桂離宮の生垣(桂垣)

桂離宮の生垣(桂垣)


西日本豪雨の被害をニュースで見るたびに心が痛み、雨の多い地域に暮らす自分達には明日は我が身と考えて備えなければならないと思っています。近年の雨の降り方は、すでに異常気象という事ではなく、温暖化の影響なのか?これが当たり前となってきた怖さも感じます。災害への竹の強さという事を先日もお話しさせてもらいましたが、実は桂離宮の生垣も竹の生命力の象徴のようなものです。


桂離宮の竹林


桂垣と呼ばれる、この生垣は約250メートルもの長さがあるそうですが何気に見ていれば普通の竹垣かと見過ごしてしまうほど自然で生き生きとした姿をしています。


桂離宮の生垣(桂垣)


ところが、実は裏側には建仁寺垣があって、その垣に敷地内に生えている淡竹をそのまま引っ張り倒す形で建仁寺垣に竹のウラを固定するという一見乱暴とも思えるような設えとなっているのです。実際に裏側から見た事がないので一度拝見したいと思っていますが外側から見ている分には、まさか、そんな造りになっている事など微塵も感じさせません。


桂川


桂離宮の東側には桂川が流れていて大雨の洪水時には、この生垣が流木などから守ってきたといいますので竹の生命力の象徴というのがお分かりいただけるかと思います。


桂離宮の生垣(桂垣)


背後の竹林の竹を折り曲げる形で、生きた竹の枝葉を使うとは誰が考案したのか知りませんが竹を知り尽くした先人の知恵ですろう。青々と繁る竹葉を見ていると改めて竹の不思議な力を感じますが、これも竹だけではこれだけの生垣にはなりません。竹を活かしきる職人の技が加わり自然災害に負けない竹垣となっているのです。


三代目の門セットについて

竹虎工場、門セット


杉皮を何枚も重ねて重厚な屋根を製作しています。少なくなったとは言え、時折このような大型の竹製品のご注目をいただくのです。この屋根を二本の焼柱の上にのせて焼き板木戸など取り付ければ立派な門セットの完成ぜよ。


門セット


このような製品は、県外に配送する事も多いのですが今回の施工は高知市内のお客様でしたので自分達で施工に行きます。先日は牧野植物園に施工した6メートルの光悦寺垣をブログでお話しさせてもらいしまたが、竹は庭園でも多用されていますのでこのような工事などもあります。


杉皮屋根


真新しい屋根の美しさは言うまでもありませんが、この杉皮の屋根が時間の経過と共に枯れた風合いとなり苔を生したりしはじめると更に味わい深いものになってきます。


竹虎四代目、門セット


実はこの門セットをやり替えさせてもらうのは三回目。一番最初は祖父が40数年前に施工してから古くなったものを自分が20年前に新しくしました、そして又新しくなりましたので門セットは三代目、こうして長くご愛顧いただくお客様のお陰なのです。


虎竹袖垣に関わる職人たち

虎竹袖垣製造職人


竹の袖垣は注意して見ていたら玄関脇などに取り付けられていたり、都会の真ん中でもビルの谷間の飲食店にあったりする昔ながらの庭園用の竹製品の一つなのです。けんど、一般の方でご存じの方はほとんどいないですにゃあ、そしてご存じの方が稀におられたとしても、遠くから眺めるだけですので両脇の竹柱に実は細かい細工が施されちゅうとは思ってもない事のようぜよ。


袖垣の骨組みは実は孟宗竹が使われていて、その柱を細く割った虎竹や白竹で巻き付けて化粧すると共に強度的に強くもするのです。細く割っていますので竹節を微妙にズラして模様にも出来るし、外で雨ざらしで使う竹製品は傷みも早く丸竹の場合など割れる事が多いですが、一度細く割った竹を孟宗竹の芯に巻き付けてあるので割れる心配もなく耐久性は一本の竹と比べて格段に高くなっちょります。


あまり注目される事もない袖垣ですが、骨組みに使う孟宗竹、芯部分を巻く細く割った巻き竹、ヒゲのように見える飾りの黒穂、竹を平らに割のばしたヒシギ、すかしの格子部分を縛っている四万十カズラまで、それぞれの職人さんや内職さんの仕事が一つにまとまって、ようやく一枚の虎竹袖垣が仕上がります。


四万十カズラ


巻き竹は両方の柱が真っ直ぐな角垣(つのがき)だと割幅も比較的広く簡単ですが、玉袖垣のように曲がりがある袖垣は割幅も細く、長い竹を割っていくので熟練した技術が必要となるがぞね。これが幅の広い、大きな光悦寺垣などになると更に大変です。


四万十川流域から集めて来てもらうカズラは、乾燥させ沢山こうやってストックしちょります。出番の多い、少ないはありますものの、どれひとつ欠けても昔ながらの製品作りができなくなる、袖垣は思う以上に多くの人の手を借りながら作り出される竹製品なのです。


虎竹袖垣のある玄関

 
虎竹玉袖垣


竹垣と言えば、若い方の中にも何となくイメージできると言われる方がいそうな気がするのです。ブロック塀や門等と同じように家の外構部分にあるものですので竹で組んだ垣根などは、それとなく見た事があると思います。


細かく言うと竹垣にも、植栽された生きた竹をそのまま活かして目隠しのように使う場合と、竹を加工して垣根として作りあげるものとに大別されると思います。竹は一年を通して葉が青々と茂り、気持ちのよいものですので生け垣もエイし、職人が加工する竹垣なら色々な竹素材を用いて簡単な四ツ目垣から建仁寺垣や御簾垣、大津垣、鉄砲垣、網代垣など名前を挙げていたら何種類もありますけんど竹穂を使った穂垣や松明垣など個性的なものまで色々とバリエーションを楽しめてエイのです。


最近では自然素材そっくりに塩化ビニールで作られた人工竹があって、遠目には区別がつかないほど、そっくりで驚きますが耐久性が高いのは良い事がも知れないものの、いつまでも綺麗過ぎるので自分は全く好きになれないがです。


古い虎竹袖垣


竹垣は何とか分かるという方も、今度は袖垣となると一体何なのか?どうやって使うのか?竹垣と、どこが違うのか?とお分かりになられない方が多くなってきますぞね。袖垣とは玄関脇など建物の脇にしつらえて目隠しとしての機能を持たせた小さな竹垣とでも言うたら良いろうか。


和風のご自宅が少なくなって袖垣を使われるご家庭は本当に減ってしまっていますが、このような袖垣が一つあると、庭周りが引き締まり何とも言えない良い風情となるがですぜよ。どうしても和風建築でないと似合わないかと言うと実はそうでもなくコンクリートや新建材などのお宅でも使われているのを拝見しますが、なかなか格好のエイものですし庭の緑と、こじゃんとマッチするのがやっぱり天然素材やにゃあと笑顔になる所ながです。


屋外で使う竹垣や袖垣は、新しいものは当然気持ちが良いのですが、古くなる経年変化そのものを楽しむものですぞね。この袖垣は、おそらく20数年お使いいただいたのではないかと思いますが、すっかり色が枯れ、所々に苔をむすようになってきた竹もなかなかエイものです、こう言う長い時間を感じさせる袖垣は大好きぞね。


竹のわびさび色々

竹垣


青竹の清々しい色合いは、いつみても気持ちのエイもんです。青い色目の濃い竹は真竹なのですが、虎竹は淡竹(はちく)の仲間で真竹とは大きさは同じくらいでも色合いや、竹の性質というのは面白いばあ違います。当然虎竹の里には虎竹ばっかりですきに真竹はこじゃんと少ないですけんど、真竹の多い地方に行って道路脇などに竹林があると、ついつい車を停めて見入ってしまうこともあるがです。この真竹の青々とした色合いと、スパッと竹を切った時の身の部分の白さが日本人の一番好む色のコントラストだと聞きますが、まっこと、門松など見ても納得しますぞね。


さて、そんな真竹は湯抜きという油抜き加工を経て、天日に晒され、晒竹(さらしたけ)とか白竹と呼ばれる竹になります。しかし、日本唯一の虎模様の入った虎竹にしろ、青竹や白竹にしても、屋外で雨ざらしとなる袖垣や庭垣として使用される場合等にはその色合いを長く保っちゅうことはありません。特に青竹などは、すぐに色あせ、落ち着いた色合いから枯れた色合い、最後には苔がはえるような経年変色があるがです。


穂垣


竹のエイところは、この時間の経過とともに変わっていく所やと思うがです。若々しい華やかな見栄えもエイですが、いつまでも、そうではなく歳と共に年期を感じさせる風格が出て、周りの景観にもしっくりと溶け込む竹の色。古くなれば、なるほどに新しい魅力が醸し出される。時間とともに成長するような竹の魅力。自分が竹に教わる事は、まっこと多いにゃあと思いよります。


小さな竹の間仕切り

竹垣


竹垣の良さは何ですろうか?自分が魅力的に感じる竹垣と言うのは、たとえば背の高い建仁寺垣のように向こう側が全然見えなくなるような、塀に近いものではなく、四つ目垣などのように細い竹を粗く組み合わせた簡素なものぞね。竹垣は、自宅の庭があるとしたら、その庭と、たとえば公の道路であったり、お隣の家との境界をハッキリと区別するために竹垣をしつらえます。境をしっかり示しつつ、時には目隠しの役割も果たしながら風通しが良いのが竹垣の素晴らしいところではないかと思うがです。


日本の文化というのは垣根にも表れちょって、他を完全にシャットアウトする事はせずに、ファジーと言うか、やさしい領域を作ることを得意としてきたと思うがです。そういう空間は、最近の家には少なくなったかと思いますけんど、「縁側」なども、そのひとつかも知れませんちや。


あと、庭で言うたら枝折り戸のような簡易な扉もそうです。間仕切りという役割があって外と内を区別しよりますけんど、その気やったら誰でも簡単に出入りできるがです。けんど、簡易な目印のような本当に小さな間仕切りであっても、そこに、カッチリとしたルールというか線引きを感じる感性。日本の竹垣文化と言うてエイのか分かりませんけんど、まっこと素晴らしくはないですろうか?


先日見かけたのは、竹垣と言うて良いのか、どうなのか、本当にわずか数センチの高さの竹の囲い。地面に打ち込んだ竹に粗割した二枚の竹を交互に差し込んだだけの、まっこと簡単な作りですけんど、これが、ちっくとあったら、全然違う。面白いものやと思うたがです。


年末にお届けした別注袖垣

白竹玉袖垣


毎年、年末に向けては庭垣、袖垣などのご注文が多くなる時期ながです。ご注文頂きましたお客様にはこの新年、お庭もスッキリされて気持ちのよいお正月をゆっくりと過ごされゆうのではないかと思うちょります。ご注文が多くなると言いましたが、特に増えるのが特別注文の竹垣、袖垣や枝折り戸なのです。


お客様の好みに合わせて少しだけデザインを変えたり、サイズを変えるという事だけでも当然ですけんど一からの製造という事なりますので、国内製造をわずかながらも続けゆう竹虎の出番ながです。袖垣については特産の虎竹で作らせていただく事が多いものの、白竹も昔からの定番ですので根強い人気があります。


おっと、そう言うたら、そもそも袖垣をどう使うとか、どこに設置するものだとか、あまりご存じない方も多いかも知れませんちや。実は、袖垣は庭のちょっとした目隠しや間仕切りに使われる事が多いものなのですが、今回の白竹玉袖垣は全面が格子になっちゅうきに、目隠しの役目にならないのでは?そんな風に思われる方もおられるかも知れません。


けんど、こんな袖垣をたとえば少し置いたら、この垣に視線が集まってしっかり目隠しの役割を果たしますぞね。こんな大きなサイズの立派な袖垣が、高知から山を越え、瀬戸内の海を越えて、日本のどこかで、誰かの目を楽しませる事ができゆうがですろう。今年も、そうやってお役に立てる事を、


一つ、一つ、


一つ、一つ、やっていくがです。


玉袖垣のカーブ

玉袖垣


竹垣には、それこそ数十メートルもある長い物があるがです。建仁寺垣という代表的な竹垣がありますけんど、京都の建仁寺に作られたことから、この名前が付いたそうです。実は他にも光悦寺垣、龍安寺垣など「寺」と付いた竹垣があります。広い敷地の目隠しに使われますので長さも必要とされますぞね。


けんど、そんな竹垣とは別に袖垣と呼ばれる垣は玄関脇や庭の目隠しなどに設置するもので、幅は60~75センチくらいの物が主流で大きい物でも90センチくらいまでながです。分かりやすいようにセンチで言いましたが、実際は2尺、2.5尺、3尺というサイズで呼ばれます。実は形も、高さなども様々。まっことバラエティーに富んだ袖垣があるがですが、竹虎で製造する袖垣を大別すると片方が丸くなった「玉袖垣」と両方とも真っ直ぐの柱の「角袖垣」この二つに分かれちょります。


さて、虎竹玉袖垣をご存じない方が見られたら太い虎竹をそのまま使うて造られちゅうように思われますけんど、実は、孟宗竹で袖垣の芯になる部分を作ってその上を細く割った虎竹で芯を隠すように巻いているのです。ただの一本の竹を使っているワケではないのでとても丈夫。庭で太陽や雨風に当たっても少々の事ではへこたれないタフな作りとなっています。


玉袖垣は片方が丸く曲がっちゅうと言いましたが、中の芯の部分の孟宗竹を、どう曲げているかと言うと竹に三角形の切り込みを入れ、このように自然なカーブが出るようにしちょります。何という事ではないけんど製品に仕上げてしまったら外からは見ることの出来ないこれも、竹屋のちっくとした技の一つですちや。


古い枝折り戸

白竹枝折り戸


枝折り戸という庭で使う簡単な竹製の扉をご存じですろうか?普通のご家庭ではあまり使うことがないかも知れません。ただ、好きな方ですとマンション等でもご愛用される方もおられますちや。ベランダにズラリと並べて花やツルものの植物をからませて楽しまれたり、お庭では柱を立てて縛り付けて、ちょっとした間仕切りや飾りにされるなど、色々な使われ方をしちょりますが、本来の使い方は出入りの戸ながです。


出たり、入ったりしますのでの自由に動く可動部分が必要です。可動部分と言うますと、まず蝶番など思いうかべられる方が多いですが、竹はご存じのように中が空洞で釘が効きません。なので、先の割れた特別なピンを使います。そのまま打ち込むと竹が割れてしまいますので、まず竹に穴をあけ割りピンを差し込み、反対側で先の割れを開いて固定するがです。


ヒジツボ


この金具はヒジツボと呼びよりますが、オス、メスがあって、オスはL字型になった釘状のものですのでこれを焼き柱に打ち込み、メスのヒジツボを上からのせて可動させます。


それにしたち、年期がはいってサビついたヒジツボですちや。竹は青々としていたり、白竹でも晒したばかりの美しい白さという出来たての新品のうちはもちろん清々しくて大好きですけんど、こうやって古くなってきてからは、更に味わいが深まります。ヒジツボのサビまでも、なにやら風合いの良さを感じてしまいますぞね。


杉皮の門セット

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竹細工は竹籠竹ざる等、室内で使うものばっかりではなくて、庭園用としても竹は多用されちょります。竹の垣根には建仁寺垣や四つ目垣、御簾垣など、実に様々な種類の庭垣がありますし、玄関脇などにしつらえる袖垣、庭の出入り口の枝折り戸、縁台そして、かなり大がかりな作りになるのが門セットぞね。


何枚も杉皮を重ねて仕上げていき、屋根の上にも内側にも虎竹の押さえ竹が入り、亀の甲羅のような形をした亀甲竹という銘竹を飾りに使うがです。かなりの重量になる、この屋根を太い2本の焼き丸太の上にのせて、焼き戸を取り付けたら完成。真新しい門セットは、ピンと背筋が伸びるようで、何とも格好のエイもんですけんど、これが数年たってから杉皮にコケが生え、草が伸びたりするようになったらまた違う魅力が出てきて、それはそれで風格がでて格好がエイがです。風合いのが深まってくるというのは竹籠や竹ざると、まっこと同じやにゃあ。