スリッパがあります。竹皮とは筍の皮の事で、筍が成長して伸びる時に剥がれ落ちる竹皮を使いますぜよ。筍は一日に1メートル以上も成長する神秘的とも思えるパワーを発揮しますが、日本で流通している竹皮は輸入のものが大半で、そのほとんどが使われる事なく竹林で朽ちています。これは、まっこと惜しい事。国産の竹皮が有効活用されているのは、ごく一部の食品包材用の竹皮を除けば、この竹皮草履や竹皮スリッパだけではないかと思うがです。


竹皮スリッパ製造のホコリ


竹皮スリッパには外履き用のEVAスポンジ底を貼りつけます。大きめにカットしたスポンジ部分を接着させてから粗切りしてグラインダーで削りだすのは全て手加工ぜよ。これは竹皮編みの部分を型押しせず、すべて職人の手業だけで形を整えているため、一足一足、左右であっても形が全て微妙の異なるため美しい仕上げのためには、それぞれ手で削るしかないのです。この行程は、とてもホコリがでる作業でした。


竹虎工場の吸引機


今でこそホコリを吸い込む吸引の機械もありますけんど、当時はどうなるか分からない物のためにそのような機械を導入する事はできませんし、工場の電気を使う事すら、はばかられる雰囲気でした。それだけ会社の業績は悪かったがです、そして全く自分の責任ではありますが自分自身が竹虎で全く認められておらず役にも立っていなかったがです。そこで、そんなダメな自分が新しい製品作りのために選んだ場所が、この自動販売機の前やったのです。


竹皮スリッパ製造


虎竹の里は夜ともなれば、真っ暗闇ぞね。時々車のヘッドライトが光る程度の国道脇にポツリと電気のついた前にグラインダーを運び、昼間に合間を見て作っておいた試作の竹皮スリッパを削りよったのです。まっこと(本当に)人が見たら頭がおかしくなったろうか?と思うたかも知れませんにゃあ(笑)道行く人が「ギョッ」とした表情を一瞬見せ、呆れ顔で去っていきます。


竹皮スリッパ製造


けんど、いつも心にあったのは貧乏で休む事なく働かねばならず、元日の朝から竹を切り続けた祖父の話。馬鹿にされながらも諦めなかった竹虎二代目。自分達が何不自由なく生活できて学校に通い、これだけ大きくしてもろうた竹虎を礎を築いた。そんな祖父と自分を重ねて、むしろ誇らしい思いでした。


毎朝、朝礼ではお客様の声を全員で読み上げよりますぞね。竹皮スリッパへのお客様の嬉しいお声を聞くと、あの時の事が無駄ではなかったと格別な思いがあります。けんど、考えたらあんな事は終わったワケではなく、ずっと続きよります。一体何の役にたつのか?馬鹿ではないのか?相手にされなかったり、笑われたり...実は今でも自分は、あのポツリと灯りの灯った自動販売機の前にいる居るのです。


けんど、諦めるつもりは、全く無いぜよ。



倉庫の竹皮

竹皮草履の材料


竹は継続利用可能な唯一の天然資源と言われちょります。あまり言われることがないので知る方も少ないのですが、他の植物同様に表年、裏年が竹にもあるものの毎年のように筍は出てアッという間に親竹と同じ大きさに成長し、あたかも当然のように青々とした葉を風に揺らしります。


筍の成長の過程で、服を脱ぐかのように地面に落とされる竹皮には天然の抗菌作用があり、水にも強く、昔から格好の食品用包材としても活躍してきたがです。今では色々な素材のものがある事に加えて、輸入の竹皮が大量に入っちょりますので、あまり顧みられる事のなくなった国産竹皮ですが、やはり高級ブランドの和牛などには国産のものが選ばれ続けちょります。


掃除の行き届いた倉庫には所狭しと乾燥させた竹皮が丁寧に揃えられて積み上げられています。湿気を持たぬようコンクリートの地面から十分に離して通気性を確保していることを見るだけでも、大事に大事に竹皮達が見守られちゅうのが伝わるがです。


竹皮草履用に短冊にした竹皮


孟宗竹の竹皮もあれば、真竹、淡竹(はちく)のものもあるのですが、この竹皮達は食品の包材用ではありません。竹皮草履の材料ながです、時期になると毎日のように竹林に通い竹皮を集めて天日に干した後、数年保管して使っていく竹皮。乾いている時にはカチカチに硬くて、これでどうやってあの細やかな編み込みに出来るのか?初めての方なら、まっこと(本当に)不思議に思えてくるのではないでしょうか。ところが、これを水に戻すと、まるで柔らかな革のように、しなやかな素材になるがです。細く短冊状に裂くいた材料は熟練の職人の手にかかれば見る見る内に草履の形に編み上げられていくがぜよ。


竹皮草履製造


人の手をまったく入らない竹林から生まれる竹皮は大自然の恵みそのものぞね。できるだけ活用せねばバチが当たると言うものです。綺麗に整理されて保管されちゅう職人さんの倉庫には、そんな自然への感謝と畏敬の念が感じられます。


安藤桃子さんと竹皮草履

安藤桃子さん、竹虎四代目


安藤桃子さんが虎竹の里に来てくれちょりました。ちょうど発売されたばかりの週刊文春にはコラムを連載されよりますが、その中で竹虎の商品とは知らずに竹皮草履を絶賛してくちゅうがぜよ!移住される程、この高知県を気に入られちゅう方ですけんど、もともとは竹虎とは知らずに、ずっとご愛用されていたそうながです。室内用で履きはじめると他のスリッパは履けなくなりますけんど、すぐにEVA底の付いた外履き用もご購入いただいたそうぞね。


「海外で歩く時にも、足裏はいつも高知と繋がっている感覚...」


さすが、アーティストは話される事が違いますにゃあ。感心して聞きよりましたけんど、考えたら、高知の竹皮を地元の職人さんが昔ながらの編み方で作る、本物の竹皮草履であり、高知の伝統文化でもありますので、たとえ、遠くの外国にいても、どこに居るにしても、高知の大地を踏みしめているという事になるのかも知れませんにゃあ。そういえば、自分もパリに行った時には竹皮男下駄を履いたがです。歯下駄なので石畳の多い歩道は確かに歩きづらかったけんど、竹皮の足裏への感触は、いつもよりも更に心地よく、また、歩きだすと何とも誇らしく思えた事を思いだしましたぜよ。


安藤桃子さん竹虎来社


一緒にお越しになられた皆様の中には桃子さん以外にも、ずっとご愛用いただいている方もおられて、まっこと嬉しかったのです。やはり皆様足裏への心地良さを一番に言うていただきますが、都会でのマンションでは音が静かというのもポイントの一つやそうぞね。田舎暮らしの自分などでは、あまり思いがいたらない事で、お話しさせていただくだけで勉強になるがです。鼻緒にはあまり馴染みがないであろう海外の方も、満足そうにお履きになられちょります。竹を通して笑顔の輪が広がる、そして笑顔が笑顔を繋げていく、皆様の楽しそうなお顔を拝見していて、ふと昔の事を思いだしましたぞね。


この竹皮スリッパ作りに試行錯誤していたのは、仕事がうまくいかず、会社の経営が大変やった頃やったのです。何とか形にしたいと思うものの、昼間の仕事も忙しく、作業の時間は夜しか取ることができません。けんど、夜の仕事となると電気代すらもったいないからと、工場に明々と電気も使う事すら、はばかられるような状態やったのです。


竹皮スリッパはEVAスポンジ底を貼り付けてから竹皮の形にあわせて、グラインダーで削るのが難しいところなのです。打ち抜きなら手間も時間も必要ありませんが、今の竹皮の履き心地をどうしても活かしたいと思ったので、ひとつひとつが微妙に違うちゅう竹皮編みに合わせて加工するのです。その工程では、こじゃんとホコリがでるので、当時、会社の外に並んでいた自販機の灯りの下で試作しました。真夜中の道を行く方が、呆れたような顔をして通りすぎるがぜよ。けんど、こんな事、祖父が戦後はじめて虎竹の里に来た頃に比べたら何ちゃあない、そう思うて顔を上げる事が出来なかった。


そうやって完成させた竹皮スリッパを桃子さんが笑顔で手にされちゅう。まっこと報われた気持ちになってきますにゃあ。いつもお話ししますが「竹」と「人」=「笑」ですぜよ。竹虎は、こうやって竹で人の笑顔を作っていけたら、それでエイがです。


竹虎インターンシップ


工場では毎年夏に開催させてもらっているインターンシップの学生さんが暑い中、汗を流して目打ちの作業に取り組んでいます。油抜きの作業も700度の高温のガスバーナーでの工程、けんど、竹屋での仕事など一生できるものではありません。本当に貴重な思い出に残る夏休みの体験は、学生の皆さんが大学を卒業されて、就職され、後になればなるほど、その良さが実感として湧いてくるものだと確信しちゅうがです。そんな学生さん達をご覧いただけて、ちょうど良い機会やったと思うちょります。


週刊文春安藤桃子さんコラム


安藤桃子さんから頂いた、発売されたばかりという週刊文春のコラムを拝読させてもろうたがぜよ。鼻緒の履物が外反母趾(がいはんぼし)の予防に効果的というのは、ずっと言われてきていますので知っていましたが、骨盤矯正にまで役立つとは、文章を読んで初めて知りましたぞね。外反母趾も江戸時代にはなかった足の病気だそうですし、骨盤矯正にしても昔の人は考えた事もなかったのですろう。鼻緒の履物というのは、まっこと素晴らしいものだと改めて思うと共に、竹皮という竹の国が世界に誇る自然素材に感謝するのです。


世界一の上履き、竹皮草履

竹皮草履


決して大袈裟でも何でもないがですちや。フローリング履きで竹皮草履より優れたモノがこの世にありますろうか。そりゃあ、時代はドンドン進みます、もしかしたら凄い新素材が開発されて今まで想像もできなかったような快適なスリッパが出てくる事もありますろう、けんど、昔から日本人の身近な素材を使い、伝統の技で守り続けられ、愛され続けてきた履物という点では、この先人の知恵の結晶のような履物を越えることはできないと思うがです。


この整った美しい形、細かい編み込み、これらは全て熟練の竹皮職人が、竹皮とワラという田舎でしたら何処にでもあるような素材を活用しながら、卓越した手技で生み出す、芸術品というてもエイような手仕事なのです。里山には毎年時期になると筍が元気いっぱい生えてきます。竹皮はそんな筍が成長するにしたがって一枚づつ脱いでいく衣服のようなもの。現代では、ほとんど使われることなく朽ちていく資源を有効利用している事にもなりますし、この竹皮には天然の抗菌性、消臭性など、人に嬉しい機能性まで付加されちゅうきに、まっこと素晴らしいの一言に尽きるがです。


竹皮草履修理


自分こそが竹皮草履の一番の大ファンでもあって、夏がシーズンのようにも思われちょります竹皮草履を、本当に一年通して、ずっと愛用し続けているのです。暑い時には足裏への刺激がサラリと涼しく、風呂上がりなど、このスリッパでないと素足だとフローリングがベタベタしますし、布製など他のものは絶対に履くことはできないですが、実は、寒い季節はこの竹皮が自然のやさしい温もりを感じさせてくれますので、竹皮とは本当に人に寄り添う最高の天然素材やと思うちゅうがぜよ。


竹皮草履前ツボ


一足づつ手作りですので、それぞれに出来映えに差があり、耐久性などにも違いが多少あるのですが、長く愛用していて傷むのが前ツボと呼ばれる親指と人差し指の間に挟む鼻緒の前部分ながぞね。ワラを使い、しっかりと留めてられちゅうのですが、擦り切れて外れてしまう事もあるのです。


鼻緒の履物は前ツボが外れると全く歩くことができません。そんな時の修理にご家庭にあるものを使って簡単に直すには、外れた部分を竹皮の裏面まで通しておいて、その先端部分をガムテープで数回巻いて団子状にします。後は足を入れて、普通どおりに歩いて頂けばエイのです。


そんな簡単な事で大丈夫なの?外れる事はないの?そう思われるかも知れませんけんど、体重がかかるせいで余程無理をしない限りそうそう外れる事はありません。竹皮は水気にも比較的に強く、長持ちする素材です。鼻緒が先に傷む事が多いのですが竹皮部分はまだまだ使える事が多く、もったいないと感じられる方も多いかと思います。前ツボ部分の修理には是非お試しいただきたいと思うちゅうのです。


竹皮草履用の稲ワラ

竹皮草履用の稲ワラ


日本の主食であるお米を刈り取ったあとの稲ワラは昔から身近で、実に様々な生活用品に使われてた貴重な素材やったと思うのです。今では目にする機会も少なくなって消えてなくなりつつあるものもあります。若い方にはワラなどと言うても見たことのない「新素材」かも知れません。けんど、日本の自分達が毎日食べているお米を作る田んぼでのお話です。是非、ワラの事も少しでも知っていただきたいと思うちょります。


竹皮草履の芯部分には稲ワラが使われちょります。草履職人さんが近くの農家さんのお手伝いに行ったり、親戚の家から頂いてきたりして調達する稲ワラですが。昔は稲ワラにしても、竹皮にしても自分たちの周りで手に入る素材だから、自然と使われるようになった歴史があると思います。前には新しいビニールやら何やら扱いやすく強いモノが出来てきて、一時は、そのような素材を使うたほうが良いという、効率重視の職人さんがいた時期もあったのです。


けんど、耐久性や機能性だけでない。日本のモノ作りの長い歴史そのものを皆様にお届けする事を思えば、「昔ながらの材料を、昔ながらの変わらないやり方でやる」ただ、それだけで良いのではないろうか。竹皮にしても、稲ワラにしても水に強い、身近で豊富にある、モノの無かった昔にしたら願ってもないスーパースターのような存在です。新人(新素材)が出て来て栄光の座を追われてしもうた往年のスターも、虎竹の里ではお陰様で現役選手としてご紹介できちょります。これからも、できる限り第一線で走り続けてもらえるように思うちゅうがです。


竹皮草履職人のワラ打ち機

まず本日は、国産竹皮草履づくりに欠かせない稲ワラを機械で叩く作業からご覧くださいませ。おっと、そうそう、この稲ワラも、もちろん地元のものですぞね。稲刈りを手伝う等して農家さんから分けてもろうたものながです。



ワラは草履の芯や鼻緒の芯として使用されます。このような機械を使うて勢いよく叩くことにより、昔は手でコンコンやりよった作業はなくなって、随分と職人さんたちは楽になってより効率良く竹皮草履作りが出来るようになってきたがです。


ワラ打ち機先端木部


先月終わり頃にもお話させて頂きましたように、この機械が出来る前は木槌で叩きよりましたが、機械になっても叩く部分は金属などではワラが傷むという事で木製となっちゅうがです。やっぱり自然素材には自然素材でないとイカンがやにゃあ。ただ、木部は使うごとに段々と磨り減ってきます。最初は長かったこの木部も、こんなに年期が入り短くなってきました。そろそろ交換せんとイカンようですぞね。


ワラ打ち機ゴム


更に打ち付ける下敷き部分のゴムも中央がへこみ、いずれ交換時期を迎えることになりますろう。この分厚いゴムは、思い出せないくらい前に職人さんの一人が手に入れたものを切り分けて使いよります。機械でも細かい部分はやっぱり手作りながですぞね。


国産ワラを使う竹皮草履

木槌


竹皮は昔から天然の抗菌作用などがあるという事で、オニギリ弁当を入れる包材としても重宝されてきた素材ながです。今でも高級なお肉などを包むのには竹皮が使われちょりますぜよ。


そんな竹皮ですが国産のものは、かなり少ないがではないですろうか?竹は毎年どんどん生えてきますのでその都度竹皮も山に沢山できるのですが、残念ながら、それを活用できずおりますので、竹虎の竹皮草履は実はかなり貴重な存在でもあると思うちゅうがです。


さて、そんな竹皮草履ですけんど、竹皮を編み込んで行く工程でワラ縄を使うがです。ワラ縄は何処に行ったら手に入れる事ができますろうか?今の人なら間違いなく、ほとんどの方がホームセンター言うと思います。けんど、この竹皮草履のワラは、ちっくと違いますぞね。何と地元の稲作農家さんから分けてもろうて自分達で縄を作るがです。


稲刈りをされた方ならお分かりですけんど、稲ワラとは、そんなに優しい素材ではありません。結構硬く、しっかりしちゅうものです。沢山実るお米を支えないといけないので、それも当然ですろう。そこで、その稲ワラを細工に使いやすいように柔らかくする必要があるがです。柔らかくしていくのには木製の大きなツチを使いますぞね。一束叩くのに1時間もかかると聞いて、まっことビックリしたことがあります。そりゃあ、そうですぞね、この木槌の重いこと、重いこと。


今でこそ、この工程はさすがに機械化が進み、職人さんたちも少しは楽になっているのですが、それまでは、この木槌でトントン、トントン...トントン、トントン......1時間。考えただけで竹皮草履職人さんたちのご苦労が偲ばれるがです。