自分は、竹虎の職人が使う前掛けで作ったショルダーバッグを愛用している。もう何年になるか忘れてしまうくらい前に、前掛けを使ったバッグ作りをされている方をご紹介いただいた。確か元々は趣味で作られていたと思うが、ご主人用のリュックサックを見せてもらうと色落ちが渋くて、大切に使えばこれほどになるのかと少し感動した覚えがある。
是非、竹虎の前掛けもショルダーバッグやリュックサックにして使いたいと思って、少しづつ作ってもらっていた。今回、前掛けを新しく作ったのを機にショルダーバッグも新しい職人さんに作っていただける事になった。新しいと言っても、ほとんど変わらない(笑)本当に少しだけマイナーチェンジして再デビュー、いい風合いに色落ちするまでご愛用いただきたい。
お求めやすい価格と、通常商品とは少し違った規格が人気なのだろうか?竹虎YouTube特別販売が思いがけず人気になっている。昔の竹製品と言えば大量生産されるものもあり、ヒット商品と呼べる竹編みもあったけれど、近年では多品種少量生産が主となった。そして、そんな中でも手作りの宿命とでも言うべきか正規品とは若干異なる物が出来る事も多い。竹材の都合や職人の手によるサイズ違いをはじめ試作品等、あるいは今回の白竹角手提げ籠バックのように通常の金具がたまたま無くなり、手持ちの少し大きめのリベットを使ったものなどもある。
このような竹製品は、竹虎本社工場に隣接している本店に陳列しているが、結構な在庫数になるので全国の皆様に是非ご覧いただきたいと考えて「YouTube動画特別販売」として配信をさせて頂くことにしたのだ。この白竹角手提げ籠バッグは、お買い物にも、山や海への行楽にも連れて行きたい白竹で編まれた「角もの」、四角い形なのにシャープな感じになりすぎず、温もりを感じるのは竹ならではだ。通常商品より大きめの別注リベットで仕上げた限定品なのでお求めやすいお値段にしている。
昨日は籐細工の枕のお話しをさせて頂いた。籐工芸にも戦後のGHQが関係していて、家具の需要から盛んになったという歴史は本当に興味深い。ソファや椅子も竹で編まれる事もあるけれど、やはり耐久性では籐(ラタン)には敵わない。当時、竹職人から籐職人へと転向された方々も籐素材の魅力を感じた方も多いはずだ。
もちろん、元々日本にあった竹というのは素晴らしいし身近であったから多用されてきた。しかし、輸入材としてしか手に入らなかった籐も、実は少量ながら江戸時代からあって緻密な編み込みの品が作られていた。そんな伝統が、家具から手提げ籠バッグのような小物に受け継がれているように思う。
ところが昨今、そんな籐材も良質なものが少なくなって困っている。竹とも相性が良いので籠の口巻や持ち手など色々と使われているのだが、サイズによっては全く調達できずに仕方なく出来なくなった籠や、仕様を変更せざるを得ない事もある。
竹虎では今夏から染め籐の籠を中止して、素材感そのままにお楽しみいただく白籐手提げ籠バッグを中心に考えている。
この網代編みの籠は、これで完成でない。これから巾着袋を取り付けて巾着籠として出来あがる。巾着籠と言っても、近年ではあまり見かける事がないが、一般の方なら着物や浴衣に合わせて持たれたり、舞妓籠とかお座敷籠とか呼ばれるように舞妓さんが使われる事が多い。
竹細工にはありがちな事ではあるけれど、現在ではすっかり少なくなったこの網代編みの袋底も、以前は大量に編まれていた。
ご覧いただいているような虎竹や白竹の表皮を活かした籠ばかりではなく、表皮を取った後の内側の竹ヒゴで編んでから染められた籠が倉庫に山積みされていたのだ。この細かい編み込みの籠が、こんなに沢山あるとは凄いなあと当時は思ったものだけれど、竹ヒゴは機械で作るし職人は手慣れているので意外なほどの早さで作られていた。
一つの竹籠を数多く作るという事になれば、工夫もするし分業もしながらそれぞれのパートで熟練度が高まり、早く綺麗な製品が作られるようになる。
需要が減り流れ作業のように出来あがっていく竹の仕事はとうに無くなった。時代に合わせて、ひとつひとつ編んでいく。
このショルダーバッグのように素地が全く見えなくなるまで色付けしていると、素材感が分からなくなってしまい一体何で出来ているのかと思われる方がいても不思議ではない。自分では当たり前すぎて、あまり気にしてこなかったのだが、店頭にそのまま置いてあるだけでは木なのか?プラスチックなのか?陶器なのか?知らずに、あるいは関心も引かれる事なく見過ごされてしまっていたのではないかと思う。しかし、実はこれは竹なのだ。
厚みのある孟宗竹の身部分を球形に削りだし、中央に穴を開け紐を通して繋ぎ合わせて作られている。最盛期は70年代頃ではなかったかと思うが、この球形のサイズを変えたり、形状を変えたりした様々な製品があった。
このビーズショルダーバッグも、そんな中のひとつである。楕円形のビーズも球形のビーズも竹で作られている。
塗装をしていない部分を見ると竹特有の維管束の模様を確認できて、間違いなく竹だとお分かり頂ける。
ショルダーバッグ、ハンドバッグなどバッグ類が多かったけれど、ベルトもあった。レトロ感あふれる懐かしい竹ビーズネックレスは奇跡的に倉庫からデッドストックの製品が見つかってご紹介させてもらっている。