プロの目利きが選んだ一膳の竹箸

竹箸


お箸という漢字は「竹」が冠についているだけあって竹ほどの適材はないと思う。日本全国なら北海道や沖縄を除いて何処に行っても太い孟宗竹や真竹、淡竹が身近にあって材料に困らない。加工にしても、竹を割った性格と昔から言われるように縦に割りやすい、竹林整備を兼ねたキャンプやイベントで竹箸を作られた事のある方がいれば、使い捨てのお箸であれば誰でも簡単に作れてしまう事を実感されてていると思う。自分が山に行ってお箸を忘れた時には黒竹の細い小枝を伐って使った。製作時間は数秒である。


軽く、細くてもしなりがあり丈夫、使い心地も最高の竹箸だから古より数えきれない程の量が作られて来たろうし、種類も様々できて来たことだろう。現在でも、竹箸の種類は大きな製造工場で作られるものから、職人手削りのものまで実に多くのものがある。さて、しかし、そんな沢山の竹箸の中で、どれか一膳だけ選ぶとなると一体どうだうろか?


自分は、仕事がら沢山の竹箸を持っていて食事の度に色々と変えて使っている。たまに入れ替われもあるけれど、右手でガッと握って一束くらいある中から毎回選んでいるのだ。希少な煤竹を手削りしたお箸がある、極太の孟宗竹を男性用に太く削ったお箸もある、真竹の節が入ったお箸、虎竹の男箸、丸いお箸、角箸、五角箸、漆仕上げ、ウレタン塗装、鮮やかな色に塗ったお箸、その日の気分で並べるお箸の中にプロが選ぶ一膳がある。


竹虎本社


虎竹のお箸なら嬉しいが、実はそうではない。昭和45年(1970年)から50年近くに渡って竹虎本店で竹箸を販売し続けてきて、自分自身も家族も使い続けて来た母がこれなら間違いないという一膳が研出箸である。値段も800円という普通の竹箸なので肩透かしをくった思いの方もおられるかも知れない。


ところがこんな事もあった。自身も竹細工のたしなみがあり竹工芸家から若手職人まで数十年にわたって産地の様々な職人の仕事を見てきた女将と談笑していた時、ふいに竹箸の話しになったのだ。そして、奥の台所から今までで一番の品質であり長く愛用するというお箸を持って出てきたが、その手にはやはりこの同じ竹箸が握られていた。


さすがに、この時には鳥肌がたったがプロの目利きが選び続けてきたのは、高級な素材や見てくれの格好良さではない、使いやすさ、耐久性、価格全てにおいてのベストワンの、この竹箸なのである。


百年の煤竹を削り漆で仕上げた男箸

煤竹男箸


久しぶりに煤竹箸をご紹介できるようになって本当に嬉しく思っています。自分も竹箸を毎日愛用していて虎竹、白竹、真竹など数種類のお箸をローテーションしていますが、その中に二種類の煤竹箸が入っています。


使っているのは、今回の煤竹うるし男箸のように漆で仕上げたものでもう何年になるでしょうか?真っ黒いほどの煤の色合いも随分と薄れてきて漆を塗っていたとは思えないほど竹生地が見えてきていますものの、やはり普通のウレタン塗装のお箸とは全く違う存在感です。


茅葺屋根


あっ、そうそう、もしかすると煤竹をご存じない方がおられましたら少しだけご説明させていただきます。昔の茅葺屋根の民家の梁には軽くて丈夫な竹材が多用されていました、沢山の家族の暮らす室内では食事や暖をとるために囲炉裏で火を焚きます。


その煙がもうもうとたちこめて茅葺屋根の防虫に役立ち耐久性を高めてきたのですが、梁に使われていた竹も自然に燻されることになります。そうして100年、場合によっては200年もの間そうして使われ続けてきた竹は煤がつき長い年月を経た竹でないと醸し出せない風合いの竹に変身します。


煤竹花器


煤竹に濃淡があるのは直接煙に触れていない縄で縛られていた部分です。これは一本の長い煤竹で見ると、螺旋状の縄目がウラ(竹の先端)までハッキリとついているのが分かるのです。


虎竹


天井部分ですのであまり太い竹ではなくて使われている竹は頃合いの真竹が多いのですがそもそも古民家が少なくなっている上に、素材を調達できるのが民家を壊す時だけですし、現代の暮らしで家の中で火を焚くことはありませんので年々竹材は少なくなるばかりの非常貴重な竹材でもあるのです。


しかもせっかく民家から取り出した竹材も長年の風雪に耐えて来た竹ですので、すっかり粘りがなくなり細工に使えなかったりします。材質は良くとも決められたサイズの竹しかありませんので例えば今回の男箸にしても一定の厚みがあって、しかも節付を探すとなるとようやく数膳を製作できたにすぎません、竹節の位置が微妙に違うのはそのためです。


煤竹


真竹でも淡竹でも山で見ている竹は青く、とてもあのような深みのある渋い風合いになるとは想像すらできません。それが100年経つと、この色合いです、やはり時間の積み重ねというのは凄い事だと改めて感じます。


毎日使う竹漆箸が登場です。

毎日竹漆箸


普段使いして頂きたいお箸を作る事にしました、その名も「毎日竹漆箸」。そもそも箸という字は竹冠である事を見てお分かりいただけますように材料が身近にあり加工性に優れ、軽くしなりのある竹は古よりお箸の最適な素材としてなくてはならない存在だったと思います。


今回の毎日箸はネーミング通りに気軽に毎日の食卓に並べてご愛用いただきたい持ちやすさとシンプルさを心がけているお箸です。それでいて一本一本を職人が拭き漆で丁寧に仕上げています。


孟宗竹


竹箸の素材である孟宗竹の多くが活用される事なく今日も竹林にあります。一般の方は竹の種類などあまりご存知ないので沢山余っている竹なら竹ザル竹籠に使えばいいのでは?と思われているかも知れません。しかし、竹籠の素材として孟宗竹を使うのは高知や本当に極一部の地域だけなのです。だから、小さなお箸なので大量ではないものの、現在竹製品に加工できている数少ない一つとも言えます。


竹漆箸


もしかしたらご自身の使われているお箸が竹なのか木製なのかあまり関心のない方もおられるのでしょうか?渋く漆で仕上げた毎日竹箸を手にされても、それが竹なのか木なのか迷う方も多い現代です。


竹箸


新年の節目にお箸を代えらる方もおられると思います。一日三回も必ず手にされる生活道具を意識して竹林に思いを向けられる方が少しでも増えればという気持ちです。


虎竹男箸が品切れになる理由

虎竹箸製造


日本唯一の虎竹男箸は時々欠品になってしまう。お待ちいただくお客様には申し訳ないけれど材料が無くなってしまえばいくら製造したくても出来ないのだ。このお箸を自分は竹虎生地の箸袋に入れていつも携帯している、マイ箸としていつも使っているかと言うと実はそうではない。キチンとした料理屋さんでは割箸にも気を使っているので、そう言う所では出していただいたお箸を使う。ただ、日常的に行く機会の多い手頃なお値段の店舗で、刺激臭のする竹割箸を使うのにどうも抵抗があるのだ。


虎竹、竹虎四代目


どうして虎竹男箸の材料がなくなってしまうかと言うと、虎竹は真竹より少し小振りな竹なのだが淡竹(はちく)の仲間であり身が若干薄いのである。そこで太く、長い男箸の材料が品薄になってしまう。


虎竹箸製造


出来あがった虎竹男箸を見て「いくら身が薄いと言っても、これくらいなら材料もあるのでは?」とごく自然な疑問を持たれる方もいる。しかし、これは削り出す前の虎竹素材を見れば一目瞭然にご理解いただけるのかも知れない。


虎竹箸製造


虎竹男箸は全て熟練職人の手削りで製造されている。高速で回転するグラインダーに触れないように器用に指先を動かして竹を削っていく。あれよ、あれよと言う間に太い角材のようだった虎竹がお箸の形になる。


竹は根元に近い方が身が厚い、ところが節間が短くなってくるので世の中上手くはいかない。虎竹男箸の場合24センチの箸の長さがとれる節間があって、しかも厚い身の材料でなくてはならない。そんな竹材は本当に少ない上に、更に虎竹の場合は色づきの良し悪しがあって竹を厳選してしまう。


そして、気がつけば虎竹男箸は品切れになってしまっているのだ。




黒竹箸箱が弁当箱・携帯用限定で帰ってきましたぞね。

黒竹箸箱


黒竹箸箱が弁当箱・携帯用限定で帰ってきましたぞね。竹集成材で製作した箸箱本体こスライドさせる黒竹蓋部分は太めの黒竹を厳選して使用していますが、良質の黒竹材が少なくなってきたこと、そして自然素材そのままに活かした製品だけに加工が難しく、ずっと前に製造されなくなっていた商品なのです。


黒竹箸箱、虎竹ランチボックス


今回は持ち運びしやすい全長21センチのサイズの箸箱という事で、男性の方でも短めながら十分ご使用いただける19.5センチサイズの竹箸もお付けてしての販売です。竹虎にあります弁当箱にあわせるとしたら虎竹ランチボックス(長角)と同じ長さですのでペアでご愛用頂きますと雰囲気もピッタリなのは、画像でご覧いただいております通りです。


黒竹箸箱と竹箸


製作が大変なだけに通常の箸箱と比べても自然の黒竹の風合いそのままに活かした箸箱は格別です。長さを揃える事によって持ち運びの利便性もよくなりました。


竹には大きな特徴として竹節があります。竹製品を作る場合には出来るだけ節のデザインを活かしていくのですが黒竹蓋にも竹節が取り入れられ見た目にも感じが良いし、スライドさせる時にも使いやすくなって一石二鳥の作りなのです。


2018年、新春に虎竹箸

虎竹箸


虎竹は自然の意匠のと言ってますが本当にひとつひとつ柄が違い、色の濃淡がありますので細いお箸に製造した時には特にその仕上がりには差異があるのです。


虎竹箸


年始には新しいお箸で始められる方がおられますが、それならやはり「松竹梅」とめでたい樹木の一つに数えられる竹がオススメです。竹はわずか3カ月で竹になるという言葉がりますように天を目指して真っ直ぐに素晴らしい成長力を見せます。


環境に優しいエコ素材としてご支持いただくのはもちろんですが、その覇気のあるパワーも竹の魅力となっています。竹には節があるためにしなやかで強く、その節のあり方は人の節目節目の大事さを教えてくれているようでもあります。


虎竹箸


そもそも「箸」の文字は竹冠ですので、箸は身近で馴染みの深い竹が多用されてきたのだと思いますが、日本唯一の虎竹はもっと特別なものなのです。自然に生み出される虎斑模様です、虎は千里行って千里帰ると昔から言われ勢いの盛んなたえとなのです。


一年のスタートを切る新春に使うお箸として虎竹箸ほどふさわしいものが他にありますろうか?


さらに、虎が千里を帰るのは子供の事を思ってだそうですので家族を大事にする親の愛情の深さを知ることができます。おっとますます来年こそ虎竹箸でスタートしたくなられたのではないかと思います。


母の日には、感謝のメッセージの箸箱

竹箸箱


四角い箱状のものが並んでいますが、これは竹集成材で作られた箸箱。断面に見える細かい丸い模様は竹特有の維管束とよばれる内部組織ぞね。集成材は一定間隔にした竹材を接着させて角材のようにして使うので、木材と同じような製品加工ができるのです。


竹箸箱と虎竹削り箸セット


さて、スライド式の上蓋を外したら中には虎竹削り箸が納められています、これは竹箸箱と虎竹削り箸セットになっているのです。日本唯一の虎模様が美しく、同じ竹材でも竹の身部分を活用した箸箱とは全くその風合いが違うことが分かっていただけるのではないかと思います。


この虎竹箸の収納は今回から実は一工夫が加わっています。何かと言いますと箸をしっかりとまとめられる籐製のタガですぞね。


竹箸箱と虎竹削り箸セット


持ち運ぶ為の竹箸箱ではありますが、お箸が中でガチャガチャと音がしてしまいます。そこで少しでもこの音を抑え、気持ちよくご愛用いただけるのではないかと思いよります。


そして、サッとお箸を取り出したら何とそこには嬉しい心からのメッセージ。母の日と言えば、ちっくと(少し)気が早いようですが明日からの4月は出会いと別れの季節やし、5月にはゴールデンウィークやし、なかなか皆様忙しいのです。今から準備していても、まっこと(本当に)アッという間にやって来ます。普段言えない気持ちをこうやって伝えるのもエイのかも知れませんぜよ。


虎竹削り箸が新しくなります。

虎竹削り箸


虎竹削り箸は日本唯一の虎竹を一本一本職人が手削で加工しているお箸です。細身で軽くしなりがあるのが特徴で、魚料理の際に小骨も取りやすいと人気でずっと定番としてあったお箸なのです。今回のリニューアルは、せっかくの虎竹箸なのでもう少し高級感をだして、よりご満足いただけるものにしたいと思い今までのウレタン塗装から漆仕上げに変更することにしました。


黒竹筒箸箱入り虎竹箸


そして、そのタイミングで黒竹筒箸箱も新しくしようと思っています。こちらは今までのマグネット方式から籐を使ったタガ留めに変えていきます。「タガ」は皆様ご存じでしょうか?木樽や木桶がバラバラにならないように竹編みの輪を作り締め付けていますが、その竹編みをタガと言います。黒竹筒箸箱の蓋の開閉にタガを使いますが、黒竹にはやはり自然素材が似合うと思いますし使い勝手も向上するのです。


箸箱にタガを使いますが、更に中に収納する虎竹箸にも小さな籐のタガを作ってお箸をしっかりまとめて納めるようにもします。筒箸箱の中にお箸をそのまま入れるとガチャガチャと音がしますが、タガで留めて入れると明らかに座りがよいのです。


竹野武士

渡辺竹清先生


あれは、いつの事やったろうか?網代編みの巨匠、渡辺竹清先生の工房にふらりとお伺いさせて頂いた時に、


「これ、持って帰り...」


そう言うて頂いたのが縄目模様も渋い煤竹筒に入った、先生の手削りの携帯箸やったがです。筒の口部分は丁寧に籐巻きされています。スッーと中のお箸を引き出してみたら何と無骨な印象の煤角箸ながです。これはかなり太い煤竹やったに違いないがぞね。竹材の関係で、これ以上の太さの竹箸は量産できないと言う竹虎の極太箸、横綱うるし箸よりも更に若干幅が広めながぜよ。少しだけ下げた竹節の表情も格好がエイちや。普通を好まない男が使う角箸の雰囲気満点ながです。


渡辺竹清作、煤竹携帯箸


この携帯箸は、丸い竹筒に入れられちゅう分かさばるので、鞄などを持ち歩く時でないとなかなか携帯できないという事があって実は出番は多くは無いのです。けんど、いつも身近に置いて眺めていたいと言う、この携帯箸の最大の特徴のひとつが「鍔(つば)」ぞね。


最初、先生が棚から出された時に、まるで美しい小刀のように見えたのです。煤竹の鞘(さや)に刀のような煤竹箸と鍔が収まっちゅうように思えたきです。もし、これが刀やとしたら渡辺先生に帯刀を許された竹武士という事やろうか。けんど、さすが先生は考えられちゅうぜよ、武士は武士でもこの箸の荒々しやきに野武士じゃおまんは野武士になれ、そう言うてくれゆうがです。



雪の国、竹虎四代目見参!

竹虎四代目


竹虎四代目見参ぜよ!寒いので作務衣に綿入りの長半纏を羽織り、祖父の愛用しよったマフラーを坊主頭に巻いちょりますぜよ。どうも見慣れない夜空に、美しい街並、真っ白い絨毯のような雪道が続くのを見たら、どうにも止まらんがぞね。


ストックホルムの子供達


けんど、この格好ですきに、道を行く子供達が口々に言います。


「ニンジャ、ニンジャ...」


んっ?ニンジャとは忍者の事?まっこと、アメリカでは「スシ屋」やったけんど、ここでは、忍者。思いのほか海外では忍者は有名な存在のようですちや。


煤竹携帯箸


ややっ!?


けんど、もしかしてストックホルムの子供達。あなどれんかも知れんちや。上着の下に隠し持っちょった煤竹マイ箸をお見通しやったがやうろか!?


煤竹箸居合い


煤竹のサヤに煤竹の箸、刀と同じようにツバも付いた渡辺竹清先生作の逸品ちや。ツバは格好だけではないですぞね。そのまま箸置きに早変わりするというスグレモノですきに。これを腰に差しちゅうのを見られたら、まっこと、ニンジャと言われても仕方ないがぜよ。