ヤチャラ椅子の20年

 
虎竹ヤチャラ椅子


「遠くへ行きたい」と言う長寿番組がある。ちょうど夏休みなので、知らない土地に行ってみたいと思われている方も多いと思うけれど実際はなかなか簡単に出かけられない。特に今はコロナで外出を控える人も多い、そんな方々の代わりに目となり耳となって遠くを旅してくれるのは本当にありがたい。


虎竹ヤチャラ椅子


そんなテレビが竹虎にやって来たのは2004年の事だから随分と古い話だ(笑)。しかし、あまり頻繁にある事ではないので、来社いただいた女優の水木薫さんが当時注文で試作していた虎竹ヤチャラ椅子に腰かけて笑っている姿は今でも覚えている。定番の製品は高さが50センチ程度ある大きなものだったが、ちょうど30センチの低めの椅子を店内に展示してあった。低いと言ってもこの迫力だから、誰かのお宅に遊びにいってリビングにこのような椅子があったら驚くに違いない。


虎竹ヤタラソファベンチ


ヤチャラとはヤタラとも言うけれど「ヤタラメッタラ」のヤタラの事で、規則正しい竹編みではなくて職人の感性で仕上げていく乱れ編みの事だ。


虎竹ヤタラソファベンチ製作


ヤチャラ椅子に続いてソファベンチを製作することになったが、その時には強度を考えて中に鉄製の骨組みを入れる事にした。


虎竹ヤチャラ椅子、竹虎四代目(山岸義浩)


竹の可能性をいつも追い続けているからボクはいつまでも座っていられる。しかし、機能的には正直革の椅子やソファに竹はかなわない、経年退化があって体重のかかる過酷さには耐え続けられない部分がある。それでも魅力のある竹だからスツールや椅子が今でも創作されている、虎竹縁台もずっと作り続けていくつもりだ。




試作機完成、虎竹空気清浄機

虎竹空気清浄機試作


随分と時間をかけてきたと思う。優秀なデザイナーの方に大いに助けていただきながら、地元のメーカーにこだわって製作を続けてきた日本唯一の虎竹を使った空気清浄機が、ようやく一つの形になった。前面にならべた虎竹から、竹集成材の細かいしつらいまで、まだまだ修正点は多いけれど第一段階をクリアした試作機だ。


日本唯一の虎竹林


虎竹の里に来られた方は、誰一人残らず皆様が心地よい竹林の事を口にされる。竹の葉が揺れる音、近くを流れる川のせせらぎ、小鳥たちの歌声に癒されると言う。観光のためではなく、少なくとも江戸時代から続く竹の生業のために手入れさてきた日本でも数少ない本物の竹林ならではの空気感。吹き抜けていく風をお届けしたくて「竹風(TAKEKAZE)」と名付けた。


虎竹空気清浄機吸入口

 
虎竹空気清浄機ファン


土窯作りの竹炭


下部の吸引口からファンを通して集められた室内の空気は、竹虎自慢の土窯作りで焼き上げられている最高級竹炭を小さな粒状にして詰め込んだ竹炭フィルターを通して噴出される。


虎竹空気清浄機内部


以前、製造していた空気清浄機竹風(ちくふう)には無かった強弱の切り替えスイッチも用意したが、機能もインテリアとしても、思いいれも全く違う異次元に昇華した一台になる。


虎竹空気清浄機試作


この秋、発売予定を目指して急ピッチで準備を進めている。完成を世界一待ち焦がれているのは、やはり自分だ(笑)。


月桃円座の職人

 
月桃円座、鍋敷き


は、あまり知られていないのだがイネ科である。竹林での部分開花は結構頻繁に見られるので昔から珍しい花が咲いたと職人さんが持って来てくれるのだが、まさにイネ科を裏付けるように竹の花は稲穂そのものなのだ。そんな訳で、世界的にも美味しいお米が実る日本は竹の生育にも最適の地であり、メリハリある四季が竹を向上させ最高の品質だと思っている。


月桃ヒゴ


しかし、小さいながらも南北に長く、美しい自然の残された日本には竹の他にも地域性のある素晴らしい素材が多彩で面白い。たとえば先日ご紹介した七島藺(しちとうい)円座、円座と言ってもイ草、菅、わら、ガマ、アダン、そして今日の動画でも皆様にご覧いただきたい月桃など何とバラエティーに富んでいる事か!この多様性が日本の豊かさなのかも知れない。


月桃農園


月桃には殺菌作用があり、香料として利用されるほど良い香りがするので円座の他にも生活道具に使われる素材だと知ったが、自分が元々関心を持ったのは炎天下で収穫される大きな葉を見てからだ。高知の郷土料理に出てるリュウキュウ(ハス芋)のように太い茎は刃物でサクッと簡単に伐り倒す事ができる。


月桃円座編み初め


ところが、その素材を乾燥させて編み込めば強く座り心地のよい円座になるのだから凄いのだ。つくづく自然素材と先人の知恵には感服するほかない。




王様の渦巻円座の作り方

 
七島藺渦巻円座職人


七島藺(しちとうい)の事は夏前から何度かお話しさせて頂いてきた。とにかく350年の歴史があり、同じ畳表として使われるイグサの数倍の強さと耐火性がありながら、機械による大量生産に向かない事から衰退してきた素材なのだ。


七島藺渦巻円座製造


現在では10軒足らずの農家さんが栽培するだけで、多くは流通していない。しかし琉球畳と聞けば高級な畳として憧れている方は多いと思う、実はこの琉球畳の素材がかっては七島藺だったそうだ。


円座


だから初めて見て本当に驚いた七島藺で作られる渦巻円座が、どうやって作られているのかを見たいとずっと思っていた。縄編みの円座の仕事も素晴らしく、座った感じも絶妙のクッション性があり涼しくて大好きだったが、この渦巻円座は少し特別な印象を受ける。


七島藺渦巻円座


この角度から見ると一体何なのか?と思ってしまうが、さすが一畳分の材料を使うと言うだけあって貴重な七島藺が贅沢に使われている。


七島藺渦巻円座作り


七島藺渦巻円座、わろうだ


この七島藺渦巻円座の編まれていく様子をご覧いただくと、王様気分がさらに高まるようだ。湿気の多い夏場は製造していないので、あまり多くの方にお使いいただく事は叶わない逸品だ。




ハレの日、虎竹花籠菊手毬

 
虎竹花籠菊手毬


いつもの見慣れた虎竹花籠とは違う、華やかな表情の菊手毬の写真をお客様からお送りいただいた。婚礼をひかえた前撮りでの写真、ご自身のハレの日に虎竹花籠をお供させてもらい本当に光栄だ。


虎竹花籠菊手毬


花籠は花を活けてこそ華やぐ。お客様はお花屋さん、カメラマンさん、メイクさん、ご家族、ご主人となられる方、色々な人から籠を褒めていただいたとお手紙に書かれている。お幸せを心よりお祈りしたい。




王様気分の円座!七島藺渦巻円座

 
七島藺渦巻円座


ところで七島藺で編まれた製品の中で一際物凄いオーラをまとっているのがこの七島藺渦巻円座。とにかく存在感はハンパありせん。職人さんに見せていただいた時の衝撃は今でも忘れられないくらい、「あっあっ!」と思わず上ずった声がでました(笑)。


七島藺渦巻円座


どうですか?このサイズ感。日本国内にも自然素材で編まれた円座は色々あるものの数ある円座の頂点に君臨するかのような、まさに円座の中の円座!


七島藺渦巻円座の座り心地


ふっくらと盛り上がる編み込みの座り心地は、まさに最上級。予想を上回る使用感はお試しいただく他ありません。


七島藺畳表


特筆すべきは、元々貴重な素材である七島藺を何と贅沢に畳一畳分まるまる使って製作されている事。


七島藺渦巻円座縁かがり


七島藺渦巻円座、竹虎四代目(山岸義浩)


サイズもゆったり65センチありますから、まるで王様気分でのんびり過ごす休日にこそ愛用したいものです。




七島藺縄編み円座の作り方

 
七島藺縄編み円座


七島藺(しちとうい)の生産農家さんにお話しを伺うと、驚くほど強く、耐火性もある七島藺をまだまだこれから復活させていきたいという思いが伝わってきます。国東特有であり350年の歴史があるという地域性が虎竹の里に通じるものを感じました。そして、かって暖房などのない時代には、特に寒い地方での暮らしには囲炉裏が無くてはならないものの一つであり、耐火性の高い素材で編まれた円座はさぞ重宝されたのではないかと推察します。


七島藺縄編み円座


縄編み円座は七島藺を縄状に編み込みながら少しづつグルグルと巻いて製造していきます。縄が糸でギッシリと編み込まれているので特有の座り心地が楽しめるのです。


七島藺縄編み円座


青々とした草の色合いは年月と共に飴色に変わるのは竹と同じです。息をしている七島藺は湿気の多い季節にはカビがでることもありますが、枯れた色合いに変化する頃にはその心配もなくなります。とにかく長持ちさせるには毎日のように使い込むことで、これも竹の使い方に似ています。


七島藺縄編み円座を編む職人


七島藺縄編み円座、竹虎四代目(山岸義浩)


竹皮草履を編む時に使う三又と同じ道具を使って円座を製作されます。こちらでは五本の指が立っているだけで全く同じ構造に親近感を覚えます。




七島藺(しちとうい)とイグサ

七島藺草履


自分が履いているのは竹皮草履ではありません、七島藺(しちとうい)と言うイグサに似た素材で編まれた草履です。とても良く編まれていて鼻緒もソフトで履き慣れない方にも痛くならずにご愛用いただけるのではないでしょうか。ただ、少し足裏への刺激が優しすぎて竹皮草履のサラリとした感触がモノ足りなく思います。そこで、硬めのEVAスポンジを貼ってスリッパタイプにしてみる事にしています。




実は七島藺に辿り付くまでには、祖母から受け継いだ機織り機を使いイグサ縄で籠を編む岡山県の須浪亨商店さんがありました。元々はイグサ栽培の盛んな地域と言うことでお伺いしてイグサの香りに包まれた瞬間に母の実家が高知県は土佐市で栽培していたイグサや製造していたゴザの記憶が蘇りました。


七島藺


興味が沸いてきたイグサを見ていて、ふと思い出したのが随分前に聞いた事のある七島藺(しちとうい)だったのです。イグサに似ているものの実はカヤツリグサ科という全く違う植物で、350年もの歴史がありながら現在では国東半島で10軒足らずの農家さんが栽培するだけになっています。

 
七島藺織機


イグサの5~6倍もの摩擦強度があり、耐火能力も備えている七島藺が衰退したのは、三角形の断面をした草の形が大量生産する機械化に向かなかったためと聞きました。


七島藺スリッパ


ところが、やはりこれだけ長く愛されてきた素材です。刈り取り作業の写真を手にすると小さい頃に母の実家で見た真夏のイグサ収穫とそっくりです。懐かしい光景だなあと思っている中で面白いスリッパにも出会いました。


懐かしい竹根の灯を見つけました

 
竹根の灯


これは珍しい竹灯を見つけました、このような竹製品は部屋に入るとすぐに目に飛び込んできます(笑)。あまり気にされていない方が多いかも知れませんが、実は昭和のご自宅にはあっちにもこっちにも実に様々な竹の照明が当たり前のように取り付けられていました。今となっては貴重品のようになっているペンダントライトを見ながら改めて竹が身近であった古き良き時代を思います。


竹のペンダントライト


この球形の電灯で縦にゆったりした丸いカーブを描いているフレーム部分も竹です。竹ならではの優しいしなりを活かした作りで、更に竹特有の繊維の流れが模様になって表れています。ポイントにされているのが均一の太さと長さで並んでいる竹根、全体を引き締めてしっかりとまとめています。


竹灯


需要も少なくなって竹根を掘る職人さんもいなくなり現在ではこのような使い方は出来かねてます。けれど竹の曲線をデザインに取り入れた丸い灯は健在で、このような虎竹フロアライト(丸)大が当時の雰囲気を伝えるかのように頑張っています。




竹虎四代目が痛恨のミス!虎竹トイレットペーパー籠を限定販売

 
虎竹トイレットペーパー籠


こちらは日本唯一の虎竹で編んだ虎竹トイレットペーパー籠なのです、少し分かりづらいですが左右ひとつづつの竹籠を並べています。見比べているのですがお分かりでしょうか...?虎柄もあるし何だかご覧いただくのも大変なので申し上げますと編み目の大きさが微妙に異なっているのです。


虎竹トイレットペーパー籠


編み目だけでは伝わりづらいサイズ感も、こうして並べて置いてみますと結構お分かりいただけそうです。左右どちらも高さは同じなのに左側の籠は編み目がちょっとだけ大きいために底が付いてしまっています(涙)。同寸の虎竹骨を入れても、この通りなので通気性が良いとは言えません。竹虎四代目痛恨のミスです!しかし20個も完成してしまいましたので今回は訳ありの特別価格にて限定販売させていただきます。下のYouTube動画もご覧いただきご検討ください~色々とお使い頂けそうな虎竹籠です。